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研究最前線

超分子でものづくりを変革する


超分子でものづくりを変革する

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超分子でものづくりを変革する


現在の情報機器などのものづくりは、半導体回路の微細加工に代表されるように、かたい物質を詳細な設計に基づき削ったり並べたりして必要な機能を持つ装置をつくり上げる方法が主流である。しかし、これらの方法はたくさんのエネルギーや資源を必要とする場合が多く、これからの地球環境を考えると持続可能ではない。和田超分子科学研究室では、「超分子」と呼ばれる有機物のやわらかい特性を利用した新しい原理の機能材料を考案し、ものづくりに変革をもたらそうとしている。


和田達夫  WADA Tatsuo
コメント01


動いた部分だけを検出する材料
 「このプリズム素子を発展させて監視カメラに応用できれば、例えば駐車場に取り付けて車や人の出入りがあったときの映像だけを自動的に素早く検出することができるので、防犯に大きく貢献できるでしょう」。和田達夫主任研究員たちが開発したプリズム素子は、動いた部分だけを検出できる(図1)。このプリズム素子は「超分子」を利用した有機材料からなる。超分子とは、複数の分子がさまざまな形で結合したり離れたりしながら、あたかも一つの分子のように働き、ある機能を発揮するものをいう。
 「シリコン系の半導体では、必要な機能を得るために細かい構造を刻み込まなければいけません。一方、超分子ではそのような加工をしなくても、光や熱、電場など外部からの刺激で分子の向きや形を柔軟に変化させ、ある特定の光だけを透過させたり反射させたり、必要な機能を引き出せる可能性があります。われわれは、これをソフト・オプトエレクトロニクスと呼んでいます」
 和田主任研究員たちが開発したプリズム素子には、映したい対象物を通ってきたレーザー光と、何も情報を持たないレーザー光(参照光)が干渉して、明暗の縞(しま)模様(干渉縞)ができる(図1)。この干渉縞はしばらくの間変化しないのでメモリーの役割を果たすことができ、次に対象物を通ったレーザー光が来たとき、前と同じ情報は通さず、変化した情報だけを通す。このようにして、動いた部分の情報だけを自動的に検出することができる。コンピュータによって前後の画像の違いを詳細に照合するといった従来の方法とは、まったく異なる動作原理だ。

図1 動いた部分だけを検出するプリズム素子

微細な変化を全体に発展させる
 このように、超分子を用いると従来とは異なる動作原理で情報処理する機能材料をつくることができる。和田主任研究員は今、超分子を応用した「分子情報科学」という新しい考え方を提唱している。「半導体ではプラスとマイナスの電荷を情報として扱います。一方、超分子では、それぞれの分子の形や大きさ、向きなどが情報となり得ます。その情報の変化を材料全体の性質の変化に発展させて、情報処理する装置に利用しようというのが、分子情報科学の新しい発想です」
 合成化学と物性物理の研究者が集う和田超分子科学研究室で始まった分子情報科学の研究例を二つ紹介しよう。
 一つ目は、リング状の分子に軸状の分子が貫通したロタキサンを用いたもの(図2)。ロタキサンは、リング分子と軸分子があたかも一つの分子として振る舞う超分子だ。和田主任研究員たちがつくり出したその超分子には、リング分子と軸分子のそれぞれにベンゼン環が付いている。温度変化によって超分子の構造がどのように変わるか、単結晶をつくり、X線結晶構造解析を行った。
 30℃の室温では、リング分子と軸分子、それぞれのベンゼン環が平行に並ぶ。温度を上げていくと軸分子が回転し始め、128℃になると単結晶全体で軸分子のベンゼン環が一定の角度で固定された。
 「温度を上げると分子運動が活発になり、軸分子が回転することは予想していました。しかし通常、そのような変化は結晶の個々の分子だけで起きます」
 なぜ、変化が単結晶全体に及んだのか。「理研の優れたX線結晶構造解析の研究者との共同研究によって、その理由が分かりました。隣接する二つの超分子が一組となり、軸分子の回転がドミノ倒しのように次々と隣の超分子へ伝わり、単結晶全体に変化が及んだのです。これは予想外のことでした」
 直交する偏光板の間にこの単結晶を置くと、室温では緑色の光を通すが、128℃ではオレンジ色の光を通す。超分子の形の変化は、オングストローム(100億分の1m=0.1ナノメートル)のスケールだが、それが単結晶全体に及び、光を通す性質が変わったのだ。再び温度を30℃に下げると単結晶の性質は元に戻る。「微細な分子の変化が材料の物性を変える可能性は、概念的に提唱されてきました。しかし、単結晶を用いた構造解析を行い、オングストロームスケールの分子の変化が物性を変えることを実際に証明できたのは、この実験が世界でも初めてだと思います。これは、新しい分子をつくり、今までにない機能を持つ材料を生み出そうとしている研究者たちを勇気づける実験結果だと思います」
 もう一つの研究例は、オングストロームスケールの変化を起こす分子1個で、1000個のネマチック液晶分子を動かす実験だ。和田主任研究員たちがつくり出したアゾベンゼン化合物は、当てる光の波長によって形がわずかに変化する(図3)。このアゾベンゼン化合物を液晶に混ぜると、液晶がらせん状に配置する。そこに、ある波長の光を当ててアゾベンゼン化合物の形を変えると、その影響で液晶の並び方が変わり、らせんの間隔が40%短くなる。その結果、反射する光の色が変化する。別の波長の光を当てて元の状態に戻すこともできる。
 「この材料は、光をコントロールするミラーなどに応用できそうです。現在の情報機器には、半導体の微細加工でつくられたミラーがたくさん使われていて、それを小さなアクチュエーター(駆動装置)で動かしています。それらは大変高価なものですが、大量生産することでコストを抑えています。しかし、地球環境や資源問題を考えると、もう大量生産する時代ではありません。この超分子を利用すれば、ミラーを効率よく安価につくれる可能性があります」

