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自動車のエンジン、シリンダヘッドのボリュームCADデータ

下は固体部分
自動車のエンジン、シリンダヘッドのボリュームCADデータ
下は固体部分、上は気体や流体が流れる部分(産業技術総合研究所ものづくり先端技術研究センター提供のソリッドCADデータをボリュームCAD化)
『次世代のものつくりの基盤「ボリュームCAD」を開発する』より


次世代のものつくりの基盤
「ボリュームCAD」を開発する

加瀬 究 
フロンティア研究システム ものつくり情報技術統合化研究プログラム
ボリュームCAD開発チーム チームリーダー




「匠の技」に支えられてきたものつくりの世界が、変わりつつある。設計、解析、加工、検査の各工程をコンピュータで行うようになってきたのだ。しかし、これまで工程によって用途別に開発されたさまざまなソフトウエアを使用しているため、データを統一的に扱うことができないという問題を抱えている。次世代のものつくりでは、データを統一的に扱うことができるシステムの構築が求められている。理研では2001年度から「ものつくり情報技術統合化研究プログラム」を立ち上げ、データ統合化の核となる「ボリュームCAD(キャド)(VCAD)」の開発に着手した。世界に類を見ないボリュームCAD開発の最前線を紹介する。

加瀬 究チームリーダー

CADとは
まず、CADとは何か。ボリュームCAD開発チームを率いる加瀬究(きわむ)チームリーダーはこう説明する。「CADは、Computer Aided Designの略。つまり、コンピュータを使って設計をすることです」
 かつて、設計図といえば手書きの図面だった。図面は断面だけだが、ものをつくるために必要なデータがすべてかかれている。職人は、図面から出来上がりの形状を思い浮かべ、ものをつくり上げていく。しかし、それには熟練が必要であり、最近日本では職人の技を受け継ぐ若者が育っていない。
 「職人の技を頼らずに済ませるには、どうしたらよいか。図面にかかれているデータを、すべてコンピュータで扱えるデータに置き換えることです。しかも断面ではなく、だれが見ても分かるように3次元の形状を表現しようというのがCADの原点です」
 CADの概念が出てきたのは1960年代。それ以来、3次元の複雑な形をより精密に表現しようと、CADは進化を続けてきた(図1)。3次元空間に置いた点と点を結んだ線で形状を表現したのが、ワイヤーフレーム・モデルである。表面の一部分だけ皮をかぶせたのがサーフェス・モデル、そしてさらに進んで、表面全体に皮をかぶせて外と内の区別ができるようにしたのがソリッド・モデルだ。
 CADは自動車や機器、建築物など、身の回りにあるさまざまなものの設計に使われ、ものつくりに不可欠なシステムとなっている。

図1 3次元CADにおける形状モデルの進化


ものつくり情報の統合化
現在のものつくりにおいてコンピュータを使うのは、設計だけではない。ものつくりの工程には、設計、解析、加工、検査があり、それぞれの段階でコンピュータが使われている。コンピュータを使った設計はCAD、解析はCAE(Computer Aided Engineering)、加工はCAM(キャム)(Computer Aided Manufacturing)、検査はCAT(キャット)(Computer Aided Testing)と呼ばれる。しかし、それぞれの工程で異なるソフトウエアが使われているため、データを統一的に扱うことができない。変換によってデータが欠落することもある。そして一番問題となるのは、従来のCADでは適切なシミュレーションができないことだ。
 ものをつくるときには、さまざまな実験を行って、ものの性能や強度などを解析する必要がある。実験には試作品が必要だ。しかも、実験によって設計を修正し、再び試作品をつくって実験するということを何度も繰り返さなければならないため、多くの時間とコストがかかってしまう。その問題を解決してくれるのが、シミュレーションだ。
 試作品をつくらずとも、コンピュータで実験をシミュレーションできれば、時間とコストが大幅に削減できる。しかし、加瀬チームリーダーは「これまでのサーフェスやソリッドのCADデータは、シミュレーションに直接使えません」と指摘する。「ソリッド・モデルは、確かにそれっぽく見えますが、実際のものとはずいぶん離れています。実際のものは、金属であったりプラスチックであったり、それぞれ性質の異なった中身が詰まっています。ところがソリッド・モデルは3次元CADといいながらも、皮だけで、中はがらんどうなんです」
 ソリッド・モデルをシミュレーションに使うこともできるが、メッシュと呼ばれる細かい要素に分割しなければならず、それが大変なのだという。しかも、パーツを取ったりくっつけたりする複雑な操作をしていると、数値誤差がたまって穴が開いてしまったりして破綻することがある。
 「そこで、シミュレーションに直接使えるように、もっとリアルなもの、中身が詰まっている“真の3次元CAD”をやりましょうというのが“ボリュームCAD(VCAD)”の始まりです」
 こうして2001年4月、理研に「ものつくり情報技術統合化研究プログラム」(プログラムディレクター、牧野内昭武)が立ち上がった。「普通は“ものづくり”と濁ることが多いですが、牧野内ディレクターが“ものつくり”の方がきれいだと主張したのです。“ものつくり大学”の総長をされている哲学者の梅原猛さんも、“ものつくり”の方が日本語としてきれいだとおっしゃったらしいですね」
 研究プログラムは、ボリュームCAD開発チーム、VCAT開発チーム、製品機能シミュレーションチーム、加工成形シミュレーションチーム、VCADものつくり応用チーム、そして事業化推進チームから成る。「事業化推進チームがあることからも分かるように、研究をして論文を書くだけでなく、その成果を使えるようにすることが、このプロジェクトに与えられた任務でもあるのです」
 プロジェクトの核となるボリュームCADの開発を任された加瀬チームリーダーは、「どうせやるならば、まったく新しいシステムをつくりたい」という思いを抱いて、大きな課題に立ち向かっていった。「CAD、シミュレーション、CAM、CATを完全に統合する、次世代のものつくりの基盤システムになるものを狙っていました」


