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研究最前線
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腸内細菌の全体像をつかみ、
予防医学に役立てる 辨野義己 中央研究所 |
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見えていたのは全体の3割だった
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19世紀半ば、ウィーン大学のTheodor(テオドール) von Escherich(エシェリッヒ)はふん便中に細菌を発見した。大腸菌である。ただし20世紀半ばまで、ふん便から大腸菌以外の細菌はほとんど培養できず、多くの細菌は腸内で死んだ状態だと考えられていた。その長年の常識を打ち破ったのが、理研の光岡知足(ともたり)博士らである。1950年代から、光岡博士らは無酸素状態の嫌気性培養を行うことによって、腸内で多くの細菌が生きていることを解明し始めた。ほとんどの腸内細菌は、酸素があると生育できない嫌気性細菌だったのだ。
約30年前、理研の光岡研究室に入った辨野室長は、「青春時代、腸内細菌とともに過ごしました」と語る。「細菌の種類によって繁殖条件が異なります。寒天培地を試行錯誤して作り、細菌を1つ1つ数えて種類と数を記録する“職人芸の世界”です。とても根気と体力が必要で、しかも試料のふん便や培地は臭く、細菌感染の危険性もある。誰もやりたがらない研究テーマです。光岡先生は“こんな仕事をやるのはばかだよ”と私たちに言っていましたね(笑)」 光岡博士は、独自の培養技術を駆使して腸内細菌を系統的に研究した業績により、1988年に日本学士院賞を受賞した。「これで腸内細菌のことは分かった、光岡先生の仕事は完成した、と皆さん思っていたのです」。しかし、辨野室長は、「今の培養法で、果たして腸内細菌全体を調べ切れているのだろうか」という疑問をずっと振り払えなかったという。 1980年代半ばから、腸内細菌のDNA解析が可能になり始めた。培養しないでも腸内細菌の存在を調べられるようになったのだ。そして1996年、分子生物学者による“衝撃の論文”を辨野室長は目にした。ヒトのふん便から細菌のDNAを抽出して解析したところ、“10〜25%は培養可能だが、残る75%は培養困難、不可能な菌である”というのだ。これまで約100種類といわれていた腸内細菌は、500種類以上あることも明らかになった。多くの研究者によって研究開発された培養法によってほぼ解明されたと思われていたものは、腸内細菌の約3割にしかすぎなかったのだ。 |
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腸内細菌の全体像をつかむ
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1998年、辨野室長は研究の方向を大きくシフトさせた。従来の培養法をベースにDNA解析の手法を取り入れ、“培養困難、不可能な菌”とされたものを含む腸内細菌の全体像の解明に挑み始めたのだ。まず健康な日本人3名のふん便から744の細菌DNAクローンを取り出して解析した。するとその75%が今まで発見されていない腸内細菌だった。さらに腸内細菌の構成は個人差が非常に大きいことが分かった。
そこで辨野室長は、ヒトの腸内細菌全体の構成パターンをより迅速・簡便に調べられるT-RFLP(Terminal Restriction Fragment Length Polymorphism)法を2000年ごろから導入し始めた。T-RFLP法は、まずふん便中のさまざまな腸内細菌から特定のDNA(16SリボソームRNA遺伝子)を取り出す。DNA合成の始点になる分子(プライマー)に蛍光色素を付けて増幅した後、2種類の制限酵素で切断する。DNAには4種類の塩基が並んでいる。制限酵素は特定の塩基の並びでDNAを切断する。切断されたDNA断片はさまざまな長さ(塩基数)になる。それぞれのDNA断片の量を蛍光の強さとして測る。それを塩基数の順に並べてみると、腸内細菌全体の種とその量の構成パターンを反映した「腸内細菌プロファイル」が見えてくる(図1・図2)。 |
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腸内細菌と病気の関係を探る
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そもそも腸内細菌がすむ大腸は、ヒトの体の中で最も病気の種類が多い“病気の発信源”である。しかも腸管は外界と接する“免疫の最前線”でもある。ある種の腸内細菌はアンモニアや硫化水素などの腐敗産物、細菌毒素、発がん物質を産出する。これらの有害物質は腸管に障害を与えて、大腸がんやさまざまな大腸疾患を引き起こす。また一部の有害物質は吸収されて血液を介して全身を回り、各種臓器に障害を与える。こうして腸内細菌は、発がんや老化、コレステロール沈着による動脈硬化、肝臓障害、痴呆、自己免疫病、免疫低下などの原因となっている可能性が高いことが分かりつつある(図3)。 例えば、痴呆症老人のふん便にはクロストリジウムが多く、これらの菌によって産出される有害物質が全身に広がると、神経伝達物質などの働きを阻害して脳の機能を低下させると考えられる。また最近の分子生物学的研究によると、腸内細菌が作り出す有害物質が、コレステロールの血管への沈着を促進して動脈硬化を引き起こし、心疾患や脳血管疾患の原因となっている可能性がある。さらに腸内細菌は胆汁酸を変換して二次胆汁酸を作り、大腸がんの発症を促進していることも明らかにされている。現在、二次胆汁酸を作る細菌が6種類発見されており、うち3種類は微生物機能解析室が解明したものだ。 「動物実験によると、無菌状態の動物は、通常より1.5倍長生きします。私たちの寿命は体内の細菌によってコントロールされていると言ってもよいのです」 |
