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線虫で生命現象の基本原理を見る
杉本亜砂子 |
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1個の受精卵が分裂を繰り返し、筋肉や神経、皮膚など さまざまな種類の細胞となり、私たちの体はつくられていく。 細胞の中で何が起きて、異なる種類の細胞が生み出されるのか。 このような生命現象の謎を探るため、杉本亜砂子チームリーダーたちは、 線虫を観察している。 |
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ゲノムが解読された最初の動物
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発生ゲノミクス研究チームを訪ねると、線虫を描いた絵画が目を引く。杉本亜砂子チームリーダー(TL)の名刺にも、線虫のイラストが描かれている。「線虫は受精からふ化まで14時間。胚や細胞が透明なので、1日で体づくりの過程をすべて観察できます(図1)。線虫を使った研究を始めて15年以上になりますが、線虫はいつまでたっても見飽きないですね」と杉本TLは言う。1960年代、発生のメカニズムなどを研究するために、線虫(C. elegans)をモデル生物に選んだのが、シドニー・ブレナー博士(2002年ノーベル生理学・医学賞受賞)だ。成虫の体長は約1mm。世界中の至る所で土の中に生息している。飼育が容易で、成虫になるまで3日と、実験に適した性質を持つ。成虫の体細胞の総数は、個体差がなく959個。細胞の種類ごとの数も決まっていて、神経細胞は302個だ。「線虫のようなシンプルな生物をとことん理解することで、人間を含むさまざまな生物に共通する普遍的な生命現象のメカニズムを探ることができます」 例えば線虫の研究により、不要になった細胞が自ら死んでいく“アポトーシス”という重要な現象が発見され、生命科学に大きなブレークスルーをもたらした。 1998年に動物として初めてゲノム(全遺伝情報)の解読が完了したのも線虫だ。ゲノムの中に含まれる遺伝子数は約2万個。2003年にはヒトゲノムの解読が完了したが、遺伝子数は2万2000個ほどだった。「線虫とヒトで遺伝子数にこれだけしか差がないことは、私たち線虫の研究者にとっても大きな驚きでした。しかも、ヒトの遺伝子の6〜7割は、線虫にその原型があることが分かりました。線虫の遺伝子の役割を調べることで、ヒトの遺伝子についても理解することができるのです」 ゲノム解読は、生命科学にとってどのような意味を持つのか。杉本TLは、生物を機械に例えて、次のように説明する。「ゲノム解読は、すべての部品リストが手に入ったようなものです。しかし、それぞれの部品の役割やつながり方は、ゲノムの情報だけからは分かりません。装置を組み立てたり仕組みを理解するには、部品の役割やつながり方を調べることが必要です」 それには、いくつかの方法がある。「例えば構造が似ているものを集めてその性質を調べたり、どの部品がどれと結合するのかを調べたりします。私たちは、装置から特定の部品を取り外したときに、何が起きるかを調べています」 つまり、特定の遺伝子の機能を抑制したときに、どのような現象が起きるのかを観察することで、その遺伝子の役割を推定することができるのだ。 「自転車に例えると、ハンドルを外したら曲がれなくなり壁にぶつかります。それを見て、ハンドルは方向を変えるのに必要な部品だと推定できます。ゲノム解読によって部品リストが手に入ったので、すべての部品を一つ一つ調べ上げることができるようになりました」 線虫のゲノム解読が完了した1998年、線虫の研究から、生命科学にブレークスルーをもたらす、もう一つの大発見が報告された。“RNA干渉”という現象だ。DNAに書かれた遺伝子の情報がRNAに読み取られて、タンパク質がつくられる。単なる情報伝達役にすぎないと思われていたRNAに、遺伝子の機能を抑制する働きがあることが分かったのだ。このRNA干渉を用いることで、特定の遺伝子を抑制する実験を、比較的容易に行うことができるようになった。 RNA干渉実験には、生殖腺(せん)にRNAを注射して、子どもの世代で遺伝子を抑制する方法が用いられてきた。しかし注射をするには手間がかかる。そこで、杉本TLたちはSoaking(ソーキング)法という簡便な方法を開発した。この方法は個体をRNAの溶液に入れて泳がせるだけでいい。「線虫は、取り込んだRNAを全身に広げる機能があるのです。ほかの動物ではあまり見られない機能です。この方法ならば、一度にたくさんの線虫に対してRNA干渉を用いることができます」 杉本TLたちは、Soaking法を使って、受精卵からふ化するまでの胚発生と、生殖細胞の形成に必要な遺伝子を網羅的に解析することを始めた。「国立遺伝学研究所の小原雄治所長から提供していただいた線虫の6000個の遺伝子ライブラリーを用いて、機能分類を行いました。そして、胚発生には6000個のうちの20〜25%の遺伝子が必ず必要で、それらの機能を抑制すると発生が途中で止まることが分かりました」 ![]() |
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なぜ分裂して異なる細胞ができるのか
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杉本TLたちは、ゲノム全体を対象にした機能解析をさらに続けるとともに、解析した情報を利用して細胞分裂の仕組みを詳しく調べる研究も行っている。なぜ、細胞分裂の仕組みが重要なのか。「発生で必要なのは、分裂によって細胞が増えること、そしてそのときに、さまざまな種類の細胞がつくられることです。細胞分裂によって異なる種類の細胞がどのようにしてつくられるのか、その仕組みを知ることが、発生を理解する上で一番大事なポイントなのです」 細胞分裂で異なる細胞ができるには、まず細胞に前・後といった区別ができ、ある分子は前側へ、別の分子は後側へ移動して、前後に分裂する必要がある。もし、このとき上下に分裂したら、同じ細胞ができてしまう。 線虫では受精卵が最初に分裂するときからすでに、異なる種類の細胞ができる。前側は体細胞へ、後側は生殖細胞をつくる細胞へと運命が分かれる。このような異なる運命を生み出す細胞分裂(非対称分裂)が連続的に起きることで、多様な細胞が生み出されるのである(図2)。