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低温ヘリウムの表面で探る 量子力学の世界 中央研究所 低温物理研究室 ヘリウムは、絶対零度 0 K(−273.15℃)でも液体で存在する唯一の元素である。ヘリウムを絶対零度近くまで冷やすと、「超流動」と呼ばれる“粘性がない”状態になる。例えば、超流動ヘリウムを円筒容器に入れて流れを与えると、永久に流動し続ける。超流動は、ミクロな世界の物理法則である量子力学的な現象が、マクロなスケールで現れた状態である。河野公俊主任研究員らは、0.001K以下で超流動状態にしたヘリウム3(3He)の液体表面上にとらえた「2次元電子系」により、表面の性質を調べるという、世界に例のない実験を進めてきた。独創的な実験により、未知の量子力学的現象がマクロなスケールで見えてきた。 ● 4Heと3Heの違い ● 4Heには、3Heという同位体がある。3Heの原子核は中性子が1個少なく、陽子2個と中性子1個からなる。3Heは4Heとはまったく違う性質を示すことが分かってきた。4Heと3Heの違いは、「ボーズ粒子」と「フェルミ粒子」の違いを反映している。陽子・中性子・電子の合計数が偶数の粒子はボーズ粒子であり、奇数の粒子はフェルミ粒子である。4Heの粒子の合計数(陽子2+中性子2+電子2=6)は偶数なので、ボーズ粒子である。一方、3Heの粒子の合計数(陽子2+中性子1+電子2=5)は奇数なので、フェルミ粒子である。 ボーズ粒子は1つのエネルギー状態に粒子がいくつでも入ることができる。ボーズ粒子である4Heでは、2.17K以下になると、多数の粒子が最低エネルギーレベルへと落ち込んでいくボーズ凝縮を起こして、超流動状態になる。一方、フェルミ粒子は、1つのエネルギー状態に1個の粒子しか入れない。つまり3Heは、そのままではボーズ凝縮が起きず、超流動にならない。3Heの超流動が、0.001K以下でようやく実現されたのは、1970年代になってからである。 なぜフェルミ粒子である3Heも超流動になるのだろう? 0.001K以下になると、液体3Heを形成している原子同士の振動による波(フォノン)を介して、2つの3He原子の間に引力が働き、2つ1組の対(クーパー対※)を作るようになる。クーパー対は粒子合計数(5+5=10)が偶数なので、ボーズ粒子として振る舞うようになり、ボーズ凝縮を起こして超流動となる。 図1と図2は、気体・液体・固体・超流動といった“相”の変化である「相転移」と、温度・圧力の関係を示しており、4Heと3Heの性質の違いが分かる。例えば、3Heの超流動には、A相とB相と呼ばれる性質が異なった状態がある。「特にA相は “異方的な”性質が強いという特徴があります。ある特定の方向に特別な性質を持つのです。これは、クーパー対を作ってボーズ粒子として振る舞うといっても、フェルミ粒子の性質が残ることの現れです」 ![]() ● ● ● ● ●
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新たな遺伝子知識を創出する バイオインフォマティクス 横浜研究所 ゲノム科学総合研究センター 生物学に情報処理技術を導入したバイオインフォマティクス(生命情報科学)によって、ゲノム配列の解読は急速に進んだ。そしてポストゲノム時代を迎えた現在、バイオインフォマティクスの役割は、遺伝子の機能やタンパク質の立体構造の解明へと新しい段階に移行しつつある。「さまざまな生物学的なデータについて、バイオインフォマティクスから生まれた新しい技術を用いて横断的に解析し、新しい遺伝子知識を生み出すことが、私たちのグループの目的です」と、小長谷明彦プロジェクトディレクター(北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科教授を併任)は語る。新しい遺伝子知識の創出を目指し、“遺伝子知識スパイラル”が動き始めた。 ● ● 文献情報からの知識抽出 ●
遺伝子スパイラルの出発点が、実験データや文献からの知識抽出だ。「生物学者の頭の中に入っている知識を、なんとか抽出して活用できないかと考えています」例えば、Web上の文献データベースには1000万件もの文献情報が入っている。生物学者は、タイトルや要約から、自分が求めている情報かどうかを一瞬で判断する。しかし、生物学の知識がない人には、どれが重要な情報なのかがまったく分からない。 遺伝子ネットワークモデル化研究チームでは、生物学者が文献の有用性を判別するときの思考パターンをプログラムした「自動抽出システム」を開発している(図2)。「すでに、生物学者が検索するのと同等の質の文献情報を、自動的に抽出することができるようになっています」 ● ● ● ● ●
