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[理研ニュース 2010年11月号]

SPOT NEWS

心臓形成にIP3レセプターが重要な役割を果たす

先天性心疾患の新たな治療法などの開発に期待
2010年8月30日プレスリリース

 理研脳科学総合研究センター 発生神経生物研究チームの御子柴(みこしば)克彦チームリーダーらは、慶應義塾大学と共同で、細胞内でカルシウム濃度を調整する「イノシトール三リン酸受容体(IP3レセプター)」が、心臓の発生過程で重要な役割を果たしていることを、マウスを使った実験で明らかにした。日本では、年間1万人以上の子どもが心臓に何らかの病気を持って生まれる。この成果は、これら先天性心疾患の新たな予防法や治療法の開発につながると期待される。
 心臓が形成される過程では、心房と心室の間にある房室管と呼ばれる場所で間葉系細胞が増えて、心内膜床(しんないまくしょう)が形成される(左)。その後、心内膜床の一部が、血液の逆流を防ぐ房室弁になる。この発生過程では、細胞内のカルシウム濃度に依存する酵素「カルシニューリン」が活性化することが知られているが、この酵素がどのように活性化するか、そのメカニズムは謎のままだった。
 研究グループは、細胞内でカルシウム濃度を調節するIP3 レセプターに着目。マウス胎仔(たいし)で1型と2型のIP3レセプターの発現を観察した結果、1型は体全体に、2型は心臓のみに発現することが分かった。これまでの研究で1型、2型IP3レセプターのうち、片方のみを欠如したマウスでは心臓の発生に異常がなかったことから、今回1型と2型の両方を欠如したマウスを作製した。このマウスでは、カルシニューリンの活性が低下し、間葉系細胞が激減して心内膜床の発生に異常が起こることが分かった(右)。また、このマウスの房室管で活性化したカルシニューリンを強制的に発現させたところ、間葉系細胞の数が増加し、心内膜床の正常な発生につながった。
 これらの結果から、IP3レセプターが細胞内のカルシウム濃度を高めることで、カルシニューリンが活性化し、間葉系細胞が増えて心内膜床を形成するという一連のメカニズムが明らかとなった。

野生型と1型・2型のIP3レセプターを欠如したマウスの心臓

    ●『PLoS ONE』(9月1日号)掲載