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原酒
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野依良治理事長・
河合隼雄文化庁長官 新春特別対談 |
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文化に貢献する理研を目指して
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野依:理研は、自然科学と科学技術に関するわが国唯一の中核的な総合研究所として、国際的にも非常にレベルの高い、素晴らしい研究がなされています。今後とも輝ける理研であるために、日ごろ尊敬する河合先生にご教示賜りたいとお伺いしました。私は理事長に就任後、経営方針として5つの方針(野依イニシアチブ※)を出しました。その最後が“文化に貢献する理研”です。理研自身の文化度の向上がさらに素晴らしい科学を生み、そして理研の活動が日本の文化に貢献してほしいと思っています。私は科学というものは文化の重要な要素のひとつだと考えているからです。河合:サイエンスも広い意味の文化の中に入っていると思うのですが、むしろサイエンスがあまりにも強くなり過ぎました。これからは絶対に変わるべきだと思います。そして、文科系の人が理科系のことをまったく知らないのも問題です。知らないから偏見も持つ。理科系の人は、なんか固い、難しいことばかり言っていると、美的センスなんて関係ないと思い込んでいるところが、すごくあると思うんですね。日本が追いつけ追い越せと科学をやっているときは、あまり文化的なことを考えなくてもよかったのですが、これから先に進むとなるとレベルが全然変わってくると思うんです。 野依:私は自然科学者として、文化には4つの大きな要素があると思っています。ひとつは“科学”、それから“論理”、3番目が“情緒”、最後に“言葉”だろうと。この4つが合わさって、さまざまな多様な文化が生まれてくる。4つとも強く関係しており、いい科学を生み出すためにはやはり論理というか知性がちゃんとしていないといけない。また、情緒や言葉も大変大事だと思っています。 河合:言葉の中で、一番はっきりしているのが数式なんですよね。日常語は、あいまいさを持っていますから、サイエンスはそれをできるだけ排除しようとする。できたことを説明し、記述する場合は数式といったものが強いのですが、新しいものを見つけていくときには、あいまいさの中に入っていかないと駄目なんです。 野依:自然科学の発想の中に文化のさまざまな要素が入っています。特に知性とか論理性が強調されますが、情緒も大きな要素を占めているのではないかと思います。 河合:広い意味における美的センスのようなものですね。その美というのだって、すごく変わってきているわけです。音楽にしたって、昔だったら絶対に使わなかった和音を今はいっぱい使っている。それが、現代では調和して感じられるけれど、昔だったら拒否されたわけです。理科系のシステムでも、調和的システムと言ったって、調和のレベルとか質とかが変わってくるわけです。そういう点でも両者はすごく似ていると私は思います。 野依:やはり幼少時から知性も感性も、それから技術も培われなければいけないと思うんです。日本の教育では比較的若いときから理科系・文科系を分けますが、私は亡国への道だと思っているのです。 河合:私も絶対に反対です。高等学校くらいの年齢で理科系・文科系なんていうのは、本当におかしいと思います。 |
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激励 尊敬 士気
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野依:私自身遊びができるわけでもなく、仕事するだけが能ということで大学で教育と研究にあたって、人生を過ごしてきました。河合:先生の言われる仕事というのは、昔風に言うたら、遊びに近いんですよ。金も儲からないし、一人好きなことをやって(笑)。 野依:その通りです(笑)。研究所も大学もそうですけれども、研究を通して人を育てることが大事であって、人を疲弊させてはいけないと思うんです。しかし今の研究所では、評価とか資金調達とかいろいろなものが導入されて、人を疲れさせています。これは研究者だけではなくて、事務方にもいえるわけですが。そういった研究所の職員をエンカレッジ(激励)するには、研究所全体の文化度を上げなければならないと思っています。さもなければ人間が駄目になります。 河合:そうですね。私もせっかく文化庁にいるんだからおもろいことをやろうと、馬場あき子先生に来ていただいて、みんなで連歌をやった。ともかく五七五と言ったら、七七と言えと。それを先生にちょっと見てもらうんですよ。そうすると、結構面白くなります。連歌のつながりというのは論理ではないですね。しかし、まったく離れてはいけない。付き過ぎてもいけない。適当な距離で次の句を作らなければいかんとなるわけでしょ。それから演劇のワークショップもやったんです。そういうのを一遍やってみたらどうですか。 野依:大変良いアドバイスをいただきました。文化的な要素を日常生活や業務の中にたくさん入れて、お互いの人間関係を円滑にすると、お互いを尊敬することにもなると思うんですね。そうすることによって理研全体の士気が上がると思います。 |
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素晴らしい科学は分かりやすい
