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研究最前線
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記念史料室から
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原酒
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学び行動するロボットから人を知る
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「例えば、この目の前にあるコーヒーカップは、脳の中ではどのように認識、理解されているのでしょうね」。谷淳チームリーダーは、机の上のコーヒーカップに手を伸ばしながら言った。「目で見たカップの形や色などで認識している、と言われるかもしれません。でもそれ以上に、カップの柄をつかんだときの指先の感触、口元に運んだときにカップから立ちのぼるコーヒーの香りといった毎日の身体的な経験から、コーヒーカップというものの存在を認識しているのではないでしょうか? 私たちは、行為を通して世界に繰り返し働き掛ける経験が積み重なり、それらの記憶からどのように脳内に“意味”や“概念”の空間が形づくられてくるのか、といった問題に興味を持って研究を進めています」
そしてコーヒーカップを持ち上げながら言う。「“コーヒーカップを持ち上げる”という動作は、“対象に手を伸ばす”“つかむ”“上げる”といった基本的な運動スキーマ(枠組み)のレパートリーがあって、それらを無意識的に、時間方向に一連のつながった行為として組み合わせていくことにより達成されるのではないかと考えられます。無意識的に組み合わせるといったプロセスは、認知の中核です。また言葉を組み合わせることにより、多様な意味、概念を表現できますが、それらは経験した行為の記憶と相まって、脳内でどのように表現され得るのか? 話すとき、文法という規則を意識しなくても言葉の組み合わせがすらすら出てくるのは、どういったことなのか? 脳の神経回路は元来アナログな動作をするわけで、“規則に従う”といったコンピュータが得意な論理操作にはあまり向いていないように思えます。決して言葉で書き下すことのできない暗黙知のようなものを、脳は無意識的に獲得し、作動しているように思えますが、その実態は何なのでしょうか」 こういった疑問に答えるため、動的認知行動研究チームでは神経回路モデルを組み込んだロボットの学習行動実験を行い、行為から認知に連なる脳のメカニズムを探っている。 |
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言語を認識し行動するロボット
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まず、杉田祐也研究員と谷チームリーダーが行っているロボットによる言語と行為の関連学習の研究を紹介しよう。初めは何も知らないロボットが、いろいろな組み合わせの言葉に対応する行動を繰り返し練習していくうちに、言われた通
りのことができるようになるというものだ。
ロボットの前方左には赤、中央には青、右には緑色の物体が置かれている(表紙)。言語は3つの動詞と6つの目的語である名詞の組み合わせから成り、“hit red”と言われたらロボットは赤い物体に近寄っていきアームを伸ばしてたたく、“push blue”と言われたら青色の物体に寄っていって体ごと押す、というように学習させていく。 「ここで大事なことは、分散記憶という考え方です」と谷チームリーダーは言う。「例えば、可能な組み合わせの行動を一つの神経回路の中に多重に記憶させるというものです。分散記憶では、一つ一つの行為を独立に暗記していくのではなく、多様な行為の関係性を学んでいくことになる。そのときに、一段深いレベルの意味や概念のようなものが浮かび上がってくるのでは、と考えています」 |
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意味の構造を見る?