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腸内環境データベースを作る
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このように腸内細菌と病気の関係が明らかになってきたが、腸内細菌の研究を発展させ、実際の予防医学などに役立てるには、従来の研究のあり方を大きく変える必要があると辨野室長は指摘する。
「これまでは主に培養できるものを対象に、ある病気のときにどの菌が増えたとか、減ったとかを調べていましたが、なかなか成果が得られませんでした。これからは腸内細菌全体が集団として、私たちの体や食べ物とどう相互作用し、どういう物質を産出するのかを調べる必要があります。まず、腸内細菌全体の構成をとらえる腸内細菌プロファイルと腸内細菌全体の産出物(代謝物)の構成をとらえる腸内代謝プロファイルを合わせた、腸内環境データベースを作ります。そして食生活などの生活習慣や病状などのデータも蓄積して関連性を解析すれば、どのような腸内環境が健康な状態か、どの腸内環境が特定の病気と関連するかが明らかになるでしょう。そうすれば腸内環境データを予防や病気の早期発見に役立てることができます」 腸内細菌のデータベース作りは、ヒトゲノムの解読に貢献した米国のCraig Venter(クレイグ ベンター)博士らもいち早く着手している。しかしVenter博士らは培養可能な菌のみを対象としている。1996年に“衝撃の論文”を発表した分子生物学者のグループも、その後、腸内細菌の研究を発展させることができなかった。辨野室長が率いる微生物機能解析室は、腸内細菌の全体像を解明し、予防医学に結び付ける研究で世界をリードする存在となっている。 腸内環境は一人ひとりで違い、同じ人でも食生活などの生活習慣や年齢とともに変化する。腸内環境データベースを作るには幅広い地域や年齢層で試料を集め、大量・迅速に解析することが必要だ。辨野室長は全国から十万人規模の試料を得るルートを開拓しようとしている。 「従来の培養法では、どんなに努力しても研究者1人が1年に200人分の腸内細菌を調べるのが限度でした。T-RFLP法のような分子生物学的な解析法を使えば、全過程を自動化することができます。理研の技術力を駆使して装置の改良を進めれば、2〜3年で十万人規模の試料を解析できるでしょう。T-RFLP法を紹介し始めたら、大学の医学部や病院との共同研究の輪も大きく広がりました」 生活習慣と腸内細菌、病気との関連を解明するには、特定の地域を集中的に調べることも重要である。例えば、弘前大学と共同で青森県内のある地域の住民3000名以上を対象に、腸内細菌を毎年検査して、その人が5年後、10年後にどういう健康状態になるか、関連を調べる予定である。青森県は男女とも“長寿ワースト1位”であり、大腸がんの高リスク地域の一つになっている。「近年、若い人を含め大腸がんの発症数が全国的にも増加傾向にあります。どういう腸内細菌パターンが大腸がんにかかりやすいのかが分かれば、予防や早期発見を国家レベルで行い、医療費も大幅に減額できます。大腸がんは最も医療費のかかる病気の一つです」 腸内細菌を調べることで、個人に合った薬を選ぶオーダーメイド医療も可能になると辨野室長は言う。「例えば抗生物質の投与では下痢の副作用が問題です。腸内細菌を調べて、その人が下痢を起こしにくい抗生物質を選ぶことができるようになるでしょう。漢方薬なども腸内細菌を調べることで、その人にとって最も効果的な処方を決めることができます。腸内細菌が出す酵素が、漢方薬の薬効成分を活性化させることが多いのです」 ヒトの体にすみついている細菌は腸内細菌以外にも、口腔(こうくう)内や膣内にそれぞれ約500種類と推定されている。皮膚にも多数の細菌がいる。「現在、口腔内細菌のうち、単離されているものは10%にしかすぎません。口腔内細菌の全体像をT-RFLP法で調べ、歯周病の治療や予防に役立てる共同研究も進めています」 今後は、理研内部での連携も深めたいと辨野室長は語る。「例えば、理研横浜研究所の免疫・アレルギー科学総合研究センターと、腸内細菌とアレルギーの関係を探る共同研究を行ってみたいですね」
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腸内細菌で医と食を結ぶ
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例えば、食中毒を起こす腸管出血性大腸菌O-157やサルモネラ菌の感染を受けても、発症する人と、しない人がいる。「その病原菌に対抗する腸内細菌を持っているかどうかの違いです。では、どういう腸内細菌パターンを持てばよいのか。それには、どういう食生活に改めるべきか。最寄りの病院で腸内細菌検査を行い、アドバイスを受ける日がすぐそこに来ています」と辨野室長は言う。「医食同源という言葉がありますが、医と食の間にあった扉が、腸内細菌を通じて初めて開かれるのです」