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野依:理研の第3代の所長、大河内正敏先生が大変な文化人でいらした。理研の今の精神を作られ、基礎科学を推進されました。仁科(芳雄)研究室を作られて、そこから湯川秀樹先生、朝永振一郎先生というノーベル賞受賞者が出たわけです。さらに基礎科学によって得られる知識を社会に還元しようと「理研コンツェルン」を組織し、60くらいの会社を作られた。大河内先生は魯山人みたいな方で、料理がお得意で、陶芸家で、絵描きで、狩りがお得意で。私どもは、何とか大河内先生の教えに倣って、新しい世紀にふさわしい理研を作っていかなければならないと思っています。かつては科学者がうんと幅広かったですね。湯川先生も朝永先生も大変な文人です。寺田寅彦先生も理研にかかわりを持っておられた。こういう人が欲しい。
私は科学あるいは科学技術は、もう一度その正当性が検証されなければいけないと思っています。そのためにも、サイエンスは自然科学者だけによって評価されるのではなく、人文科学の方をも含めた形で評価されるべきだろうと思います。やはり両方をカバーするものが、文化ではないかと思うのです。 河合:そういう先端的なことをやっておられるのを、非専門家、特に人文科学の人に分からせるにはどうするかは、非常に難しい問題ですね。 野依:技術の場合は社会における有用性が問われますから、比較的分かりやすい。私は基礎科学については社会全体を啓蒙すること、それが一番大事だろうと思うんです。137億年前にビッグバンで宇宙ができた、46億年前に地球ができた、36億年前に生命が発生し、進化していろいろな生物が生まれてきた。つまり人がどこから来て、現在どう在り、この先どう行くんだということを考えるわけですね。これが一番大切です。 河合:そういうことを知らないで文化的なことをしているのは、ひょっとしたらおかしいかもしれないですね。禅のお坊さんの公案で、両手を打てば音がする、片手の音を聞いてこいというのがあります。それも結構だけれども、現代に生きている宗教家として、例えばチェルノブイリの「音」のことを聞いてくださいと言ったことがあります。 野依:象牙の塔にこもっていたのではいけない。社会に自分たちがやっていることの意義を分かりやすく話すということは、大変大きな意味があると思います。 河合:ただサイエンスでは実験とか理論に熱中していると、他のことがなかなかできませんね。 野依:それにはコミュニティーに語り部となるシニアの方あるいは仕掛けが必要です。一人ですべてのことはできないわけですから、自然科学のコミュニティーとしてそういう義務を負っていくと。 河合:そう考えるのが一番いいと思います。そうでないと一人で何もかもみんなやる。それは絶対に駄目でしょうね。 野依:宇宙あるいは自然の事実、真理を知ることは非常に大事で、上手に伝えれば必ずや面白いと思ってくれる。社会に非常に大きなインパクトを与えると思っています。素晴らしい科学というのは、やはり分かりやすいんです。 |
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将来の科学の発想−東洋、西洋
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野依:将来の科学に向けてですが、西洋の科学と日本の科学、東洋の科学の違い、そういったことも大事ではないかと。論理や倫理も違うと思うのです。
河合:そう思います。ただ、西洋的な発想の方が、西洋生まれの科学に結び付きやすいんですね。東洋的な発想で科学をやるというのは二重の苦しみがいるんです。 野依:西洋の思考はやはり還元主義でやってきました。しかし東洋の特徴はトータルにものを考えるということでしょう。21世紀の科学は解析的なことから、総合性というか統合へ向かっていると思います。柔らかくて、しなやかなところも、東洋人あるいは日本人の非常に大きな役目があるのではないでしょうか。 河合:下手をすると、西洋にパッと追随しやすい人が日本では優秀な人ということになる。東洋的思想を捨てたがゆえに、早く教授になっている方がおられますね。そうすると、下の人が面白いことを考えても怒られるばかりになるんですよ。指導者がその辺を意識する必要があると思います。自分がやってきたこととすごく違うことをしているとか、違うことを言っている人を意識して育てることが必要です。出てきたばかりの発想は欠点が多いので、批判しようとしたらすぐにできるんです。 野依:そうですね。独創的なことを言った人は、その時点では必ず少数派ですからね。 河合:ちょっと待つ度量と、評価のスパンを長く見ないと。 野依:評価が画一的になっているのも問題ですね。 河合:怖いですね。文科系に比して理科系は評価しやすいと言っているけれども、そんな単純なものではない。もっと違う見方で、長いスパンで見ることが必要です。西洋の場合は、わりと人物を信頼するんです。その人が良いと言うものをしばらく見ている。日本人はそれをすぐに主観的だというのですが、その主観は磨かれた揚げ句の主観なんですから。 大きい仕事ほど率が悪くて当たり前でしょ。10人採用して10人ともいいことするというのは、小さい仕事をやった場合ですよ。10人採用して1人だけしかいい仕事をしなかった場合の方が、大きなことができるものなんですね。いわゆる客観的評価だけではなく、そういうことを日本は考えなければ駄目ですね。日本はサイエンスの伝統が短いので、誰かを信用するのではなくて、平均的には失敗がない方をとる。