「私たちは、この最初の数回の分裂を理解することで、発生で働いている基本原理を探ろうとしています」 これまでの研究により、精子が入った方が後側になることが知られていた。それはなぜなのか。 受精卵の細胞膜全体は、アクチン骨格というメッシュ構造で裏打ちされている。しかし、精子が入った側(将来の後側)ではメッシュに穴が開き、メッシュ全体が逆側(将来の前側)へ引っ張られる。すると、このメッシュに乗っていたPAR-3というタンパク質群も前側に移動する(記事冒頭の図)。そしてメッシュが破れた場所を埋めるように、PAR-2というタンパク質群が後側の表層を覆う。こうして前側にPAR-3、後側にPAR-2が分布するようになる。このような分布にならないと、異なる種類の細胞に分裂できない。「これらのPARタンパク質は線虫以外の動物でも、異なる種類の細胞をつくるときに重要な役割をしていることが知られています」 それでは、メッシュに穴が開くきっかけは何か。杉本TLたちは、ECT-2というタンパク質が重要な役割を果たしていることを見つけた。精子が入った直後、ECT-2は受精卵の表層全体に分布しているが、それが後側からなくなっていくことがきっかけとなり、アクチン骨格のメッシュに穴が開く。「ECT-2がないと、アクチン骨格のメッシュ構造が維持できないのだと考えられます」 ではなぜ、ECT-2が後側でなくなるのか。そこで重要な役割を果たすのが、精子が持ち込んだ中心体だ。中心体は細胞分裂のときに必要な細胞内小器官だが、卵からは失われている。杉本TLたちは、RNA干渉を用いて、中心体の機能を担うある遺伝子の機能を阻害するとECT-2が後側からなくならないことを見いだした。「後側に位置する中心体からECT-2へ何らかのシグナルが出て、ECT-2がなくなるのだと考えられます。私たちはそのシグナルの正体を突き止めようとしています」
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ブロックの組み立てをコントロールする
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受精卵が分裂するとき、体細胞となる前側は大きな細胞に、生殖細胞をつくるもととなる後側は小さな細胞になる。そのとき、染色体を二つに分ける紡錘(ぼうすい)体が、90度回転した後、後側へ引っ張られることが必要だ(記事冒頭の図・図3)。
紡錘体は2極の中心体から成長した微小管からなる。微小管は、PARタンパク質がある細胞表層まで伸びている。そしてPAR-2がある後側に接した微小管の方が、PAR-3のある前側に接した微小管よりも中心体を引っ張る力が強いため、紡錘体が後側に引っ張られる。このようにPARタンパク質が紡錘体の位置や動きをコントロールすることで、細胞が分裂する方向や、分裂で生み出されるそれぞれの細胞の大きさが決められているのだが、その詳しい仕組みはまだよく分かっていない。「紡錘体の動きを3次元で詳細に観察することで、微小管が中心体を引っ張る力がPARタンパク質によってどのように調節されているのかを明らかにしようとしています」 微小管はチューブリンというタンパク質が集まってできる。細胞分裂が終わるとチューブリンはばらばらになって、紡錘体は解体される。微小管は紡錘体をつくるだけでなく、細胞の形を変えたり、神経細胞の中で物質輸送にかかわったりと、いろいろな役割を持つ。 「細胞の中には、アクチンやチューブリンといった“ブロック”がたくさんあって、細胞の種類や細胞分裂の時期によって、ブロックを組み立ててアクチン骨格や紡錘体などの必要な構造がつくられます。どのようにして、その組み立てがコントロールされているのか、それもとても面白い研究テーマです」 紡錘体がつくられるときには、中心体から微小管が成長する。「中心体も実に謎の多い器官です。中心体の中には円柱が直交した中心小体があり、細胞分裂の時期になると、その周りに微小管をつくるために必要なタンパク質が集まってきます。その結果、中心体から微小管が成長して紡錘体がつくられます」 杉本TLたちは、RNA干渉によって特定の遺伝子の働きを抑えることにより、中心体から微小管が成長できなくなったり微小管の性質が変化するような遺伝子を探索して、解析を進めている。「なぜ細胞分裂の時期になると、中心体に劇的な変化が起きるのか。その謎も、これから解明したいと思います」 ![]() |
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ものを分配する仕組み
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細胞分裂で異なる細胞に分かれるとき、それぞれに必要なタンパク質が適切に分配されなければならない。その分配にも、PARタンパク質が重要だと考えられている。例えば受精卵が分裂するとき、生殖顆粒(かりゅう)というタンパク質とRNAの複合体が後側へ運ばれる。一方、PAR-3のある前側では、生殖顆粒は分解されてしまう。分裂後に生殖顆粒を受け継いだ後側の細胞は生殖細胞となる。
同時にたくさんの分子が前側、あるいは後側へ移動し、分配されることで、異なる種類の細胞ができる。その移動・分配の交通整理をどのように行っているのか。それが、異なる細胞ができる仕組みを探る上での最大の謎の一つだ。もちろん、つくられる細胞の種類によって、分配される分子は異なる。分配するためには、前側へ行くものと後側へ行くもので、異なる目印が付いていると考えられる。「ただし、それがどのような目印なのか、分かっていません。研究すればするほど、次々と謎が出てきます。線虫というシンプルな生物の、受精卵の第1回目の細胞分裂でさえ、まだ分からないことだらけなのです」 ただし、これから研究は急速に進展するはずと、杉本TLは力強く語る。「特定のタンパク質だけを光らせる技術や顕微鏡技術の進展により、細胞中のタンパク質の素早くダイナミックな動きを3次元で観察し、解析できるようになりました。ここ数年の技術の進歩により、観察で分かることが飛躍的に増えたのです。その観察技術とRNA干渉を組み合わせた今の研究を続けていけば、分配の仕組みなどの解明も、それほど遠いゴールだとは思っていません。今の研究を加速していけば、生命現象の基本原理がきっと見えてくるはずです」 線虫の研究から、再び大発見がもたらされようとしている。■ |
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サイトカイニンが食糧危機を
コケが環境汚染を救う 榊原 均 |
