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研究最前線
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限界への挑戦 |
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物理に“ハマった”女性科学者 |
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原酒
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躁うつ病の克服に挑む
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躁うつ病などの精神疾患は、脳の病気
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日本人の死亡率を見ると、がんや心疾患、脳血管疾患が上位を占めている。ただし、例えば80歳でがんにかかって死亡する場合と、若いころに精神疾患を発症して長い期間仕事ができなかったり、自殺したりする場合を同列には論じられない。そこで、死亡率に死亡時の年齢や生活への影響を加味したDALY(ダリー)(障害調整生存年)という指標が用いられるようになった。DALYを見ると、“がん”と脳卒中や糖尿病などの“生活習慣病”に並んで、うつ病や統合失調症、躁うつ病などの“精神疾患”が大きな割合を占める。ただし、がんや生活習慣病に比べて、精神疾患の原因解明や診断法・治療法の開発は大きく遅れている。さらに精神疾患に対する社会的な偏見も残っていると、現役の精神科医でもある加藤忠史チームリーダーは指摘する。「心臓の具合が悪いと心臓病になるように、脳の機能に不具合があると精神疾患になる場合があります。精神疾患も脳という体の一部分の病気ですが、一般には、“心の問題”だとか、とても特殊なものに思われています。精神疾患の原因を詳しく解明できれば、より良い診断法や治療法を開発できるとともに、偏見もなくなると思います」
加藤チームリーダーは、躁うつ病の原因解明に長年取り組んできた。躁うつ病は躁状態とうつ状態を繰り返す病気である(図1)。躁状態を伴わないうつ病は約15%の人が一生に一度かかるが、再発しない場合も多い。一方、躁うつ病は、激しい躁状態を伴う双極 I 型が0.8%、軽い躁状態を伴う双極 II 型を含めると2〜3%の人が発症する。躁うつ病は、再発を繰り返しやすいため長期の治療を必要とし、患者やその家族の人生に大きな負担を強いる。 躁うつ病は、セロトニンなどの神経伝達物質のやりとりが不安定になることが原因だと考えられているが、はっきりとした発症メカニズムは分かっていない。躁うつ病には遺伝子が深く関係しており、一卵性双生児では一人が躁うつ病を発症すると、もう一人も7〜8割が発症する。しかし親から子に単純に遺伝する病気ではなく、躁うつ病を発症した人の子供でも、9割の人は発症しない。 「躁うつ病の発症に関係する遺伝子は1個ではないことは確かですが、10個程度なのか、数十個あるのかは、まだ分かりません。例えば、躁うつ病になりやすくなる遺伝子が、10個そろうと発症してしまうが誰でも5個くらいは持っている、という感じだと思います。なぜ多くの人が躁うつ病にかかりやすくなる遺伝子を持っているのか。それは、それらが何らかの形で有利に働くからだと考えられます。例えば、躁うつ病との関係が指摘されているある遺伝子を持つ人は、記憶力が良いといわれています」 ![]() |
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ミトコンドリア仮説
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加藤チームリーダーが躁うつ病の原因解明に挑むようになったきっかけは、1980年代末、精神科医としてある躁うつ病患者に出会ったことだった。「前日まで苦しそうな顔をして元気がなかった人が、一夜明けると急におしゃべりになって、まったく別人のようになったんです。“心の問題”などではなく、脳の中で何かが変化していることは明らかです。こんなにはっきりした現象を、現代の科学技術で解明できないはずはないと思いました」
