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研究最前線
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夜空に星をつくった研究者 |
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原酒
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大きな植物をつくる
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植物の体づくりの戦略
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「暗い所で植物の種子を育てると、茎が長い、いわゆるモヤシになりますよね(図1)。明るい所で育てると茎は短い。この差は何だと思いますか」松井 南チームリーダーは、こんな話題から始めた。「普通に考えると、細胞の数が多くなっていると答えるでしょう。でも、茎に縦に並んだ細胞の数は同じ。植物は体をつくるために、私たち動物が考えもしない戦略をとっているのです」
その戦略の一つが、松井チームリーダーが 注目しているエンドリデュプリケーション(endoreduplication)だ。「endoは“中で”、reは“繰り返し”、duplicationは“複製”。1個の細胞の中で、細胞分裂を伴わずに繰り返し起きるDNA複製のことです」 細胞は普通、複製準備を経てDNAが複製され、分裂準備、そして分裂へと進む。この一連のサイクルを細胞周期という(図2左)。「私たちヒトの体細胞の核には、父由来のDNAと母由来のDNAが1セットずつ、合計2セット入っています。核の中のDNA量は、複製によって倍の4セットになりますが、分裂すると2セットずつに戻ります。ヒトの体細胞は、ほとんどが2セットのDNAからなる2倍体です。ところが、植物の場合は2倍体だけでなく、4倍体、8倍体、16倍体など、いろいろな倍数のDNAを持つ細胞が混ざっているのです。その原因が、エンドリデュプリケーション。DNAが複製された後に細胞が分裂しないので、DNA量が倍化していきます(図2右)」 明所と暗所で育てた植物の胚軸(子葉から根までの部分)をつくる細胞のDNA量を調べると、図1のグラフのようになった。CはDNA量の単位で、2倍体の場合は2Cとなる。暗所のものは、明所のものより16倍体の細胞の数が増え、32倍体も出現している。「暗所では、エンドリデュプリケーションが促進されて、DNA量が増えたのです。DNA量が増えると、多くの場合、細胞も大きくなります。暗所で育てた植物の茎が長いのは、細胞の数は同じでも、1個1個の細胞が大きいからなのです」 暗所で育った胚軸でエンドリデュプリケーションが起きる理由を、松井チームリーダーはこう説明する。「植物は、光が当たる所まで早く生長したい。でも、細胞が分裂して数が増えるには時間がかかります。DNA量をどんどん倍化して、細胞を大きくした方が早いのです。根から伸びる細い根毛の細胞も、多くがエンドリデュプリケーションを起こしています。やはり、早く根を伸ばして水や栄養を吸収したいのでしょう。植物はエンドリデュプリケーションを利用して体づくりをしているのです」 エンドリデュプリケーションという現象は、以前から知られていた。しかし、どのようなメカニズムで起きるかは、分かっていなかった。そうした中、エンドリデュプリケーションを制御している遺伝子を発見し、そのメカニズムの一端を明らかにする成果を挙げたのが、植物ゲノム機能研究チームである。
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大きなトマトも実現か
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植物ゲノム機能研究チームが研究に使うのは、シロイヌナズナというアブラナ科の植物だ。高さが20cmほどなので室内で栽培が可能、1世代が2ヶ月と短い、高等植物の中で最もゲノムが小さい、そして2000年に全ゲノム配列が解読されたことなどから、広く研究に使われている。
松井チームリーダーらは、正常な野生株と比べてDNA量が増加しているシロイヌナズナの変異株を詳しく調べた結果、変異株ではILP1と名付けた遺伝子が過剰に発現していることを突き止めた。ILP1タンパク質は核の中に存在し、遺伝子の発現を抑える働きがある。さらに調べていくと、変異株ではサイクリンA2遺伝子の発現が減少していることが分かった。「サイクリンは細胞周期を制御しているタンパク質で、何種類かあります。サイクリンA2は、DNAが複製された後に細胞分裂を促進する働きを持ち、エンドリデュプリケーションに対してはブレーキとして働きます。過剰発現したILP1タンパク質がサイクリンA2遺伝子の発現を抑制し、その結果、“エンドサイクル”と呼ばれるエンドリデュプリケーションの細胞周期が促進されます」 図3は、野生株と、ILP1遺伝子を過剰に発現させた変異株の子葉を比較したもの。変異株の子葉の面積は、野生株と比べて30%ほど広くなっている。