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人口の爆発的増加などによって、世界は近い将来、 食糧危機に直面するといわれている。 作物の収量増加は、植物科学研究に課せられた大きな課題だ。 生産制御研究チームでは、細胞分裂を活性化する 植物ホルモン“サイトカイニン”が、イネの収量に 深くかかわっていることを明らかにした。 サイトカイニン研究で世界のトップを走る 榊原 均チームリーダーは、その合成や活性化を コントロールすることで、イネやコムギ、 トウモロコシなど作物の収量アップを目指す。 重金属を高濃度に蓄積する“コケ”の 共同研究についても紹介しよう。 |
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シロイヌナズナからイネへ
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理研横浜研究所の東棟の最上階には、イネの栽培室がある。自然光が差し込む明るい部屋では、植物ホルモンの一種であるサイトカイニンを活性化させるなど、人為的にさまざまな変異を起こしたイネが育てられている。榊原均(ひとし)チームリーダー(TL)は週に何度も栽培室に足を運び、草丈、葉、花、穂などを丹念に観察する。「データだけを見て考えていては駄目。やはり、植物を実際に見て、触って、考えることが大切です」米を主食とする日本人にとって、イネは特別な植物だ。「イネを研究するからには、病気に強い、収穫量が多い、おいしいなど、私たちにとって有益な性質に注目しないと、やっている意味がないと思います。私たちは特に、作物の生産性の向上に焦点を絞って研究しています」。榊原TLが、イネを使った研究を始めたのは、5年ほど前からだ。それまではシロイヌナズナが中心だった。イネを始めたのは、なぜなのか。 シロイヌナズナはアブラナ科の一年草である。1世代が1〜2ヶ月と短く、高さが30cmほどで実験室でも栽培ができることなどから、植物科学の研究でよく使われるモデル植物となっている。2000年には全ゲノム配列が解読された。「シロイヌナズナを材料に、植物の基本的な仕組みを明らかにしようというのが、10年くらい前から世界的な流れになっています。私も理研植物科学研究センター(PSC)に来た2000年から、シロイヌナズナを使った研究を始めました」 だが、しばらくして榊原TLは確信した。「シロイヌナズナだけを研究する時代は終わりつつある」と。「シロイヌナズナそのものには農業的な価値はありません。シロイヌナズナで得た知識を有用植物に展開すべき時だと思い、イネの研究を少しずつ始めたのです」。2002年にイネの全ゲノム配列が解読されたことも、榊原TLの決断を後押しした。 |
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サイトカイニンが収量を決めている
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そして2005年6月、“イネの収量を決定する重要遺伝子を同定”というプレスリリースを出した。1本の穂に実る粒の数を決定する遺伝子を世界で初めて突き止め、コシヒカリにその遺伝子を導入し、収量を増やすことに成功したのだ。近い将来、急激な人口増加などにより、世界は深刻な食糧危機に直面するといわれている。その危機回避につながる画期的な成果として、注目を集めた。
「これまでも多くの育種家の人たちが、有用な性質を持っている品種を交配させることで、収量の多いイネをつくってきました。しかし、なぜ収量が多くなったのか、その仕組みはまったく分かっていませんでした。私たちは、原因となる遺伝子を特定し、それが収量にかかわる仕組みまで明らかにしました。その点が評価されたのでしょう」と榊原TL。 研究に使った品種は、ジャポニカ米のコシヒカリと、インディカ米のハバタキだ。ハバタキは、コシヒカリより多くの粒を実らせる。しかも、草丈が低い(図1上)。粒数が多くなると風雨で倒れやすくなるので、草丈が低い方が好都合だ。「まず、コシヒカリとハバタキを交配させ、粒数の多いもの、少ないもの、草丈の低いもの、高いものなど、さまざまな特徴を持った系統をつくりました。その中から例えば粒数の多いものについてQTL(量的形質遺伝子座)解析という手法を使って詳しく調べると、粒数にかかわる遺伝子が、12本あるイネの染色体のどこにあるかを突き止めることができるのです。さらに詳しく解析した結果、粒数を決めている遺伝子は、第1染色体の上腕部のGn1という領域にあるサイトカイニンオキシダーゼ2であることが分かりました」。同様に、草丈を決めている遺伝子も特定。ここまでの解析は、共同研究先である名古屋大学と(株)ホンダ・リサーチ・インスティチュート・ジャパンが主に行った。 粒数の決定にかかわる遺伝子を突き止めたのは、これが世界初だ。しかし、サイトカイニンオキシダーゼ2がどのように粒数にかかわっているのか、その仕組みはまだ分かっていなかった。それを明らかにしたのが、榊原TLである。「サイトカイニンオキシダーゼ2は、“サイトカイニン”という植物ホルモンの分解酵素をつくる遺伝子でした」 サイトカイニンは、細胞分裂の促進や細胞周期の調節、老化の阻害、側芽(そくが)成長の活性化などの機能を持っている。「サイトカイニンオキシダーゼ2は花芽(はなめ)で発現し、サイトカイニンを分解します。しかし、コシヒカリに比べてハバタキの花芽ではサイトカイニンオキシダーゼ2の発現が少ないことが分かりました。その結果、サイトカイニンが分解されず、花芽での含有量が増加します。すると、細胞分裂が活性化され、花の数が増え、粒数が増加するのです」 これで仕組みは説明できた。しかし、この共同研究グループには、もう一つやるべきことがあった。「実際に粒数が多く、草丈が低くなるイネをつくってみました」 結果はというと、交配の技術を使って粒数と草丈にかかわる遺伝子を含む領域を導入したものは、従来のコシヒカリに比べて粒数が20%増加し、草丈は18%低くなった(図1下)。予想通りだ。「この論文は、サイトカイニンを研究している人たちにとても喜ばれたんです」と榊原TL。「サイトカイニンは基礎的な研究が中心です。しかし、作物の収量増加など応用にもつながる重要な研究であることが示されたので、サイトカイニン研究の追い風となりました」
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サイトカイニンをコントロール