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言語と行為の関連学習で使っている神経回路は、単語を順番に入力して文を認識する“言語モジュール”と、行為を時系列で生成する“行動モジュール”から成る(図1)。「両方のモジュールにおいて、“予測”というメカニズムが重要な役割を示しています。脳科学総合研究センター特別顧問の伊藤正男氏が、『小脳は自身の運動の結果として得られる知覚の予測をしている』と1970年代から言われていて、それがヒントになっています。言語モジュールでは単語のつながりを予測し、行動モジュールではセンサ入力とモータ出力の時系列的な流れを予測します。言語モジュールと行動モジュールを橋渡しするのが、私たちが考えるPB(Parametric Bias パラメトリック バイアス)ニューロンです」
PBニューロンは、どのような働きをするのだろうか。「PBニューロンには、学習時に両モジュールから情報が流れ込み、その場を通して両モジュールが相互作用し制約し合う。つまり、文と行為の対応がつくような構造ができてきます。学習後に、言語モジュールに“hit red”という2単語を入力すると、それに対応してPBニューロン群の発火パターンが生成され、それが行動モジュールに伝わり、“hit red”を実行するときのセンサとモータの時系列的な流れの予測が立ち上がり、実際に行為が発生します(図2左)」 図2右は、18種類の動詞と目的語の組み合わせを入力したときのPBニューロン群の発火パターンを、2次元の主成分でプロットしたものである。「すると、面白いことが分かりました。ここには、ある規則的な構造が見えています」と谷チームリーダー。 赤い物体は常にロボットから見て左にあるので、“push red”と“push left”は行為としては同じ意味を持ち、両者のPBプロットの点は近い位置にきている。同様のことがblueとcenter、greenとrightについて言える。さらに、各文は動詞と目的語に関する2次元格子の上に規則的に配列されている。 「ここで大事な事実は、組み合わせが可能な18文のうち14文しか学習していないということです。4つの文は学習していないにもかかわらず、ロボットはそれらの文を認識して正しい行動を生成でき、4つの文に対応するPBのプロット点(図2右の点線円内)は2次元格子上のそれらしい位置にきています」 この結果を谷チームリーダーは、こう解説する。「未学習の事柄についても、学習された事柄から類推できることを示しています。それが可能になったのは、動詞と目的語を組み合わせるような図2右に示す構造が、神経回路内部に自己組織化されたからだと言えます。これが分散的な記憶の重要な特徴です。意味は一つ一つの事柄について独立では存在できない。私たちの実験では、ロボットが言葉の束と行為の束を相互に絡ませて学習させていったときに形づくられる関係性の構造の中に“意味”が浮かんでくることがよく示されています」
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ヒューマノイドロボットとの相互行動
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動的認知行動研究チームでは、ソニー株式会社と共同で、ヒューマノイドロボットQRIO(キュリオ)を使った人間との相互作用行動の研究も行っている。なぜQRIOなのか?「これだけ動きの自由度の高いロボットは、私たちでは作れません。それに、あまり大きくないので、倒れたりしても壊れないし危なくないので、試行錯誤の実験研究にはうってつけです」QRIOにPBニューロンの付いた行動モジュールを搭載して、人間の上半身の複数の運動パターンを見真似学習させた。対面する人間の腕の位置情報がビジョンカメラから行動モジュールに入力され、人間の腕の動きを、繰り返し入力される時系列パターンから予測学習していく。同時に、QRIO自身の腕が人間の腕の運動パターンを真似て動くように、QRIOの腕を人間が持って動かしながら、腕のモータ時系列を教示学習させていく。 「学習を進めると、運動パターンごとに異なるPBニューロンの発火の空間パターンが得られてきます。学習がほぼ終了したところで、学習した一つの運動パターンをQRIOの前で人間が示すと、行動モジュールに視覚入力される人間の腕の運動パターンに引き込まれる形で、PBニューロンの発火パターンが特定の学習した空間パターンに収斂(しゅうれん)していく。その結果として、QRIOは対応する運動パターンを生成し始めます(図3)。ここでのPBニューロンは、センサ入力時系列パターンを認識して、それに対応する運動パターンを生成するという働きをしています。これは前述の、言葉を認識して対応する行為を生成するメカニズムと同じです。このような認識と生成を同時に情報表現する神経細胞はミラーニューロンといわれ、サルの電気生理実験などで、その存在が確認されています」 この実験では、ほかにも面白いことが分かってきているという。「いろいろな運動パターンを一つの神経回路に多重に学習させていくと、QRIOは新規の運動パターンも生成するようになるのです。これは、多数詰め込まれた異なる運動パターンが記憶の中で押し合いへし合いして、記憶の内部構造が歪(ゆが)むことにより発生すると考えられます。学習したQRIOと人間が互いに運動しながら相互作用していると、QRIOはあたかも自由意志があるかのように新しい運動パターンを生成しだすことがあります。でも、その自由意志のようなものは外から与えられたものではなく、記憶の内面の潜在的な歪みがそうさせるのだと考えられます。QRIOがただ学習したことを繰り返すだけではなく、思いがけず新しい動きを生成しだす刹那に、機械を超えたような主観的な実在を思わず感じてしまうのですが……」 谷チームリーダーが取り組んでいるロボット研究は、意識やこころといった脳科学の大きな問題にも迫っていく。「私たちは、普段よくする行動をしているときには、オートマチックであまり意識しません。でも、いつもと違うことが生じたときに、はて何だろうと意識が立ち上がると考えられます。QRIOの実験では、センサから入ってきた情報と記憶に基づく予測が矛盾するときに、その誤差がPBニューロンの発火パターンを変更し、別の運動が起動されます。外の世界のリアリティとその主観的なイメージの間に矛盾が生じたときにこそ、自己と外部世界の境界が“意識”されるのだと思います」■