図2 微細な変化を全体に発展させる――ロタキサン
図3 微細な変化を全体に発展させる――アゾベンゼン化合物


高効率の有機太陽電池をつくる
 「将来は、シャクトリムシのように動く超分子をつくってみたいですね。それには生物に学ぶ必要があります。そもそも生物は超分子の集まりですから」。例えば細胞では、たくさんのタンパク質が相互作用して、細胞外から必要な物質を取り込んだり、放出したりしている。タンパク質という超分子は、それ自体が動いたり、ほかの分子を運んだりする物質の移動機能を持つのだ。和田主任研究員たちは、このような移動機能にならい、動く超分子をつくり出し、それをものづくりに利用する研究を行っている。
 その研究例の一つが、高効率の有機太陽電池の開発だ。現在、主流のシリコン系の太陽電池では、光を電気エネルギーに換える効率は、単結晶シリコンで約30%、アモルファス(非結晶)シリコンで約10〜13%である。太陽電池による発電は、地球温暖化やエネルギー問題を解決する手段の一つとして大きく期待されている。しかし、特に単結晶シリコン系の太陽電池では、高い温度で材料を溶かす必要があるため、大きなエネルギーを必要とする。そのため、製造に必要なエネルギーと発電で得られるエネルギーの収支に課題がある。そこで、低い温度、少ないエネルギーでつくることができる有機物を用いた太陽電池の開発が期待されている。ただし、現在開発されているほとんどの有機太陽電池の変換効率は1%以下と低い。
 和田主任研究員たちは、光が当たるとプラスの電荷を運ぶ分子とマイナスの電荷を運ぶ分子が動いて、光を効率よく電気エネルギーに変換できる分子配置に自動的に変わる材料を開発しようとしている。「アモルファスシリコン並みの10〜13%の変換効率を目指したいですね。有機太陽電池は柔軟性があり、大面積のものを安価につくれるので、さまざまな用途が期待できます。例えば、テントの素材に応用できれば、電力が途絶えた被災地などで大変役立つでしょう」
 「いずれは、動く分子で計算をしてみたい」と和田主任研究員はさらに展望を語る。「例えば、先ほどのロタキサンのような超分子で、リング分子をそろばんの玉のように動かして計算をする。そんなことを夢見ています」


非接触で表示を書き換える
 最後に、最も実用化に近い研究例を紹介しよう。Suica(スイカ)やPASMO(パスモ)など、タッチ・アンド・ゴー(非接触)で改札を通ることができる無線ICカード乗車券が普及している。SuicaやPASMOには、カード表面に定期利用の乗車区間などを表示できるが、残高の書き換え表示はタッチ・アンド・ゴーではできない。熱によって分子の混ざり合いが変わる材料で発色を行っているので、書き換えにはカードを感熱式プリンターに通す必要があるからだ。
 和田主任研究員たちは、近赤外線レーザーの光を素早く熱に変換できる光熱変換層を開発して、非接触で表示の書き換えや消去を行うことに成功した。「この技術は物流ラベルなどにも応用できます(図4)。ラベルをはったりはがしたりするコストや手間が省け、繰り返し書き換えができるので、省資源にもつながると期待され、実用化に向けた検討を進めています」

図4 非接触による表示変更

機能の優れた分子は、形も美しい
 鹿児島市の旧・鴨池(かもいけ)空港の近くで育った和田主任研究員は、「プロペラ飛行機が飛ぶ、その形の美しさにあこがれた」と振り返る。「海外の航空博物館もずいぶん訪れました。もちろん戦争は嫌いですが、ゼロ戦(零式艦上戦闘機)は今でも好きで、非常に精巧な工芸品という印象を受けます。とても洗練された形、機能美を持っていますね。一方、ゼロ戦の好敵手だった米国のF4Fワイルドキャットなどは大量生産品という感じで、機能美ではゼロ戦の方に軍配が上がると思います」
 新しい分子をつくるときにも形が重要だと、和田主任研究員は語る。「機能の優れた分子は、形も美しいものです。私たちはまず、今までにない美しい形の分子がつくれないかと、新しい研究を始めます。それらが自然と集まり優れた機能を発揮する。そのような分子をたくさんつくっていきたいですね」
 それら美しい分子たちは、エネルギーや資源をたくさん使ったものづくりから、省エネ・省資源の環境に優しいものづくりへの転換に、大きく貢献することだろう。

図5 和田主任研究員と研究室のメンバー

(取材・執筆:立山 晃)









関連情報


「光書き込み型無線IC・リライト複合媒体タグ」『情報・通信用光有機材料の最新技術』(シーエムシー出版、2007年)


「結晶中で動く、光を操る超分子スイッチ」『未来材料』2007年4月号


特願2007-110561「有機薄膜、光電変換素子およびその製造方法」

特開2007-238510「光学活性化合物、光記録用材料、光学フィルムおよび情報記録媒体」






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世界最速の専用計算機で生命現象に挑む


分子シミュレーション専用として世界最速の計算機。それが理研ゲノム科学総合研究センター(GSC)にある、泰地(たいじ)真弘人(まこと)チームリーダーが開発したMDGRAPE-3システムだ。原子と原子の間に働く力を計算し、その動きをシミュレーションすることができる。MDGRAPE-3によって、より効果の高い新しい薬を短期間で開発したり、タンパク質をはじめ生体内の分子の機能を原子レベルで理解することができると期待されている。MDGRAPE-3が切り拓く新しい生命科学、さらにはMDGRAPE-3(エムディーグレープスリー)の開発秘話を泰地チームリーダーに聞いた。