加藤チームリーダーは、NMR(磁気共鳴法)によって、躁うつ病の患者の脳内でどのような物質的変化が起きているかを探り始めた。そして、うつ状態のときに、脳内でクレアチンリン酸というエネルギー物質が減っていることを突き止めた。「文献を調べてみると、まぶたが垂れる(眼瞼(がんけん)下垂)などの症状を示すミトコンドリア病でも、クレアチンリン酸の低下が見られることを知りました。躁うつ病の患者さんでも、そういう症状の人を見たこと思い出し、躁うつ病はミトコンドリアの機能障害と関係しているのではないかと考え始めました」 ミトコンドリアは細胞内にある小器官であり、エネルギー物質を生産するとともに、情報伝達にかかわるカルシウムの濃度調節などをつかさどっている。ミトコンドリアは細胞核のDNAとは別に、約1万6000塩基対からなる独自のDNAがある。一つの細胞の中には多数のミトコンドリアがあるが、その一部のDNAに異常があると、ミトコンドリア病が発症する。「ミトコンドリア病の患者さんの一部に躁うつ病の症状が見られることも報告されていました」 その後、分子遺伝学の研究のため渡米した加藤チームリーダーは、躁うつ病で亡くなった患者の脳を調べる機会を得た。そして、一部の患者の脳にミトコンドリアDNAの異常があることを発見した。1万6000塩基対のうち約5000塩基対がごっそり失われている「欠失」という異常が、微量ながら見つかったのだ。 こうして加藤チームリーダーは、ミトコンドリアの機能障害によって情報伝達にかかわるカルシウム調節がうまくいかなくなり、躁うつ病が発症するという「ミトコンドリア仮説」を提唱した。 |
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躁うつ病のモデルマウス
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2001年、精神疾患動態研究チームを立ち上げた加藤チームリーダーは、ミトコンドリア仮説を実証する研究を進めた(図2)。そして2006年4月、細胞核にある、ミトコンドリアDNAをつくる合成酵素の遺伝子に変異を起こし、脳内だけでミトコンドリアDNAの欠失を持つマウスの作製に成功した(表紙上段 撮影:笠原和起研究員)。このマウスは、躁うつ病患者に見られる不眠や行動量の変化と似たような行動異常を起こす。さらに、このマウスに躁うつ病の予防薬として使われるリチウムを投与すると、行動異常が改善した(図3)。また、躁うつ病の症状を悪化させる三環系抗うつ薬を投与すると、行動異常が顕著になった。このマウスは、世界で初めての躁うつ病モデルマウスとなる可能性がある。
ミトコンドリアの機能異常が、躁うつ病の唯一の原因ではないが、例えば何らかの神経回路の情報伝達の変化など、躁うつ病に共通する現象を引き起こすと加藤チームリーダーは考えている。しかしまだ、その共通する現象が分かっていない。 「例えば糖尿病では、インシュリンをつくるβ細胞が死んでいく I 型、インシュリンに対する細胞の感受性が悪くなる II 型、それぞれに原因はいろいろあると考えられますが、インシュリンの分泌量が相対的に不足し、血糖値が上昇するという、発症への最終経路は共通です。ですから、血糖値を測って糖尿病の検査をしたり、インシュリンを注射して治療ができるわけです。糖尿病の研究は今、β細胞が死んだりインシュリンへの感受性が悪くなる分子メカニズムを探り、根本的な原因治療を目指す研究が進められています。ところが躁うつ病の場合には、糖尿病のインシュリンや血糖値に当たるもの、最終共通経路が分かっていないのです。糖尿病の研究と比べると何十年も前のレベルです」 現在、躁うつ病の診断材料は患者の話す内容や行動しかないが、最終共通経路が分かれば、それを何らかの方法で測定し、躁うつ病とほかの病気を明らかに区別する客観的な診断法を開発できるだろう。研究チームが作製したマウスを調べれば、その最終共通経路を解明できるかもしれない。「このマウスの脳内のどこにミトコンドリアDNAの異常が蓄積しているのか。行動異常は脳内のどの部位の変化によるものなのか。それを突き止めることが重要です。ミトコンドリアDNAの異常は、ミトコンドリア病などいろいろな病気に関係していますが、躁うつ病だけに特徴的な変化は何なのか。それを調べていくことで、すべての躁うつ病の患者さんに共通する、神経回路の変化などが見えてくるはずです」 また、このマウスは創薬研究に大きく貢献すると期待されている。「現在使われている躁うつ病の薬はどれも、ほかの病気の薬を躁うつ病の患者さんに使ってみたら効果があった、というものです。原因治療ではなく、明らかに対症療法なんです。薬の開発が進まなかった原因の一つは、躁うつ病のモデル動物がなかったことです。私たちが作製したマウスには、リチウムが効きました。リチウムにはさまざまな作用があり、強い副作用も現れます。リチウムのどの作用がマウスの行動異常を改善させるのかを調べることで、副作用が少なく効果が高い薬をつくれる可能性があります。また、ミトコンドリアDNAが欠失した結果、細胞内のカルシウムによる情報伝達に変化が起きます。その情報伝達の変化の鍵となる分子を突き止め、その分子に作用する薬が行動異常を改善させるかどうかを調べたいと考えています」 ミトコンドリア仮説は米国でも注目され始め、ある製薬企業がミトコンドリア病の治療薬を躁うつ病患者に投与する臨床試験を進めている。小規模の予備的な試験では、有効性があるという結果がすでに出ており、さらに大規模な試験が進められようとしている。うまく試験が進めば、ミトコンドリア仮説に基づく躁うつ病の薬が、今後10年くらいの間にも実用化される可能性がある。