DNA量を見ると、変異株は16倍体の細胞数が増え、32倍体も現れていることから、ILP1遺伝子の過剰発現によってエンドリデュプリケーションが促進され、その結果、細胞が大きくなったことが分かる。 この成果は、私たちの生活にも恩恵をもたらしてくれるかもしれない。「共同研究をしている岡山県生物科学総合研究所では、トマトの研究を行っています。トマトの果実の細胞では、エンドリデュプリケーションが盛んに起きていることが知られています。ILP1などの遺伝子を過剰発現させ、エンドリデュプリケーションを促進できれば、大きなトマトをつくることも可能になるでしょう」 松井チームリーダーは、エンドリデュプリケーションの制御にさらなる期待を寄せている。「植物がつくり出すさまざまな物質の中には、私たちにとって有用なものがたくさんあります。例えば、アントシアニンやフラボノイドは、健康に良いといわれています。エンドリデュプリケーションによってDNA量が倍化すると、物質生産にかかわる遺伝子も倍になります。つまり、物質を生産する能力が倍になるということです。サトウキビでエンドリデュプリケーションを促進させ、糖の生産量を上げ、アルコールを効率よくつくることもできるようになるでしょう」。植物由来のアルコールなどはバイオ燃料と呼ばれ、石油の代替として今、大きな注目を集めている。「細胞を大きくすることは、さまざまな応用に結び付くのです」 ![]() |
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機能付加で応用を目指す
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「植物の研究は、基礎と応用がとても近くにあります」と松井チームリーダーは言う。「応用面では、生産性を上げる、作物を大きくする、生育を早くする、乾燥に強くするなど、機能を付加した作物をつくることが求められます」。そこで植物ゲノム機能研究チームでは、二つの方法で機能を付加した変異体を作製し、有用な遺伝子を見つけ応用につなげようとしている。
一つがアクティベーションタギング法で、遺伝子の発現を促進するエンハンサーという塩基配列をゲノム中に導入する。この手法でつくった変異株は7万種類を超え、データベースとして公開している(http://amber.gsc.riken.jp/act/top.php)(表紙)。 「花、種子、葉などのカテゴリーに分けて写真とともに掲載しているので、興味のある変異株を見つけ、その形質に関係している遺伝子に容易にたどり着くことができます。これは、今までのデータベースにはなかった機能です」 エンドリデュプリケーションのメカニズム解明につながったDNA量の多い変異株も、このアクティベーションタギング法でつくられたものだ。「データベースをつくっても、それだけでは駄目。それが研究に役立ち、価値ある成果を生み出すものだと認知されなければ、使ってもらえません。エンドリデュプリケーションの研究は、データベースの有用性を自分たちで証明するために行ったのです。よい宣伝になったと思います」 また、現在のデータベースは目に見える変異株が中心だが、今後は、今回のDNA量など目に見えない変異も増やしていく計画だ。しかし、アクティベーションタギング法には、一つ問題がある。過剰発現する遺伝子は、導入されたエンハンサーのすぐ近くにある場合もあるし、離れた所にある場合もある。そのため、遺伝子と形質を1対1で対応させることが難しいのだ。 そこで、松井チームリーダーらが新しく開発したもう一つの手法が、FOXハンティング(Full-length cDNA Over-Expressor Gene Hunting System)だ。「FOXハンティングは、完全長cDNAを導入することで機能を付加する手法です。完全長cDNAの収集は理研オリジナルの技術ですから、これができるのは世界中で私たちだけです」 DNAがRNAに転写され、余分な部分が切り取られてmRNAになり、その情報をもとにタンパク質がつくられる。mRNAをそっくり逆転写したものが完全長cDNAで、遺伝情報そのものだ。調べたい遺伝子の完全長cDNAを導入すれば、確実にその遺伝子の機能を調べることができる。「完全長cDNAを使う最大の利点は、違う生物種のものでも、導入することができること」だと言う。 「例えば、イネは4万個以上の遺伝子があります。収穫量の多いイネをつくりたいと思っても、どの遺伝子が有用かを探すのは大変です。しかもイネの場合、穂が実って結果が分かるまでに半年かかる。シロイヌナズナならば1世代2ヶ月なので、たくさんの遺伝子をテストすることができます。そして、有用であることが明らかになった遺伝子を実際にイネに導入すれば、効率的です。現在、農業生物資源研究所、岡山県生物科学総合研究所と共同研究を進めています。樹木は1世代数十年ですから、シロイヌナズナを使う効果はもっと大きいでしょう」 子供のころから植物が大好きだったという松井チームリーダー。これから研究はどう展開していくのだろうか。「最近では、さまざまな生物のゲノムが次々と解読されています。基礎研究では生物の共通項を追い求めます。でも私は、共通ではない部分、植物にしかない部分を見ていきたい。エンドリデュプリケーションによる体づくりは、まさにそれです」 「植物の体づくりの戦略は面白いですね」。松井チームリーダーの表情が輝く。「私たち動物には、とうてい思い付かないことがたくさんあります。植物は、環境に合わせてその細胞周期の仕組みさえ変化させながら順応していくのです。生物学者としては、植物の体づくりの戦略を知りたいですね」■