泰地真弘人  TAIJI Makoto
コメント02


世界最速計算機MDGRAPE-3システム
 理研横浜研究所の西棟5階。エレベーターのドアが開くと、ゴーッという低い音がフロア全体に響いている。音の出どころは、分子動力学シミュレーション専用計算機MDGRAPE-3システムの部屋だ(図1左)。
 MDGRAPE-3システムは、2006年6月に世界最速の1ペタフロップスを達成した。フロップスとは計算機の処理速度を表す単位で、1ペタは1015(1000兆)。MDGRAPE-3は1秒間に1000兆回演算を行うことができる。これは、最新のパソコンの約2万倍の処理速度に相当する。「現時点でも1ペタフロップスを達成しているのはMDGRAPE-3だけ」。そう話すのは、MDGRAPE-3を開発した泰地真弘人チームリーダーだ。
 計算機を使って生命現象を原子レベルで理解する。それが、泰地チームリーダー率いる高速分子シミュレーション研究チームの目標である。「ハードウェアづくりから、ソフトウェアの開発、そして応用研究まで一貫してやるのが、私たちの特徴です。そういうグループは、世界でもほとんどないですね」
 私たちが普段使うパソコンはさまざまな計算ができる汎用計算機だが、MDGRAPE-3システムは物質を構成する原子と原子の間に働く力の計算に特化した専用計算機と汎用計算機を組み合わせている。原子間には化学結合力や静電気力、分子間力が働き、これらの力と運動を結び付ける運動方程式に従って原子は動いている。物質は膨大な数の原子で構成されているので、原子1個1個に働く力を計算し、その動きをシミュレーションするには、非常に速い計算性能が必要になる。
 泰地チームリーダーは、MDGRAPE-3システムの“売り”を三つ挙げる。「一つ目は、1ペタフロップスに世界で一番早く到達したこと。二つ目は費用。開発費用は約10億円で、大学や研究機関で使用している通常の汎用大型計算機の10分の1。そして、消費電力の少なさです」
 世界最速の処理能力を実現した鍵は、「ブロードキャストメモリアーキテクチャ」という方法だ。1個のメモリに複数の演算装置が並列につながっているので、同時にたくさんの計算をすることができる。MDGRAPE-3では、1個のLSI(大規模集積回路)で720回もの計算が同時に可能だ。通常の汎用プロセッサではわずか16回。
 最先端のプロセッサが発する熱は、面積あたりで原子力発電所の原子炉格納容器の表面と同じくらいだ。いかに発熱を抑えて消費電力を減らすかが重要になってくる。MDGRAPE-3の消費電力は1時間あたり200kWと、性能あたりの電力は汎用大型計算機の100分の1である。それでも、フロアに大きな音が響くほどの冷却装置が必要となる。


図1 分子動力学シミュレーション専用計算機MDGRAPE-3システム

効果の高い新薬を、より早く
 MDGRAPE-3システムの開発は2002年、タンパク質の構造と機能を明らかにしようという国家プロジェクト「タンパク3000プロジェクト」の一環として始まった。「たくさんのタンパク質の構造と機能が明らかになってきました。そこで重要なのは、その大量の情報をいかに使うかです」と泰地チームリーダーは指摘する。「そのためにも、MDGRAPE-3が必要だったのです」
 まず期待されるのが、新しい薬の開発だ。タンパク質には「活性部位」と呼ばれるポケットのような場所があり、そこにある分子が結合することでタンパク質は機能を発揮する。病気にかかわるタンパク質の構造が分かれば、その活性部位に結合する分子を効率よく見つけたり、より結合しやすいように分子の形をデザインしたりすることが可能になる。
 1個のタンパク質に対して、薬の候補となる分子は1000個を超える。最も適した分子を選び出すために、これまでは「ドッキング法」というシミュレーションが用いられていた。タンパク質の活性部位に候補の分子をはめてみて、形が合うものを選び出す。しかし、泰地チームリーダーはドッキング法の問題点をこう指摘する。「ドッキング法では、タンパク質を形が固定された硬いものとして扱い、また生物にとって最も重要な分子である水の扱いが不十分です。実際の生体内で働いているタンパク質は、熱エネルギーによって常に振動しています。活性部位と形が合う分子があったとしても、結合しやすいかどうかは別問題で、水の影響も含めた扱いが必須です」
 MDGRAPE-3ならば、水を含めてタンパク質と分子の動きを原子レベルでシミュレーションし、確実に結合する分子を見つけることができる。「シミュレーションは機能を“理解”するために使われることが多いのですが、機能を“予測”し、さらには分子の形をデザインして“制御”できるようにすることが目標です」
 タンパク質は、遺伝子の情報に基づいてアミノ酸が連なったもので、そのアミノ酸が正しく折り畳まれることで機能を発揮する。しかし、タンパク質がどのように折り畳まれるのか、その過程はまだよく分かっていない。研究チームでは、シニョリンというアミノ酸10個からなる世界最小の人工タンパク質が折り畳まれる過程をシミュレーションすることに成功した(図2)。伸びた状態のタンパク質が、小刻みに揺れながら、折れ曲がったり伸びたりを繰り返し、やがて正しい形にたどり着く。タンパク質の折り畳みの機能解明に向けた大きな一歩である。
図2 タンパク質の折り畳み過程のシミュレーション
 MDGRAPE-3システムは、2006年のゴードンベル賞(ピーク性能部門)を受賞している。ゴードンベル賞とは、米国計算機学会が選定している高性能計算の性能を競う世界的な賞で、「計算機の開発に携わる者として、すごくうれしい」と泰地チームリーダーの顔がほころぶ。受賞対象となった論文は、酵母のSup35というタンパク質の一部が水中で凝集して針状の結晶をつくる過程をシミュレーションしたものだ(図3)。まわりの水を含めて1700万個の原子の動きを計算している。「アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経疾患では、タンパク質の凝集現象が発症に関与しています。神経疾患の発症機構の解明に役立つと期待して、研究を進めています」