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“心の問題”に挑む脳科学
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将来、躁うつ病の研究の進展により、どのような治療が可能になるのだろう。「検査で躁うつ病になりやすい体質だと分かれば、発症しにくい生活の仕方を心掛けるようにアドバイスをすることができます。例えば、夜、決まった時間に寝るだけでも効果があります。発症してしまった場合にも、躁うつ病だと客観的に診断できれば、適切な治療をすぐに始められます。うつ病のうつ状態では、まず抗うつ薬が選択されますが、躁うつ病のうつ状態では気分安定薬を使う必要があります。最初の発症のときにすぐに原因治療を行い、再発を防ぐ。そのような治療ができる日を早く実現したいですね」
精神疾患動態研究チームでは、躁うつ病の研究以外にも、近年、大きな社会問題となっている子供への虐待に関係する研究を始めている。「そもそもなぜ、子育てをしようとするのか。マウスを使って子育てに関係する神経回路を探しています。そして、その神経回路がどのように発達していくのか、あるいは、なぜ発達がうまくいかない場合があるのかを調べ、将来はヒトを対象にした研究につなげていきたいと考えています」 従来、“心の問題”だと思われていたテーマに脳科学が挑み、私たちの人生や社会に大きく貢献しようとしている。■
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マウスで切り拓く生命科学の新時代
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ノックアウトマウスの大規模計画
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これまで、それぞれの研究者が、研究対象とする生命現象や病気に関係する遺伝子を探し出す形で、遺伝子の機能が少しずつ明らかになってきた。ヒトの遺伝子の研究には、主にマウスが用いられる。その理由は、マウスとヒトの遺伝子は99%が共通で、実験動物として百年以上の歴史があり、遺伝や病気に関する知識が蓄積されているからだ。しかも、遺伝子操作などさまざまな実験技術が確立されている。例えば、ある遺伝子が体の中でどのような働きをしているのかを知るために、その遺伝子が働かないように操作したノックアウトマウスからその働きを調べることができる。このようなノックアウトマウスの技術によりヒトの病気のモデルマウスが生み出され、病気のメカニズムの解明や創薬研究に大きく貢献してきた。しかし、このノックアウトマウスの作製には多大な費用と労力がかかり、しかもその流通に大きな障害があるため、研究コミュニティー全体では大きな無駄が生じている。今までに世界中で作出されたノックアウトマウスには、同じ遺伝子をターゲットに複数の研究者により重複して作製されたものが多数含まれている。700以上の遺伝子が3回以上重複してノックアウトされ、ある遺伝子は世界中で11回重複してノックアウトされていた例もある。
21世紀に入り、ヒトやマウスのゲノム解読が完了し、ゲノム上のどこに遺伝子があるのかすべて明らかになった。これにより、すべての遺伝子をノックアウトして各遺伝子の機能や病気との関係を調べ上げることが可能になった。欧州では2005年10月からEUCOMM (ユーコム)(European Conditional Mouse Mutagenesis Program)、米国では2006年6月からKOMP(コンプ)(NIH Knockout Mouse Project)と呼ばれるノックアウトマウスの作出計画がスタートした。それぞれ独自の手法を用いた、全遺伝子をターゲットにした計画である。さらにカナダでも同様の計画が進められている。 遺伝情報は、A(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)という4種類の塩基の並び方で書かれている。最近の研究により、病気のなりやすさや薬の効き方・副作用などが、個体差にかかわるSNP(スニップ)(一塩基多型(たけい))と呼ばれる1ヶ所の塩基の違いによって左右されることが明らかになりつつある。世界全体で、今後5〜10年にすべての遺伝子に対してSNPを置き換えたものを10種類ずつ作製し、約30万系統ものマウスをつくり、機能の違いや病気との関係を解明しようという計画もある。 このような計画により爆発的に増加するマウス系統を保存し、研究者に提供するため、BRCなど世界の主要なマウスリソースセンター17機関が連携して、国際連盟FIMRe(フィムレ)(Federation of International Mouse Resources)が2005年に設立された。「実は、これまで作出されたノックアウトマウスの7割以上は、企業や研究者が外部に提供せず、ほかの研究者が入手できない状況でした。