腸内細菌の研究の進展とともに、健康に有益な効果をもたらす各種の乳酸菌の機能解明も進み、それらを取り込んだ機能性食品であるプロバイオティクスがブームとなっている。「プロバイオティクスは、“抗生物質=アンチバイオティクス”の反対概念として生まれました。抗生物質は病原菌ばかりでなく、有益な働きをする細菌まで皆殺しにします。それに対して、健康増進効果を示す微生物の働きを利用しようというのがプロバイオティクスの考え方です」 プロバイオティクスの典型は「特定保健用食品」の表示がある発酵乳やヨーグルトだ。特定保健用食品とは、1991年に日本が世界に先駆けて導入した制度で、医学的あるいは栄養学的な研究成果に基づいて、保健効果が期待できる食品には、機能表示を国が許可するものだ。 乳酸菌を利用した特定保健用食品の健康強調表示(Health Claim)は、整腸作用のみであるが、将来は、免疫活性によるがんのリスク低減、アトピー性皮膚炎の予防、血糖値や血圧・コレステロール抑制、胃潰瘍(かいよう)の予防・改善、歯周病などの原因菌抑制などに展開する可能性も出てきている。 「特定保健用食品のブームは、腸内細菌の全体像の解明とともに、乳酸菌などの機能が明らかになってきたことから起きたもので、一時的な流行ではありません」と辨野室長は評価する一方で、最近のブームは行き過ぎの部分もあると警告を発する。「特定保健用食品を、薬のように考えている人が多すぎます」 食を含めた生活習慣全体を改善して、腸内細菌全体のバランスを変え、健康の増進と病気の予防を実現していくことが大切なのだ。辨野室長はその実践者である。「人には勧めておきながら、実は野菜やヨーグルトが苦手でした。しかし3年前から生活を改めました。朝、手足に計7kgの重りをつけて1時間散歩します。食事は野菜中心へ切り替え、ヨーグルトも1日に500g食べています。こうして体脂肪は28%から22%へ落ち、年来患ってきた花粉症や痛風も改善しました」 |
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腸内細菌研究を健康に結び付ける
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「私は30年間、腸内細菌の研究をしてきましたが、この3年間で腸内細菌の研究は大きく様変わりしました。私たちが様変わりさせたと言っても過言ではありません」。分子生物学的手法を導入して以降、微生物機能解析室には食品企業などから委託研究生が多数集まるようになった。「私が若い人によく言うのは、“DNAを見ただけでは細菌のことは分からない。生きた細菌を見ることによって初めてDNAの機能も分かるのだ”ということです。私は微生物学者ですから“培養不可能”という言葉は使いません。どんな菌も将来は必ず培養できます(図4)」と語る辨野室長は、最後にこう結んだ。 「培養を必死にやってきた50年以上の歴史があるからこそ、今日があるのだと思います。培養法ではできなかった研究を、分子生物学的な手法を取り入れて再構築しているのです。20世紀の腸内細菌研究は、“研究のための研究”でしたが、やっと予防医学に役立てるときが来ました。これまでの多くの研究者の努力を、人の健康に実質的に結び付ける橋渡しをしていきたいと思っています」 ■ |
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固体表面のナノ構造を
原子レベルで見る 潮田資勝 フロンティア研究システム フォトダイナミクス研究センター |
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光を当てると物質表面から
電子が飛び出す |
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「私がやっている仕事は、説明しても、なかなか分かってもらえないんですよ」と、潮田チームリーダーは笑って話し始めた。「けれども、今注目されているナノテクノロジーをはじめ、さまざまな分野にとても役に立つ。それに、とっても面白いんですよ」物質の表面では、いろいろなことが起きている(図1)。光と物質表面の相互作用をミクロな立場、原子レベルで調べているのが、表面フォトダイナミクス研究チームだ。「光が物質に当たると、物質の表面から電子が飛び出してきます。“光電効果”と呼ばれるこの現象が、私たちの研究対象の一つです」 潮田チームリーダーは光電効果をこう解説する。「光を当てる物質を、バケツに例えてみましょう。バケツの上の縁が、物質の表面です。縁の少し下まで電子が詰まっています。そのままでは電子は、バケツから飛び出すことはできません。しかし、電子に光を当てると、どうなるでしょうか。電子は、光のエネルギーを受け取ります。エネルギーレベルが高くなった電子は、バケツの上の縁、つまり物質の表面から飛び出してくるのです。このように考えれば、光電効果をイメージしやすいでしょう。小柴昌俊先生がノーベル物理学賞を受賞して有名になった、カミオカンデの光電子増倍管は、まさに光電効果を使っています」 光が金属に当たって飛び出してきた電子を増倍し、光の強弱を電流の強弱に変換して観測するのが、光電子増倍管である。カミオカンデでは、超新星から飛んでくるニュートリノが水分子と反応して出す光を観測するのだが、反応数が極めて少なく、光も非常に弱い。そこで、直径50センチという世界最大の光電子増倍管を作り、大発見を成し遂げた。「日本の光電子増倍管は間違いなく世界一。あれがなかったら、小柴先生の発見もなかったでしょう」 |