図3 タンパク質の凝集過程のシミュレーション


MDGRAPE-3開発秘話
 「わりと楽にいけるかな」。泰地チームリーダーはMDGRAPE-3システムの開発に着手した当初、そう感じていたという。しかし実際は……。
 計算機の開発はLSIの設計から始まる。LSIとは、半導体基板上に超微細な電子回路を配置したもので、いわば計算機の心臓部だ。「来る日も来る日も、計算機の前に座ってLSIのプログラムを書いていました」と、泰地チームリーダーは当時を振り返る。「その1年間はとても苦しかった。ずっと計算機の言語で考えているから、家に帰って家族と話そうとしたら言葉が出ない、なんてこともありました」
 電子は回路上を光の速度の3分の2、つまり1秒間に20万km移動する。「回路の動作速度が速くなってきたため、最近ではLSIを設計するときには、電子のスピードを考えなければいけないんです」。MDGRAPE-3のLSIは15.7mm角(図1右)。泰地チームリーダーには、その端から端まで電子が動く様子が“見える”ときがあるという。
 そして2003年12月、LSIの設計が完了。次は、LSIを搭載した「MDGRAPE-3チップ」をつくり、動作確認を行う。そこで問題が発生した。「どうやっても、うまく動かないんです」。回路が正しくつながり、性能がきちんと出るかどうかは、計算機上では検証済みだ。しかし、動かない。「もしLSIの設計をやり直すことになったら、1億円くらい余計にかかってしまうんです。あのときは、心臓がドキドキして、血圧が上がっていくのが自分でも分かりましたね」。数日後、動作不良の原因がチップではなくソフトウェアにあることが分かり、事なきを得た。
 MDGRAPE-3チップは、230ギガフロップスの演算性能を持つ(図1右)。当時最先端だった米国インテル社のPentium 4(ペンティアム フォー)の30倍以上で、1枚あたりの性能としては世界最高だった。
 MDGRAPE-3チップは、12個ずつボードに搭載される(図1中)。この段階でも、さまざまなトラブルに見舞われた。予算の削減などもあり“楽に”とはいかなかったが、2006年6月に1ペタフロップスを達成し、「すべての苦労が報われた」と話す。
 1ペタフロップスを達成したMDGRAPE-3システムは、チップを搭載したMDGRAPE-3ボード400枚と、インテル社のサーバ100台から構成されている。専用計算機と汎用計算機を組み合わせるという構成は、泰地チームリーダーが初めて計算機をつくったときと同じだ。「私の1世代前の人なら、システム全体をつくろうという発想になったかもしれません。でも、私はパソコン世代。子どものころからラジオをつくったり電子工作も好きだったので、手元にあるパソコンに何か付けたら面白そうだな、という軽い気持ちで計算機をつくり始めました」
 泰地チームリーダーが初めてつくったのは、m-TIS(エム-ティス)という磁性体をシミュレーションする専用計算機で、大学院生だった1987年のこと。その後、東京大学の天文シミュレーション専用計算機GRAPEの開発プロジェクトに参加した。GRAPEは、星と星の間に働く引力を計算し、天体の動きをシミュレーションする。星を原子に、引力を電磁気力や分子間力に置き換えることでMDGRAPEが生まれ、MDGRAPE-3へと発展してきた。
 泰地チームリーダーの大学院時代の専門はレーザー分光学だ。博士論文では、タコの目にあるロドプシンというタンパク質に光を当て、その変化を計測した。計算機づくりはあくまでも趣味だったが、大学院を卒業するころ、計算機の道を選んだ。そして今、自らが開発した世界最速の計算機でタンパク質のシミュレーションに挑んでいる。初めて計算機をつくってから20年。「自分でもびっくりしています。あのときは、1ペタフロップスなんて考えもしていませんでしたから」


問題は「時間」
 今後の課題は、「シミュレーションの時間を伸ばすこと」。ほかの分子と結合する、折り畳まれるといった現象は、マイクロ(10-6=100万分の1)秒のスケールで起きる。それをシミュレーションしようとしたら、タンパク質の原子が動く1フェムト(10-15=1000兆分の1)秒刻みで計算し、その結果を積み上げていかなければならない。フェムト秒とマイクロ秒との間には9桁もの差がある。MDGRAPE-3を使っても、マイクロ秒の現象をシミュレーションするには丸1日かかってしまう。計算速度を上げることが一つの解決法だが、それにも限界がある。泰地チームリーダーは今、別のアプローチを考えているという。「短時間のシミュレーションをたくさん行い、それをつなぎ合わせることで長い時間の現象を見ようとしています」
 MDGRAPE-4の計画は? 「あります。次は汎用計算機にも手を出そうかと思っています」。LSIを搭載したチップをタイル状に並べてネットワークでつなぐ「タイルプロセッサ」という新しい方式を採用する計画だ。タイル状に並べることで汎用性を確保しながら、現在より性能が約10倍上がると予想されており、4年後の完成を目指している。「計算機は実験装置なんです。ほかの人が使っているものと違った、人より一歩進んだものをつくり、それで勝負をしたいですね」



(取材・執筆:鈴木志乃)




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SPring-8からX線自由電子レーザー、
そしてさらに新しい光へ

石川哲也 放射光科学総合研究センター長に聞く



ISHIKAWA Tetsuya  石川哲也 センター長世界最高性能を誇る大型放射光施設SPring-8が稼働して10年。タンパク質の立体構造解析をはじめ、さまざまな分野で多くの成果を挙げてきた。2005年10月には播磨研究所に放射光科学総合研究センター(RSC)が設置され、SPring-8より10億倍明るい光を出すX線自由電子レーザー(XFEL)施設の建設も進んでいる。SPring-8の10年を振り返るとともに、RSCの展望を、石川哲也センター長に聞いた。