でも、平均点は低くても、1人でも120点が出れば勝ちですからね。そこをよく考えないと。 野依:人を信用するということですね。東洋人の特質あるいは弱点は、どんなところでしょうか。 河合:東洋人は全体を見るとか、そういうことを私も経験的にいろいろ言っていたんです。そうしたらアメリカのある認知心理学者が実験をして、そもそも物事の認知の仕方が違うと言いだした。例えば、水槽に魚が泳いでいる場面をアニメーションにして何分間か見せるんです。終わった後で見たことを聞くと、日本、韓国、中国は似ていて、全体の景色から始める。ところがアメリカ人は、大きい魚が中心から右へ向かいました、というところから始めるんです。明確に違う。それがデータできれいに出ているんです。もうひとつの例は経済の発展のカーブです。3年間連続して上がった、では4年目はどうなるかを予測させると、アングロサクソン系は上がると予測し、東洋系はみんな下がると予測したというんです。 野依:それは、循環性とか輪廻(りんね)とか、そういうことも関係ありますか。 河合:関係ありますね。東洋の根本的な思想はみんな循環で、あちらは直線的ですから。 野依:リニアモデルですね。西洋はリニアモデル。東洋は循環モデルですね。 河合:サイエンスの始まりはリニアモデルから出ています。循環モデルのサイエンスがあり得るのか。それがすごく大事ですね。 野依:やっぱり自然科学も技術も、これからはリニアモデルから循環モデルにいかなければいけないわけですね。そういう意味でも東洋人、日本人の特性がやはり生かされていいと思います。 河合:そのときに日本人は、循環的なものが洗練されていないというか、平気であいまいになる。非論理的になったりするんです。それは、やはり外国人に通用する言葉で言わないと駄目ですよね。西洋人が言っているリニアモデルとはどう違うか、なぜ違うか。そこのところを明確に言っていかなければならない。ところが科学者の場合、追いつき追い越せと頑張った人は、循環モデルを一生懸命捨てようとしたんです。かえって日本の学者の方が固いというか、西洋的なんですね。だから、日本もこれから世界的にやろうとするならば、日本の伝統的に持っているものを捨てないで、生かして科学をやる。それが、これからの大きな課題ではないでしょうか。 野依:先生からそう伺うと、日本の若い研究者がエンカレッジされるのではないかと思います。もうひとつ、日本人はとかく技巧的、技術的であって概念的ではないといわれるのですが、これはいかがでしょうか。 河合:概念をきっちり持つというのは、そもそも西洋の考えでしょうね。日本人は抽象的な概念を作ることは、ものすごく下手なんではないでしょうか。ところが、現実のものに関してはすごくできる。だから日本の“もののあわれ”が典型的ですが、あれは概念ではないですよね。概念規定できないようなものをみんな体感で分かってしまう。それは悪くはなくて、現実に生きているわけですけれども。 野依:帰納的で、演繹(えんえき)性に乏しいといわれておりますね。 河合:今までは科学の障害になると思っていたことも取り入れた科学や技術をこれから考えようと。そういった方向に持っていった方がいいと思います。
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もの こと こころ ひと
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野依:日本は“ものづくり”が得意だといわれています。具体的な目標ができれば、それを非常に巧みに作ることには長けていますが、将来は“ことづくり”、つまり“新しいことを起こす”ことをやらなければならないわけです。ものづくりが得意であるという日本の特性も生かしながら、未来社会のためにどういうものを作っていくかが必要になってくるので、そこでは相当概念が大事になってくるでしょうね。
河合:日本はもともと、物と心の区別がないんです。物語というのは物の話ではなく、心もいっぱい入っています。物と心とは不可分です。物を作るというのは、心を磨いているのと一緒なんです。西洋人だったら規格通りの物を作っていくらと考えますが、日本のものづくりは物の中に心が入っているからすごいんです。その逆に、そこから心を離して概念を作るのは、日本人がこれからすごく訓練しなければならないことです。 野依:サイエンス、それから科学技術も含めてですが、果たして日本の研究活動は日本人だけでやるべきなのか。あるいは世界中から人材を集めてやらなければならないか、という問題があります。サイエンスには国籍はありませんから、人類社会全体に貢献するような知識を作ることです。その中で、やはり私は日本人特有の発想を生かしてやることが、国際的に最も貢献する道だと思っています。科学技術となると、これは国際競争の源ですから、国益をかけてやることになる。日本人が得意とすることを中心にして、足りないものは人材を他に求めるということですね。 河合:それと、違う人がいることによってよく分かりますからね。違う考え方、違う発想をする人を常にコミュニティーの中に入れていないと駄目ですね。 野依:例えばIT技術の中で、ハード面はものすごく強いんですが、ソフトウエアを作ることは日本はすごく弱いんですね。一方でインドはゼロの発見をした国でもあり、概念的な、そして数学的なところが強いわけです。ですから、概念的に強い外国人を日本に連れてきて、日本のものづくりを一緒にやるということも必要になってくる。 河合:そう思います。それから、なぜインド人は強いのか、その研究をすべきだと思います。インド人の場合、ごく少数の人がやっているわけです。あとは悠々と、まだガンジスの流れと一緒の速度で生きている。ごく少数のみが際立っている。これがいいのか悪いのか。 野依:アメリカはその点、国の成り立ちから世界中の人材を集めてうまく組み合わせてやっていますよね。どのように日本で人材を養成し、どのように世界と協力するかが、大変大事になってくると思います。 河合:これはなかなか難しい問題ですね。ますます人物が大事になってくるでしょうね。思い切って日本の若い人をどんどん外に出さないと駄目です。出して帰ってくる。短い時間ではなくて、ある程度の時間行って。 |
