刊行物

原酒

ボート競技 卓越性の追求

写真1:レース中(筆者右)

写真1:レース中(筆者右)


写真2:第62回全日本社会人選手権大会の表彰式にて(筆者右)

写真2:第62回全日本社会人選手権大会の表彰式にて(筆者右)

私は理研の職員として働く傍ら、高校から始めたボート競技(Rowing)を今でも続けている。始めたばかりのころは軽い気持ちで取り組んでいたのだが、一つずつ階段を登ることでいつしか目標は日本一のタイトルを取ること、そしてそのための努力をいとわないことへと変わっていった。

ボート競技は定められた距離をよーいドンで一斉に漕ぎ進め、先にゴールした方が勝ちという極めて単純なスポーツである。しかしレースでは、心拍数が毎分200回近くまで上昇し血中乳酸濃度も上昇する中で、同じ動きを1分間に40回程度正確に繰り返さなければならない。それを可能にするためには多くのトレーニングが必要である。日本ではマイナーなこの競技も欧米では盛んであり、特にイギリスではボート競技発祥の地として、歴史ある「Henry Royal Regatta」や「The Boat Race」をはじめ多くの大会が開催され、人々に親しまれている。

私は、今年7月に開催された「第62回全日本社会人選手権大会」で、男子ダブルスカル(漕ぎ手2人がそれぞれ2本ずつオールを持ち漕ぎ進める種目)に出場し、日本一の称号を手に入れた(写真1・2)。また、10月の「第67回国民体育大会(ぎふ清流国体)」では、埼玉県代表として成年男子舵手(だしゅ)付きフォア(漕ぎ手4人がそれぞれ1本ずつオールを持ち、かつ舵手が付く種目)に出場したが、こちらは結果が振るわなかった。来年の東京国体でリベンジを期すつもりだ。

私が初めて全国大会に出場したのは高校3年生のインターハイだった。そこで惨敗したことが契機となり、大学時代も競技に打ち込んだ。大学を卒業して競技を続けるか否か迷ったが、埼玉県の和光市勤務になったことも追い風となり、隣の戸田市にある社会人クラブチームに所属し競技を続けている。社会人になっても学生時代と同様、早朝4時台に起きてトレーニングをするという生活サイクルは変わらず、平日は毎朝トレーニングしてから仕事に向かい、週末は朝夕とトレーニングする日々を送っている。

フルタイムで仕事をしながら競技を続けることは、学生時代と比べて並外れて大変である。それこそ青息吐息でトレーニングに向かう日もあった。それでもここまで続けてこられたのは、目標を追求する中で自分自身の成長の過程を実感できたことによるところが大きい。また、理研での恵まれた職場環境があることも忘れてはならない大きな要因である。

己の肉体を使って、トレーニングという名のいわばさまざまな実験をし、成果を求めていく過程は、サイエンスに通じるものがあるように思う。日々のトレーニングの中でPDCAサイクル(Plan - Do - Check - Act cycle)を回し、一歩ずつ課題解決へ向けて歩む道のりは、まさに「卓越性の追求(Pursuit of Excellence)」であると考えている。今後も引き続き仕事とボートの両面において、自分自身の能力を今まで以上に高めていきたい。

ボート競技は個人で大会に参加することはできず、どこかの団体に所属していなければならない。