そのため、ノックアウトマウスがすでにつくられている遺伝子でも機能解析が不十分なまま眠っているものがたくさんあります。せっかくつくられたリソースの多くが流通せず、有効利用されていなかったのです。現在進行しているノックアウトマウスプロジェクトでは、この点にも配慮されています。世界中の研究者が、今後爆発的に増加するマウス系統を利用して遺伝子の機能解析をスムーズに進めることができるようにするため、流通体制を国際協力で整備することになったのです」。BRCでマウスのリソース事業を担当する実験動物開発室の吉木 淳 室長は、FIMRe設立の背景をこう語る。 FIMReは、各リソースセンターが提供可能なマウス系統を、一つのデータベースIMSR(International Mouse Strain Resource、http://www. informatics.jax.org/imsr/index.jsp)にまとめてOne-Stop(1ヶ所で何でもそろう)Shopとして公開している。BRCで収集・保存しているマウスもこのデータベースに登録され、世界中に提供されている。 「日本には全遺伝子を対象としたノックアウトマウスプロジェクトは現在ありません。にもかかわらず、マウスの国際的流通の出口であるFIMReに日本からBRCと熊本大学 動物資源開発研究部門(CARD)が参加しています。これは日本のノックアウトマウスの開発能力と研究が、国際的に高く評価されているからです。特に理研などの先導的研究機関で開発されたノックアウトマウスは、世界中の研究者が注目しています。BRCに寄託することによって、より多くの研究者が利用可能になります。研究者の皆さんにはぜひBRCの利点を活用していただき、自分の開発したマウスで大きな国際貢献を果たしてほしいと考えています」 |
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動物実験の精度を保証する
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ある遺伝子を操作して機能を調べる場合、その遺伝子以外の条件がすべて同一の対照マウスと比較する必要がある。もし、ほかの条件が違っていれば、それが実験結果に影響を与えてしまう可能性があるからだ。「私たちは、まず寄託されたマウスに病原体の汚染がないか調べ、帝王切開や胚移植などの技術を使って汚染を取り除き、きれいなマウスにしています。さらに遺伝子を検査して遺伝的な特性も調べます。寄託されたマウスを検査してみると、マウスの健康に悪影響を与える病原微生物の汚染や、目的の遺伝子が入っていないマウスが見つかる場合もあるのです。ノックアウトマウスの場合は、ゲノム全体が遺伝的に均一な純系になっているかどうかを調べます。多くのノックアウトマウスは遺伝的に雑種のまま使われているのが現状です。実験研究は、再現性があって初めて本物といえます。雑種のままではマウスの実験動物としての利点が生かされません。これは日本だけでなく、世界的にも同じ状況です。私たちには、雑種の部分を取り除き、遺伝的背景が均一なマウスにして、ノックアウトした遺伝子だけの違いを見ることができる精度の高い動物実験系を提供する役目があります。このようなことは手間暇がかかり、個々の研究者だけでは実現できません。高品質のマウスにして提供することも、私たちのようなリソースセンターの役目なのです」
マウスを使ってすべての遺伝子の機能を調べる実験が大規模に進められようとしている中、その実験の精度を保証するために、BRCのようなリソースセンターの果たす役割は非常に大きい。
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マウスのデジタル解剖学
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吉木室長らは、保存しているマウスの形態情報をデジタル化し、遺伝子と形状、遺伝子と病気の関係を探る研究に役立てようとしている。画像データに代表される形態情報のデータ量は膨大であり、扱い方が難しい。吉木室長らは、情報技術の専門家である理研の横田秀夫チームリーダー(中央研究所・生体力学シミュレーション特別研究ユニット、知的財産戦略センターVCADシステム研究プログラム生物基盤構築チーム)らと共同研究を進めている。横田チームリーダーたちが開発した3次元内部構造顕微鏡は、マウスの全身の断面画像を0.02mmという細胞サイズの分解能で3時間以内に撮影し、デジタル化することができる(図1)。