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社会に貢献する理研を目指して
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野依:私どもが一般の社会にどのように文化的に貢献できるかをお伺いしたいのですが。先ほどおっしゃったように、一般の方々に自然科学の成果を知らせるということが、その一つだと。
河合:それはすごく大きなことだと思います。サイエンスの面白さの本質を子供にも伝えてほしいですしね。日本は、今までの小学校教育では知識を詰め込む方は成功しているのですが、新しいことを考えるとか、ひらめきとか、ことの本質をつかむとか、そういうことはあまりやられていない。中学校、高等学校あたりで「なるほど、そうだったか」と、みんなが言うような講義を考えてほしいと思いますね。 野依:そういうことは、ぜひともさせていただきたいと思います。理研の文化度の向上については、河合先生のお力をぜひお借りしたいと願っています。美術であるとか、音楽であるとか、あるいは文芸であるとか、そういった要素を取り入れていくことが、これから理研が生きていく力になりますので、ご助力いただきたいと思っています。いろいろな芸術、文芸に関する機関と、これから交流を深めていきたいと考えております。 河合:文化庁で何かできることがありましたら、本当に協力させていただきたいと思います。それと文科系の人が、特に一流の人が理研などに行って学者の人と接して、単なる講演ではなくて話し合いをしたら、いろいろなアイデアが浮かぶかもしれませんね。できたらそういうことも考えてみたいと思います。 野依:私どもにも一流の自然科学者はたくさんいますが、そういう人の話は分かりやすいですから。ぜひ今後ともご指導を賜りますよう、よろしくお願い致します。どうも大変ありがとうございました。■ ![]() |
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免疫・アレルギー科学総合
研究センター 今後の展望 谷口 克センター長に聞く |
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――免疫・アレルギー科学総合研究センター(RCAI)の設立には、どのような背景があったのでしょうか。
谷口:日本の国民の3分の1が何らかのアレルギー疾患だといわれています。中でも花粉症の人は多く、国民の20%にも上ります。新たな感染症の出現や、高齢化社会を迎えてリウマチなど自己免疫疾患の増加も懸念されています。しかし、アレルギー疾患や免疫疾患の治療は、今のところ対症療法しかありません。ですから、アレルギー疾患や免疫疾患を根本から抑える予防法や治療法を開発しなければならないのです。また、臓器などの移植医療費は1兆円を超えますが、その大半は免疫による拒絶反応を抑える薬に使われています。移植医療費の増大を抑えるためにも、拒絶反応を制御する方法の開発が不可欠です。 このような背景から、免疫の基礎研究の成果を国民の健康と福祉の向上に役立てることを目指して、RCAIは設立されました。現在の状況から一歩でも前進できるような医療技術の開発が、私たちには切実に求められているのです。 ――そもそも免疫とは何ですか? 谷口:免疫とは、一度病原体に感染して治ると、二度と同じ病原体には感染しない生体防御のシステムのことです。免疫現象を担っている物質、抗体を発見したのは北里柴三郎先生です。抗体は非常に多様で、1億年後に現れるかもしれない未知の病原体も駆逐できるほどです。その抗体の多様性の遺伝子メカニズムを解明したのが、現在、理研−MIT脳科学研究センターのセンター長を務める利根川進先生です。また、アレルギーの原因物質である免疫グロブリンE(IgE)を発見したのは、RCAI特別顧問でもある石坂公成(きみしげ)先生です。日本は、免疫学において世界をリードしてきたといえるでしょう。 ――RCAIでは、どのような研究を行うのでしょうか。 谷口:免疫について未解決の問題は、まだたくさんあります。その一つが免疫の記憶。病原体を記憶しているのはリンパ球ですが、リンパ球は絶えず生まれ変わっています。にもかかわらず、なぜ免疫の記憶が一生維持されるのか。これは大きなミステリーです。 免疫は、自分と自分以外を区別し、自分を攻撃しないシステムを持っています。しかしこのシステムが狂うと、自分を攻撃して病気を引き起こします。免疫システムがどのようにつくられ、どのように維持され、どうすると壊れて病気になるのか。システムとしての免疫の研究は、今までなされていません。 免疫の記憶や、免疫システムといった未解決の問題を基礎研究によって明らかにすると同時に、その成果を医療に応用する。これがRCAIに課せられた使命です。 |
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中央機器施設、フラットな組織、国際化