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サイトカイニンの合成や活性化を人為的に調整できれば、収量を自在に変えることができるのではないか……(記事冒頭の図)。当然、そういう期待がわいてくる。しかし、サイトカイニンは発見されてから50年になるが、その合成や分解、活性化、不活性化については、分からないことだらけだった。「サイトカイニンについてもっと理解しなければ」。榊原TLも、そう痛感していたころ、ある学会で東京大学大学院農学生命科学研究科の経塚(きょうづか)淳子助教授(当時)から声を掛けられた。経塚助教授は、イネの花の数が少なくなる変異体を見つけ、原因遺伝子も絞り込んでいたが、その遺伝子の機能が分からないという。「花芽の形成に異常があるということは、収量に直結します。もしかしたらサイトカイニンと関係があるのではないかと思い、私に声を掛けられたようです。私たちのサイトカイニンの解析技術は、どこにも負けないことを、皆さんご存じですから」
調べてみると、LOG(ログ)と名付けられたその原因遺伝子は、サイトカイニンを活性化する酵素をつくることが分かった。「サイトカイニンの活性化については、ほとんど分かっていませんでした。教科書には2段階で活性化されると書かれていますが、本当かどうかも分からないという状態だったのです」 しかも、LOGは1段階でサイトカイニンを活性化していることが分かった。花の数が減ったのは、LOGに変異が起きた結果、サイトカイニンが活性化されず、花芽の分化に重要な成長点の細胞分裂が十分に進まないためだ。 「2005年の成果では、サイトカイニンの分解酵素に変異があり分解されないと、収量が上がることが示されました。2007年に発表したこの成果では、サイトカイニンの活性化酵素に変異があり活性化されないと、収量が下がることが明らかになりました。二つの成果は、サイトカイニンがイネの収量に非常に重要であることを、分解と活性化の両面から示したものです」 では、サイトカイニンの合成や活性化、分解をコントロールすることは可能なのか。「サイトカイニンは、とても構造が単純な化合物です。しかし、細胞の中では非常に複雑に制御されています。確かに、合成や活性化、分解について、少しずつ分かりつつあります。しかし、サイトカイニンを自在に調整できるまでには、まだ程遠い状況です」。イネだけでなく、シロイヌナズナも使いながら、サイトカイニンの全容を明らかにしていく計画だ。「その成果は、コムギやトウモロコシなど、ほかの作物の収量増大にも貢献できるに違いありません」 |
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コケで重金属汚染を浄化する
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生産制御研究チームでは2008年4月から、新しい共同研究がスタートした。“コケ”を使った研究だ。もともとは文部科学省のリーディングプロジェクト「一般・産業廃棄物・バイオマスの複合処理・再資源化プロジェクト」(2003〜2007年度)の一部として始まった。コケは過酷な環境でも生育する。重金属で汚染された場所で育つコケもある。そういったコケは、重金属を細胞に蓄積することが知られていた。
「私たちの研究チームに、井藤賀操(いとうがみさお)研究員というコケの専門家がいるんです。彼はさじとカプセルをいつも持ち歩き、珍しいコケがあると採取します。あるとき、廃棄物処理場でヒョウタンゴケを採取して調べたところ、鉛だけを選択的に数十%という高濃度で蓄積することが分かりました(図2)。コケを使った環境浄化ができるのではないか、これは面白い、となったのです。銅を選択的に蓄積するホンモンジゴケも知られていますが、コケの重金属の蓄積能力は、まだ詳細に調べられてはいません」 しかし、リーディングプロジェクトは2008年3月で終了。途切れることなく研究を続けたいと新たな共同研究先を探していたところ、興味を持ってくれたのが、鉱山・精錬事業を行うDOWAホールディングス(株)だった。 共同研究のテーマは大きく分けて二つ。一つ目は、重金属を高蓄積する新たなコケを見つけること。「いろいろなところに出掛けてコケを持ち帰り、それが重金属を蓄積する能力があるかどうかを調べているところです」。理研リングサイクロトロンの重イオンビームを照射して変異体をつくり、その中から新たな種類の重金属を蓄積するものを探し出すことも始めている。「レアメタルと呼ばれる貴重な金属を蓄積する能力があるものが見つかれば、需要は高いはずです」。もちろん、コケがなぜ選択的に金属を蓄積するのか、その仕組みにも興味がある。「その仕組みが分かれば、人為的に目的の重金属を蓄積させることも可能になるでしょう」 二つ目が、重金属で汚染された排水の浄化装置の開発だ。3年後の完成を目指す。ヒョウタンゴケの原糸体を容器に入れ、上から汚染された水を流すと、浄化された水が下から出てくる。そんな装置を考えている。 コケは、サイトカイニンの研究とはずいぶん趣が違う。「コケの方は、まだ未知数。でも当たったら大きいですよ」と榊原TLは笑う。「研究テーマは、科学的に見て面白味があることが重要です。そうでなければモチベーションは上がりません。私は、基礎研究の土台の上に応用も見据えた研究ができる環境にいるので、とても恵まれています。食糧危機や環境問題に実際に役立つ、そんな研究をこれからも続けていきたいですね」■ ![]() |
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XFEL──誰も見たことのない
ものを見るために(前編) 熊谷 |
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大型放射光施設SPring-8がある理研播磨研究所で今、 新しい光を生み出す計画が進んでいる。 国家基幹技術として国を挙げて重点的に取り組み、 推進している「X線自由電子レーザー(XFEL)計画」だ(図1)。 現在、さまざまな分野でレーザーが使われているが、 その波長は可視光や紫外線である。 XFEL計画は、紫外線よりも波長の短いX線で レーザーの性質を持つ新しい光を生み出し、 それを用いて誰も見たことのないものを見るためのプロジェクトだ。 2010年度の完成を目指すXFEL計画について、 8月号と9月号の2回に分けて紹介する。 第1回目は、熊谷 全貌(ぜんぼう)について聞いた。 |