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物質表面の物理・化学現象
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物質の表面では、光電効果のほかにもダイナミックな物理現象や化学現象が起きている。しかも、さまざまな産業技術に応用できるものが多い。
「結晶成長」もその一つだ。液体を下から冷やしていくと、下からだんだん固体になっていく。液体の中で動き回っていた原子が、固体の表面に次々と組み込まれ、結晶が成長していくのだ。「固体と液体の界面で原子がどのような振る舞いをしているのか。それを、今一番知りたがっているのは、半導体産業です」 半導体材料として最もよく使われているのが、シリコン(Si)である。Siは、地殻中に多く存在するありふれた元素だ。しかし、半導体の材料として使うSiは、原子が3次元的に規則正しく並んだ「単結晶」でなければならない。いかに欠陥がない半導体の単結晶を作るか、それが現在の半導体産業が抱える問題の一つなのだ。「結晶成長のとき、固体の表面で何が起きているかが分かれば、単結晶成長をうまく制御できる可能性があります」と潮田チームリーダーは語る。 身近なところでも、固体表面物性の研究が応用されている。「自動車の排気ガスを排出するマフラーには触媒装置が組み込まれています。あれも、物質の表面で起きる化学現象を使って窒素酸化物(NOx)などを人体に無害なものに変えているんですよ」 |
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STMで原子1個1個を見る
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「物質の表面や界面は、非常に面白いですね。しかし、まだ“低開発分野”です。表面で何が起きているかを原子レベルで調べることは、非常に難しい」と潮田チームリーダーは言う。
物質の表面では、酸素や二酸化炭素をはじめ、空気中にあるさまざまな分子や原子が常に相互作用している。例えば、実験者が前の晩にお酒を飲んでいれば、呼気中の微量なアルコール分子が影響することもあるだろう。実験をしても、そのたびごとに条件が変わり、再現性がある結果とならないのだ。これではサイエンスではない。 表面で何が起きているかを純粋に調べるためには、超高真空装置の中で、完全に清浄に保った試料を使って実験しなければならない(図2)。それが割合簡単にできるようになったのが、1970年代の終わりだ。 その後の表面物性研究の発展に大きく貢献したのが、走査型トンネル顕微鏡(STM)である。STMは、1981年にIBMチューリッヒ研究所のGerd Binnig(ゲラルド ビニッヒ)博士とHeinrich Rohrer(ハインリッヒ ローラー)博士によって発明された。2人はこの業績によりノーベル物理学賞を1986年に受賞した。金属でできた鋭い探針を試料表面に約1nm(10億分の1m)まで近付け、電流を流す。すると、探針と試料表面との間に「トンネル電流」と呼ばれる小さな電流が流れる。トンネル電流が一定になるように、探針で試料の表面を走査すると、試料表面の凹凸、つまり原子の1個1個が識別できるSTM像が得られる(図3)。「STMの高さ方向の分解能は0.01nmです。一番小さい水素原子の直径は0.1nmだから、1個の原子が楽々見えます」
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STM発光分光法によって
ナノ構造の性質を知る |
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「STMによって、原子1個1個が見えるようになりました。でも、それが何の原子か分からないのです」と潮田チームリーダーは問題点を指摘する。「固体表面に作られたナノメートルサイズの微細な構造や、吸着している原子や分子の性質を個々に見ようというのが、現在の私の仕事です」
潮田チームリーダーが注目したのが、STM発光分光法である(図4)。STMで微弱な発光があることは、1988年ころにIBMチューリッヒ研究所で見つかっていた。探針の下にある原子核の周りの電子は、トンネル電流からエネルギーを受け取り、エネルギーレベルが上がる。電子が元のエネルギーレベルに戻るとき、エネルギーを光として放出するのだ。「電子が出す光のスペクトルは、元素ごとに決まっています。STM発光を分光観測すれば、探針の下にある原子がどの元素か識別できるはずなんです」 しかし、STM発光は、ものすごく弱い。それでも潮田チームリーダーには自信があった。「日本には世界一の光電子増倍管がある。それに私は、弱い光を集めて見えないものを見るのが得意なんです」。そして2001年、潮田チームリーダーらは、銅(Cu)の基板上に吸着している酸素(O)原子がSTM発光分光により識別できることを実証した。これは、固体表面に吸着した個々の分子や原子の種類がSTM発光で識別されることを示した世界初の実験である。 最近では、ニッケル(110)表面[Ni(110)]の基板上に吸着している水素(H)原子もSTM発光分光法で識別できることを発見している(図5)。通常のSTMで吸着種を可視化できる場合もあるが、そのためには電子状態が適切なエネルギーレベルになければならない。しかし、Ni(110)基板上のH原子は、このような電子状態を持たないため、通常のSTMでは可視化できない。STM発光分光法の吸着種識別能力は、通常のSTMよりも格段に優れているのだ。 「ナノ構造を作っても、それがどういう性質を持つのかが分からなければ、何に使えるか分かりません。それでは意味がない。私たちの仕事は、今までできなかったナノ構造の評価を可能にするものです」