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――どのような構想のもと、RCAIを立ち上げたのでしょうか。
谷口:若い研究者を増やし、彼らに自由度を与えることを第一に考えました。新しいパラダイムをつくるのは若者ですから。各研究室のリーダーの平均年齢は40代前半で、一番若いリーダーは32歳です。しかし、研究者が何でもやらなければならない大学の方法では効率が悪く、若い研究者には不利です。 そこで、中央機器施設を充実させました。中央機器施設には、細胞を分離するフローサイトメーター、DNAの塩基配列を読み取るシーケンサー、DNAの発現を調べるマイクロアレイ、細胞の動態を調べる共焦点顕微鏡などさまざまな装置があり、遺伝子組換え体の作製もできます。中央機器施設は誰もが使え、サンプルを持っていけば専門の技術者が解析をして結果を出してくれる仕組みになっています。若い研究者が中央機器施設をうまく利用してくれれば、素晴らしい業績が加速度的に出ると期待しているんですよ。 ――5つの研究プログラム(図1)の位置付けは? 谷口:RCAIの組織はフラットで、各研究プログラムに属するグループ、チーム、ユニットがすべて同じ権利を持っています。研究は、階層構造をとる必要はないんです。平等にすることで、若手の意欲を引き出すことができます。 中核研究プログラムはシニアが、創造的研究プログラムは若手が中心となり、研究者の興味に基づいた研究をします。しかし、それだけでは研究センターとしては不十分で、戦略的な研究を行わなければなりません。基礎戦略研究プログラムでは、横浜研究所のゲノム科学総合研究センターと共同で、ENU(エチルニトロソウレア)という化学物質を使って突然変異を起こしたマウスの研究を進めています。最近、アレルギーを発症する突然変異体の作製に成功しました。このマウスを解析することで、アレルギーに関連する遺伝子を特定し、治療法の開発に結び付けようとしています。また、生きた細胞の中で1個の分子の動きを観察できる顕微鏡の開発も行っています(図2)。 RCAIの中で開発された技術を臨床に応用するのが、臨床戦略研究プログラムです。各ユニットは半年に1回、研究戦略会議に進捗状況を報告しなければなりません。基礎研究ではあり得ない短さです。評価が目的ではなく、臨床現場に詳しい外部専門委員からの助言を受けて、できるだけ早く臨床に応用できるように軌道修正をするためです。 臨床戦略研究プログラム以外でも、臨床に応用できそうな技術を開発したら、研究者に手を挙げてもらいます。研究戦略会議で認められれば、臨床応用のための研究員と研究費を援助します。 ――すでに臨床応用を目指している研究は? 谷口:現在、10以上の研究が臨床応用を目指して動いています。最も有力なのは、スギ花粉症のワクチンの開発です。現在は動物実験の段階で、数年以内にヒトを対象とした臨床試験に移ります。私たちは病院を持っていませんから、国立相模原病院臨床研究センターと2004年3月に研究協力協定を結びました。相模原病院は日本を代表するアレルギーの医療施設です。 ――組織面での今後の課題は? 谷口:中央機器施設、フラット構造、そして国際化という3つの実現を目指していましたが、国際化はまだまだですね。外国人のリーダーは2名だけです。そこで、各リーダーと共同研究を行う外国人研究者を招聘する研究プログラムを新たにつくり、現在8チームが動いています。また、少なくとも月に1人は海外から研究者を招待し、若手研究者とディスカッションする場をつくるなど、いっそうの国際化に取り組んでいます。
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基礎研究と臨床の壁を越える
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――海外では、RCAIのように臨床応用を目指した免疫の研究センターはあるのでしょうか。
谷口:ありません。みんな基礎研究です。基礎研究成果の臨床への応用は、生命科学のすべての領域に課せられた共通の課題です。しかし、基礎研究と臨床との間には、ものすごい壁があるのです。RCAIは、世界中でどこもやっていない、一番新しい試みをしているといえるでしょう。アドバイザリー・カウンシルでも、基礎研究を臨床研究につなげるプラットフォームをRCAIがつくるべきだといわれていますが、それが大変なんですよ。 ――免疫研究の臨床応用が現実味を帯びたきっかけは? 谷口:一つは1986年、私たちのナチュラルキラーT(NKT)細胞の発見ですね。NKT細胞は、免疫システムを制御している重要な細胞です。そして1997年、NKT細胞だけを活性化するαガラクトシルセラミド糖脂質をマウスで発見しました。この物質は、ヒトのNKT細胞も活性化するんです。同じ物質でマウスもヒトも研究できることが分かって初めて、これは臨床に応用できると確信しました。マウスとヒトの生命現象は共通の仕組みが多いのですが、同じ物質で活性化できることはほとんどありません。今、NKT細胞を人為的に活性化して免疫を制御し、肺がんを治療する研究を進めています。 |
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免疫システムに学べ
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――谷口センター長は、なぜ免疫の研究を始めたのですか?