Kitta Cube――切った立方体
「とにかく中身をボクセルと呼ばれる立方体で埋めてしまおう、というのがボリュームCADの第一歩でした」と加瀬チームリーダーは語る。
 2次元の形状を表す基本単位が「ピクセル」であり、「ボクセル」はその3次元版だ。ソリッド・モデルは連続体のため一部分だけ取り出すことは不可能だ。一方、ボクセル・モデルでは立方体1個1個に番地が書き込めるため、ばらばらにして複数のコンピュータで別々に処理できるという利点もある。大きなデータを扱う場合、並列処理ができることは重要である。
 しかし、立方体を積み重ねただけの従来のボクセル・モデルは、表面が凸凹していて“美しくない”(図1)。そこで加瀬チームリーダーと手嶋吉法(よしのり)研究員は、新しい方法を考えた。「表面を滑らかにするには、やはり斜めの面が欲しい。そこで、立方体の中に三角形の面を閉じ込めたのです」
 立方体の縁にある線(稜)1本ごとに1点を決め、3点を結んで三角形の面で仕切ってしまうことにしたのだ(図2)。複雑な形状を三角形で近似してしまうという“思い切った”方法だが、切断点の置き方だけを数えても2万3520パターン、全体としては1064パターンもの多様な仕切り方を実現できることが、手嶋研究員によって明らかにされている。実際、図1を見ると、ボリューム・モデルはボクセル・モデルよりも細かい形状を表現できることが分かるだろう。
 この方法を手嶋研究員と加瀬チームリーダーは「Kitta Cube(キッタ キューブ)」と名付けた。Kittaは日本語の「切った」。つまり「切った立方体」ということだ。日本発のオリジナルであることを世界に示したいと考え、日本語と英語を組み合わせた名前にしたのだという。

図2 Kitta Cube


セルを階層化する
「ボリュームCADの一番大事なところは、セルと呼ばれる立方体に形状の情報だけでなく物性値も入っていることです」と加瀬チームリーダーは言う。物性値とは、硬度、温度、ひずみなど、さまざまな変数を指す。これまでCADは形状を表すものであり、物性値を入れたものはなかった。「形と物性を一緒の枠組みで表現する。これは誰でも考えそうなことですが、今まではないんです」
 ボリュームCADのセルは2種類に分けられる。境界を持っているもの(境界セル)と、境界を持っていないもの(非境界セル)だ(図3)。境界はものの輪郭でもあるから、境界セルは形状の情報と外と内の2種類の物性値を持つ。外は空気、内は鉄といった具合だ。一方、非境界セルは1つの物性値だけを持つ。境界セルと非境界セルを重ねていけば、鉄の中にさらにアルミがあるといった多媒質も表現できる。
 加瀬チームリーダーは、プロジェクトが始まって2年目、開発中のソフトウエアに大きな改変を加えた。「セルのサイズを場所によって変えることができる階層化版を、企業から来てもらっている宇佐見修吾研究員が中心となってつくりました。形状や物性値の変化率が大きいところは細かいセルになっていた方が、都合がいいでしょう。それをできるようにしたのです(図4)」
 細かい形状を表現するには、同じサイズの小さいセルを積み上げた方がきれいだが、何もないところにも小さいセルが必要になり、無駄だ。形状の変化が多いところ、物性の変化が大きいところだけ「八分木(はちぶんき)(octree)法」を用いて細分化することで、データ量を少なくすることができる。セルの各辺を二分すると、1個のセルが8個に分かれる。これが八分木法だ。
 「セルの中に面を入れたこと。セルを階層化すること。ボリュームCADの特徴は、大きくいうとこの2つです。でも、こういう考え方をしているCADはほかにはありません。どうせやるならば、自分たちだけしか考えつかない、まったく新しいものをつくりたいと思っていました」
 そしてプロジェクト3年目には、ボリュームCADのフレームワークをつくった。「フレームワークとは、いわば道路のようなインフラですね。使いたい人が自由に使えるような関数を提供しようというものです」
 現在は、データを数台のコンピュータで並列処理するためのシステムづくりを加藤昌也研究員が中心となって進めている。

図3 ボリュームCADデータの2種類のセル
図4 6階層で示したボリュームCADデータ

鋳造・射出成形のシミュレーションに期待
プログラム全体では、ボリュームCADに関して現在までに30数件の特許を申請している。特許化したものはすでに企業によって使われ、実際に製品が販売されている。
 開発中のボリュームCADソフトウエアは、プロジェクトの研究チームに使ってもらうのはもちろん、「ボリュームCADシステム研究会」を立ち上げ、会員の企業や研究者に使用してもらい、その結果を開発にフィードバックしている。
 「研究会の中では、“ボリュームCADは鋳造やプラスチックの射出成形にはかなりいい、使ってみたい”という声が多いですね」と加瀬チームリーダーは確かな感触をつかんでいる。
 ものつくりでは、設計に基づいて金型(かながた)をつくり、そこに溶かした金属やプラスチックを流し込んで固める鋳造や射出成形が一般的に行われている。しかし、実際に成形してみると、ゆがみが出たり、ひびが入ったり、肝心なところにすができたりしてしまうことがある。これまでは、そのたびに金型を直していた。
 ボリュームCADを使えば、実際に金属を流し入れなくてもシミュレーションによって、最適な金型の形状を導き出すことが可能になる。完成形だけでなく、鋳造するときの金属の流れもシミュレーションできるため、不具合の原因を突き止め、対策も取りやすい。ボリュームCADによるシミュレーションは、従来の直交格子のメッシュを使って行ったシミュレーションよりも、実験結果に近いことが分かるだろう(図5)。これは、水のように境界がはっきりしないものと、逆に境界がはっきりしてほしい斜めの向きの流路の両方を自然に表現できる、ボリュームCADの特徴をよく現した例である。

図5 ボリュームCADによる鋳造シミュレーション


広がるボリュームCADの可能性
次世代のものつくりの基盤システムを目指して開発が進められているボリュームCADであるが、対象は人工物だけではない。地殻変動や人体の血流にも用途は広がる。去年から参加した大竹豊研究員の活躍も期待されている。「人工物から自然物、そして固体シミュレーションにも液体シミュレーションにも使える汎用性も、ボリュームCADの魅力です」
 そして加瀬チームリーダーは、ボリュームCADの未来をこう語った。「ゆくゆくはボリュームCADのソフトウエアを無償で公開していく予定です。それを学生や若い研究者が使って、新しいものを生み出すことに役立てば、うれしいですね」