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量子井戸の物性を調べる
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STM発光分光法を使うと、半導体のナノ構造の一つである「量子井戸」の物性を調べることもできる。エネルギーギャップの小さい半導体を、よりエネルギーギャップの大きな半導体で挟んだ構造が「量子井戸」である。エネルギーギャップの小さな半導体の部分に電子が落ちやすいことから、「井戸」の名が付いている。エネルギーギャップとは、価電子帯にある電子が伝導帯に移る(電子遷移)ために必要なエネルギーだ。
「電子は量子力学的には波なんです。量子井戸のサイズが狭くなると、電子の波長が縮まる。波長が短いほどエネルギーが高くなるから、量子井戸のサイズを狭くしていくと、電子のエネルギーレベルが高くなる。これを“量子閉じ込め効果”と言います」と潮田チームリーダーは解説する。「私たちは、STM発光分光法を使って、nm程度という今までにない高分解能で、個々の量子井戸の量子閉じ込め効果を観察することに成功しました」 試料は、アルミ・ガリウム・ヒ素(AlGaAs)とガリウム・ヒ素(GaAs)を交互に積み重ねた結晶の断面を使う。よりエネルギーギャップが大きいAlGaAsに挟まれたGaAsの層が量子井戸になる。GaAsの層の厚さを変えていけば、量子井戸の幅を自在に変えることができる。実験の結果には、量子力学の理論で予想されている通り、狭い量子井戸の電子遷移は高エネルギーで、広い量子井戸の電子遷移は低エネルギーであることがはっきり示されている(図6)。 量子構造には層構造の量子井戸以外に、点や線、箱などもあり、それぞれ量子ドット、量子線、量子箱と呼ばれる。「量子閉じ込め効果を使ったナノ構造は、すでに半導体デバイスで利用されています。しかし、個別の量子構造を評価する方法がなかったのです。STM発光分光が、その有力な手段になることが明らかになりました」 ![]() |
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液晶の技術革命
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表面フォトダイナミクス研究チームでは、液晶の研究もしている。「液晶は、生活の中でとても役立っていますが、液晶ディスプレイは実はとても原始的な作り方をしているのです。まだまだ改良の余地があります」と潮田チームリーダーは指摘する。
現在、液晶を作製するにはまず、ガラス基板の上にポリイミド膜を付け、布でラビングする(こする)。すると、ポリイミドの分子の向きがラビングした方向にそろう。この配向膜に液晶分子を流し込むのだ。しかし、「こする」という作業は制御が難しい上に、静電気が起きたり、ちりが出たりといった問題もある。 表面フォトダイナミクス研究チームの宇佐美清章研究員は、こすらずに、光を使って分子の方向をそろえた配向膜を作り、その上に液晶分子を並べるというまったく新しい方法を開発している。問題の多いラビングの工程がなくなるため、大きな技術革新になると期待されている。 |
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タンパク質のフォールディングが面白い
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「私は、研究の計画をあまり立てないんですよ」と潮田チームリーダーは言う。「自分で計画できるものは、自分の想像力の範囲内でしかない。外的要因で出会ったものから面白そうなものを拾っていくと、自分の想像を超えた展開があるものです」
潮田チームリーダーに今、面白いと思っていることを聞いた。「タンパク質のフォールディングですね。アミノ酸が連なった1本の鎖が折り畳まれて立体的なタンパク質になることをフォールディングと言います。真っすぐな毛糸を持ってきて、セーターをぱっと作るようなものです。物理としてみると、簡単には説明できそうもない大問題なんです」。光と物質表面の相互作用で生じる「ラマン散乱」という弱い光を観測することで、フォールディングの過程を原子レベルで見ることができるのではないかと、潮田チームリーダーは考えている。 「物理屋は、これまで主にソリッドマター、固体を相手にしてきました。でも、今までの理論では扱いにくい液体などのソフトマターやアモルファス物質(非結晶)も相手にしなければならない段階に来ています。そういう意味でもタンパク質のフォールディングは面白そうですね」 潮田チームリーダーは、科学技術振興機構(JST)の「情報・バイオ・環境とナノテクノロジーの融合による革新的技術の創製」プロジェクトの研究統括も務めている。このことからも、表面物性の研究が、21世紀を支える技術創製の根幹に位置していることが分かる。「その研究は何に役立つんですか? と聞かれると、困ってしまうこともありますよ」と潮田チームリーダーは笑う。「私たち物理屋は、現象として面白いから見ている。それに対して、ニーズから攻める技術屋も必要。両方のメッシュがかみ合って初めて、良いものが生まれるのです」 表面フォトダイナミクス研究チームでは、STMを使ってカーボンナノチューブの物性を原子レベルで調べる実験を最近始めた。「カーボンナノチューブの端と、グニャグニャに曲がっているところでは、原子の性質がどう違うか見たいんですよ。面白いでしょ」。また一つ、革新的技術の種がまかれた。■ |