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あるがままの姿を見たい
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──X線レーザーとは、どのような光ですか。熊谷:光は波の性質を持っています。波長によって、長い方から電波、赤外線、可視光、紫外線、X線と名付けられています。可視光の波長は700〜400nm(1nm=10-9m=10億分の1m)。X線は0.1nmくらいと、波長が非常に短い光です。0.1nmはちょうど物質をつくる原子の直径に相当するので、X線を使うと、物質の構造を原子レベルで見ることができます。SPring-8では、極めて明るいX線を使って、物質の構造を原子レベルで調べています。 SPring-8が生み出す光もXFELが生み出す光も、ほぼ光速の電子から放射される点では同じ原理に基づいた光です。ただし、SPring-8の出すX線は、波の山と山、谷と谷がそろっていません。一方、XFELが生み出す光は、波の山と山、谷と谷がそろった光、つまりレーザーです。それがXFEL とSPring-8の出すX線の決定的な違いです(図2)。 XFELは、世界最高輝度を誇るSPring-8より10億倍も明るいX線をつくり出すことができます。 ──なぜXFELが必要なのですか。 熊谷:SPring-8では、タンパク質の構造を調べるためにタンパク質を結晶化し、波長がX線領域の放射光を当て、その回折・散乱光を集めて解析します。結晶化とは原子や分子を規則正しく並べることで、回折・散乱光を効率よく得ることができるようになり、原子レベルの構造が分かるのです。しかし、世の中にある物質は、結晶化しないものがほとんどです。結晶化には時間がかかる上、とても難しいのです。 そこで、試料を結晶化するのではなく、試料に当てるX線の方を「結晶化」する。つまり、波の山と山、谷と谷がきれいにそろったX線レーザーを使って、試料を結晶化せずに構造や性質を調べようというのが、XFEL計画の最大の目的です。結晶化していない、物質のあるがままの姿を見ようとしているのです。 新しいサイエンスは、“誰も見たことのないものを見たい、だから新しい装置をつくろう”というチャレンジャー精神からスタートします。サイエンスの進歩は、多くの人ができないと考えていることを、少数の人たちがやってみせることで切り拓かれてきました。できると分かると、たくさんの人たちが参入して切磋琢磨し合い、実験の精度も向上していきます。 ![]() |
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パルス光で反応過程を見る
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──SPring-8の10億倍という明るい光をタンパク質に当てると、試料のタンパク質は蒸発してしまわないのですか。
熊谷:SPring-8では、何回かの計測データ、つまり回折・散乱光を足し合わせて、物質の構造や性質を調べています。XFELが生み出す極めて明るいX線レーザーならば、1回の計測で解析ができます。しかもXFELは100フェムト秒(10兆分の1秒)以下というパルス光を生み出します。光が当たっても、原子は光より速くは動けないので、試料が蒸発するよりも早く計測できるのです。 ──パルス光でほかにどんなものが見えるのですか。 熊谷:これまで電子顕微鏡や放射光などを使って、原子レベルでさまざまな物質の構造や反応が調べられてきました。しかし、速い反応では、反応が起きる前と後の状態しか見ることができませんでした。例えばタンパク質は、鍵と鍵穴のような関係で特定の分子と結合することで、機能を発揮します。しかし、超高速で起きるその反応過程を原子レベルでつぶさに見て、反応メカニズムや構造の変化を知ることは難しかったのです。XFELならそれが可能になります。
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光の波長間隔に電子を並べる
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──XFELは、どのようにレーザーを発振するのですか。
熊谷:まず、光(放射光)が出るまでの過程を説明します。「電子銃」で多くの電子を発生させ、それを「線型加速器」で加速して電子ビームにします。その電子ビームを磁石のN極とS極を交互に周期的に並べた「アンジュレータ」という装置に通すと、電子ビームはアンジュレータ内の磁場によって曲げられて蛇行し、放射光を出します(図3)。 この放射光の波と波、谷と谷はそろっていないので、この段階ではまだレーザーではありません。通常、レーザーにするには、光をミラーで反射し、往復させて電子と相互作用させます。そうすると、初めはばらばらだった電子が次第に光の波長間隔にそろうようになり、個々の電子から出た光が重なってレーザーを発振するのです(図4)。 しかし、この方法が使えるのは紫外線くらいまでです。X線領域では適当なミラーがありません。では、どうするか。例えば、1m間隔のミラーの中で光を100回往復させてレーザーを発振できるのなら、100mにわたって光と電子を相互作用させれば、ミラーを使わずにX線レーザーを発振できるはずだ。それがXFELのアイデアの基本です(図3)。 しかし波長の短いX線レーザーを発振するには、小さく絞られ、きれいに方向のそろった高密度の電子ビームが必要で、高品質の電子銃と高い電子密度を生成するための電子ビーム圧縮技術が求められます。発振する波長が10分の1になると、装置の加工精度を10倍以上に向上させる必要があります。ものづくりにとっても、大きなチャレンジなのです。
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XFELが日本の研究力・技術力を育成する
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──XFELを使った実験には、計測装置の開発も必要ですね。