監修 
フロンティア研究システム
ものつくり情報技術統合化研究プログラム
ボリュームCAD開発チーム
チームリーダー 加瀬 究

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タンパク質の構造を電子顕微鏡で決定し、
医療に役立てる

宮澤淳夫 
播磨研究所 メンブレンダイナミクス研究グループ
生体マルチソーム研究チーム チームリーダー




2003年、宮澤淳夫チームリーダーらは、筋肉細胞が神経細胞からの指令を受け取るときに働く「アセチルコリン受容体」と呼ばれるタンパク質の構造を電子顕微鏡により決定した。「この研究成果に対して、てんかんや筋無力症などの難病治療に取り組む医師の方々から大きな反響がありました。私たちの構造解析の成果をもとに、これらの難病の発症メカニズムが、初めて分子レベルで解明できるかもしれないからです」。こう語る宮澤チームリーダーは、電子顕微鏡による解析技術を発展させ、病気の原因となるタンパク質の構造を決定して医療に役立てる「Structural Medicine」という新しい分野を切り開こうとしている。

宮澤淳夫チームリーダー
アセチルコリン受容体
図1 神経細胞と筋肉細胞のシナプスの模式図 「命の仕組みをタンパク質の機能から読み取る。それが究極の目標です」と宮澤チームリーダーは語り始めた。では、命とは何か。
 「外界からの刺激を受けて応答することが、“生きている”、“命がある”ということだと思います。応答は1個1個の細胞の働きにより実現します。さらに、その細胞の働きはタンパク質の機能に基づいています。命の仕組みを知るには、タンパク質の機能メカニズムを調べることが重要なのです」
 宮澤チームリーダーは、刺激に対する応答で重要な役割を果たす「アセチルコリン受容体」の解明に取り組んできた。アセチルコリン受容体は筋肉細胞の細胞膜に埋め込まれていて、神経細胞の終末から放出されるアセチルコリンを受け取る(図1)。受容体にアセチルコリンが結合するとイオンの通り道(チャネル)が開き、細胞外からプラスの電気を帯びたナトリウムイオン(Na+)が流入し、電気信号が発生する。こうして神経細胞からの情報が伝わり、筋肉が収縮する。
 アセチルコリンのように、神経細胞の情報を伝える化学物質を「神経伝達物質」と呼ぶ。現在、数十種類の神経伝達物質が見つかっているが、アセチルコリンは1921年に最初に発見された神経伝達物質だ。1970年にはアセチルコリン受容体が発見され、1982年には京都大学の沼正作(しょうさく)教授(当時)らがそのアミノ酸配列(1次構造)を決定した。
 そもそもタンパク質は、遺伝子の情報に基づいて約20種類のアミノ酸が連なってできている。沼博士らはアセチルコリン受容体をつくるアミノ酸のつながり方を解明したのだ。
 ただしそれだけでは機能メカニズムは分からない。タンパク質は、アミノ酸の1次元的な連なりが複雑に折り畳まれて3次元的な立体構造を持つことで機能を発揮するからだ。


電子顕微鏡で構造を解く
英国医学研究評議会(MRC)分子生物学研究所のNigel Unwin(ナイジェル アンウィン)博士らは、1984年からアセチルコリン受容体の立体構造の決定に乗り出した。1995年からは宮澤チームリーダーがUnwin博士のグループに加わり、さらに理研播磨研究所メンブレンダイナミクス研究グループの藤吉好則グループディレクター(京都大学教授)の全面的な協力を得て、2003年に構造を決定した。構造決定には約20年もの歳月を要したのだ。そこにはどのような困難があったのだろう。
 タンパク質の構造解析の代表的な方法は、X線結晶解析である。これは、タンパク質の結晶にX線を当て、結晶中のたくさんのタンパク質分子からの回折像から立体構造を導く方法である。結晶回折法では、まずタンパク質の結晶化が必要なのだが、アセチルコリン受容体を含んだ細胞膜を生理的条件に近い状態で結晶化すると、シートのような2次元結晶が丸まったチューブ状結晶になる(図2)。しかし現在のところ、X線結晶解析では立体的な3次元結晶しか解析できない。薄い2次元結晶やチューブ状結晶では、得られる回折データが少なすぎて解析ができないのだ。
 結晶化を必要としないNMR(核磁気共鳴法)という方法も、タンパク質の構造解析で大きな成果を出し始めている。ただしNMRで解析できるタンパク質の大きさは、かける磁場の強さに依存するため、現在のところ分子量が約3万以下の小さな分子や、分子の一部分(機能ドメインなど)に限られる。アセチルコリン受容体の分子量は約29万なので、NMRで全体構造を解析することはできない。
 そこで宮澤チームリーダーらが用いたのが、電子顕微鏡による電子線結晶解析という第3の方法である。X線に比べて電子線は物質との相互作用が強い。このため強い回折データが得られ、2次元結晶やチューブ状結晶を解析できるのだ。ただし、その強い相互作用によって発生する熱でタンパク質の構造が壊れてしまうという問題点がある。それを克服するためには、試料をできるだけ冷やさなければならない。
 宮澤チームリーダーは、藤吉グループディレクターが長年の苦労の末に開発した極低温電子顕微鏡を駆使してアセチルコリン受容体の撮影を行った。この顕微鏡は、液体へリウムにより−269℃という極低温に試料を冷却してダメージを最小限に抑えて撮影できる、世界に数台しかない装置である。ただし、アセチルコリン受容体の構造解析には約1万枚の写真を撮影する必要があり、8年もの歳月がかかった。その理由を宮澤チームリーダーはこう説明する。
 「アミノ酸配列(1次構造)を立体構造に当てはめるには4Å(1Åは100億分の1m)という原子スケールの分解能が必要です。それには約100万個のタンパク質分子からの回折データを集め、それを平均化しなければなりません。X線で3次元結晶を解析する場合、その結晶中に少なくとも100兆個以上の分子が含まれているので、1回撮影すれば原子構造を決定するのに十分な4Å以上の高い分解能が得られます。しかしアセチルコリン受容体のチューブ状結晶には、たった3000個の分子しかありません。だから300枚以上の写真が必要なんです。しかも撮影した写真がすべて使えるわけではない。例えばチューブが曲がっていたりすると解析に使えません。1万枚から解析に使える写真をようやく359枚得て、アセチルコリン受容体の立体構造を決定することができたのです(図3)」


