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新しい理研に期待すること 〜独立行政法人化に向けて〜
谷畑(司会):理研は、この9月末日で特殊法人の歴史に幕を閉じ、10月から独立行政法人になります。これを機会に、理研は今後こうあってほしいというラジカルなご意見を、理研の相談役を中心に本日ご参集いただいた皆さんに伺いたいと思います。 ● ● ● ● |
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小林俊一 理事長 退任のごあいさつ
5年余の歳月、理化学研究所の理事長を勤め、この9月末をもって退任することになりました。前任者や前々任者の先輩方から「理研はいいところだよ」と聞かされてはいたものの、着任時の事情が極めて唐突であったため、文字通り西も東も分からないまま仕事を始めることになりました。それまで「研究とは何か」というようなことはほとんど意識したことがなかったのですが、この5年間は「理研の研究とは何か」が片時も頭を離れませんでした。
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筋収縮の調節メカニズムに迫る アクチンフィラメントの立体構造と 播磨研究所 筋の収縮を調節する「アクチンフィラメント」の研究で大きな進展があった。構造生物化学研究室の前田雄一郎主任研究員らが、トロポニンの立体構造を世界で初めて決定したのである。トロポニンは、アクチンフィラメントを構成するタンパク質の一つで、筋収縮の調節において重要な働きをしている。筋収縮のカルシウムイオン(Ca2+)調節説が提唱され、Ca2+が結合するトロポニンが発見されて以来、40年もの間待ち望まれていた画期的な成果である。「私たちは、アクチンフィラメントの立体構造を明らかにし、それをもとに筋収縮の調節メカニズムを徹底的に解明することを目指しています。トロポニンの立体構造が分かったことで、どのように動き、どのように機能するか、いよいよ核心に迫る研究ができるようになりました」と前田主任研究員は語る。構造生物学は、どのように筋収縮の調節メカニズムを解き明かしていくのか。世界最先端の研究現場を紹介する。 ●
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高圧NMRで構造の動きを見る ● トロポニンの立体構造解析も終わってはいない。決定されたトロポニンの立体構造は、まだ中核部分だけだ。切り取ったのりしろ部分の構造を知るには、トロポニンとトロポミオシンが結合した結晶を解析する必要がある。すでに結晶はできているが、まだ質が悪いため改良しているところである。 「実は、切り取ったのりしろ以外にも、見えていない部分があるのです。結晶中でも決まった構造をとらないで揺れているのでしょう。私たちは、NMR(核磁気共鳴装置)※3を使って、X線結晶構造解析では見えなかった部分の構造を解析する準備を進めています」 NMRの場合は、結晶を作る必要がなく、溶液中のタンパク質の構造を解析できる。前田主任研究員が準備を進めているのは、近畿大学生物理工学部の赤坂一之教授が開発した高圧下でタンパク質の構造を解析する高圧NMRである。3000気圧もの高圧下で測定することで、常圧下では測定することのできないタンパク質の立体構造の変化を測定することができる。この装置は世界で、理研播磨研究所にしかない。 トロポニンの研究は、心疾患の原因解明や治療薬の開発にも結び付くと注目されている。一部の心筋症は、トロポニンの遺伝子の変異が原因であることが分かっている。また、九州大学医学部の大槻磐男(おおつきいわお)教授(当時)らが、トロポニンの遺伝子変異と心筋症の病態を詳しく分類したところ、変異が起きている個所はさまざまだが、生理的・機能的異常はわずか3種類に分類できることが分かった。「遺伝子の変異が起きるとタンパク質の立体構造が変わり、機能も変化します。遺伝子の変異と構造の変化、生理的な異常を詳しく対応づけていくことで、トロポニンの機能メカニズムが解明できるでしょう」と前田主任研究員は期待を寄せる。その成果は、トロポニンに直接働いてCa2+の感受性や筋の張力を調節できる、心筋症の治療薬や予防薬の実現にも大きく貢献する。 ● ミニ・アクチンフィラメントを作る ● アクチンフィラメントを構成する個々のタンパク質の立体構造解析は着々と進んでいる。