熊谷:最先端の装置は、どこか一部分の進展が遅れているだけでも、その能力を最大限に引き出すことはできません。計測や解析の技術、超高速コンピュータの開発などを同時に進展させる必要があります。 理研では、1秒間に10ペタ(1016)回の計算を行う世界最速の次世代スーパーコンピュータを、2012年度の完成を目指して神戸に建設しています。将来、播磨と神戸を高速ネットワークで結び、XFELで計測した膨大なデータを次世代スーパーコンピュータで瞬時に解析することを計画しています。 ──XFELを実現し活用するには、さまざまな分野の人材が必要ですね。 熊谷:そうです。誰もやったことのないXFELのようなプロジェクトに多くの若い人が参加して、誰も考えたことのないアイデアで装置を設計したり、新しい発想で実験を行う。そういったことにXFELを使っていくべきだと思います。 XFELのような前例のない、まったく新しいプロジェクトには、答えがまだないんです。答えをつくっていくことに取り組むことは大変ですが、人が育つ絶好のチャンスです。XFEL計画は、人材育成に大きく貢献すると思います。研究者だけでなく、メーカーの技術者を養成することにも役立つはずです。 |
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欧米で進むXFEL計画
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──米国とヨーロッパではどのような計画ですか。
熊谷:ヨーロッパでは、ドイツ電子シンクロトロン研究所(DESY(デイジー))が中心となって「Euro-XFEL(ヨーロッパX線自由電子レーザー)計画」を進めています。Euro-XFELでは、超伝導の技術を使った線型加速器で電子ビームを加速することが特徴です。高エネルギー物理学の世界では、宇宙誕生の謎などを探るため、「国際リニアコライダー(ILC)」という大型線型加速器の将来計画が国際協力で進められつつあります。ILCも見込んだ遠大な構想の一部に、Euro-XFELが位置付けられているのです。Euro-XFELの完成は2013年の予定です。 一方、米国は1960年代に建設されたスタンフォード大学の線型加速器を改造する「LCLS(線型加速器高干渉性光源)計画」を進めています。もしかすると米国が私たちよりも早くX線レーザーを発振するかもしれません。ただし米国は、LCLSでX線レーザーを発振できることを確かめた後、XFEL専用の新しい装置をつくり、さまざまな実験を行うことを考えているのではないでしょうか。 XFEL計画を進める日米欧の三極は、定期的にワークショップを開いて情報交換をしています。しかし肝心の情報が十分に出てきていないことが気になります。それは、サイエンスの進展のためには歓迎できないことですが、XFELは純粋なサイエンスだけでなく、さまざまな産業利用が期待され、知的財産や国益とも関連するので、どこまで情報を公開するかは難しい問題です。 |
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創薬や半導体産業からの大きな期待
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──XFELに対して、産業界の関心も高いそうですね。
熊谷:特に創薬への利用が期待されています。病気の原因となるタンパク質で、結晶化できずに構造が分からないものがたくさんあります。XFELによって、結晶化することなくそれらのタンパク質の構造が分かれば、タンパク質に結合してその働きを抑えたり強めたりする薬をつくることができるのではないでしょうか。 また、物質の化学反応過程を原子レベルで調べることで、優れた材料を開発することに役立つと期待されています。 半導体産業にも大きく貢献するでしょう。半導体集積回路は、波長の短いレーザーを使って回路を描く線幅をどんどん細くすることで、高集積化・高性能化が図られてきました。現在、線幅は数十nmが実現しつつありますが、もっと細い数nmの線幅を描ける波長の短いX線レーザーを安定して発振できる装置は存在しません。 XFELが完成すれば、その技術を応用して、波長数nmのレーザーを安定して発振できるコンパクトな装置をつくることができると思います。日本がいち早くその装置を完成させれば、日本の半導体産業は非常に有利な立場に立つことができるでしょう。 |
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長期的な視点に立った研究を
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──XFELを利用した研究では、どのような体制をお考えですか。
熊谷:できる限り多くの人たちに門戸を広げ、XFELを最大限に利用してもらえる研究体制が求められています。それを現在、検討しているところです。 2006年、私たちは波長49nmのレーザーを発振できる試験加速器を完成させました。そして2007年、その試験加速器を利用した実験を始めました。また、計測器の開発も進めています。しかし実際にXFELが完成して、新しい光を目の当たりにすると、研究者たちの発想が変わると思います。今までとは別な原理で計測装置を設計したり、新しいアイデアの実験が提案されたりすることでしょう。 最近、任期制や研究者の評価の問題もあって、若い人たちは2〜3年の任期中に成果が出そうな研究テーマにしか取り組まない傾向があります。短期間で成果を求める制度があってもよいのですが、XFELのようなサイエンスの最先端を切り拓くプロジェクトでは、より長期的な視点で研究できる環境も築いていきたいと思います。■
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*9月号では、XFELの開発現場の最前線を紹介します。
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人はパーティー会場のようなにぎやかな場所でも、「注意」を向けた特定の人の話を聞き取ることができる。私たちの日常生活を取り巻く膨大な情報は、まず感覚器官でキャッチされ、その後、大脳皮質に送られて低次から高次にわたる領域で階層的に処理される。しかし、脳の処理能力には限界があるため、各情報を平等に処理することはできない。そこで脳は、注意を向けた情報を優先的に処理し、情報処理を効率的に行うと考えられている。これまで注意の影響を受ける最初の場所は、高次の知覚領野(りょうや)と考えられていた。しかし、脳科学総合研究センター 脳機能ダイナミクス研究チームは、注意が最初に影響を与えるのは、第一次視覚野や第一次聴覚野であることを明らかにした。この成果について、アルメニア共和国から来たVahe Poghosyan(ヴァヘ ポゴシャン)研究員に話を聞いた。 |
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──