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脳内における記憶想起のメカニズムを 世界で初めて解明 記憶想起に大きくかかわる「海馬CA3領域」と「NMDA受容体」 当研究所は、記憶想起にかかわる神経回路が大脳内の「海馬CA3領域」に存在し、記憶の再現に「NMDA受容体」が重要な働きをしていることを、世界で初めて突き止めた。理研-MIT脳科学研究センター条件的遺伝子操作研究チームの利根川進チームリーダーらの研究グループによる成果。研究グループでは、海馬のCA3領域に存在する特殊な神経回路に限ってNMDA受容体をノックアウトしたマウスを作製したところ、ある目印を手がかりにして記憶を獲得・再現する能力(パターン・コンプリーション)が損なわれていることを明らかにした。本研究成果は、これまで理論的に考えられていたパターン・コンプリーションに関するメカニズムを、世界で初めて生物学的に解明したものである。今後さらに研究が進むことによって、老化や病気による記憶力の低下を防ぐ治療薬の開発などへつながることも期待される。 ● ● ● ● |
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遺伝子の転写を開始するメカニズムを 世界で初めて解明 原子レベル(2.6Å)でのX線結晶構造解析によって明らかに (2002年6月10日、文部科学省においてプレスリリース) 当研究所は、遺伝子の転写開始にかかわるタンパク質の立体構造を原子レベルで決定し、そのメカニズムを解明することに世界で初めて成功した。理研播磨研究所細胞情報伝達研究室の横山茂之主任研究員、Dmitry G. Vassylyev副主任研究員、関根俊一研究員らによる成果。研究グループでは、σ(シグマ)因子が結合したRNAポリメラーゼの結晶構造を、大型放射光施設SPring-8の理研構造生物学ビームラインなどを用いて2.6Å(1Å=1×10-10 メートル)の分解能で決定することに成功した。解析の結果、RNAポリメラーゼ全体が“カニのはさみ”のような構造をとっており、σ因子がDNAのある特異的な部位(プロモーター※)を認識し結合するのに都合の良い仕組みになっていることが明らかになった。また、DNA結合部位の溝が、一本鎖DNAのみ結合できるような構造になっていることなども分かった。転写が開始するメカニズムが解明されたことは、遺伝子発現制御の分子機構を解明する上で重要な知見を与えるだけでなく、効果の高い新薬の開発も可能になるものと期待される。 ●
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日本の物理学の黎明期に輝いた巨星 長岡半太郎と理化学研究所 日本の物理学が夜明けを迎えた明治時代、世界に伍(ご)する研究者が理化学研究所にいた。長岡半太郎。土星型原子模型を提唱し、本多光太郎(主任研究員)や仁科芳雄(同)ら後進を育成するなど、わが国の物理学界の礎(いしずえ)を築いた人物だ。ノーベル物理学賞の推薦者の一人としても活躍した長岡は、早くから湯川秀樹(同)の業績を高く評価し、湯川を日本人初のノーベル賞受賞へと導く。理研創設時に物理部長を務めた長岡の足跡を、記念史料室に残されている史料などからひもときたい(敬称略)。 ● ● ● ● ● ● |
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「理化学研究所特別展」が開催される
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「国際新技術フェア2002」出展のお知らせ
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当研究所は研究成果を広く一般の方に知っていただくため、「国際新技術フェア2002」(主催:日刊工業新聞社)に出展します。皆さまのご来場をお待ちしております。 |
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播磨研究所 ハイスループットファクトリー、
新チームリーダー紹介 |
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「理研ニュース」が全国広報コンクールで入選
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(社)日本広報協会が主催する「全国広報コンクール」において、理研ニュースが「その他の団体部門」で1席に入選しました。同コンクールは、1964年より行われ、優れた自治体などに対して表彰を行っており、2001年からは地方自治体以外の団体にも門戸が開かれています。 |
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理研ビデオが各コンクールで入選