100億分の1mの精度で制御
立体構造から、どのような機能メカニズムが分かったのだろう。
 アセチルコリン受容体は、細胞膜を貫く5つのサブユニットが環状に並んでいる。膜の外側にアセチルコリンをとらえる「リガンド結合領域」が2カ所ある。イオンの通り道となるチャネルは「膜貫通領域(図4)」の内側にあり、5個のらせん構造(αへリックス)が環状に並んで5角形のリングをつくっている(図5)。2カ所のリガンド結合領域にアセチルコリンが結合すると、リガンド結合領域が回転し、それに連動して膜貫通領域にある2つのαヘリックスが回転する。すると5角形のリングが変形して外側に広がってチャネルが開き、ナトリウムイオンが流入する。
 ナトリウムイオンの直径は2Åところがチャネルは閉じた状態でも、リングの穴の直径は6Åある。なぜナトリウムイオンは6Åのリングを通れないのか。「生体の中では、プラスのナトリウムイオンの周りに水分子がくっついて水和状態にあります。水和したナトリウムイオンの直径は8Å。だから6Åでは通れない。ところがチャネルが開くとリングの直径が9Åに広がり、水和した8Åのナトリウムイオンが通れるようになるのです。さらにチャネルが閉じているときには、バリンやロイシンなど疎水性のアミノ酸がリングの表面にあって水をはじいている。ところが開いた状態になると、αへリックスが回転してセリンなどの親水性のアミノ酸がリングの表面に現れ、水和したナトリウムイオンが通りやすくなります」。このような受容体の巧妙なメカニズムが、原子スケールで立体構造を決定することにより初めて明らかになったのだ。
 神経伝達物質の受容体として初めて立体構造が決定されたのが、アセチルコリン受容体である。この受容体はリガンド結合領域とイオンチャネルが一体となった「リガンド開閉型イオンチャネル」と呼ばれるタイプである。セロトニンやGABA(γ-アミノ酪酸)、グリシンなどの神経伝達物質の受容体も同タイプであり、同じような機能メカニズムを持つと考えられる。宮澤チームリーダーらによる今回の研究成果は、脳・神経科学へ大きな貢献を果たすものである。

図2 図3 図4 図5


病気の原因解明に貢献
「今回の研究成果について最初にかかってきた電話は、医学部の先生からのものでした。“私が担当している、てんかんの患者さんの病因がこれで解ける!”と言うんです」
 てんかんは、脳の神経細胞の異常な活動によって、発作やけいれん、意識喪失などの症状を示す病気である。ある種の家族性てんかんでは、遺伝子の変異により、神経伝達物質の受容体のある部分のアミノ酸がセリンからロイシンに入れ替わっていることは、すでに突き止められていた。しかしそれが受容体の機能とどう関係しているのかがまったく分からなかった。「私たちは、アセチルコリン受容体のチャネルが開くとき、αヘリックスが回転して親水性のセリンが表面に現れ水和したイオンを通しやすくすることを突き止めましたが、そのセリンが疎水性のロイシンに入れ替わっていたのです。従って、チャネルは開いてもイオンが通りにくくなっていると考えられます」
 宮澤チームリーダーらの研究成果は、筋力が衰える筋無力症の病因究明にも道を開いた。「家族性の筋無力症では、受容体のリガンド結合領域と膜貫通部位の接続部分にアミノ酸変異があることが分かりました。アセチルコリンが結合してリガンド結合領域が回転しても、膜貫通領域への連動がうまくいかず、チャネルの開閉が制御できなくなっているらしいのです」。タンパク質の立体構造の決定は、病気の原因解明に直結し、難病の根本治療への道を開くのだ。
 「私たちの研究からたとえタンパク質の構造が分かっても、すぐには病気は治せません。しかし、治療にあたる医師、病気で苦しむ人々に、“どうしてこんなことになっているのか”、その訳を説明することができる。納得できる科学的な理由とその蓄積が人間にとって大切なんだと思います」


電子顕微鏡による新解析法
図6 単粒子解析でとらえたIP3受容体の全体構造
宮澤チームリーダーは、電子顕微鏡による解析法をさらに発展させようとしている。図6の黄色部分は「単粒子解析」という方法でとらえた「IP3受容体」というタンパク質の全体構造である。「タンパク質分子を精製して、1個1個のタンパク質をいろいろな向きから撮影して立体構造を導いたものです。この方法ではタンパク質を結晶化する必要はありません。しかし10〜20Åと分解能が悪いので、アミノ酸配列は分からない。ただし全体構造が分かれば、そこにほかの解析方法により原子スケールで決定された部分構造を当てはめていくことができます。しかし、この解析法は現在も発展途上にあります。IP3受容体を発見し、研究を先導してきた理研脳科学総合研究センターの御子柴克彦グループディレクター(東京大学教授)の先見性、私たちとともに解析を行った産業技術総合研究所の佐藤主税(ちから)グループリーダーの執念ともいえる努力、そして藤吉グループディレクターの卓越性。これは共同研究というよりも、まさに藤吉グループディレクターのいわれる“総力戦”そのものです」
 研究チームは、「電子線トモグラフィー」という新しい手法の開発にも取り組んでいる。「細胞の中で、タンパク質はほかのたくさんのタンパク質と相互作用しながら機能を発揮しています。タンパク質の機能を知るには、組織におけるタンパク質同士の配置と相互作用を知る必要があります。組織を切片にして、いろいろな角度から電子顕微鏡で撮影すれば、30〜50Åの分解能で、タンパク質の立体的な配置が分かります」。ただし、その画像ではタンパク質の種類を識別できない。宮澤チームリーダーらは、電子顕微鏡で観察できる標識を任意のタンパク質に正確に取り込ませる技術を開発しようとしている。
 「電子顕微鏡によるタンパク質の解析には、原子スケールの構造を見る電子線結晶解析、1個の分子の全体像を見る単粒子解析、組織に埋まっている状態のタンパク質群を見る電子線トモグラフィーの3つの手法があります。この3つの手法を組み合わせて解析することにより、タンパク質が実際の体の中でどのように働き、命の仕組みを支えているのかが、見えてくるはずです」