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ショウジョウバエを用いて
ヒト神経変性疾患発症メカニズム を解明 不良品タンパク質の細胞内蓄積が 2003年9月16日 文部科学省においてプレスリリース |
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研究チームでは、ショウジョウバエの複眼に任意の遺伝子を過剰に発現させ、複眼に神経細胞死を誘導する遺伝子群を選別、推定7500個の遺伝子を検定して、最終的に34個の神経細胞死誘導遺伝子を同定した。この34個の神経細胞死誘導遺伝子のうち、2個の遺伝子がタンパク質の輸送に関与するチャネルを構成するサブユニットSec61αをコードするものであった。Sec61αは、小胞体から細胞質への不良品タンパク質の輸送を担っている。通常、小胞体から輸送された不良品タンパク質は細胞質で分解される。しかし、ポリグルタミン病※患者が保有する伸長型ポリグルタミンを細胞で発現させると、不良品タンパク質を分解する能力が低下することが知られていた。
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研究チームがSec61αを過剰に発現させたところ、不良品タンパク質が小胞体から細胞質に輸送されて蓄積し、細胞死が誘導された。逆に活性を弱めると、細胞質における不良品タンパク質の蓄積が減少することを突き止めた。さらに、この遺伝子の機能の活性を人為的に抑制することにより、伸長型ポリグルタミンによる晩発性の神経変性が回復することも見いだした。つまり、ポリグルタミン病の細胞では、小胞体にある不良品タンパク質が、Sec61αによって輸送され、細胞質に蓄積して毒性を発揮する。一方、Sec61αの働きが低下した細胞では、小胞体内に不良品タンパク質を残して細胞毒性から細胞を守るとともに、不良品タンパク質の矯正にかかわる特別なタンパク質の発現を誘導することで、不良品タンパク質の量そのものを減少させるのではないかと考えられる(図)。
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これまで、ポリグルタミン病の発症においては、伸長型ポリグルタミンが遺伝子の発現を乱すことによって神経変性が引き起こされているのではないかと考えられてきた。一方、今回の研究は、不良品タンパク質の細胞内蓄積が神経変性に関与しているという新しいメカニズムを提示したものである。さらに、不良品タンパク質の輸送を担うSec61αの機能を低下させることによって、不良品タンパク質の蓄積と細胞死を人為的に防ぐ手法の開発に道を拓いた。今後、Sec61αはパーキンソン病、プリオン病やハンチントン舞踏病などを含む多くの神経変性疾患の新しい治療ターゲットの有力な候補となることが期待される。本研究成果は、米国の学術専門誌『Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America: PNAS』(米国科学アカデミー紀要)9月30日号に掲載された。■
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一次元磁性体において
新しい振動状態を観測 2003年10月16日 文部科学省においてプレスリリース |
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近年、ナノテクノロジーの進展に伴い、磁性材料などの量子力学的効果(量子効果)に関心が寄せられている。また、基礎研究(物性物理、磁性)の分野でも、磁性体の量子効果に興味が持たれている。この磁性体の量子効果は、磁気モーメント(小さな磁石)の素朴な配列で状態が決まるとする描像では説明がつかず、磁性体のサイズが小さくなったり、ある特殊な方向にのみ磁気モーメント間の相互作用が大きくなったりしたときに顕著に現れる場合がある。一方向にのみ大きな相互作用を有する磁性体を一次元磁性体という。
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従来の磁性体の振動(励起)状態のイメージは、低温において磁気モーメントがそろった秩序状態から、磁気モーメントが全体で波打った状態(古典的なスピン波)(図1)となると考えられ、実験をよく説明できた。一方、ある種の一次元磁性体(図2)においては、磁場を加えない時は電子スピン由来の磁気モーメントが消失しており、この基底状態と励起状態の間にエネルギーギャップ※2が存在する。ところが加える磁場を強くしていくと、そのエネルギーギャップが小さくなり、ある磁場強度でギャップは消滅し、その瞬間磁気モーメントが現れ始める。この状態では低温で秩序状態になり、上記スピン波に対応する励起状態の観測が期待される。