谷口:私は、心臓病の医者になろうと思っていたのです。研修医のとき、マクログロブリン血症という免疫系のがんの患者さんを受け持ちました。そのとき初めて免疫を勉強しました。ちょうど免疫の多様性についての仮説が出たころで、すべてがミステリーでした。謎が深ければ深いほど、知的好奇心がそそられます。特に若いときはそうです。それで、免疫の基礎研究をしようと決めたのです。 ――免疫の魅力は? 谷口:免疫は、無駄から成り立っている。1兆にも及ぶ非常に多様な抗体をつくりますが、そのほとんどが自分と反応してしまうために胸腺で排除されます。95%以上が不要なんです。でも、この無駄がなかったら、免疫という素晴らしいシステムはできなかったでしょう。自然の英知はすごい。人間社会では無駄を排除しようとしますが、あまり効率的になり過ぎるのもよくないのかもしれません。RCAIにおける研究も、免疫のように無駄を許容しながら将来に備えるというのが重要ではないでしょうか。■ |
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新しい触媒を開発し、
有用物質を効率よくつくる 侯 召民 中央研究所 侯有機金属化学研究室 主任研究員 |
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希土類を用いた新しい触媒を開発
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触媒は、従来にない優れた機能を持つ物質をつくり出したり、不可能だと考えられていた化学合成を可能にする。
例えば、2000年のノーベル化学賞を受賞した白川英樹 筑波大学名誉教授は、研究員が誤って触媒の濃度を通常の1000倍にして行ったポリアセチレンの合成実験から、常識を覆す“電気を通すプラスチック”を発見・開発した。その触媒は、金属のチタンと有機物が結合した有機金属化合物(有機金属錯体※)である。 2001年のノーベル化学賞を受賞した野依良治理研理事長は、BINAP(バイナップ)と呼ばれる有機物の特異な構造を利用した新しい触媒を開発し、それまで不可能だと考えられていた右手系と左手系の分子をつくり分けることに成功した。この触媒も、BINAPとルテニウムやロジウムなどの金属を結び付けた有機金属錯体である。 化学合成では、反応分子の中の原子同士の結合を切って、別の原子・分子と結合させたりする。触媒は、それ自身は反応の前後で変化せずに、原子同士の結合を切ったり、別の原子・分子との結合を促進する役目を果たす。 有機金属触媒では、中心にある活性を持った金属が反応分子に働き掛けて化学反応を促進し、周りの有機物(配位子)がその働き方をコントロールする。有機物の種類や形のデザイン、さまざまな金属との組み合わせにより、有機金属錯体は触媒として無限の可能性を秘めている。 「新しい触媒を一つ発見すると、大きなブレークスルーとなります。予想外の大きな波及効果があるのです」と侯主任研究員は言う。「新しい有機金属触媒の開発は、扱いやすい金属から扱いにくい金属へ、すなわちリチウムやマグネシウムなどの典型金属から、チタンやルテニウム、ロジウムなどの遷移金属を用いるものへと発展してきました。しかし希土類を用いた有機金属錯体は、空気や湿気に触れるとすぐに壊れてしまうなど、極めて取り扱いが難しく、ほとんどの人は手を出さなかったのです。私たちは、難しいことに挑戦しようと、10年以上前から希土類を用いた有機金属化学の研究を続けてきました」 希土類とは、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)およびランタノイド(15種)の計17種の金属元素の総称である。 「希土類はこれまで研究されてきた金属とは電子構造や大きさなどが異なり、違う性質を持っているので、今までにない化学反応がきっと起きるはずです。どんなことが起きるのか、とても興味を引かれます。それは、未知の新しい宇宙を目指す好奇心と同じです」 |
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合成困難だった有用物質をつくる
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例えば、この触媒により、「シンジオタクチック」という立体規則性を持つポリスチレン鎖へエチレンを導入することが可能となる。ポリスチレンはスチレンという物質がつながったものである。フェニル基(C6H5−)と呼ばれる部位が規則的に配列したミクロ構造を持つシンジオタクチックなポリスチレンは、無秩序に並ぶ「アタクチック」なものより、耐熱性や耐薬品性に優れ、寸法が変化しにくいなど、付加価値が高い。 約20年前、チタンを用いた触媒により、このようなシンジオタクチック・ポリスチレンを合成することが可能になったが、硬すぎて加工しにくいという難点があった。そこで、エチレンなどを混ぜて共重合させ、耐久性などの長所を保ったまま軟らかく改良する研究が長年行われてきた。しかし従来のチタン触媒はスチレンには働くがエチレンへは働かないため、研究はなかなか進展しなかった。 侯主任研究員らが開発したスカンジウムを使った触媒は、スチレンとエチレンの両者へ働く。シンジオタクチック・ポリスチレンブロックの間をエチレンでつなぐことなどで、強くて軟らかいポリスチレンの合成に成功した。 さらに、この触媒を使うと、光学レンズやCD(コンパクトディスク)などの材料として使える透明な物質を効率よく合成できることも分かった。ノルボルネンという分子とエチレン分子を1個ずつ交互に規則的に結び付けることにより、透明性や耐久性などに優れた物質ができるのだ(図2)。この触媒を使うと、なぜそのような規則的な結合が可能になるのだろう。 まず1個のエチレンが触媒中の金属(スカンジウム)と結合した状態のところにノルボルネンが近づき、金属とエチレンの間に入り込む。ノルボルネンは立体的にかさ高い(大きい)ため、金属の周りに先に結合したノルボルネンが邪魔になり、続けてもう1個のノルボルネンは金属に近づけない。すると新しいエチレンが金属に近づき、金属とノルボルネンの間に入り込む。続いてエチレンより金属と結合しやすいノルボルネンが近づき、入り込む。このようにして、ノルボルネンとエチレンが1個ずつ交互に規則的に結び付くのだ。 図1のように、この新しく開発された触媒にはシクロペンタジエニルという有機物が1個付いている。