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器官づくりの“品質管理”システム
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細胞の視点から発生のルールを探る
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「物理や化学が好きで、大学の理学部に入ったのですが、講義は期待していたほど面白くなくて……(笑)。1970年代、ちょうど分子生物学が発展し始めたころで、生物学が面白いと思うようになりました」。学生時代をこう振り返る林グループディレクター。生物学の何が面白いと思ったのか。
「分類学や形態学など従来の生物学は、まず生物全体の形を見て、さらに細かく見ていくという、上から下を見下ろしていく見方でした。一方、分子生物学は、分子の働きの理解を通じて細胞の視点から組織や器官、体全体へと、下から上を見上げていく見方です。その発想が面白いと思ったんです」 大学院に進み、生物学の研究を始めた林グループディレクターが「最も影響を受けた科学史上の出来事、私の研究の原点です」と語るのが、1984年のホメオボックスの発見だ。ショウジョウバエの突然変異の研究により、体全体の形態を決める遺伝子の構造(ホメオボックス)が解明され、その構造がショウジョウバエからヒトまで共通性が高いことが分かったのだ。「それまでは、ショウジョウバエの発生学、マウスの発生学、ニワトリの発生学と、生物種ごとに発生の研究がなされ、その間の交流はほとんどありませんでした。それがホメオボックスの発見により、ショウジョウバエで見つかった発生のルールが、マウスやヒトにも適用できること、生物に共通する発生のルールがあることが分かったんです。私は大学院でニワトリの眼の発生を研究していたのですが、発生全体にかかわる本質的なルールを探りたいと思い、ショウジョウバエの研究を始めました」 |
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厳密なルールと柔軟なシステム
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ショウジョウバエで発生の研究を続けてきた林グループディレクターは2000年、形態形成シグナル研究グループを立ち上げた。そこで発生のルールを探るための実験系の一つとして用いているのが、体の中に空気を送り込む気管の形成だ。発生初期のショウジョウバエの胚は体節に分かれ、それぞれの体節に気管のもとになる“気管原基”という細胞集団ができる。この気管原基が6方向に枝を伸ばし、気管が形成されていく(図1)。
「なぜ6方向に枝分かれするのか、その仕組みはかなり分かっています。枝が伸びていく6ヶ所の目的地にFGF(繊維芽細胞増殖因子)というタンパク質があり、そこへ引き付けられるように枝が伸びていくんです。これが気管形成の根幹となるルールです」 FGFに向かって気管原基が6方向に枝を伸ばす。これは間違いが許されない“厳密なルール”だ。もし5方向や7方向に枝分かれしたりすると、気管の形成はうまくいかない。 一方、発生の過程には、ある程度の間違いやバラツキが許されているところもある。例えば、気管原基のある枝を形づくる細胞を分化させるシグナルが与えられても、体節ごとに6個だったり9個だったりと、バラツキが出る。 「枝が伸びる長さは決まっているので、細胞の数が少ない場合には、一つ一つの細胞が細長く伸びて対応します。細胞同士が融通を利かせて、細胞の数のバラツキを補正する柔軟なシステムがあるのです。厳密なルールと柔軟なシステム。その両方がそろって初めて、全体としてきちんとした組織や器官ができます。これまでの研究で、体全体の基本的な形態を決める厳密なルールは、かなり解明が進みました。しかし柔軟なシステムの仕組みは、まだよく分かっていません。私たちは、その仕組みを解明したいのです」
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間違いを修正する仕組み
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柔軟なシステムには、発生の過程でしばしば起きる細胞レベルの間違いを修正する仕組みも備わっている。図2では、気管原基の枝の先端にある一つの細胞が紫色に着色されている。この細胞は下の方向へ突起を伸ばしていく。緑色に着色された部分は細胞内部にできた管であり、将来、この管の中を空気が通る。管は突起の先端へ伸びていく必要があるが、管がUターンしてしまうことがある。ところが30分ほどの間に、Uターンしていた管が真っすぐに修正され、正しい方向、突起の先端へと伸び始める(図2上)。