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よたよた反陽子の大量蓄積
反物質科学への新たな一歩 2005年1月14日、文部科学省においてプレスリリース |
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――まず「反物質」について教えてください。
山崎:最も簡単な反物質は、反陽子と陽電子が結合した反水素です(図1)。この反水素原子の性質を水素原子と比べることにより、「私たちの住む物質の世界」と「反物質で構成される世界」がどのように違うのかを探ることができるようになります。 ![]() |
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――“よたよた反陽子”とは、どのようなものですか。 山崎:反物質の研究をするためには反陽子が必要です。自然の基本構造に関する研究は、高いエネルギーの粒子同士をぶつけ合う“乱暴な”手段によることが多かったのですが、私たちは自然にそっと「ささやいてもらう」ことを狙っています。反陽子は反応性が非常に高いので、10Kという極低温環境を用意して動きを鈍くし“よたよた”状態にします。同時に周りを極高真空にして、物質と触れ合わないようにしてため込んでいます(図2)。 ![]() |
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――水素と反水素原子の違いを調べると、CPT対称性※1の検証ができるというのは、どういうことでしょうか。
山崎:CPT対称性は、物質と反物質では質量や寿命、磁気モーメントの大きさなどの物理的性質が同じであって、反原子の振る舞いは原子の振る舞いと何ら違わないことを主張しています。従って何らかの違いがあれば、CPT対称性が破れているというわけです。 |
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――今後の計画について教えてください。
山崎:私たちは、大量の“よたよた反陽子”を使ってスピン偏極した反水素原子を生成して捕まえ、ビームにする方法を開発中です。これが一つのブレークスルーになると期待しています。反水素実験に加えて、反陽子不安定原子核原子の生成法を開発し、反陽子による不安定原子核研究といったエキゾチックな粒子2種類を組み合わせた研究を進めたいと考えています。■ |
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プレスリリースは下記URLを参照ください。 http://www.riken.jp/r-world/info/release/press/2005/050114_2/index.html ※本成果は、米国の科学雑誌 『Physical Review Letters』のオンライン版(1月15日)において発表され、日経産業新聞(1/17)など多数の新聞に取り上げられた。 |
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酸化ストレス状態を認識する
分子を細胞の小胞体内で発見 活性酸素の酸化・還元が細胞内の 2005年1月14日、文部科学省においてプレスリリース |
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――酸化ストレスと酸化還元(レドックス)機構とはどんなものですか。
御子柴:地球上の生物は、構成する分子の電子の受け渡しに基づく酸化還元を基礎に生存しています。しかし、絶えず活性酸素種やさまざまなストレスによって生み出される酸化ストレスの危険に直面しています。それに対して、生物は生体内の酸化還元(レドックス)状態を制御するレドックス制御機構を進化の過程で発達させて酸化ストレスから身を守り、生体内の酸素バランスを維持していると考えられています。このバランスが崩れると酸化ストレス状態となり、加齢に伴うさまざまな老化現象を引き起こす一因になるのではないかと考えられています。 |
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――今回の成果について教えてください。
御子柴:私たちの研究チームでは、細胞内でのカルシウムを調節する働きを担う「イノシトール1,4,5−三リン酸受容体(IP3受容体)」に注目して研究を進めてきました。IP3受容体は、さまざまな種の生物に普遍的に存在しており、細胞分裂、細胞増殖、細胞死、受精、発生、記憶や学習といった多岐にわたる生命現象において重要な役割を果たしていることが知られています(図1)。このIP3受容体を介した細胞内のカルシウム濃度の調節を解明することで、さまざまな生命現象を理解しようとしています。今回の研究で私たちは、細胞内の「小胞体」と呼ばれる場所に注目しました。その結果、小胞体の内部にあるERp44と呼ばれるタンパク質が、小胞体内部の酸化状態や還元状態によりIP3受容体と結合したり離れたりすることで、カルシウムの濃度を調節していることを発見しました(図2)。つまり、ERp44が小胞体内の酸化・還元状態を察知し、細胞内のカルシウムの濃度を調節して酸化ストレスを解消するのではないかと結論付けました。
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――どのような応用が期待されますか?