「ただし、生の組織や細胞をそのまま高い分解能で見ても、細胞の種類や構造は分かりません。それを可視化するには特殊な標識技術などが必要です。さまざまな種類の組織・細胞の構造を見るための技術を開発していく必要があります」 将来は、健康なマウスと病気のモデルマウスの組織や細胞の形態を全身にわたりコンピュータ上で比較して、発症メカニズムを解明したり、病気がもたらす全身への影響を調べることも可能になるだろう。「病気になると、組織や細胞の形態が変化する場合があります。健康なマウスと病気のモデルマウスで、全身の組織や細胞の形態をコンピュータ上で比較できれば、病気のメカニズムや遺伝子の働きを調べる強力な手段になります。例えば脳の専門家は普通、マウスを解剖して脳を調べますが、ほかの臓器の解析までする余裕はありません。一人の研究者が全身をくまなく調べることは、多大な時間と労力が必要で、現実にはとても難しいのです。全身の内部構造を短時間で、リアルカラーでマイクロメートル単位の画像にできる横田さんの技術は画期的です。コンピュータ上で全身を詳細に比較できれば、新たな発想で病気のメカニズムに迫っていくことができるでしょう」 形態情報のデジタル化は、動物福祉の観点からも大切だと吉木室長は指摘する。「“動物の愛護及び管理に関する法律”の一部が改正され、今年6月に施行されました。この改正法には、動物実験に代わる研究方法の検討と実験動物の使用数を減らすことが盛り込まれました。動物実験には用いる動物の解剖学的知識が不可欠です。代表的なマウスの解剖と臓器などの形態観察が実験前にコンピュータ上で可能となれば、使用動物数を大幅に減らすことができると考えています」 形態のデジタル情報は、教材としても役立つはずだと吉木室長は続ける。「近い将来、代表的なマウス系統について全身の3次元断面画像データを、私たちのホームページで見ることができるようにしたいと考えています。今後、さまざまなマウス系統の形態情報を特性情報とともにホームページで提供して、子供から大人、専門家にまで興味を持っていただけるようにしたいと思います」 ![]() |
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ハゲマウスの発見
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実験動物開発室では、たくさんのマウスを飼育し、交配させて系統を維持している(表紙下段、BRCの飼育室)。その過程で、飼育技術者が新奇な現象を見いだし、それが新しい遺伝子や突然変異の発見につながることも多い。その例を一つだけ紹介しよう。「毛がカールした突然変異マウスが見つかりました。父方と母方のゲノムのどちらか一方にこの突然変異があると毛がカールする、つまり優性遺伝します。そして突然変異を二つ持つホモ型になると、はげてしまいます(図2)。そこで、このマウスをHague(ハゲ)マウスと名付けました。ところがこのHagueマウスを飼い続け、あるとき普通のマウスと交配させると、カールでなく、普通の毛を持つ子供が生まれたのです。つまり優性から劣性に変化したのです」吉木室長らは、Hagueの遺伝子の正体が、塩基配列の長さの変わる突然変異であることを突き止めた。「遺伝子操作では、すでにある知識を組み合わせて遺伝子を改変します。しかしHagueマウスでは、誰も見たことのない種類の突然変異が起きていました。生物には、まだ私たちの知らない仕組みで突然変異が起きていて、それが病気や生命進化を引き起こしているのでしょう」 実験動物開発室は、21世紀の医学・生命科学の基盤を支えるとともに、驚くべき発見が次々となされる場となるだろう。■
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限界への挑戦
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――RIKEN Honorary Fellowの感想をお聞かせください。
江崎:素晴らしい称号を頂き、しかも第1号ということで、大変光栄に思います。 私はIBMでもフェローに任命されています。最近は日本でもそうですが、特に米国では、研究内容から人間性まで評価され、それが給与に結び付きます。そういった中でフェローは、自分の判断でやりたいことができる、裏返して言うと評価されないで済む、数少ないポジションなのです。理研は、科学の分野において日本で最高の業績を挙げている研究所です。その名誉フェローを授与されたことは、私の研究者としての能力を認めていただいたということでもあり、とてもうれしく思います。 |
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――理研との接点は、これまでにもあったのでしょうか。