進化し続けるSPring-8
――理研播磨研究所にある大型放射光施設SPring-8が10周年を迎えました。完成当初から現在に至るまで、成果が続々と発表されていますが、SPring-8の活躍は予想以上のものでしたか。
石川:今までにない光を出す装置ができたら新しいサイエンスが生まれるのは、当たり前のこと。X線もレーザーもそうでしょう。SPring-8の放射光の輝度は、現在でも世界一。タンパク質の構造解析をはじめ、生命科学、物質科学、地球科学、環境科学などさまざまな分野で多くの成果を挙げていることも、不思議ではありません。
――そもそも、放射光とは?
石川:光速に近い速度で飛んでいる電子が磁石などによって進行方向を曲げられると、光を発生します。それが放射光です。とても明るく、細く絞られているので、物質に照射するとその構造や性質を分子・原子レベルで観察することができます。
――SPring-8の最大の特徴は?
石川:理研が世界に先駆けて開発した真空封止型アンジュレータでしょう。アンジュレータとは、電子の軌道の上下に、磁石のS極とN極を交互に並べたものです。電子はその間を蛇行しながら進み、軌道が曲げられるたびに放射光が出ます。それが干渉し合い、特定の波長域の非常に明るい光になります。以前のアンジュレータは、電子が通る真空容器の外側に設置されていました。私たちはアンジュレータを真空容器の中に入れてしまったのです。そうすることで、上下の磁石の幅を狭くすることができます。電子が細かく蛇行するので、波長が短くて明るいX線領域の放射光が発生します。
――この10年で変わった点はありますか。
石川:いろいろなところに改良を加え、輝度は10倍になっています。また、2004年から“トップアップ”と呼ばれる運転方式を始めました。以前は加速器に電子を打ち込むことができるのは1日に1〜2回程度でしたが、トップアップにより現在は数分ごとに打ち込めるようになり、放射光の強度がいつも一定になりました。データ補正の必要がなくなったことで、精度も向上しました。SPring-8は進化しているのです。

理研播磨研究所

産業利用も2割
――共同利用施設として、国内外の大学や研究機関、国内の産業界に開かれています。利用状況は?
石川:利用者は順調に増え、昨年度は延べ1万1000人です。産業利用は2割を占めます。その中で多いのは、半導体や自動車、製薬産業。SPring-8のデータをもとに開発した排ガス浄化触媒を搭載した自動車が、世界中で数千万台も走っているそうです。
 SPring-8をつくる前に考えていたことは、最初の2〜3年で全部やり尽くしてしまいました。人の想像力なんて、その程度のものです。本当に面白いことは、新しい光を実際に手にした人が始めるもの。つくる前には思いもよらなかった発展もありましたし、SPring-8は新しい工夫によって多彩な使い方ができると思います。
――SPring-8の今後の課題は。
石川:一つは交通アクセス。人里離れた静寂な所にあるからこそ超精密な測定ができる反面、ここに来るのは一苦労です。そこで、タンパク質の結晶を送ってもらい、こちらのスタッフが解析をしてデータを送り返すという方法も使っています。もう一歩進めて、研究者がインターネット経由で装置を操作して解析できないかと、検討を進めています。


X線自由電子レーザー、そして次の夢の光
――2005年10月には、放射光科学総合研究センター(RSC)が設置されました。RSCの役割は?
石川:三つあります。次世代の光源の開発を進めること、開発した装置を使って新しいサイエンスを開拓すること、そして開発した装置を研究者の皆さんが使える形にして提供することです。
 次世代の光源として、X線自由電子レーザー(XFEL)施設の建設を進めています。より小さい物を見るには、波長が短いX線、しかも波長の位相がそろったレーザーが適していますが、X線レーザーの実現は難しいといわれてきました。しかし、SPring-8で発生するX線を見ていたら、“これを発展させればできるはずだ、私たちがやるしかない”と思ったのです。最高の光を手にした者だけが抱くことのできるぜいたくな夢です。完成予定は2010年。XFELは米国やドイツでも計画が進んでいて、光の性能はどれもいい勝負でしょう。大きな違いは、SPring-8で培った技術、特に真空封止型アンジュレータによって欧米の3分の1と小型化できたこと。コストに直結する非常に重要なポイントです。
――XFELで何が可能に?
石川:XFELの最高輝度はSPring-8の10億倍。ナノメートル(10-9m=10億分の1m)以下の世界をフェムト秒(10-15秒=1000兆分の1秒)単位で観察できます。タンパク質を結晶化しなくても1分子で構造を調べたり、化学反応をコマ送りで観察することが可能です。
 しかしXFELは“瞬間芸”です。安定した光を長く出すSPring-8と同じ精度でタンパク質の構造を調べるには長い時間が必要です。そこで、まずXFELで1分子から構造の概要を解析し、その情報をもとにどうしたら結晶化できるかを調べ、結晶をつくりSPring-8で解析する。XFELとSPring-8を組み合わせることで、結晶化が難しいタンパク質の構造解析もできるようになります。
 神戸に建設される理研の次世代スーパーコンピュータとも連携します。XFELは1/60秒ごとにX線レーザーパルスを出し、そのたびに膨大なデータが出ます。それを解析できるのは、次世代スーパーコンピュータくらいです。1回のレーザーパルスごとにデータを神戸に送って解析し、その結果をもとに次の設定を変えていくオンライン実験もやりたいですね。
――XFELで何を見たいですか。
石川:いろいろありますが、一つは、“真空が壊れる”ところです。XFELの光を直径1ナノメートルに絞って多量のエネルギーを1点に集めることで、真空が壊れ、電子と陽電子が生まれる“対生成”の瞬間が見られるはずです。
――放射光は“夢の光”といわれていました。次の夢の光は?
石川:最近までXFELが次世代の夢の光だったのですが、もうすぐ実現します。XFELで加速した電子をSPring-8に引き込んでさらに明るい光を発生させる、そんな夢を描いているところです。新しい光をつくるためには、それが役に立つことを世の中に見せ続けることが必要です。

(取材・構成:鈴木志乃)


シンポジウムのご案内
2008年1月16日(水)、第3回「X線自由電子レーザーシンポジウム」を東京で開催致します。詳細は下記URLをご覧ください。皆さまのご参加をお待ちしています。
http://www.kuba.co.jp/XFEL/