Structural Medicineを目指す
「今まではX線でも電子線でも解析しやすいタンパク質を対象としてきました。しかし、もうそんな時代ではありません」と宮澤チームリーダーは強調する。これまで立体構造が決定されたものの多くは、たくさんの分子をつくり結晶を得やすいバクテリアのタンパク質である。「ヒトの体で働いているタンパク質と似ているものを、バクテリアで探して解析する例が多かったのです。しかし、それは似て非なるもの。現在では、分子生物学の進展によりヒトの遺伝子を発現させてたくさんのタンパク質をつくり、結晶を得ることも可能になってきました」
 宮澤チームリーダーは、電子顕微鏡の手法を発展させ、構造解析を医療に役立てる「Structural Medicine」の確立を目指す新たなプロジェクトを立ち上げようとしている。「アセチルコリン受容体の構造決定が“すごく励みになった”と、難病治療に取り組む医師の方々からメッセージをいただきました。私たちのような基礎研究でも、人の幸せのために役に立つことができるのです。これからは解析しやすいタンパク質ではなく、解析すべきタンパク質、すなわち病気に関係しているタンパク質を積極的に調べる時代だと思います」



監修 
生体マルチソーム研究チーム
チームリーダー 宮澤淳夫

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SPOT NEWS
『メラニン色素』の
輸送メカニズムを解明

肌や髪の毛が黒くなる仕組み

2004年11月15日、文部科学省においてプレスリリース



当研究所は、メラノサイト(メラニン色素産生細胞)がメラニン色素を輸送する分子メカニズムを解明した。メラニン色素はメラノサイトと呼ばれる皮膚の内側に存在する特殊な細胞の中で合成され、メラノソームと呼ばれる膜に包まれた袋(小胞)に貯蔵される。今回、膜輸送の制御にかかわる低分子量Gタンパク質Rab27Aと、エフェクターと呼ばれる結合分子Slac2-aおよびSlp2-aに着目し、これらの分子の機能を阻害する実験を行った。その結果、Rab27AはSlac2-a、Slp2-aを連続的に用い、メラノソームをメラノサイトの核周辺から細胞膜まで輸送していることが分かった。今後、これらの分子の活性化・不活性化を促す薬の開発が進めば、肌の美白の維持や白髪発生の抑制などの研究にも役立つものと期待される。この成果について、福田光則ユニットリーダー(福田独立主幹研究ユニット)に聞いた。

――メラニン色素について説明していただけますか。
福田:ご存じのように、日焼けなどによって肌が黒くなるのはメラニン色素が皮膚に沈着するからです。メラニン色素は皮膚の細胞でつくられるのではなく、メラノサイトと呼ばれる特殊な細胞で合成され、メラノソームと呼ばれる細胞内の小さな袋(小胞)に貯蔵されます。この袋が細胞の中央部から細胞膜近くまで運ばれ、皮膚や髪の毛をつくる別の細胞に受け渡されて、初めて肌や髪の毛が黒くなります。

――今回、解明したメカニズムはどのようなものでしょうか。
福田:膜輸送の制御にかかわる「Rab27A」というタンパク質が、2種類の特異的な結合タンパク質(エフェクターと呼ばれるパートナー分子)を連続的に使って、メラノソームをメラノサイトの核周辺から細胞膜まで輸送していることを突き止めました。メラノソームを“荷物”に例えると、「Rab27A」は“荷札”、エフェクター分子の「Slac2-a」はメラニン色素の“運転手”として荷物を届け先の近くまで運びます。次に“宅配人”役の「Slp2-a」により届け先(細胞膜)に配達されることになります。

図1 分子レベルで見たメラノソームの輸送メカニズム

――Rabとエフェクターについて教えていただけますか。
福田:膜輸送を制御する因子として、酵母からヒトまで普遍的に保存されているものの代表が、低分子量Gタンパク質Rabです。ヒトには60種類以上のRabが存在しており、それぞれが固有の膜輸送を制御すると考えられています。RabはGTPを結合した活性化型とGDPを結合した不活性化型の2つのフォームをとり、活性化型のGTP-Rabは特異的な結合タンパク質(エフェクター分子)と結合することにより、膜輸送を促進します。実は、1種類のRabに対して複数個のエフェクター分子が見つかっているケースが多いのですが、エフェクター分子同士の機能的な関係はこれまであまり分かっていませんでした。今回のように、Rab27AがSlac2-a、Slp2-aという2種類のエフェクター分子を連続的に用いているという発見は、非常にインパクトがあったのではないかと思っています。

図2 Slac2-a、Slp2-aを欠損したメラノサイトにおけるメラノソームの輸送異常(赤線=細胞膜)

――今後期待することは。
福田:従来の美白化粧品は、メラニン色素の合成を抑えるものが主流でした。今後は、皮膚や毛髪の細胞への受け渡しを抑えることを狙った新薬の開発が期待できると思います。今回の研究成果の発表後に、多くの化粧品メーカーから問い合わせがあり、関心の高さを実感しています。




プレスリリースは下記URLを参照ください。
http://www.riken.jp/r-world/info/release/press/2004/041115/index.html

本成果は、英国の科学雑誌『Nature Cell Biology』のオンライン版(11月15日)において発表され、朝日新聞(11/15)など多数の新聞に取り上げられた。


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SPOT NEWS
フォトクロミック蛍光タンパク質、
Dronpa(ドロンパ)