御子柴:細胞内カルシウムの濃度異常が、アルツハイマー病やハンチントン病の発症に関与していることが報告されています。また、先ほど述べたようにレドックス状態の制御不全が、加齢に伴うさまざまな老化現象を引き起こす一因と考えられています。今回の成果が種々の疾患や神経細胞死の機構の解明に貢献し、医学・健康科学の幅広い分野で応用されることが期待されます。■ |
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プレスリリースは下記URLを参照ください。 http://www.riken.jp/r-world/info/release/press/2005/050114/index.html ※本研究成果は、米国の学術雑誌『Cell』の1月14日号に掲載され、日経産業新聞(1/14)など多数の新聞に取り上げられた。 |
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脳の左右差の形成機構を
分子レベルで解明 右脳と左脳の情報を個別に処理する 2005年1月20日、文部科学省においてプレスリリース |
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――言語機能など、脳の左右差はよく知られています。こうした違いはヒト以外にも見られるのでしょうか。
岡本:脳の左右差は、ヒトに利き手があることや言語野が左大脳半球に局在することから、長い間ヒトに特有の現象と考えられてきました。そのため、モデル動物を用いた分子レベルでの脳の左右差の解明は、詳細に検討されていませんでした。しかし、近年の脳科学研究により、この現象は魚類からヒトまで広く見られるものであることが明らかとなってきました。このような脳の非対称性はヒト脳に固有の特徴ではなく、動物の神経系に広く見られるものと現在では考えられています。例えば魚類、両生類、鳥類などでも、特定の行動に対して片側の脳を優先的に使うことが示されています。 |
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――ゼブラフィッシュで研究している理由を教えてください。
岡本:ゼブラフィッシュ(Danio rerio)は小型熱帯魚で、飼育が容易、多産、世代交代期間が短いなどの特長を持ち、胚が透明で遺伝学的な手法が確立されていることから、モデル実験動物として発生生物学の実験などに用いられています。特に、発生時期を通じて脳組織が透明なため、複雑な神経回路網の発達を観察することに適しています。 |
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――今回の研究成果について教えてください。
岡本:私たちは今回、脳の中の「手綱核(たづなかく)」という部位に注目して実験しました。手綱核は、意欲や気分などと関係する神経系の活動を調節する中枢として知られ、魚類からヒトまで共通に存在している大脳辺縁系の一部です。ゼブラフィッシュの発生早期の手綱核で左右非対称に発現する「Brn3a」という遺伝子の発現パターンを蛍光タンパク質で標識して観察したところ、手綱核の左側の神経は「脚間核(きゃくかんかく)」と呼ばれる部位の背中側に、右側の神経は腹側に多くつながっていることがわかりました(図2)。さらに、心臓などの非対称性に関与すると考えられている「Nodal」という遺伝子が、手綱核の神経結合の左右差を形成する上で重要な働きをしていることも明らかにしました。 ![]() |
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――今後どのような展開が期待されますか?
岡本:今回の結果は、左右非対称な脳部位が対称な脳部位と連絡するシンプルなメカニズムを示すことに成功したものです。これまで脳の左右非対称性の研究では、ヒト大脳皮質領域に関するものが大半を占めており、モデル動物を用いた分子レベルでの研究はまだ始まったばかりです。今後、ゼブラフィッシュのようなモデル動物を用いて分子生物学的な解析を行うことで、脳神経回路の左右差と脳機能の左右差の関係が解明され、人間の脳の左右差の謎を研究する手掛かりになることが期待されます。■ |
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プレスリリースは下記URLを参照ください。 http://www.riken.jp/r-world/info/release/press/2005/050120/index.html ※本研究成果は、米国の学術雑誌『Current Biology』の2月8日号に掲載され、毎日新聞(1/22)、『ニュートン』4月号ほかに取り上げられた。 |
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2005年世界物理年にちなんで 今も残る「仁科芳雄直筆の黒板」 |
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![]() ![]() 理研の記念史料室に、敗戦後間もなく仁科によって書かれたとされる黒板が移管されている(図1)。その左半分には、「ルチン」、「B12」、「ACTH」、「水虫」などの文字があり、右半分には、「ボーア」、「ディラック」、「クライン」など有名な物理学者の名前が見える(図2)。几帳面だった性格を、その筆跡から読み取ることができる。 |
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第二次世界大戦後、仁科はGHQ(占領軍総司令部)から解体を迫られていた(財)理化学研究所(1948年3月より(株)科学研究所に改組)を復興させるにあたり、米軍によるサイクロトロンの破壊にもめげず、文字通り“骨身を削り寝食を忘れ”働いた。ペニシリンの製造によって財政的な基盤を確立し、低圧での液体酸素の製造に着手し、日本の製鉄業の復興にも貢献した。