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本実験では、一次元磁性体試料としてスピン数1を有するニッケルを含む鎖状の分子磁性体※3(NDMAP)を用いた。これまでに開発してきた世界最高レベルの高磁場多周波数ESR装置を使って、このエネルギーギャップを消滅させる磁場(臨界磁場)以上の磁場(図3)で低温において、上記スピン波の励起状態に対応するものとは異なる励起状態のスペクトルを観測した。すなわち臨界磁場からさらに磁場を強くするにつれて、エネルギーギャップが大きくなる3つの励起状態が観測された(図3)。この新しく観測された励起状態は磁気モーメントが集団振動するのではなく、消滅していた磁気モーメントが強磁場中であたかも粒子的に回復し、その励起状態は磁気モーメントの向きを変えるのに必要な大きさのエネルギーに対応するというモデルにより初めて説明できた。(図4)。
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この成果は、特に磁性体の示す量子効果についての研究分野に強いインパクトを与えると同時に、ナノテクノロジーやナノサイエンス分野での量子力学的な効果に新たな知見を加えるものである。本研究成果の詳細は、米国の科学雑誌『Physical Review Letters』10月24日号に掲載された。■
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有機化学反応論を超えた、
ペプチド鎖の新しい切断反応を タンパク質内で発見 蛍光タンパク質「カエデ」の、紫(外)光で 2003年10月25日 文部科学省においてプレスリリース |
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研究チームでは、ヒユサンゴからクローニングした蛍光タンパク質が、紫(外)光の照射によって緑色から赤色へと色が変わる特性(photoconversion)を有していることを発見し、緑から赤に変わることからこのタンパク質を「カエデ」と命名した。研究チームでは、このphotoconversionを利用して、光で細胞、細胞内小器官、分子をマーキングする技術を開発してきた。今回は紫(外)光を浴びることでカエデが緑から赤に変色するメカニズムの解明に取り組み、緑のカエデと紫(外)光照射により赤くなったカエデの2つの状態を比較しながら、それぞれのタンパク質の構造解析を行った。
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解析の結果、赤状態のカエデで、ペプチド鎖が1カ所で切れていることが判明した。特定の波長の光でペプチド鎖が特異的部位で切れるという現象の報告は、これが初めてのことである。その切断個所は、発色団のアミノ末端側付近に絞られた。詳細な解析を進めていくと、発色団を形成するヒスチジン残基のアルファ炭素原子とアミノ基の窒素原子との間の共有結合が、ベータ脱離反応によって切れることが分かった(図1・図2)。この結合を切るには莫大(ばくだい)な量のエネルギーが必要なため、驚くべきことであった。一般的に、ペプチド鎖の切断はペプチド結合部分で加水分解反応することで起こる(ペプチド結合とは、ペプチドの構成単位であるアミノ酸を連結する結合を指す)(図2)。反応式だけからは信じ難いこのベータ脱離反応による切断現象も、実際にはタンパク質の中で進むことを考慮する必要があり、紫(外)光を吸収したカエデタンパク質が触媒として働くことによって起こるものと結論された。
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今回研究チームが報告したペプチド鎖切断は、「紫(外)光照射に依存する」、「ペプチド結合以外の個所で起こる」という2点で、新しいタイプのものである。さらに、カエデタンパク質ではこの切断作業の完了を、緑から赤への色の変化で知ることができる。すなわち、切断後にヒスチジン残基のイミダゾール環が加わることによって発色団が広がり、赤色の蛍光活性を示すように変化するのである。カエデタンパク質には、以上のような興味深い現象が詰まっており、光とタンパク質との相互作用、あるいはタンパク質における光化学反応に関するわれわれの理解を深めることができる。今後、紫(外)光でペプチド鎖が切れることを利用した、ナノレベルの新技術の開発などに結び付くことが期待される。本研究成果は、米国の科学雑誌『Molecular Cell』(モレキュラーセル)10月号に発表された。■
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和光研究所、「RIビームファクトリー計画」説明会を開催
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第11回名古屋市・理化学研究所ジョイント講演会を開催