新規蛍光タンパク質を使った書き換え可能な
光メモリー技術の開発に成功

2004年11月19日、文部科学省においてプレスリリース



当研究所は、細胞内の特定分子を光でラベルし、その動きを追跡することを何回も繰り返して行うことができる新しい蛍光タンパク質を作製した。理研脳科学総合研究センター細胞機能探索技術開発チームの宮脇敦史チームリーダー、安藤亮子テクニカルスタッフらによる研究成果。クラゲなどに由来する蛍光タンパク質を使って、生体分子をラベルして可視化する技術は広く普及しているが、ラベル―追跡が1回のみに限るという問題があった。研究チームでは、光ラベルと脱ラベルが何回も繰り返してできる新しい蛍光タンパク質「Dronpa(ドロンパ)」を開発し、上記の技術的な問題を克服することに成功した。この成果について、宮脇チームリーダーと安藤テクニカルスタッフに聞いた。

――生物学研究で、蛍光タンパク質はよく用いられています。これまでの蛍光タンパク質はどこが問題だったのでしょうか。
宮脇:一般的な蛍光タンパク質を用いたイメージングは、蛍光の分布の定常状態を観察できますが、その動的な側面に関してはほとんど情報をもたらしません。以前、私たちがヒユサンゴから開発した蛍光タンパク質Kaede1(カエデ) などは、分子を光でラベルして(蛍光を緑色から赤色に変化させて)その動きを追跡することを可能にしました。ただ、ラベル反応が不可逆的である(赤色から緑色に戻らない)ため、ラベル―追跡が1回のみに限られています。生体分子は絶えず動いており、その動きは条件によって変化します。生体分子の動きの変化を経時的に追うために、光ラベルを何回も繰り返してできる技術が求められてきました。

――Dronpa(ドロンパ)、ユニークなネーミングですね。
宮脇:蛍光が「ドロン」と消えて「パッ」と光る、その蛍光が消えたり現れたりする様子を“Dron”と“pa”で表しています。paはphoto activation(光で蛍光タンパク質が活性化する)の略称でもあります。蛍光を出現させる場合に紫色の半導体レーザー光(405nm)を、蛍光を消す場合に青色のアルゴンレーザー光(488nm)をDronpaに照射することで、蛍光のオン・オフを自在に制御できます。図1はDronpaをガラス板の上に塗り付け、先ほどの2種類のレーザー光を当て、書き換えを繰り返した結果です。

図1 ガラスに塗ったDronpaに顕微鏡を用いて描いた文字

図2 ウミバラ科のサンゴ ――書き換え可能な性質をどのように発見したのですか。
安藤:この蛍光タンパク質はウミバラ科サンゴから発見しました(図2)。野生型には面白い性質が見つかりませんでした。しかし、遺伝子改変を加えて改良を重ねた結果、蛍光がついたり消えたりするユニークな性質を持たせることができました。この研究をどのように進めるべきか検討を重ねながら、粘り強く取り組んだことが今回の成果に結び付いたと思います。さらに研究を進めて、ドロンパがなぜ書き換え可能な性質を持つのかについて、詳細に解析できればと思っています。

――今後どのような応用が期待されますか。
宮脇:この技術を細胞生物学に応用して、MAP kinase2(マップ キナーゼ) という細胞内情報伝達分子にDronpaを融合し、この分子の細胞質―核間の往来を繰り返し観察しました。その結果、細胞増殖因子刺激により、MAP kinaseの核への流入と核からの流出の両方が亢進(こうしん)することを、初めて証明することができました。これは蛍光ラベルを1つの細胞で何度も繰り返して観察できるDronpaならではの成果です。細胞質―核間を移動する分子は、MAP kinaseのほかにも多く存在します。そうした分子の中には、創薬における疾患関連分子として注目されているものもあり、医薬品開発においてDronpaを利用した「可逆的光ラベル技術」が活躍できるものと期待しています。




プレスリリースは下記URLを参照ください。
http://www.riken.jp/r-world/info/release/press/2004/041119/index.html

本研究成果は、米国の学術雑誌『Science』の11月19日号に掲載され、日本経済新聞(11/19)など多数の新聞に掲載された。


※2:MAP kinase(マップキナーゼ)
タンパク質のリン酸化酵素の一種。
酵母からヒトに至るまで真核生物に普遍的に存在する。細胞増殖、分化、アポトーシスなどの生命現象において働く。


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TOPICS
埼玉県と包括的協力協定を締結


上田清司埼玉県知事(左)と野依良治理研理事長当研究所と埼玉県は、1月20日、科学技術の振興およびその成果の地域社会への還元などの事業を実施することにより、地域産業の振興、住民生活の質の向上を図るため、「独立行政法人理化学研究所と埼玉県との相互協力に関する基本協定書」を締結しました。野依良治理事長と上田清司埼玉県知事、野木実和光市長らが出席して、和光本所・大河内ホールで調印式が行われました。この協定書の下で、両者は協力して、理研の世界有数の研究ポテンシャルを最大限に活用し、地域の国際化や研究環境の充実を図ります。埼玉県に国際競争力を持つ自然科学の知を集積し、得られる成果をもとに地域に新たな産業の創出を促進するとともに、次代のわが国を担う人材の育成を目指します。具体的には、和光市全域を対象とした構造改革特区「国際研究開発・産業創出特区」を国に申請し、外国人が暮らしやすい街づくりを推進することにより、理研の研究活動をより活性化することなどを挙げています。



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竹市雅俊センター長、日本国際賞を受賞

理研発生・再生科学総合研究センターの竹市雅俊センター長が、2005年の日本国際賞を受賞しました。竹市センター長は、細胞同士がカドヘリン分子の働きで接着する機構を解明、この業績が高く評価されたものです。同賞は科学技術において、独創的・飛躍的な成果を挙げ、科学技術の進歩に大きく寄与し、人類の平和と繁栄に著しく貢献したと認められた人に与えられます。