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目や耳などで受け取った情報は、脳でどのように処理されるのですか。
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ポゴシャン:脳は受け取った情報をすべて均等に処理しているわけではありません。知覚処理の段階で神経活動を変調させて情報の選択を行い、より効率的に情報を処理しています。これまでは、注意を向けると最初に影響を受けるのは、第一次視覚野や第一次聴覚野ではなく、より高次の知覚領野で、その影響が低次領野に広がると考えられていました。
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──
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私たちが実感する注意の効果を教えてください。
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ポゴシャン:がやがやとにぎやかなパーティー会場で、特定の人の話に注意を向けるとその話を聞き取れるというカクテルパーティー効果がよい例です。注意で神経活動が増強するためと考えられています。
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──
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注意の効果を測定する装置を開発したそうですね。
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ポゴシャン:これまでは脳波計測(EEG)や機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を使っていましたが、それぞれの測定法には空間精度と時間精度に限界があり、注意に対する脳活動の反応時間と反応場所を同時に知ることができませんでした。そこで、私たちは時間精度がミリ秒レベルと優れている脳磁図(MEG)と、解析手法がより確かなMFT(Magnetic Field Tomography)を組み合わせて、高い時間分解能と空間分解能を兼ね備えた新しい手法を開発しました。
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──
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どんな測定をするのですか。
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ポゴシャン:大脳皮質での視覚と聴覚応答を測定しました。被験者に標的刺激、視覚の場合はチェッカーボードと顔の画像、聴覚の場合は低周波と高周波のトーンが、左右どちらかに出ることをあらかじめ画面で知らせます。例えば「左から画像(または音)を出します」と画面で知らせて注意を促し、左視野(あるいは左耳)に刺激を与えた場合はボタンを押す、右側に刺激を与えた場合は無視するという実験です。そのときの脳活動を計測しました。
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──
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結果はどうでしたか。
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ポゴシャン:劇的な結果が出ました。刺激を提示してから視覚は55〜70ミリ秒、聴覚は35〜45ミリ秒で第一次視覚野、第一次聴覚野の反応が始まります。注意の喚起によって、喚起しないときよりも反応が10〜20%増幅したのです(図)。さらに増幅の反応が第一次視覚野から第二次、第三次、ほかの高次野へと順番に広がっていくことを明らかにしました。これまで考えられていた高次から低次へという順序が逆で、注意の神経機構モデルの再検討が必要になりました。高次機能障害が見られる認知症や統合失調症といった神経疾患などの新たな治療法の開発にも、やがてつながるかもしれません。■
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● 本研究成果は、米国の科学雑誌『Neuron』(6月12日号)に掲載されたほか、化学工業日報(6/12)、日経産業新聞(6/13)などに掲載された。
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韓国に初の研究拠点を開設─アジア諸国との連携強化を目指す─
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理研基幹研究所は7月1日、韓国ソウル市の漢陽(ハンヤン)大学 フュージョン・テクノロジー・センター(Fusion Technology Center:FTC)の5階に、国際連携研究グループ揺律(ようりつ)機能アジア連携研究チーム(原正彦チームリーダー)の研究室を設置しました。同日、漢陽大学でFTC開所式が開催され、理研をはじめ多くの関係者が出席しました。理研が韓国に研究拠点を置くのは、初めてのことです。原チームリーダーらは、漢陽大学の李海元(イヘウォン)教授らとナノテクノロジーと有機材料研究の分野で、1989年ごろから共同研究を行ってきました。今年4月には理研と同大学は協力協定を締結。本格的な研究協力を推進するとともに、人材交流や情報交換を行い、世界で活躍するアジア出身の次世代研究者の育成を開始しました。この協定に基づいて設置された研究分室では、ナノテクノロジーの限界を見極め、次に来るべき「ポストナノテクノロジー」の提案と確立を目指します。具体的には、今までエレクトロニクスデバイス開発にとってネガティブな要素であった分子や原子の挙動の「揺らぎ」や「不安定性」を、積極的に活用した機能材料の開発や新規情報処理方法などを議論する「揺律による創発」に関する研究協力を展開します。 また、それを核に中国、インド、シンガポールなどのアジア諸国へ、連携の和を広げていく予定です。 |
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名古屋支所、「一般公開」を開催します!