この管は、細胞の形を支える骨組みの材料であるアクチン線維の束からなる。アクチン線維が正しく集合することで、管が突起の先端へと正しく伸びていく。「しかし、アクチン線維が間違った場所に集まって、管がU字形になったりすることが多いのです。そんなときには、アクチン線維の集合をいったん壊して、真っすぐな形につくり直すのだと考えられます」 林グループディレクターたちは、このような間違いを修正する仕組みが働かない突然変異を発見した。 IKKε(アイケイケイイプシロン)というタンパク質(リン酸化酵素)の遺伝子に突然変異が起きたショウジョウバエでは、管が真っすぐに修正されず、Uターンしたままになってしまうのだ(図2下)。IKKεはアクチンの集合体を壊す働きがある。IKKεの突然変異では、間違って集合したアクチン線維を壊すことができないため、間違いを修正できないのだと考えられる。 IKKεの働きを抑えると、気管以外の場所でも間違いが修正されない現象が起きる。図3は、ショウジョウバエの成虫の触角である。右が正常な触角だが、IKKεの働きを抑えると、左のように触角の形が変わってしまう。 「IKKεは、さまざまな組織や器官が正しくつくられるように“品質管理”を行うシステムで働く、重要なタンパク質だと考えられます」
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品質管理の仕組みに迫る
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「IKKεについては、さらに面白い発見がありました。東京大学の三浦正幸教授たちのグループが、アポトーシス(プログラム細胞死)による細胞死を促進させる分子として、IKKεに行き当たったのです」。アポトーシスは、発生で重要な役割を果たしていることが知られている。発生の過程では、少し多めの細胞で組織をつくった後、余分な細胞をアポトーシスで細胞死させて排除する。発生の途中で分化に失敗したり、不適切な場所に移動してしまった細胞も、アポトーシスで排除される。
IKKεがかかわる品質管理とアポトーシスには、何らかの関係があるのだろうか。 「まだよく分かっていません。無関係だという可能性もありますが、アポトーシスを品質管理の一つの選択肢と考えることもできます。細胞の形にエラーが発生した場合、間違って集合したアクチン線維を壊して修正します。しかし、修正し切れない場合には、アポトーシスで細胞死させて除去するという仕組みです。細胞の形を修正するか、アポトーシスで細胞死させるか、その分かれ道の手前でIKKεが働いているのかもしれません」 細胞が正しい形なのかどうか、間違っている場合に修正するのか細胞死させるのか、それをどのような情報に基づいて判断し、品質管理を行っているのだろう。 「それをこれから解明したいと考えています。謎を解く手掛かりはあります。IKKεもある分子によって制御されています。どういう状況でIKKεが活性化されるのか、それを調べることでこの品質管理の仕組みが分かると期待して、研究を続けています」 |
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柔軟なシステムが個性と進化をもたらす
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「細胞の個性をある程度許容した上で、補正したり修正したりする。生物の発生は、そういう考え方でつくられた柔軟なシステムです。発生の過程では、外部の温度が変化したり物理的な衝撃が加わったりします。そのような外部からのノイズに対応するには、柔軟なシステムの方が優れているのです」
柔軟なシステムは生物の多様性を生み出す、と林グループディレクターは指摘する。「親子でも少しずつ顔形や性格が違います。発生が柔軟なシステムだからこそ、そのような個性が生まれる余地があるのです。また、柔軟なシステムは進化をもたらします。新しい形態の種が生まれるとき、発生の過程で形のつくり方が変わるわけです。その変更を許容する柔軟なシステムだからこそ、新しい種が生まれ得るともいえます」 |
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美しさを支える美しいルール
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発生のルールを探る研究は、損傷した組織や器官を修復する再生医療への応用が期待されている。「再生では、発生のときに使われた分子が再利用されます。再生は発生現象の一部なんです。ショウジョウバエの気管形成は、脊椎動物の血管や肺の形成と似ています。私たちがショウジョウバエの気管形成で見いだした発生のルールは、将来、血管や肺の再生医療にも役立つはずです」
そもそも、林グループディレクターは、なぜ気管形成を研究対象に選んだのか。「美しいからです。それが最大のモチベーションです。美しいものには、それを支える美しいルールがあるはず。そう直感したんです」 その美しさへの感受性が、強い好奇心や直感的なひらめきの源泉となり、発生のルールを解き明かしていくことだろう。■
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――ネコの尿はほかの動物と比べてどう違うのですか。