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SPOT NEWS
内視鏡手術を助けるロボットを開発

看護師不足を解消する新ツールに



直径がわずか数ミリメートルの内視鏡を患者の患部に送り込み、モニター画面を見ながら病巣を切除する手術が世界中で実用化され始めている。この手術は身体の切開が最小限で済むため、患者の苦痛が少なく、回復も早い。理研フロンティア研究システム バイオ・ミメティックコントロール研究センターは、名古屋大学、(株)NTTドコモ東海と共同で、熟練した看護師がいなくても手術中に医師の声による指示を認識して、必要な器具を手渡すロボットを開発。また、このロボットには、携帯電話の画面を見ながらボタンを操作することで必要な器具を手渡す遠隔操作で動く機能もある。看護師不足の今日、手術現場での活躍が期待される。この成果について、生物型感覚統合センサー研究チームの向井利春チームリーダーに話を聞いた。

――内視鏡手術について教えてください。
向井:直径数ミリメートルの内視鏡カメラと撮影した画像を体外に運び出す光ファイバーなどが一体化した器具で、患部や病巣をとらえ、モニター画面を見ながら鉗子(かんし)などの専用器具を使って行う手術です。従来の手術では身体を切開し、患部や病巣を露出・切除し、最後に切開した皮膚や筋組織を縫合(ほうごう)する一連の作業を行います。一方、内視鏡手術は身体の切開が最小限で済むため、痛める組織を最小限に抑えることができ、術後の回復も早くなります。また、医療費の低減にもつながるため、経済面でも患者を救う手術といえます。しかし、医師は手術の際に10〜20本の鉗子を使うので、器具を手渡すタイミングにもノウハウが必要となり、熟練した看護師がますます必要となってきています。

――このロボットによって、看護師不足に対する要望にも応えられますね。
向井:そうです。それが開発に取り組んだ大きなきっかけです。このロボットは、最大20本の鉗子を円周上に立てた状態で搭載する「マガジン」と、医師に鉗子を手渡す「ロボットアーム」とでできています(図1)。音声認識システムを搭載しているので、医師は声で指示することができます。声に応じてロボットアームがマガジンから必要な鉗子を取り出し、6秒で医師に手渡し、使用後には元の格納場所に9秒で戻すことができます。

図1 開発したロボットの外観

――理研でこのロボットを扱うことになった経緯を教えてください。
向井:このロボットは、2004年から東海ものづくり創生協議会スーパーものづくり研究会で、アスカ(株)、(株)中日電子、美和医療電機(株)などの企業が名古屋大学と一緒にプロトタイプを開発したものです。その後、さらに内容を発展させるために、理研が開発を引き継ぎました。高速化、動作の安定化、いろいろなメーカーの鉗子への対応、遠隔操作などを実現できました。これにより、かなり実用化に近づいたと考えています。

図2 開発したロボットの使用イメージ――今後の見通しを教えてください。
向井:ロボットには遠隔操作で動く機能も付いています。NTTドコモのFOMA®のテレビ電話機能などを使って遠隔地から携帯電話上の画面を見ながらボタン操作をして、必要な鉗子を医師に手渡すこともできます。実際にフランスのパリからの遠隔操作にも成功しました。遠隔操作機能は医療の地域格差を小さくし、緊急医療の対応可能な地域を増やし、国際協力を可能にするなど、さまざまな効果が期待できます。また、今後開発が期待されている看護師ロボットにも応用できるでしょう。




本研究成果は10月11日(木)に開催された「中経連テクノフェア2007」でデモンストレーションが行われ、フジサンケイビジネスアイ(10/11)、NHK名古屋(10/29)などに取り上げられた。


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SPOT NEWS
真夜中の強い光は体内時計を
ばらばらにする


海外旅行に出掛けたとき、時差ぼけになるのは、“体内時計”が狂うためである。実はこの体内時計は、れっきとした生物学の研究対象であり、ヒトでは喘息(ぜんそく)の発作や脳出血の発症リスクが最大になる時間が存在するなど、さまざまな生命現象にかかわっていることが分かっている。また、睡眠障害や認知症などの病気との関連性も注目されている。理研発生・再生科学総合研究センター システムバイオロジー研究チームは、真夜中に強い光を浴びると体内時計が一時的に停止する現象(シンギュラリティ現象)が、体内時計を構成する個々の時計細胞のリズムが停止するためではなく、個々のリズムがばらばらになるために時計全体のリズムが全体としては平たん化してしまうことによって起きることを明らかにした。30年来の論争に終止符を打ったこの成果について、上田泰己チームリーダーに聞いた。

――体内時計はどこまで解明されているのですか。
上田:体内時計は、約23億年前ごろに出現したシアノバクテリアから私たち人間まで、地球上に生活するさまざまな生物に存在します。ヒトの体内時計は、血圧や体温、ホルモン分泌や睡眠・覚醒(かくせい)の時間などをコントロールしていて、体内の多様な生理現象と深いかかわりがあります。また睡眠障害や認知症などの疾患との関連性も知られています。最近、体内時計の中枢は脳の視交叉上核(しこうさじょうかく)という部分にあり、肝臓など体中に末梢(まっしょう)の時計細胞があることが分かってきました。これまで、私たちは発光タンパク質を用いて試験管内で簡便に体内時計を見るシステムを開発し、体内時計は基本的に朝・昼・夜の三つのタイミングからなることや、このタイミングをつかさどる時計遺伝子ネットワークを解明してきました。

――「シンギュラリティ現象」とは何ですか。
上田:1970年、米国のアーサー・ウィンフリー博士(1942〜2002年)が、真夜中に強い光を浴びると体内時計がピタリと止まる現象を、ショウジョウバエで発見しました。これが「シンギュラリティ現象」です。その後、ヒトも含めてさまざまな生物でシンギュラリティ現象が発見されましたが、すべての時計細胞が止まるのか、個々の時計細胞のリズムがばらばらになり全体として止まって見えるのか、1975年に二つ目の仮説が提出されてから30年以上もの間、謎のままでした。

――どんな実験を行ったのですか。
上田:まず、時計細胞へ光に反応するタンパク質を組み込み、光に反応する細胞をつくり出しました。実際にこの細胞に光を当ててみると、時計細胞のリズムが変化しました。光をさまざまな時間帯に当てることで、試験管の中で時計細胞集団全体のリズムを早めたり遅くしたり、操作することができたのです。これは世界で初めてのことです。