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理研名古屋支所では、下記の日程で一般公開を開催します。最先端の科学研究に親しんでいただくため、研究室・施設の公開をはじめ各種のイベントを行います。 多くの方のご来場をお待ちしています。
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新研究室主宰者の紹介
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新しく就任した研究室主宰者を紹介します。 1:生年月日、2:出生地、3:最終学歴、4:主な職歴、5:研究テーマ、6:信条、7:趣味 |
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基幹研究所 望月理論生物学研究室 主任研究員 望月敦史(もちづき あつし) |
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1:
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1969年6月3日
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2:
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静岡県
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3:
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九州大学大学院理学研究科博士後期課程中退
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4:
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九州大学大学院理学研究院、自然科学研究機構 基礎生物学研究所
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5:
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分子、細胞、発生レベルの生命現象に対する数理的研究
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6:
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独創的かつ生産的でありたい
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7:
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神社仏閣巡り
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極限宇宙研究推進グループ 国際連携研究チーム チームヘッド 高橋義幸(たかはし よしゆき) |
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1:
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1947年9月13日
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2:
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福岡県
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3:
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大阪大学大学院基礎工学研究科博士課程
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4:
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ルイジアナ州立大学、NASA(米国航空宇宙局)マーシャル・スペース・フライト・センター、アラバマ州立大学ハンツビル校
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5:
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超高エネルギー宇宙線、宇宙物理学、プラズマ加速、重イオン核相互作用
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6:
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単純、素朴、明確、縦横融通無碍
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7:
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音楽、音響機器製作
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免疫・アレルギー科学総合研究センター 免疫細胞動態研究ユニット ユニットリーダー 岡田峰陽(おかだ たかはる) |
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1:
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1971年3月14日
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2:
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大阪府
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3:
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総合研究大学院大学生命科学研究科博士課程
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4:
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カリフォルニア大学サンフランシスコ校、京都大学工学研究科
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5:
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生体組織イメージングによる免疫応答とがん転移メカニズムの解析
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6:
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簡潔な実験の組み立てを心掛ける
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7:
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トレッキング、ゴルフ
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生命分子システム基盤研究領域 制御分子設計研究チーム チームリーダー 本間光貴(ほんま てるき) |
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1:
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1969年2月13日
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2:
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北海道
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3:
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北海道大学大学院理学研究科修士課程(論文博士)
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4:
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万有製薬つくば研究所、ファイザー中央研究所
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5:
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タンパク質構造に基づく薬物設計、薬物動態・毒性予測
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6:
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everything is possible
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7:
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旅行
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役員の報酬等および職員の給与の水準を公表
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当研究所は、役員の報酬等および職員の給与の水準をホームページ上で公表しました。詳細は下記URLをご参照ください。 http://www.riken.jp/r-world/disclosure/info/pdf/kyuyosuijyun19.pdf |
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現代物理学の父、仁科芳雄博士 今、ふるさとに生きる 佐藤泰徳 SATOH Yasunori |
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12月6日は、戦前・戦後を通して理化学研究所(以下、理研)を支え、日本の現代物理学の父と呼ばれる仁科芳雄博士(1890〜1951)の生誕日に当たります。毎年この日に、博士の生誕地、里庄町で地元中学生を対象とした「仁科芳雄博士生誕日記念科学講演会」が開催されます。昨年は、理研の野依良治理事長夫妻に来町いただき、「あこがれと感動、そして志」と題した講演の後、博士が心のよりどころとされた生家を訪問いただきました。子どもたちには感動の時を、そして私どもには至福の時を頂きました。 博士の生家は、江戸期のたたずまいを今に伝える庄屋住宅で、里庄町浜中にあります。代々庄屋を務めていた仁科家は、幕末に摂津麻田藩の代官を命じられ、就任に当たって代官屋敷を設けました。庄屋時代の建物は元屋敷と呼ばれ、今もその名で親しまれています。 博士は1890年に仁科家の第八子四男として生まれ、9人兄弟の大家族の中で、多感な少年時代を過ごしました。野山を駆け巡りメジロを追う元気な少年で、習字や音楽、図工に至るまで学業成績が抜きんでていて、神童として近隣に知れ渡っていたと伝えられています。地元では、博士や仁科家との交流の思い出が伝えられ、今も親しまれ尊敬を集めています。 町づくりの大きな柱として、人づくり、特に次代を担う人材の育成を掲げる里庄町では、博士がその母の思い出とともに大事にされていた生家の解体・修復を行い、博士の生誕百周年に当たる1990年には科学振興仁科財団を設立し、事業拠点として「仁科会館」を建設。青少年が集い科学する心を培う場として活用しています。
以上のように、次世代を担う青少年の育成に力点を置いて事業を展開しています。幸いなことに、国内各地から時に海外から、小学生から高齢者まで、観光客から物理学を志す若者や研究者に至る幅広い方々に来訪いただいています。今後とも、博士ゆかりの関係機関のご支援や来訪者の皆さまからのご示唆などを頂きながら、諸事業に新たな輝きを加えていく存在でありたいと思っています。 ■ |
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