宮崎:ヒトをはじめ哺乳(ほにゅう)動物は、腎臓で血液をろ過して老廃物を尿に排出させます。この過程で血液中のタンパク質も腎臓でろ過されますが、腎臓で再吸収されるため、健康な動物の尿にタンパク質はほとんど含まれません。ところがネコの場合、健康でも尿に大量のタンパク質を排出します。この現象を解明するために研究した結果、新規タンパク質を見つけました。 |
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――発見したタンパク質について教えてください。
宮崎:発見したのは2003年です。解毒酵素の一種「carboxylesterase(カルボキシルエステラーゼ)」に構造が似ていたので「コーキシン(Cauxin)※」と名付けました(図左)。当時、私は獣医師として働いていましたが、現場での“好奇心”がきっかけで研究者になったので、それも命名に関係しています。 |
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――その後、どう研究を進めたのですか。
宮崎:コーキシンは腎臓で合成された後、直ちに尿に排出されることから、尿の中で何らかの機能を果たしていると推測しました。しかし、ネコ以外の動物でコーキシンの生理機能を調べることができず、研究は難航しました。そこで、この研究を中断して「コーキシンをモデル分子にした腎臓特異的な発現機構の研究」を提案したところ、理研の基礎科学特別研究員に採用されました。そして、同様の機構を研究していた鈴木明身グループディレクター(FRS・生体超分子システム研究グループ)のもとで新たなテーマに取り組み始めました。その後、論文で「フェリニン(felinine)」というアミノ酸がネコの尿に存在していることを知りました。それをきっかけに、フェリニンとコーキシンには、ネコの尿にだけ存在するという共通点があったので、両者の関係を調べるためフェリニン前駆体の3-メチルブタノールシステイニルグリシン(3-MBCG)にコーキシンを反応させてみたところ、3-MBCGが分解されフェリニンが生産されることが分かりました。 |
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――仔ネコの尿はにおいませんが。
宮崎:仔ネコの尿に含まれるコーキシン、フェリニン、3-MBCG量の変化を経時的に解析しました(図右)。その結果、生後3ヶ月未満の仔ネコの尿ではコーキシンが含まれず、3-MBCGがあってもフェリニンが検出されませんでした。3ヶ月以降にコーキシンとフェリニンが同時期に現れ、時間とともに両方とも増加していくことが明らかになりました。これらの結果から、コーキシンが尿の中で触媒として働き、3-MBCGを分解してフェリニンができることが分かったのです。また、ネコの尿からフェリニン由来のにおい物質も検出することができました。 |
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――コーキシンはネコの尿臭問題を解決できますか。
宮崎:尿中タンパク質が、においの原因となる物質の生産にかかわることを解き明かしたのは世界で初めての成果だと思います。コーキシンの阻害剤ができれば、尿臭問題を解決する有力な手段となるかもしれません。■ |
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●本成果は米国の科学雑誌『Chemistry & Biology』(10月号)に掲載され、読売新聞(10/21)などに取り上げられた。 |
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夜空に星をつくった研究者
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まず、小学校時代のことを聞くと、「理科の授業が面白いと思ったことは一度もない」と意外な答えが返ってきた。徳島県の吉野川流域で生まれ育ち、外で遊ぶことが多かった斎藤研究員。「子供のころは、遊ぶのに夢中で、将来の目標なんてありませんでした(笑)。それでも、4〜5歳のころにテレビで見たアニメ“ゲッターロボ”の登場人物、早乙女博士にはあこがれました。“理科らしき”ものとの最初の出会いだったと思います。それを見て、ロケットをつくろうと思いました」。中学時代は野球部に所属し、高校でようやく物理学に出会った。大学進学を決めた理由をこう語る。「大学で修めたい学問は何か、それが数学か物理学でした。でも将来性を考えると、数学科に入るのは無謀かなと。東京に出たいということだけは、はっきりしていましたね。ものすごく安易な考え方なんですが……(笑)」
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1991年、東京理科大学理学部に入学。「初めは理論物理学をやろうと思っていました」。ところが、帰省するたびに親に「“物理で将来何をやるんだ”、“それで食べていけるのか”と繰り返され……、それで理論物理は仕事がないかもしれないからまずいと思い、実験物理をやろうと決めました(笑)」。そして、大学4年の研究室配属で転機が訪れた。「長坂啓吾先生の研究室に入り、いろいろお世話になりました。長坂研には学生を理研に預ける経路があって、理研に来るようになったんです。理研でレーザーをやっていることは知っていたので、光を使って物性物理を、と思っていました」