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仁科は1890年、岡山県で生まれた。東京帝国大学(現:東京大学工学部)で電気工学を専攻したが、長岡半太郎の影響を受け、卒業後、長岡のいる理研に入所した。長岡の勧めで1921年、英国のケンブリッジ大学、ラザフォードのもとへ留学した。次いでドイツのゲッチンゲン大学を経て、デンマークのニールス・ボーアの研究所へ。当時、興隆期にあった「量子力学」の研究に打ち込み、スウェーデンのオスカー・クラインとともに、電子による光子散乱の確率に関する「クライン−仁科の公式」を導き出した。これは、現在でも使われている重要な公式である。
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仁科は7年余の滞欧後帰国し、日本のあちこちの大学で量子力学を講義した。京都大学の学生の中には、理研とかかわりの深い湯川秀樹(1949年ノーベル物理学賞)と朝永振一郎(1965年ノーベル物理学賞)がいた。二人は仁科による新しい物理学の講義と、仁科の持つ物理学者としての新鮮な活力に感銘した。当時の日本には、世界の物理学研究の最前線の雰囲気を、身をもって伝えることができるのは、仁科しかいなかった。駒込(東京都文京区)にあった理研に朝永ら俊英を集め、実験と理論の両方で、宇宙線、原子核など幅広い研究を進めていった。後に日本医師会会長となる武見太郎も一時、仁科研究室に所属し、放射線の生物学に対する応用を研究していた。理研での原子核研究は、より大型のサイクロトロンと「リングサイクロトロン」を経て、現在は「RIビームファクトリー」の建設が着々と進行している。
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1951年に仁科が亡くなった後、1953年、アスレタンという水虫薬が科研化学(株)(現:科研製薬(株))から商品化された。黒板に書かれている「水虫」という文字は、そのことを予測してのものかもしれない。朝永は仁科の没後、「仁科先生は、その時無謀なことをするなと思ったことが、今では当然だったりする。非常にスケールが大きくて、もう少し時間と距離を置かないと全体が見えない」と語っている。宇宙線研究は時間を超えて受け継がれ、後に小柴昌俊博士(2002年ノーベル物理学賞)らによる「ニュートリノ物理学」として大輪の花を咲かせた。■
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新理事に武田健二氏が就任
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4月1日、武田健二氏が理事に就任しました。当研究所の発展に尽力された井上 |
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新センター長等の紹介
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新主任研究員等の紹介
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中山文部科学大臣、横浜研究所を視察
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中山成彬(なりあき)文部科学大臣が2月10日、理研横浜研究所を視察しました。中山大臣は横浜研究所の各研究センター長同席のもと、野依良治理事長から「理化学研究所の概要」について、小川智也所長から「横浜研究所の概要」について説明を受けました。免疫・アレルギー科学総合研究センターの谷口克(まさる)センター長から「免疫・アレルギー疾患の克服に向けた取り組み」について全般的な説明を受けた後、季節の話題となっている花粉症対策の研究現場を視察し、斉藤隆グループディレクターから「花粉症研究の現状」について説明を受けました。続いて世界最大規模のNMR(核磁気共鳴装置)施設を視察し、ゲノム科学総合研究センターの横山茂之プロジェクトディレクターから「タンパク質構造解析研究」の説明を受けました。最後に各研究センター長との懇談会が行われました。中山大臣は報道関係者に対し、各省庁で進めている花粉症関連の研究や世界最先端のタンパク質の研究に触れ、「理研の科学者が頑張っている姿を目の当たりにした」と報告。精力的に研究に取り組む姿勢を伝えた視察内容となりました。 |
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奥田日本経済団体連合会会長、神戸研究所を視察
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日本経済団体連合会の奥田碩(ひろし)会長(トヨタ自動車(株) 会長)をはじめ、西室(にしむろ)泰三副会長((株)東芝 会長)、柴田昌治(まさはる)副会長(日本ガイシ(株) 会長)、三木繁光副会長((株)東京三菱銀行 会長)ほか役員の方々が1月20日、理研神戸研究所を視察しました。神戸研究所 発生・再生科学総合研究センターでは、竹市雅俊センター長からセンターの概要や取り組んでいる研究内容について説明を受けました。引き続きセンター長による、プラナリア、線虫、ES細胞映像などの各種展示物および細胞核移植実験で使用されるマイクロマニピュレーターのシミュレーション装置などの説明に熱心に耳を傾けていました。展示物や研究内容についての活発な質疑応答も行われ、再生医療などにもつながる神戸研究所の基礎研究に高い関心を示していました。 |
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平成17年度一般公開のお知らせ
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科学技術週間〈2005年4月18日(月)〜24日(日)標語“はじまりは いつもひとつの 「なぜだろう?」”〉の行事として、当研究所では下記の日程で一般公開を行います。 理研の最先端の科学研究に親しんでいただくため、研究室・施設の公開をはじめ、講演会、各種のイベントを行います。多数の方のご来場をお待ちしております。 (入場無料)
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科学の悩みは万国共通?