竹市 雅俊



竹市 雅俊 (たけいち まさとし)
1943年11月27日、愛知県生まれ。名古屋大学理学部生物学科卒業。理学博士(京都大学)。京都大学理学部教授、岡崎国立研究機構客員教授を経て2000年より現職。朝日賞、日本学士院賞などを受賞。


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受賞のお知らせ(2004年5月〜10月)


受賞者
受賞名
受賞功績
受賞日等
FRS/加工成形シミュレーションチーム:浜孝之
日本塑性加工学会賞(新進賞)
静的陽解法FEMによるハイドロフォーミング解析の研究
2004.5

DRI/緑川レーザー物理工学研究室:杉岡幸次

LPM2004 Outstanding Oral Paper Award
ハイブリッドレーザープロセシングによるマイクロチップラピッドプロトタイピングに関する研究
2004.5
FRS/散逸階層構造研究チーム:松下祥子
Best Poster Award at EMRS2004
Hierarchical honeycomb structures prepared by dissipative process
2004.5

DRI/長田抗生物質研究室:臼井健郎

平成16年度がん分子標的治療研究会研究奨励賞
微小管チェックポイントを活性化する抗がん剤の開発
2004.5
BSI/言語知能システム研究チーム:谷口唯成
奨励賞(日本知能情報ファジィ学会)
区分的リアプノフ関数による非線形システムの安定化
2004.6
BSI/分子精神科学研究チーム:豊田倫子
日本脳科学会奨励賞
PMX2B遺伝子のポリアラニン鎖長多型と斜視を伴う統合失調症との相関
2004.6

FRS/ものつくり情報技術統合化研究プログラム:牧野内昭武

第14回型技術協会賞「功績賞」
プレス成形シミュレーション技術の研究を通し日本のプレス金型業界の技術力並びに国際競争力向上に貢献
2004.6
RCAI/サイトカイン制御研究グループ:平野俊夫
藤原賞
サイトカインの分子生物学的研究
2004.6
RCAI/免疫寛容研究ユニット:坂口志文
The William B. Coley Award
The role of regulatory T cells in the immune system
2004.6
FRS/ボリュームCAD開発チーム:手嶋吉法
形の科学会奨励賞
Dense packing of equal circles on a sphere by the Minimum-Zenith Method
2004.6
DRI/加藤分子物性研究室:木須孝幸
SNS2004 Conference Poster Award
Direct measurement of bulk superconducting electronic structures with sub-meV resolution
2004.7
DRI/鈴木化学反応研究室:鈴木俊法
The Broida Prize
遊離基(フリーラジカル)の分光学と化学反応論に関する卓越した業績
2004.7
FRS/巨視的量子コヒーレンス研究チーム:中村泰信
Agilent Technologies Europhysics Prize
The demonstration of quantum bits using superconducting circuits
2004.7
GSC/ゲノム解析用コンピューター研究開発チーム:沖本憲明
ポスター奨励賞(CBI学会)
Molecular Dynamics Simulations of liganded and unliganded proteins
2004.7
DRI/工藤環境分子生物学研究室:守屋繁春
The 2003 William Trager Award for Outstanding Paper (Co-winner)
論文:"Molecular Phylogeny of Three Oxymonad Genera: Pyrsonympha, Dinenympha and Oxymonas"
2004.7
FRS/生物制御システム研究チーム:木村英紀
2004年度計測自動制御学会著述賞
著書「制御工学の考え方」の中で、一般の人に制御の概念やその面白さ、重要性を分かりやすく解説した
2004.8
DRI/伊藤細胞制御化学研究室:戸谷希一郎
第7回日本糖質学会ポスター賞
糖メトトレキセート複合型分子プローブの合成と人工糖タンパク質創製への応用
2004.8
DRI/工藤環境分子生物学研究室:服部聡
Best Poster Award(International Symposium for Microbial Ecology)
Symbiotic Relationship Between Cellulose-Utilizing Protists and Their Associated Homoacetogens in the Gut of Lower Termite
2004.8
PSC/代謝機能研究グループ:山谷知行 PSC/コンパートメンテーション研究チーム:石山敬貴 PSC/コミュニケーション分子機構研究チーム:広瀬直也
日本植物細胞分子生物学会論文賞
論文:「Organization and Structure of Intracellular Localization of the Enzyme Protein in Rice Plants, Plant Biotechnology」
2004.8
DRI/伊藤細胞制御化学研究室:松尾一郎
日本糖質学会奨励賞
収斂的経路によるアスパラギン結合型糖鎖の効率的な合成法の開発
2004.8
FRS/加工成形シミュレーションチーム:長田隆
ACMD(Asian Conference on Multibody Dynamics) Best Paper Award
論文:"A Parallel O(N) Formulation for General Multibody Dynamics"
2004.8
FRS/局所時空間機能研究チーム:原正彦、Jaegeun Noh
Award for Best Poster Presentation
(Nano Korea 2004 Symposium)
ポスタープレゼンテーション:"Organic Molecular Assembly and Scanning Tunneling Microscopy"
2004.8
FRS:丸山瑛一
応用物理学会 功労会員
応用物理学の発展への寄与、及び応用物理学会に対する功績
2004.9
PSC:神谷勇治
IPGSA(International Plant Growth Substance Association) Distinguished Research Award
ジベレリン生合成に関する研究、及び当該研究分野の国際化への貢献
2004.9
BSI/神経成長機構研究チーム:上口裕之
日本神経化学会奨励賞
神経軸索成長の分子機構の研究
2004.9
DRI/理研BNL研究センター:山崎剛
2004年度素粒子メダル奨励賞(学会講演部門)
学会講演題目:「I=2ππ scattering length from two-pion wave function」
2004.9
FRS/VCADものつくり応用チーム:渡邉裕
べストプレゼンテーション賞(2004年度精密工学会秋季大会学術講演会)
講演:「屈折率傾斜(GRIN)光学素子へのELID研削加工の試み 第2報:ELID研削加工の最適条件について」
2004.9
DRI/ビームアプリケーションチーム:許健司、鈴木嘉昭 DRI/先端技術開発支援センター:岩木正哉
優秀ポスター賞
ポスター:「細胞外マトリックスとイオンビームを用いた冠状動脈用ステントの表面改質と生体適合性」
2004.9
播磨研究所/量子ナノ材料研究チーム:齋藤彰
第7回ロレアル 色の科学と芸術賞 金賞
モルフォ蝶ブルーの原理と実践
2004.10
DRI/長田抗生物質研究室:清水史郎
平成16年度日本癌学会奨励賞
薬剤耐性・転移に関与するがん分子標的の機能解析
2004.10
FRS/運動系システム制御理論研究チーム:細江繁幸、鈴木航大、Mikhail Svinin
Best paper in a Field of Robotics Technology(the Fourth International Conference on Advanced Mechatronics Award(ICAM'04))
論文:"A Study on Motion Planning for Rolling-Based Locomotion"
2004.10
BSI/分子精神科学研究チーム:豊田倫子
財団法人長寿科学振興財団 会長賞
機能性精神疾患の系統的遺伝子解析
2004.10
福田独立主幹研究ユニット:福田光則
平成16年度日本生化学会奨励賞
シナプトタグミン及びその類似蛋白質による膜輸送制御の分子メカニズム
2004.10
DRI/高木磁性研究室:山崎展樹
埼玉県高圧ガス会会長表彰
高圧ガス取り扱い業務への従事、保安の確保に関する功績
2004.10
DRI/古崎物性理論研究室:古崎昭
第19回西宮湯川記念賞
相互作用する一次元電子系における電気伝導の研究
2004.10
BSI/象徴概念発達研究チーム:入来篤史
Minerva Foundation Golden Brain Award
Awarded as recognition of sterling contributions to the neurobiology of vision and especially to the understanding of the dynamic cortical processes involved when motor responses are associated with visual input.
2004.10
BSI/細胞機能探索技術開発チーム:宮脇敦史
山崎貞一賞(バイオサイエンス・バイオテクノロジー分野)
「蛍光タンパク質の開発に基づくバイオイメージング技術の学際的革新」
2004.10
DRI/工藤環境分子生物学研究室:工藤俊章、本郷裕一、大熊盛也
Best Poster Award in the 10th International Congress for Culture Collection(ICCC-10)
ポスタープレゼンテーション:"Novel(sub) divisional lineages of bacteria found from the gut of termites"
2004.10