江崎:私の研究生活はもうすぐ60年になりますが、残念ながら理研で研究をしたことはありません。 私が東京大学理学部を卒業したのは終戦直後の1947年です。私のような学生にさえ、日本の産業を復興させなければならないと思わせるほど、日本は惨憺(さんたん)たる状態でした。卒業後は、大学に残ってアカデミーに進むか、企業に就職してインダストリーに進むか、という二つの道がありました。私は、大学に残るチャンスもありましたが、これまでに自分が得た知識を活かして日本の復興に役立てていこうと考え、インダストリーを選んだのです。 実は、大学の指導教官だった嵯峨根遼吉(さがねりょうきち)先生が理研でも研究をしていましたので、理研の情報は入ってきていました。私は実験をやりたかったので、仁科芳雄先生たちがつくったサイクロトロンが、原爆製造に関連している装置と誤解されGHQによって東京湾に破棄されることなく残っていたら、違う選択をしていたかもしれませんね。 ――もし理研で研究をしていたら、1973年のノーベル物理学賞受賞の対象になったトンネルダイオードの発見は、どうなっていましたか。 江崎:なかったでしょうね。当時の理研は、大学の研究室と同じようなところでした。そういう組織の中では、先生の言うことをやらなければならない。しかし、それだけでは、科学は進みません。 人間の知的能力には2種類あると、私は考えています。「分別力」と「創造力」です。分別力は、知識を理解し、判断する能力です。科学の進歩に重要なのは、もう一つの知的能力、新しいアイデアを生み出す「創造力」です。しかも、何が本質かを見抜く洞察力に基づく創造力が必要です。創造力は若い人に与えられる特権ですが、理研に限らず当時の日本のアカデミーは、洞察力に基づく創造力が重要だという認識がなく、それが育つ環境にはありませんでした。その中では、トンネルダイオードは生まれなかったでしょう。 ――最近では、創造力を育む環境は良くなっていますか。 江崎:一生懸命、創造力を育てようとしていますね。教育には2種類あると思います。一つは、先生の言う通りにさせること。分別力は付きますが、これでは創造力は付きません。もう一つの教育は、自由に考えて自由にやらせる、自ら発見させること。もともと“Educational”とは、“能力を引き出す”という意味です。自分で自分の能力を引き出すような自主的な教育によってこそ、創造力、独創力が付くのだと思います。 |
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――日本の科学は世界でどのレベルにあると思われますか。
江崎:科学分野で一般的には、日本は世界のリーダーというよりも、フォロアー、後を追いかけていく立場だと思います。日本では、現象的な事実を明らかにすることを科学だと思っているところに間違いがあります。それが日本の科学の欠点ですね。科学は思想なんです。 水は、水素原子と酸素原子からなっている。しかし、そういうことは、本当はどうでもいいのです。本当に偉いのは、水が水素原子と酸素原子からなっていることを明らかにした人ではなく、物質はすべて粒々からなるという「原子論」を考えた古代ギリシャの哲学者、デモクリトスだと私は思います。新しい考え方、新しい思想こそが、科学の大もとなのです。 理研は、日本に“サイエンス”という思想を根付かせるリーダーシップを取るべきでしょう。例えば、盗聴されない量子通信や超高速の量子コンピュータのような、量子力学的な思想に基づくサイエンスが有望だと思います。 ――世界のリーダーとなるために、必要なものは? 江崎:現在の科学や技術には、いろいろな限界があります。それを超えようとする努力ですね。あれは限界だと思ってあきらめるか、限界に挑戦していくか。私が発明した半導体超格子は、2種類の半導体薄膜を繰り返し重ねればまったく新しい性質を持った物質ができるはずだ、という思想から始まった研究であり、自然界にないものをつくろうという限界への挑戦でした。私は、限界に挑戦し続けて、ここにいます。 |
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――江崎先生は、東京通信工業株式会社(現在のソニー株式会社)に移られて、トンネルダイオードを発見するまで1年。その3年後には米国に渡られました。理研では任期制の研究者が全体の約80%を占めています。任期制や研究者の流動について、どのようにお考えですか。
江崎:日本では任期制ということが盛んにいわれていますが、米国では任期制や定年制にかかわらず、研究者は流動しています。例えばIBMは任期制ではありませんが、研究者の平均在籍年数は5年くらいです。能力がない人は出ていかざるを得ないし、能力がある人はより良いところに移る。結果的に流動しているのです。 研究の環境を変えるということは、考え方を変えるという意味でも、いいことだと思います。また、今いる場所が、自分にとって最善の場所かどうかは分からないものです。自分の能力が最大限に発揮できる場所を探すためには、いろいろな場所に移ってみる必要があります。しかし、最善の場所を見つけたら、3年や5年の任期というのは短過ぎるでしょうね。私自身の例でも、トンネルダイオードは1年でしたが、半導体超格子は20年かかっています。もし、5年の任期だったら、半導体超格子の発明はなかったでしょうし、そもそも手を付けなかったかもしれません。 私は、研究者を流動させるための任期制には賛成ですが、任期を最初から一律に決めることには反対です。 |
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――江崎先生が今、若い研究者だったら、やってみたい研究は?