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昨年の10月に、イタリアのイスキア島で開催されたEPSO meeting(ヨーロッパ植物科学会議)に参加する機会を得た。EPSO meetingはヨーロッパ諸国が中心となって運営されている学会で、世界中の著名な植物研究者が最新の話題を提供してくれる。今回の開催地であるイスキア島は、イタリア南部のナポリ沖に浮かぶ火山島で、少し足を延ばせばナポリ市街やポンペイが観光できるという絶好のロケーションである。心が開放的になると学術的な議論も深まるとの考えだろうか、海外の学会はリゾート地での開催が多いような気がする。風光明媚な場所に来て、私も少し開放的になっていたのかもしれない。学会のランチで偶然隣り合わせた人に話し掛けてみたりした(英語に自信のない私にとっては、これでも大きな進歩なのである)。彼はイタリア人の大学院生であった。奇妙なことに彼とは何となく話が合い、結局、学会期間中はずっと行動を共にすることになる。その間の私の英会話量は、間違いなくこれまでの人生分よりも多かったであろう。私の脳みそはオーバーヒート寸前であったが、何とか意思の疎通は図ることができていた、と思う。彼との話題は、それぞれの国の違いや趣味のことなど多岐にわたったが、やはり研究に関することをよく話した。彼は今年学位を取る予定だが、まだ実験が終わっていないこととか、イタリアの大学では徒弟制度が横行しており、まだまだ能力主義とはいえないなどといったぼやきも耳にした。どこかで聞いたような話である。また、彼は研究で行き詰まっており、これから研究者としてやっていけるかどうか不安に感じているという。私には彼の言うことが心から(!)理解できた。彼の話を聞きながら、私はこれまでの研究生活を思い出していた。 私が理研で研究を始めたのは4年前のことである。しかしながら、当初私が取り組んでいたテーマは1年半の後に暗礁に乗り上げ、ポスドクとして先の見えぬ苦境に立たされていた。このままそのテーマを続けるか、それとも思い切った方針転換をするかを決断せねばならない。私の下した結論は、今の研究に可能性が見いだせない以上、新しいテーマに変更せざるを得ないというものであった。まさに断腸の思いである。幸いにしてその後始めたプロテインキナーゼの研究が順調に進み、昨年何とか論文を発表するところまでこぎ着くことができたが、その間の2年間などは筆舌に尽くし難いものがある。この過程で私が学んだことを1つ挙げれば、研究を完成させるためには複数の要素が必要であるということだろうか。それは実験技術の問題であったり、テーマの妥当性であったり、多少の運も関係するかもしれない。今から考えると、最初の研究では決定的な要素が欠けていたことが反省すべき点であった。 悩めるイタリア人を前にして、ぼんやりとそんなことを考えていた。話を聞く限り、彼の研究も似たような状況にあるようだ。そのことを説明したかったが、悲しいかな、それだけの英語力が自分にはない。彼には「とにかく頑張れ」という毒にも薬にもならないようなエールを送るしかなかった。反省。とはいえ、若いうちはあまり計算高くならずに、がむしゃらに全力疾走することも大事なのかもしれない。私の現在の研究もまだまだ完成には程遠い状況にあり、やらねばならないことが山積している状況である。研究者としてはまだまだ駆け出しの自分であるが、今後もできる限り全力疾走を続けていきたいと思っている。 ■
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