「従来の有機希土類錯体には2個のシクロペンタジエニル基が金属に付いていますが、それが邪魔になって大きな反応分子は金属に近づけません。それを1個でも安定化できたことで、ノルボルネンなどの大きな反応分子を金属に近づけさせて、触媒として優れた機能を発揮することができたのです」と、侯主任研究員は開発のポイントを語る。 「さらにこの触媒を使って3つの成分を共重合させて、1つの分子で複数の機能を持つ付加価値の高い物質が合成できることも分かってきました。例えば、ノルボルネンとエチレンという2つの成分に紫外線を吸収する第3の成分を導入すると、透明でありながら、紫外線もカットできる物質ができるのです。これまでは透明な物質へ紫外線を吸収する成分を添加物として混ぜるしかありませんでした。しかし添加物がむらになり、劣化しやすかった。私たちの触媒は、今まで多くの企業や研究者がつくろうとしてもできなかった、さまざまな高機能物質を生み出せるのです」
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複数の金属を持つ触媒をつくる
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「スカンジウムの有機金属触媒は、論文を発表したばかりです。このような希土類を用いた有機金属触媒の開発を目指して研究しているグループがほかにもいくつかありますが、まだ私たちのような優れた働きを示す触媒は報告されていません。私たちの論文発表により、これから開発競争が激しくなるでしょう。私たちはすでにその先を目指して研究を始めています」
侯有機金属化学研究室では、同じ種類の希土類を複数持つ「多核」の有機金属触媒を開発している。図3はイットリウム(Y)を4個持つ「ポリヒドリド錯体」である。このような多核錯体は、例えば二酸化炭素(O=C=O)にある2カ所の二重結合を、同時に還元することが分かった。さらに一酸化炭素の炭素と酸素の三重結合(C≡O)を切ることもできる。「複数の金属が共同で反応分子に作用して、1個の金属では切れなかった強い結合を切ることができるのです」 侯主任研究員らは、さらに新しいタイプの触媒の開発を進めている。希土類とそれ以外の金属を組み合わせた混合型の多核錯体である(図4)。「異なる性質を持つ金属が、それぞれ違う役割を分担して反応分子に働き掛ける、今までにないタイプの触媒をつくることを目指しています」
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独創的な触媒開発の秘訣
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希土類以外の金属同士を組み合わせる多核有機金属触媒の研究は、世界でもいくつかの研究グループが行っている。しかし希土類同士や希土類と他の金属との混合型触媒の開発を行っているのは、「おそらく私たちだけでしょう」と侯主任研究員は言う。「多核の触媒をつくるという発想は、古くからありました。誰もが面白いと思うアイデアですが、実際につくるのが難しかったのです」
侯主任研究員らは、なぜ希土類を用いた多核触媒の開発で世界の最先端を走ることができるのか。「実は10年くらい前にも、私は希土類を用いた多核有機金属触媒をつくろうと試みましたが、できませんでした。そこでまず、新しい構造を持つ単核錯体をつくることを目指しました。そしてシクロペンタジエニル基が1個だけ付いた優れた希土類触媒を開発することができたのです。シクロペンタジエニルが2個付いたままでは金属同士をうまく結合できませんが、シクロペンタジエニル1個なら可能です。金属同士は複数の水素(ヒドリドH−)を仲介役にして結合しました。この複数の水素で結合させるという独自のアイデアが、高い活性を持つ多核の触媒をつくる最大のポイントです」 これまでも希土類を、酸素、あるいはフッ素、塩素などのハロゲンを仲介役として結合させた多核錯体をつくった研究例はあったが、希土類と酸素または希土類とハロゲンが結合したものは反応性が低いため、触媒として働かないのだ。しかし金属同士を水素と結合させれば、高い活性を示し、触媒として優れた機能を発揮できることを、侯主任研究員らは発見した。 「新たな触媒をつくるには、人まねをしないことです。誰かが良い触媒をつくったからといって、それを改良しようと研究を始めても、その人より最低でも5年遅れのスタートとなります。私たちは、扱いにくく、研究する人が少なかった希土類の研究を継続してきました。長年くじけずに試行錯誤しているうちに、その物質の性質がだんだん分かってくる。そしてある日、突然、良いアイデアがひらめく。触媒の開発には継続が大事なのです」 |
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人類社会に貢献する化学
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「触媒を開発するときには、必ずしもある特定の物質の合成を目指してデザインするわけではありません。逆に、このような今までにない触媒をつくれば、何か面白いことがきっとあるだろうと開発を進めます。私は意外性を大事にしたいと思っています。その意外性が化学の大きな魅力なんです。単核の有機希土類触媒でも、これまでにない反応が次々と見つかっています。さらに多核の触媒では、予想もつかないことが必ず起きるはずです」
例えば、多核の触媒で未利用資源を有効活用できるかもしれないと、侯主任研究員は期待している。 「原子同士の結合が強すぎる安定な分子は化学反応しにくいので、化学合成には利用しにくい。しかし、その強い結合を多核の触媒で切ることができれば、化学合成に使えます。今まであまり利用できなかった資源も有効活用できるはずです」 例えば、空気の8割を占める窒素分子は、窒素原子同士が三重結合で強く結合し、非常に安定で反応しにくい。「かなり難しいとは思いますが、多核の触媒を使えば窒素原子の強い結合を切って、アンモニア(NH3)を空気中の窒素(N2)から直接的に合成できるかもしれません。天然ガスの主成分であるメタン(CH4)も、今は燃やしてエネルギーとして利用していますが、付加価値の高い化合物の合成に利用できるようにしたいですね」 多核の触媒を使えば、さまざまな反応過程を経ず、ごく簡単な構造の物質から複雑な構造を持つ有用物質を直接的に効率よく合成できる可能性があるのだ。 最後に侯主任研究員は、化学が目指すべき未来を語った。 「化学が生み出す人工物質が、私たちの暮らしを支えています。これまでも化学は、社会で非常に重要な役割を果たしてきました。しかし野依理事長は、“今の化学はまだまだ力量不足だ”と言われます。まさにそのとおりです。今の化学合成は、多くの反応過程を経る回り道をたくさんして目的の物質にたどり着いています。その過程で、多くのエネルギーを消費して排出物を出し、環境に負担をかけます。残念ながら、化学は環境問題を引き起こす諸悪の根源のように言われることがあります。新しい触媒を開発し、省資源・省エネルギーでもっと近道をして、排出物を最小限に抑え、有用な物だけを効率よくつくれるように、化学を発展させなければなりません。化学は21世紀にこそ、その重要な役割を果たさなければいけないし、今まで以上に、人類社会へ貢献できるはずなんです」■ |