江崎:生命科学でしょうか。私が若いころ、生物学は分類したり名前を付けたりすることが主で、科学ではありませんでした。それが、今まさに科学になってきた。若かったら、ぜひ参加したいですね。 ――分別力は年とともに上がっていき、創造力は年とともに衰える、その交点が45歳であると、江崎先生はおっしゃっています。まずは、交点の手前にいる若い研究者へメッセージをお願いします。 江崎:“Experts are not always right.”。偉い先生の言うことが必ずしも正しいとは限りません。たとえ偉い先生が、そんなのうまくいくはずがないと言ったからといって、その言葉を信用してやめる必要はないのです。 ――では、分別力豊かな、シニアの研究者へは。 江崎:“Experts are always right.”(笑)。でも、やはり“Experts are not always right.”。偉い先生自身こそが、それを認識すべきです。 ――最後に、理研へのアドバイスがありましたら、お聞かせください。 江崎:国際的な運営を心掛けることが必要ですね。日本人だけで研究をしていたら、同じ発想しか出てきません。海外から来た人の新しい文化に触れることは、刺激になるでしょう。そのためには、いかに若い優秀な海外の研究者を獲得するか、そしていい仕事ができる環境を与えるかが、重要な課題です。米国は、私にとって非常にいい研究環境を与えてくれました。 理研には、ぜひ日本の科学のリーダーシップを取っていただきたい。野依理事長には、それができるだけの馬力があります。理研がリーダーシップを発揮し、日本の科学を革新的に進めていくことを期待しています。■ |
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物理に“ハマった”女性科学者
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高峰JRAに受賞の感想をまず聞くと、「盆と正月が一緒にきた気分です!」と返ってきた。受賞者には賞状と奨学金として100万円が贈られた。その使い道は?「まだ決めていませんが、昨年亡くなった父のお墓を建てようかと」。高峰JRAらは、観察が難しかった不安定原子核を効率よく集める装置を開発(図)。その業績が認められたのだ。この装置をつくった目的は?「低エネルギーの不安定原子核ビームはいろいろな使い道があるんです。まず、今、実験を進めているベリリウム(Be)不安定核の中性子と陽子の分布を調べたいですね。これは今まで誰もできなかったことなので、原子核物理の新しい知見が見つかるはずです。今後は、がん治療など医療分野への応用も考えています」。さらに「今、理研がつくっているRIビームファクトリーを使えば、Beだけでなくすべての元素の不安定核がつくれるので、もっといろいろなことができるようになります」
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幼いころの夢は?「小学生のときは理科が嫌いでしたが、親に言われるがままに“医者”と言っていました。私の親は貧乏育ちで苦労したので、“医者になってもうけてくれ”と言っていました(笑)」。中学生でミュージシャン、高校1年で絵描きになりたかったという高峰JRAが物理に出会ったのは高校2年。「暗記するのが苦手で……、物理は基本法則を使って自分で一から考えて問題を解けるから楽しいんですよ。解くたびに面白い。物理にハマったんです!」。卒業後、東京大学へ入学。2年のときに山崎泰規主任研究員(理研・東大兼務)と出会った。「先生の物理の講義を受け、なかなか難しい授業だったのですが、なぜか惹(ひ)きつけられ、毎週楽しみでしたね。その後、東大の山崎研究室に入り、2002年から理研でも研究するようになりました」。現在、不安定原子核を研究対象としている理由は?「原子核物理は1970年代に(安定な原子核については)ほとんど分かったと思われていました。しかし、加速器が発達してリングサイクロトロンなどで得られる高エネルギービームを使って不安定核がつくれるようになったら、今までの理論が通用しない現象が見えてきたんです。そこで、原子核物理を立て直さなければいけなくなりました。それをやりたいんです!」
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尊敬する研究者は?「同じ研究室の和田道治さん(先任研究員)。研究だけでなく、人としての在り方も指導してくださる方で、ああなれたらなぁと思います」。今後は?「研究を続けたいですね。土日も研究したいくらいです。勉強もしたいし、装置の改良もしたい、とにかく時間が足りない!」。最後に「結婚もしたいですね(笑)」と本音も聞かせてくれた。物理の分野で活躍する数少ない女性科学者の一人、高峰JRAのこれからに期待したい。■
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2006年 理化学研究所 科学講演会の開催のお知らせ
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本年度の科学講演会を以下のとおり開催致します。今回は「コンピュータ科学」をテーマに、最先端の研究を紹介します。皆さまのご来場をお待ちしております。