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2000年に博士課程を修了し、理研での本格的な研究生活が始まった。ガイド星レーザー開発のきっかけは、2001年に開かれた理研と国立天文台の交流会。「国立天文台の早野裕(ゆたか)さんを紹介され、“ガイド星レーザーをつくりたい”という話を聞きました。そのときは“できるかもしれませんね”と答えて話は終わったのですが、2年後、“実際にやりたい!”と早野さんからあらためて申し出があり、本格的にスタートしました。理研のメインワークは基礎研究ですから、最終的に安定したレーザーをつくることのできる協力者が必要だと思い、理研ベンチャー、(株)メガオプトの赤川和幸さんに参加していただくことになりました。私を含め、この3人が中心になって、ああでもない、こうでもないとディスカッションをしながら開発を進めました」。斎藤研究員は今回の成果をこう表現した。「すばる望遠鏡は一段と視力を上げましたね」。
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趣味が“考え事”と話す斎藤研究員は最後に「今後もさまざまな固体材料を使って、観測、計測や現象の究明に必要な光源を実現するための原理的な研究を進めたいですね。そのための研究対象は“自分の足でも探す”ことにしています。ほかの分野のいろいろな人の話を聞いて、参考にしています。物理を基礎に世の中の役に立つ重要な研究をしたいです」と今後の展望を聞かせてくれた。斎藤研究員がつくり出す新しい光源、そこから何が見えるのか……。10年後、また話を聞いてみたくなった。■
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「理研文化の日」でドナルド・キーン コロンビア大学名誉教授が特別講演
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理研は野依良治理事長が提唱する「野依イニシアチブ」の五つの基本方針のもとで、運営を進めています。その中の「文化に貢献する理研」に関連した行事として、自らが文化的な環境の中で研究を進めることができるように、毎年、「理研文化の日」を定めています。3回目となる今回は、12月13日、日本文学研究者であると同時に日本文化の欧米への紹介者として数多くの優れた業績を収められたドナルド・キーン コロンビア大学名誉教授をお招きし、「渡辺崋山 ― 画家と新しい思想の犠牲者」について講演していただきました。講演の中でキーン氏は「広い視野と深い見識を持ち、自らの信念に忠実に、自由自在に創造性を発揮した崋山の生涯から、私たちが学ぶことは決して少なくない」ことを示されました。 |
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【渡辺崋山】 寛政5年(1793年)〜天保12年(1841年)。三河国田原藩士、後に家老。儒学、蘭学、兵学を修め、画家としても「鷹見泉山像」などの独自の作品を残す。「蛮社の獄」に連座し、洋学者を弾圧する勢力によって、自刃に追い込まれた。
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「第1回理研男女共同参画シンポジウム」を開催
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理研は、2006年6月、男女共同参画の積極的な展開を図るため、男女共同参画推進委員会を設け、「個別支援コーディネート(試行)」の実施や、『男女共同参画だより』の定期発行などに取り組んでいます。昨年12月14日には、和光キャンパスで「第1回理研男女共同参画シンポジウム」を開催し、男女共同参画への取り組みや今後の方針説明のほか、男女共同参画推進委員14名がそれぞれの体験談などを披露しました。また、『理研子育て応援ハンドブック』の紹介と、「第1回理研男女共同参画推進大賞」募集のお知らせがありました。 |
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クリスマスレクチャー「プラネタリウム作りに挑戦しよう」を開催
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2006年12月25日、和光キャンパスで毎年恒例となった「和光市子供クリスマスレクチャー」が開催されました。今回は市内の小学生35名が参加し、小貫良行 協力研究員(延與(えんよ)放射線研究室)が開発したキットを使って、プラネタリウム作りに挑戦しました。その後、伊吹山秋彦 基礎科学特別研究員(戎崎計算宇宙物理研究室)が「宇宙の旅」をテーマに、コンピュータシミュレーションによる立体映像を通して星の誕生と成長などを紹介。今回も盛況のうちに幕を閉じました。 |
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量子ビームテクノロジーに関する研究協力協定を締結