――その結果、何が分かったのですか。
上田:シンギュラリティ現象を人工的に起こし、個々の時計細胞の状態を詳細に確認できました。真夜中に時計細胞へ光を当てた結果、今まで同調していた個々の時計細胞がばらばらのリズムで動き始め、全体としてのリズムを打ち消し合っているのが見えたのです()。つまり、シンギュラリティ現象の原因は、個々の時計細胞のリズムの同調性が崩れることにあることを実証できました。私が生まれた1975年に始まったこの論争に決着をつけることができたのは、とても感慨深いです。できればウィンフリー博士が存命中にこの成果を出したかったですね。

図 体内時計のリズムを1細胞レベルで測定した結果

――今後どのようなことが期待できますか。
上田:夜勤などで夜に強い光を浴びる人や、高齢者で体内時計のリズムが弱くなり早朝覚醒してしまう人には、どのように対処すればよいかなど、具体的な予防法・治療法へつながることが期待できます。




本研究成果は、英国の科学雑誌『Nature Cell Biology』オンライン版(10月21日付)に掲載され、NHKニュース(10/22)、読売新聞朝刊(10/22)、毎日新聞夕刊(10/22)、日本経済新聞夕刊(10/22)などに取り上げられた。


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TOPICS
フロンティア研究システムに新グループ発足

10月1日、フロンティア研究システムに、未踏の先端的基礎研究を推進する新しいグループが発足しました。

交差相関物性科学研究グループ
当グループが対象とする強相関物質では、1電子近似が可能な従来の半導体とは異なって、多数の電子がお互いに強い影響を及ぼし合っています。この物質は量子固体−液体−液晶の間を、磁気的、電気的、光学的な性質を大きく変えながら超高速に相変態します。この超高速の切り替えを利用した新しいデバイスの可能性を追求します。
十倉 好紀 (とくら よしのり)

グループディレクター 
十倉 好紀 (とくら よしのり)
1. 生年月日:1954年3月1日 2. 出生地:兵庫県  3. 最終学歴:東京大学大学院工学系研究科博士課程 4. 主な職歴:東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻教授 5. 研究テーマ:強相関電子科学 6. 信条:心の内にある 7. 趣味:犬との暮らし

交差相関理論研究チーム 永長直人 チームリーダー
交差相関超構造研究チーム 川崎雅司 チームリーダー
交差相関物質研究チーム 田口康二郎 チームリーダー


物質情報変換化学研究グループ
当グループは生体膜を構造モチーフにして、生体膜の機能を模倣するのではなく、生体機能を超える知的材料を開拓していきます。多様な刺激を感じ、分子配列を変え、信号を発し、形態を変えたりする動的性質を持つと同時に、触媒機能も持つ優れた物質変換反応の開拓を目的とし、物質科学の新機軸の樹立を目指します。
相田 卓三 (あいだ たくぞう)

グループディレクター
相田 卓三 (あいだ たくぞう)
1. 生年月日:1956年5月3日 2. 出生地:大分県  3. 最終学歴:東京大学大学院工学系研究科博士課程 4. 主な職歴:東京大学工学部助手・講師、同大学大学院工学系研究科化学生命工学専攻助教授・教授 5. 研究テーマ:高分子化学、超分子化学、生体関連化学 6. 信条:Chance favors prepared mind(希望を失わなければ幸運は必ずやって来る) 7. 趣味:コンピュータグラフィック

ナノ複合構造研究チーム 藤川茂紀 チームリーダー
物質変換研究チーム 魚住泰広 チームリーダー 山田陽一 副チームリーダー
機能性ソフトマテリアル研究チーム 福島孝典 チームリーダー


システム糖鎖生物学研究グループ
糖鎖はブドウ糖などが鎖状に連なった物質で、タンパク質表面などに結合して糖タンパク質をつくります。タンパク質のおよそ50%以上には糖鎖が付加されています。当グループでは、糖タンパク質の構造と機能の解明に焦点を絞り、がん、感染症、生活習慣病、脳筋肉変性疾患などの診断法の開発、治療へ貢献できる基盤的な研究を行います。
谷口 直之 (たにぐち なおゆき)

グループディレクター
谷口 直之 (たにぐち なおゆき)
1. 生年月日:1942年5月2日 2. 出生地:北海道 3. 最終学歴:北海道大学大学院医学系研究科博士課程 4. 主な職歴:北海道大学医学部助手・助教授、Cornell 大学(米国)客員助教授、大阪大学医学部教授、同大学微生物病研究所寄附研究部門教授 5. 研究テーマ:糖鎖生物学、活性酸素と病態 6. 信条:一期一会、Positive思考 7. 趣味:ソフトボール、野球(最近は見るだけ)、音楽鑑賞

疾患糖鎖研究チーム 谷口直之 チームリーダー 北爪しのぶ 副チームリーダー
糖鎖代謝学研究チーム 鈴木匡 チームリーダー
糖鎖構造生物学研究チーム 山口芳樹 チームリーダー

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テラヘルツ光研究プログラム、一般公開を開催


テラヘルツ光研究プログラム、一般公開を開催 テラヘルツ光研究プログラム(仙台市)は10月20日、光科学の最先端研究施設を一般公開しました。テラヘルツ光は、周波数がテラ(1012=1兆)ヘルツの電磁波で、光と電波の中間に位置している光です。これまで未開拓だった周波数領域の光で、その実用化を目指した研究が現在注目を浴びています。
 一般公開当日は、「電子オルゴールを使った光通信」「固体が生み出す虹色の光」「体感しよう! テラヘルツ波!」「テラヘルツ波で透視する」「プラネタリウムを作ってみよう」「超伝導コースター」など、工夫を凝らした展示を行い、研究内容を分かりやすく紹介しました。