DRI:中央研究所 FRS:フロンティア研究システム BSI:脳科学総合研究センター GSC:ゲノム科学総合研究センター PSC:植物科学研究センター RCAI:免疫・アレルギー科学総合研究センター 

※受賞者の所属は受賞当時のものです。
 


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原酒
遠距離−車−通勤


臼井健郎
USUI Takeo
中央研究所 長田抗生物質研究室 研究員


筆者近影。通勤用の車と(和光研究所にて撮影) 最近、所属が和光研究所でも曜日により横浜研究所など別の支所へ勤務する方々が増えてきたのであまり目立たなくなってきたが、私は和光研究所に採用されてこのかた、つくば市から通ってきている。つくばからバス・電車通勤となると片道最低2時間半はかかってしまうので、当然のことながら片道1時間程度で済む車を使うことになる。毎日往復140kmのドライブである。毎朝7時半に子どもを保育所に預けて、常磐高速自動車道・外環道を乗り継ぎ、事故渋滞などに巻き込まれなければ9時前に職場に着く。帰りは日によって職場を出る時間が違うので一概にはいえないが、だいたい1時間以内に帰宅できる。水曜日の定時退所日だけは定時に出て(出るように努力して)再び保育所に行き、子どもを連れて帰宅する。子どもを預けている保育所はつくば市立で、どんなに遅くとも19時までしか預かってくれないので、渋滞などに巻き込まれると間に合うかどうか冷や汗ものである。幸いこれまで多少の遅刻で済んでいるのと保育所の先生の理解があるおかげで、世間でままあるらしい、「真っ暗な保育所の外で子どもが保母さんと立って待っていた」ことはない。

私がつくばに住んでいる理由は、妻がつくばの研究所に勤めているからにほかならない。しかし、つくばから通勤していることを知った周囲の方々から、いろいろとアドバイスをいただいた。そのほとんどが、つくばと和光の中間地点に住めばよいというものだ。それに対して私はいつもこう答える。「妻に、『家事と通勤、どっちを取る?』と聞かれて、『通勤!』と答えたんですよ」と。妻が専業主婦でなく同等(以上)に働く以上、お互い家事は分担せねばならない。しかし、家事分担を平等に半分にはできないのだから、現実的に考えてお互いがどちらかといえば負担に感じない方を担当するのがよいと思う。そうしないと、それこそ平等に疲れをため、生活自体がつらくなってしまうだろう。(別に調理、食器洗い、洗濯などが嫌なわけではありません。車なら1日500km程度を平気で走ってしまう性格なだけです。念のため)

車を使うメリット・デメリットはいろいろある。運転中のラジオは家で新聞を取っていない私にとって大事な情報源になっている。また一人でボーっとする時間も取れるし、その日の実験計画を練ることもできる。何よりも渋滞のときは日ごろ読む時間が取れず積(つ)ん読(どく)してある本をゆっくり読むことができる(!)。これらは大きなメリットだと思う。昔は渋滞に巻き込まれるとそれだけでイライラしていたが、最近はそれなりに楽しめるようになったのは年のせいだろうか? それに対しデメリットは、事故に遭う確率がどうしても高くなること(これまで追突されたこと3回、なぜか駐車しているときぶつけられたこと2回???)と、所内で行われるさまざまな人的交流(お酒の会!)に参加しにくいことか。しかしこれは肝臓の数値が入所時より改善されていることと表裏一体の現象でもある。

まぁ、慣れてみれば毎日140kmの車通勤など、他人がいうほどたいしたものではない、というのが実感である。が、唯一なんとかしたい点がある。毎日の高速料金とガソリン代だ。これがなんと1日約4千円、1カ月で約9万円にも上る。もう少し負担が少なくなってくれればいいのだが。






理研ニュース 

3
No.285
March 2005

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発行日
平成17年3月7日
編集発行
独立行政法人
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