「しかし、筋収縮の調節メカニズムをすべて明らかにするためには、やはりアクチンフィラメント全体の立体構造を決定する必要があります。ですが、長さがばらばらで繊維状のタンパク質を結晶化することはできません。アクチンフィラメントの結晶を作るには、長さがそろった短いアクチンフィラメントを人工的に作る以外にはないのです」前田主任研究員は、自然に学ぼうと考えた。自然界には、長さのそろったミニフィラメントがある。細胞の非対称分裂などにかかわっているダイナクチン複合体だ。研究室では、クライオ電子顕微鏡による単粒子解析法を用いて、ダイナクチン複合体の解析を進めている(図7)。「ダイナクチン複合体は、なぜ長さがそろった短いフィラメントになっているのか、その設計原理を知りたいのです」 一方で、短いアクチンフィラメントを人工的に作るための“道具”の研究もしている。筋のアクチンフィラメントは、一方の端をトロポモジュリン、もう一方の端をCapZというキャッピングプロテインによってふさがれ、それ以上重合できないようになっている。研究室では、すでにトロポモジュリンとCapZの立体構造を決定し、現在はどのようにアクチンフィラメントと結合しているかを詳しく調べている。長さをそろえるためには、物差しも必要だ。トロポミオシンは、ちょうどアクチン7個分の長さであるため、物差しになるだろう。 「ダイナクチン複合体からミニフィラメントの設計原理を学び、トロポモジュリン、CapZ、トロポミオシンの3つの道具を使うことで、長さがそろった短いアクチンフィラメントができるのではないかと考えています。アクチンフィラメント全体の立体構造が決定すれば、いよいよ筋収縮の調節メカニズムに迫ることができます」 「アクチンフィラメントを深く理解しようとすると、あるときはX線結晶構造解析が有効だが、あるときは電子顕微鏡が必要だというように、目的に応じて臨機応変に、最良の方法をとる必要があります。時には、独自の方法を開発しなければならない。それを一つの研究室でやるのはなかなか難しいですね」と前田主任研究員は語る。構造生物化学研究室が所属する播磨研究所には、世界最高輝度を誇るSPring-8を中心に、世界最高性能のクライオ電子顕微鏡や世界で唯一3000気圧での測定が可能なNMRもある。加えて、独自に開発した数々の技術が、アクチンフィラメント、そしてタンパク質の相互作用に関する世界最先端の研究を支えているのである。■ ※1:X線結晶構造解析 タンパク質の結晶にX線を照射すると、原子の周りにある電子によって散乱され、干渉によって回折像が得られる。 回折強度から電子の分布を逆算することで、タンパク質の立体構造を決定する。 ※2:クライオ電子顕微鏡 液体ヘリウムで試料を−269℃(絶対温度4K)に保つことで、電子線によって試料がダメージを受けることなく、高解像度の画像を得ることができる。 ※3:NMR(核磁気共鳴装置) 核磁気共鳴は、物質内部の原子核の位置や価電子状態に依存する電磁波を、原子核が吸収・放出する現象である。 放出されたエネルギーを測定することによって、物質の微細な原子・分子構造を決定できる。 結晶化の必要なく、溶液中のタンパク質を測定できる。 |
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霊長類ES細胞から 末梢神経系ニューロンへの 分化誘導法を世界に先駆けて開発 末梢神経系の幹細胞治療の可能性への期待 (2003年4月29日、文部科学省および神戸研究所においてプレスリリース) 当研究所は、マウスおよびサルES細胞を用いて、末梢(まっしょう)神経系ニューロンへの分化誘導法を世界に先駆けて開発した。理研神戸研究所発生・再生科学総合研究センター細胞分化・器官発生研究グループの笹井芳樹グループディレクターらの成果。研究グループでは、以前にPA6という特殊な細胞が産生する因子を用いて、マウスおよびサルES細胞からドーパミン神経などの中枢神経系ニューロンを試験管内で高い効率で分化させる方法(SDIA法)を開発した。今回の研究では、SDIA法と増殖因子などを組み合わせることで、サルなどのES細胞から、脳幹や脊髄(せきずい)の運動ニューロンをはじめ広範囲の中枢神経系細胞が分化誘導されることを明らかにした。さらに、BMP4を作用させることにより、末梢神経系の前駆細胞(神経堤細胞)を分化させることに成功した。こうしてできた神経堤細胞からは知覚ニューロンなどが分化することが示された。これらの研究成果は、ES細胞を用いた神経系の幹細胞治療に関して、従来いわれてきたパーキンソン病※1などの中枢神経系疾患のみならず、ヒルシュスプルング病※2などの末梢神経系疾患にも応用できることを示すもので、再生医学の可能性を大きく広げるものと期待される。 ● ● ● |