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SPring-8供用開始10周年、記念式典等を開催


SPring-8供用開始10周年、記念式典等を開催 兵庫県姫路市内のホテルで10月19日、大型放射光施設SPring-8の供用開始10周年記念式典(主催:理研、(財)高輝度光科学研究センター)が開催されました。高輝度光科学研究センターの吉良爽(あきら) 理事長と理研の野依良治理事長の出席のもと、官公庁、研究機関、経済界からの来賓および海外の放射光施設の要人が300名以上出席し、盛大な式典となりました。上坪宏道 理研特任顧問による記念講演「SPring-8の軌跡」(写真)や産業利用についての講演も行われ、この10年間の科学技術への貢献が再認識されました。
 翌20日には、SPring-8のキャンパスを100名以上の方々が見学。その後、記念シンポジウムが開催され、海外の放射光施設の紹介に加えてSPring-8の進化と将来像、さらに次世代の光源と呼ばれる「X線自由電子レーザー(XFEL)」についての講演もあり、今後のさらなる発展に期待が寄せられました。


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脳科学総合研究センター 創立10周年記念イベントを相次いで開催


 1997年に設立された理研脳科学総合研究センター(BSI)は今年、10周年を迎えました。これを機に脳科学の今を伝え、未来を語る多彩な10周年記念イベントが展開されました。10月24日には「こころと知性への挑戦」と題して記念シンポジウムが開催され、伊藤正男BSI特別顧問がBSIの10年を振り返ったほか、佐倉統 東京大学大学院教授が脳科学と社会とのかかわりについて講演しました。講演に引き続き、金澤一郎 日本学術会議会長や利根川進 理研-MIT脳科学研究センター長、甘利俊一BSIセンター長らが参加し、脳科学が人類と社会の真の幸福へいかに貢献できるかを語るシンポジウムが行われ、約500人が参加しました。
 10月27・28日には「脳科学ひろば」が開かれ、BSIの最新の研究成果がわかりやすく紹介されました。さらに、脳科学者が自身と研究について語るトークショーや、「脳や心の不思議」「脳科学の夢」をテーマに全国の小・中・高校生から500点を超える応募があった絵画/作文コンクールの表彰式が行われました(写真)。また、来場者には、脳科学の誕生と足跡、最前線などが一枚にまとめられた“ゆめみる脳科学地図”が配られました。「脳科学ひろば」には約2200名の来場者があり、これからのBSIや脳科学への期待の大きさを感じさせるイベントとなりました。

脳科学総合研究センター 創立10周年記念イベントを相次いで開催

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原酒
ヒトチャンプルー


辻 康三郎
TSUJI Kozaburo
独立行政法人 沖縄科学技術研究基盤整備機構


筆者近影 私が独立行政法人沖縄科学技術研究基盤整備機構という舌をかむほど長い名前の独法に出向し、はや1年半が過ぎた。機構は、世界最高水準の国際的な自然科学系大学院大学(沖縄科学技術大学院大学:仮称)の設立準備を行うため、一昨年に設立された新しい独法であり、現在、中部西海岸の恩納(おんな)村と中部東海岸うるま市に事業所を持つ。恩納事業所は国定公園内にあり、事務所および国際ワークショップやセミナーを開催するにふさわしい講義室、宿泊施設などを備える。特筆すべきは、ここの事務所の窓からのオーシャンビューの美しさである。おそらく全国の独法の事務所からの眺望としては一、二を争うものではないだろうか。また、高台にある事業所建物から海辺に下りていくと、そこには手つかずの白浜があり、休憩時には青い海を見ながら、ほのかに漂う潮風のにおいとさざ波の音でリラックスすることができるのである。

ここまで読み、そのような素晴らしい環境で仕事ができてうらやましいとお思いになる方がいるだろう。しかし残念ながら、私が所属する研究事業部は、工業団地内に立地したうるま事業所にある。事務所の窓からは駐車場が見えるだけであり、休憩時に事業所から国道方面に歩けば、ほのかに漂う豚舎のにおいと低空を飛ぶ米軍機の音で、あまりリラックスすることはできない。

ところで、沖縄県民の肥満率は男女とも全国一高いということを、皆さまはご存じだろうか。それもそのはず、電車がないので、どこへ行くにも車でドア・ツー・ドアであり、普段の生活では体を動かすことが極めて少ない。そのため、こちらに来てから私の腹もすくすく成長してしまった。このままでは、理研に戻った際に「辻さん太ったね」の大合唱は避けられない。よって私は、沖縄では珍しい自転車通勤を最近始めた。ダイエット効果はまだ不明だが、車では行けない細い路地を気軽に通れるようになったため、これまで車窓からは見ることができなかった街の風景を楽しめるようになった。幹線道路から少し外れれば、サトウキビ畑、赤瓦の民家、電子音のような音で鳴くオオシマゼミ、巨大なオリイオオコウモリなど、本土では味わえない風情? が割と身近にあることに気付く。

また、自転車に乗るとあらためて感じるのは、軍属米国人の住居が多いということである。これは私が住む沖縄市の特徴であり、コンビニ、飲食店と至る所に米国人が見受けられる。私のマンションにおいても20世帯中4世帯を米国人が占めており、肌の色もさまざまで、見事な人間のチャンプルー(混ぜこぜ料理)が出来上がっている。こういった米国人が身近にいるという環境もあって、沖縄市には沖縄民謡はもとよりロック、ジャズといった演奏を楽しめる場所が古くからあり、それらは戦後の沖縄において、伝統文化と異文化が融合した新しいサウンドの発祥の地であったようだ。このような「ヒトチャンプルー」による独自の音楽文化を活用して街を盛り上げていこうと、市では音楽施設の充実化などのようなミュージックタウン整備事業を推進している。

一方、機構が進める大学院大学の整備においては、2006年度末に恩納村メインキャンパスの造成工事が開始され、2009年度初めごろには、施設の一部が供用開始になる予定である。大学院大学は教授陣、学生諸君の半分以上を海外から迎えることになっており、将来、この大学院大学においてどのような「ヒトチャンプルー」の味が生まれるのか、非常に楽しみである。





理研ニュース 

12
No.318
December 2007

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発行日
平成19年12月5日
編集発行
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