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理研バイオ・ミメティックコントロール研究センター(名古屋市)は2003年11月26日、第11回名古屋市・理化学研究所ジョイント講演会を名古屋市工業研究所で開催しました。本講演会は、理研と名古屋地域の研究者、産業界との交流と連携の輪を広げ、理研の研究成果を広く公開することを目的として、毎年名古屋市と共催しています。 11回目となる今回は、向井利春チームリーダー(生物型感覚統合センサー研究チーム)が「環境適応ロボットのためのセンシングシステム」、羅志偉チームリーダー(環境適応ロボットシステム研究チーム)が「環境適応ロボットの知的な運動制御」と題して、それぞれ当センターの研究成果について講演を行いました。当日は100名を超える来聴者が熱心に耳を傾け、地元企業の来聴者を中心に活発な質疑応答がありました。 |
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「まなびピア沖縄2003」に出展
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当研究所は「ゲノム科学」をテーマにDNAの模型や顕微鏡を使った実物展示、PCコンテンツなどでゲノム科学を分かりやすく紹介。3Dシアターを使った「太陽系のシミュレーション」の紹介は子供たちに大好評でした。また、11月27日には秋篠宮ご夫妻が当研究所のブースを来訪されました。来場者数:延べ約26万人(5日間)。 |
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「ナショナルバイオリソース
プロジェクトにおける実験動物(マウス) シンポジウム」開催のお知らせ |
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2001年に開設した理研バイオリソースセンター(BRC)は、2002年よりナショナルバイオリソースプロジェクトの中核機関となりました。そこで、最近の成果報告と、疾患および生体機能モデルマウスを取り巻く国際状況を報告するシンポジウムを下記の通り開催します。当日は理研だけでなく、国内のバイオリソース関連事業を担う複数の研究機関から11名が講演します。皆さまのご来場をお待ちしております。
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ニューヨークの地下鉄
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マンハッタン内を移動するのに一番便利なのが地下鉄。バスのように道路渋滞に巻き込まれることもないし、タクシーのようにチップの計算に緊張することもない(タクシーはメーター料金に加えて15%程度のチップを払う)。地下鉄は路線がたくさんあり、改札を出なければ乗り継ぎも自由で一律2ドルとコストパフォーマンスも良い。普通の時間に乗っていれば安全だし。だが、やはりここにも東京とは違う何かがあった。 まず、マンハッタンの地下鉄には時刻表、ダイヤがない。だから電車がいつ来るかわからない。特に週末は本数が少ないので、次の電車は5分後のこともあれば20分後のこともある。おまけに急行と各駅停車がアトランダムに来る。ホームが1つしかない場合は、散々待たされてやって来た電車が急行で、次の電車(もしかしたら次の次かもしれないし、3本後の電車かもしれない)を待たねばならないこともある。よって、目的地到着時間は予想できない。さらに、各駅停車がいきなり急行になることがある。先日、各駅停車しか止まらない駅の近くに用事があったので、途中駅まで急行で行って「各駅停車用ホーム」に移動し「各駅停車」と表示されている電車に乗り換えたにもかかわらず、次の駅を通過してしまった。一瞬自分が間違えたかと思ったが、同時に電車中からどよめきが上がった。しかし人々はあきらめ顔で座席に戻り、次に停車した急行停車駅で降りて、駅員に文句を言うこともなく反対向きの電車に乗り換えていった。私もその波に入り、何とも言えない一体感を感じてうれしくなってしまったのだが……。 次に、週末は工事で路線が一部運休になることがある。いつのことだったか、ある駅に行くとホームで大勢の人が電車を待っていた。ということは、前の電車が行ってから時間がたっているということなので、もうすぐ電車が来るだろうと予想するのである。しかし、来ない。業を煮やしたある女性がたまたま通りかかった駅の掃除のおじさんに尋ねたところ、今日はこの路線は工事のため運休だと言う。すると人々は伝言ゲームのように情報を分け合って、またもあきらめ顔でホームを出て行った。そういえば、途中駅で運転打ち切りで降ろされたこともあったっけ。おかげでそのときは待ち合わせに遅れたのだった。こんなに要領の悪い事情を書くと、駅の構内放送や車内アナウンスがないのか? と思われるだろうが、私は構内放送なるものを聞いたことがない。車内アナウンスはまったくないときもよくあるし、あっても聞き取れないことが多い。そもそも電車に乗ってから知らされても遅いのだ! そんな地下鉄だが、さすがにニューヨークの地下鉄だ。中華街方面から来る電車には漢字交じりのレジ袋を下げた中国系の人が多く、ハーレムに向かう電車には黒人の乗客が多い。飛び交う言葉もいろいろで、世界中から人が集まる街ニューヨークを実感する。リキテンシュタイン(だと思う)の大壁画がある駅があり、パフォーマンスの周りに人だかりがしている駅もある。車内ではホームレスが自作の新聞を売り歩き、結構な人が買っている。改札正面の、防弾ガラス張りの切符売りブースの中で、水栽培の新芽が光っていたりする。地下鉄を通してアメリカが見えるような気がしている。■
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