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物質・材料研究機構、理化学研究所および日本原子力研究開発機構の3機関は、量子ビームで世界最高レベルを誇る施設と研究力を結束させ、国際競争力のあるイノベーションを生み出すため、量子ビームを利用した研究協力に合意し、「量子ビームテクノロジーの先導的研究開発に関する研究協力協定」を2006年12月20日に締結しました。具体的には「燃料電池システム用のキーマテリアルの開発」と「次世代機能材料開発に向けた量子複雑現象」の2テーマが検討されています。3機関には、量子ビームに関する中性子発生装置、大型放射光施設、イオン照射施設など、世界に冠たる施設があり、物材機構は「物質・材料創製研究」、理研は「先端生命科学・物質科学研究」、原子力機構は「量子ビーム応用研究」で、それぞれ世界をリードする成果を生み出しています。今回の協定により、これらの量子ビーム施設の相互利用と人材交流、および成果の社会への還元がいっそう促進されるものと期待されます。 |
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「nano tech 2007 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」出展のお知らせ
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2月21日(水)〜23日(金)に開催される「nano tech 2007 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」に出展します。理研で現在進行中の最先端のナノサイエンスに関する研究成果を展示し、ブースでは研究者が解説を行います。 理研の出展内容は下記URLでご覧いただけます。 http://www.riken.jp/r-world/event/2007/nanotech/index2.html 皆さまのご来場をお待ちしております。
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新研究ユニットリーダーの紹介
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フロンティア20年に想うこと
――私事ですが―― |
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入所してすぐに「来年から“国際フロンティア研究”というプログラムが始まるから、原君はそっちに行ってもらう」と言われました。まだ、小さなアパートの台所で博士論文を書いている最中でした。チームリーダーは外国人、スタッフはポスドク中心で1/3は外国人を目指す。そこから理研の国際化への模索が始まりました。 その後、米国の大学の話がありました。ある先生から「それは君のためにならない、フロンティアのためにもならない」と言われ、悩みました。私の所属していた分子素子研究チーム(1986年10月〜1991年9月)も終了近くになり、研究室改編も重なり、いくつかの大学のポジションを考えました。学会から帰国した成田空港で自宅に電話し、「大学から封書が来ている」と言われ、読んでもらい、最後の最後で不採用になったことを知りました。空港の電話ブースで、足元から本当にサーと血の気が引くという経験を初めてしました。次の日、推薦書を書いていただいた先生に伝え、「それはよかった、君のためにもフロンティアのためにも」と言われました。私はその言葉の意味が分かるまで何年もかかりました。そして、理研で研究を続けたことが私にとって大きなプラスになったことを実感しています。 理研の主任研究員に外国人を入れるかどうかが議論されていた時期、エキゾチックナノ材料研究チーム(1991年10月〜1999年9月)がスタートしました。チームでは私だけが理研の職員で、ほかのメンバーはポスドク、すでに半分以上が外国人でしたから、外国人登録や銀行口座の開設、物品購入の代行、研究に対する考え方の違いや不平不満への対処に奔走する毎日でした。日本の国際化とは? ポスドク1万人計画と流動性とは? そして真のフロンティア研究とは? それらの問題を毎日考えつつ、ほかでは得られない貴重な経験をすることができました。 1999年秋、私は理研の常勤ポストを辞し、任期制職員として再スタートを切りました。それまでの2年間は、脳科学のセンター化と並行して、シャットダウンに直面したフロンティア再生の日々でした。そのときの想いを語れば切りがありません。今年、再び所属チームのシャットダウンの年、理研の新しい変革の年でもあります。国際化と国際連携から得られる理研のメリットは何か? とよく聞かれます。しかし、これからは理研が得るものを問うのではなく、20〜30年のスパンで理研はアジアに、そして世界に何ができるのか? を問う時期に来ていると感じています。私のクリティカルな想い、そして20年の研究に対する想いはまだ続きます。 ■
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