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竹市雅俊センター長、有馬朗人元理研理事長が文化功労者に
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理研発生・再生科学総合研究センターの竹市雅俊センター長と有馬朗人元理事長が文化功労者に選ばれました。竹市センター長は、発生生物学で、ヒトなど多細胞動物の細胞同士が接着するために不可欠な分子“カドヘリン”を発見するなどの業績が高く評価されたものです。有馬元理事長は、原子核の殻模型を発展させ、原子核の構造・性質を系統的に理解できる模型を作り上げたことなどの業績が高く評価されたものです。
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「記者懇談会」を実施
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受賞のお知らせ(2004年3月〜5月)
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※DRI:中央研究所 FRS:フロンティア研究システム BSI:脳科学総合研究センター |
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ゴードン会議(Gordon Research Conferences : GRC)
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2004年7月25日から30日にGlycolipid and Sphingolipid Biology※ GRCが兵庫県にある高輝度光科学研究センター(JASRI)の施設を使って開催された。GRCは1931年、米国のジョンズ・ホプキンス大学の Neil E. Gordon教授によって始められた会議で、最先端の研究を行っている同じ研究分野の研究者および異分野の研究者を集め、雑誌の論文発表や大きな会議では困難な情報交換や討論を促し、そこから新しいアイデアや方向性を見いだす機会とすることを目的としている。1947年からはニューハンプシャー、1963年からロサンゼルス、1990年から国外へも拡大し、1996年には日本でも開催された。現在、1年に約130を超える会議が開催されている。 ゴードン会議は、上記の目的を実現するために、高名な研究者も領域に入ったばかりの若い研究者も対等の関係で討論できる機会を保障すること、さらに自由時間に情報交換・個人的な接触が可能になる機会を提供することを、重要な理念としている。そのために、会期中は宿泊、食事を共にすること、開催場所は比較的隔絶した環境であること、プログラムは午前と夜にセッションを行い、午後は自由時間とすることが原則とされている。会議の内容に関する記録を残さないことも重要な原則である。 2000年にイタリアで開催された第4回会議で筆者が2004年の会議の議長として選出されてから、GRC事務局長Carlyle B. Storm博士と、日本開催の定常的な施設の確保の可能性に関しての協議が始まった。Storm博士は、GRC開催地をアメリカ国内から世界へ展開することを企画した本人である。上記の理念を達成できる定常的な施設を探すことは、事務局の最も重視する条件であった。小川智也 理研横浜研究所長、永井克孝三菱化学生命研所前所長のご協力と提案をもとに、理研播磨研究所推進部およびJASRIに会議開催の可能性を打診した。GRC事務局からプログラムマネージャーのGerri Miceliさんが施設の見学に来日され、JASRIの上坪宏道副理事長(当時)にお会いした。上坪先生は開催に積極的に協力してくださる意向を示してくださった。2003年にはStorm博士が来日され、小林俊一 前理研理事長と会われ、協力を要請し、快諾された。このような経緯で、理研播磨研究所のSPring-8がGRC日本開催サイトの有力な候補となった。 暑い時期であること、自由時間のためのプールがないこと、ポスター会場の近くで飲み物が準備できず、ポスターを使って飲みながら討論できないこと、食事の質について、参加者から指摘があったが、討論の雰囲気は十分確保されたと評価された。GRCでは参加者による評価がアンケートの形で集められ集計される。その結果はGRC理事会に提出され、事務局報告、公表されないモニターの報告とあわせて最終的な評価が下され、継続の可否が決定される。会議の質、討論、運営、環境、総合評価の項目で評価される。今回の会議は総合評価1.5であった。1.0は参加者全部が満足したと評価した場合、2.0は半分が満足、半分がまあ良かったと判定したことを示す。上記の評価は会議が成功であったと考えてよいことを示している。さらに、日本学術振興会からは国際会議開催助成を受けることができ、特に若い研究者に旅費の補助を行うことができた。 残念ながら、日本人研究者の発表、討論技術はもっと訓練される必要があり、その点からも、日本でGRCが開催されることは意義があると考えられ、継続されることを望むものである。今回の会議開催はJASRIの吉良爽理事長、推進部の下村部長、當眞氏、サイトの方々の献身的なご協力があって可能になったものである。開催までご協力いただいた方々に、深く感謝申し上げたい。 ■
※糖脂質およびスフィンゴ脂質生物学 |
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