問い合わせ先:理化学研究所 広報室 TEL : 048-467-9954 FAX : 048-462-4715 |
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プログラム
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「里庄セミナー」が開催される
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第15回理化学研究所里庄セミナー(主催:理化学研究所、科学振興仁科財団)が8月19日、仁科芳雄博士の生誕地である岡山県里庄町の仁科会館で開かれました。同セミナーは、青少年の科学に対する関心を高めるとともに、仁科博士の故郷である岡山県内の企業や研究機関との交流を図ることを目的に、1992年から毎年行われています。今年は、「放射光科学」をテーマに、播磨研究所放射光科学総合研究センターの北村英男主任研究員(北村X線超放射研究室)が「夢の光:X線自由電子レーザー」、山下敦子チームリーダー(分子シグナリング研究チーム)が「X線結晶構造解析で知るタンパク質のはたらく仕組み」と題して講演しました。会場には中学生からお年寄りまで約120名が訪れ、盛況のうちに幕を閉じました。 |
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放射光科学総合研究センター 新チームリーダーの紹介
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ストーリー変更
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2003年の春、東京大学横山研究室の大学院生であった私は、「RNAヘリケース」というタンパク質のX線結晶構造を解くことに成功した。RNAヘリケースは、RNAの形を変えることでその働きを制御するタンパク質である。このタンパク質がどのように働くかを調べるのが、私の研究テーマだった。X線結晶構造解析は、タンパク質の形を原子分解能で見る手法である。私たちのもくろみは、“形を変えるのが仕事であるなら、そのタンパク質そのものの形を見ることがメカニズムを理解する近道だろう”というものであった。その時点で、似た働きをする別のタンパク質の構造がすでに解かれていたので、私たちが構造解析したタンパク質とそのタンパク質の構造を比較した。すると、極めて興味深い違いが観察された。私たちはこの比較をもとに“このタンパク質が二つの状態を行ったり来たりして構造を変えながら働く”というメカニズムを予想した論文を意気揚々と英文誌に投稿したが、残念ながら却下されてしまった。「別のタンパク質との構造比較に意味があるのか」、「メカニズムを支持するほかのデータを示せ」というのがレビュアーの指摘だった。落ち込んだ私はボロボロの博士論文を書き、審査の先生方にこってり絞られたのを覚えている。 何とか博士論文の審査を切り抜けた私は、指導教官の横山茂之先生が理研にも研究室を構える関係から、そこのポスドクになった。2004年4月のことである。さて、この仕事をどのようにまとめようか。頭を冷やして考えれば、レビュアーの言い分はもっともではある。ヒントを得るために、変異体解析を行った。構造解析した結果をもとに、タンパク質の重要そうな部分に変異を入れ、その働きにどのような影響が出るかを調べるのである。多くの変異体を作製して調べてみると、その中に興味深いものが見つかった。これらの変異がどんな悪さをしているかを考えれば、正しい反応メカニズムに到達できるはずだ。二つの状態の間でのスムーズな動きが妨げられているのではないかと考え、いろいろな方に相談したが、なかなか腑に落ちる解釈にはたどり着けなかった。 ある時、一つのことに気付いた。私たちは最初に思い付いたストーリーにこだわり、構造変化を繰り返すことが反応メカニズムの本質であるように思い込んでいた。しかし、そのようなややこしいストーリーを考えるまでもなく、説明はついてしまうのだ。私たちが最初に解析した構造で、タンパク質はRNAを不自然な形に押し曲げていた。同じようなことが生体内で起これば、それまで形成されていたRNAの構造は壊され、タンパク質はRNAの構造を変えることができるだろう。つまり、“タンパク質がRNAと強く結合し、そこでぎゅっと形を変える”というシンプルなメカニズムだ。 この新しいストーリーは、これまで知られていたRNAヘリケースの生物学的機能や生化学的データと極めてよく一致するものであった。書き直した論文は、今度はほぼ問題なく受理され、米国の学術誌『Cell』に掲載された。発行の日付は2006年4月21日、構造を解いてからおよそ3年もの時間がたっていた。最初に気付いた構造の違いがあまりにも印象的だったため、回り道をしてしまったのである。 ■ ※この研究成果のプレスリリースは下記URLを参照ください。 http://www.riken.jp/r-world/info/release/press/2006/060421_2/index.html |
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