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新理事に小中元秀氏が就任
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7月26日、小中元秀氏が理事に就任しました。役職員として長年にわたり当研究所の発展に尽力してきた宮林正恭理事は、7月25日をもって退任しました。
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理研で高校生が体験学習
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新チームリーダー等の紹介
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破滅の淵からの生き残り〜戦後、理研(財閥)解体の嵐の中で〜 |
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● 占領開始直後、“大量破壊兵器”原爆の開発にかかわったと仁科研究室は厳しい査察を受けた。陸軍からのウランに関する「ニ号研究」が対象だ。仁科が10年間心血を注いで完成した「サイクロトロン」が“原爆製造施設”として破壊され、東京湾に投棄された。ニューヨークタイムズ紙の報道に米国科学界が憤激、原爆開発に従事した科学者たちが“愚かな破壊”とトルーマン大統領に抗議した。この愚を繰り返さぬためにGHQは科学顧問の派遣を要請、ハリー・ケリー博士ら若い科学者(著者を含む)が《科学技術課》に配属された。 ところで、戦後7年間日本は連合国の占領下に置かれた。残存軍事能力の徹底的破壊、原子力、航空科学の禁止、財閥解体等々。未曽有の混乱と飢餓の中で、かつての帝国は民主化への変革に揺れた。やがて産業の技術革新は飛躍的に進み、その製品は世界を席巻し、日本経済は奇跡の発展を遂げる。その原動力は、紛れもなく戦後日本の“科学技術”の驚異的復興にあった。日本学術会議、科学技術行政協議会(後に科学技術庁)、工業技術庁(院)の創設、品質管理改革等、体制制度の矢継ぎ早の変革。“科学技術創造立国”に至るこの国の“科学技術基礎づくり”は、《GHQ科学技術課》の懸命の奮闘と日本の優れた科学者たちとの連携によって達成された。これが、著者の主張である。 ● また、著者は特別の感慨をもって『理研物語』を贈る。「戦前、米国には理研(財団法人)に匹敵する研究所はいくつもあったが、理研が獲得した地位を得たものは一つもない」と。“基礎科学に根ざした工業の構築”を理念に、英傑大河内正敏(25年間所長)は60数社の子会社(理研産業団)を生み出した。しかし、「その成功が、皮肉にも理研を“破滅の淵(ふち)”に追いやった」という。理研産業団は財閥とみなされ解体された。さらにGHQは、理研本体も解体すべきだとしたが、新所長仁科とケリーを中心とする《科学技術課》の獅子奮迅(ししふんじん)の努力により、辛くも理研は“破滅の淵”から生き残り、1948年“株式会社科学研究所”(科研)として再出発した。「破壊されるのを防いだ科学技術課の努力がなければ、理研はそのサイクロトロンと同じ運命をたどった」と振り返る。この本は、占領軍原文書をはじめ膨大な未公開史料をもとにした比類ない占領秘話である。半世紀を超えたGHQ中枢からのこの証言は、日本科学技術の戦後史の空白を埋める屈指の史料であろう。 ● やがて1958年、科研は破たんし、“理化学研究所”(理研)が“特殊法人”として再生した。ニューズウィーク誌が「理研はフェニックス!」と報じた。いまや理研は、国内外に15の研究拠点を置く一大総合科学研究所である。規模において、はるかに“財団理研”を超える。果たして、その“レゾンデートル”において、先人たちが築いた“科学の殿堂”を凌駕(りょうが)できるか? 折しも理研は、今また3度目の組織改編で“独立行政法人”への新たな試練を目前にする。
神戸研究所 プロジェクト管理役/元監事●関 理夫 |
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