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当研究所の研究活動を紹介する理研ビデオ「科学する理研」(企画:理化学研究所、制作:岩波映像)が「第40回日本映画産業・ビデオコンクール」(主催:(社)日本産業映画協議会)で奨励賞を受賞しました。また、米国のビデオコンクール「International Film And Video Festival」 において、理研ビデオ「元素誕生の謎にせまる(英語版)」(企画:理化学研究所、制作:イメージサイエンス、監修:望月優子、谷畑勇夫、矢野安重、Richard Boyd)が、Creative Excellence 部門において第3位となりました。 |
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理研ビデオ「元素誕生の謎にせまる」の配布について
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理研ビデオ「元素誕生の謎にせまる」の日本語・増補版〔解説冊子付〕、英語版〔NTSC方式〕の有償配布(各2,600円、税・送料別)を行っています。申し込みは(株)イメージサイエンスのホームページ(http://www.image-science.co.jp/element)まで。また、同社ホームページでは、英語版の海外向け実費配布(NTSC方式3,000円/PAL方式4,000円/SECAM方式4,000円)も行っています。なお、高校の授業や大学での講義、図書館や科学館などでの生涯教育施設において教育目的に活用される場合に限り、日本語版のみ、当研究所より教育関係者に無償で配布します(本数限定)。申し込みの詳細は当研究所ホームページ(http://www.riken.go.jp)をご覧ください。 |
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![]() 酒をたしなむ、研究を楽しむ |
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この原稿依頼を受けたときに、聞きそびれてしまった。理研ニュースの発刊当時から続いているというこのコーナーの名前の由来である。原酒というからには、日本酒かウィスキーであろう。混じりけのない芳醇な香りのする内容であることが求められているに違いない。良い酒を飲むときには、中途半端なつまみはいらない。ただ、姿勢を正し、意識を集中させて口に含み味わう態度が大事である。これまでに寄せられた記事を読むと、確かに「原酒」にふさわしいものが多い。理研で催されているかの有名な日本酒研究会は、かねがね聞き及んでいる。各地の銘酒を持ち寄り、かつ味わいかつ批評しつつ陶然となっていく仕組みには敬服している。残念ながら、私は雑酒派である。金がなかったせいか、学生とのコンパに精を出しすぎたせいか、出てくる安酒をすべて拒まない習慣が若いときから付いていた。最近体力が低下して、ようやく多少の選択性が身に付いてきたところである。ところで、安酒にはつまみが要る。何か食べておかないと悪酔いをする。研究においても雑酒派のきらいがあるので、そのことは意識している。目の前の面白そうなテーマにはつい手を出してしまうが、悪酔いや二日酔いと同じで、後で後悔しないように、情報を腹にため自分の能力を判断して試飲が効きすぎないような工夫もしてきた。もともと高分子の合成化学を研究テーマとして出発したが、合成高分子もタンパク分子も長い鎖の形状をしているとの理由で、酵素モデルの研究を始めたのは、1960年代半ばであった。しかし、ポリマー鎖の折り畳みの制御が難しく、1970年代半ばには、有機小分子の自己組織化がその解決法であると考えを改めて、ミセルや二分子膜など分子集合体の研究へと転じた。幸い二分子膜の研究は、合成系での自己組織化の研究が進んでいなかったこともあり、有機化学、無機化学、高分子化学、物理化学など化学のいくつかの領域だけでなく、生物化学との接点も見いだされるテーマとなった。 1990年代に入って、生物組織とのかかわりが強かった二分子膜を、人工的な精密材料へと展開することを目標に、界面分子膜や超薄膜のテーマをスタートした。表面の精密分析がようやく可能になった時代で、ナノ厚みの分子層の中で、有機分子がどのように配向し、相互作用しているかが分かるようになったのは実に新鮮であった。この経験を生かした有機化学的なアプローチを使って、セラミックス材料の精密化を極限まで進めるのが今の目標である。 最後に、雑酒・雑飲型研究の味を引き立てるつまみをひとつ。1980年代にExeter地方の豪華な屋敷で、イギリス版Gordon会議が開かれたことがあった。もともとGordon会議はアメリカのニューハンプシャーで始まった小規模の研究集会で、出席者がその場での自由な意見を述べ、記録も取らないのが本来のやり方である。くつろいだ雰囲気を重視するあまりに、座長がはさみを持って、スーツでかしこまった講演者を追い回し、そのネクタイを切り取ろうとしたというエピソードが残っている。しかし、この会議は違った。会場となった貴族の館はゴルフ場と見まがう広大な芝生に取り囲まれ、参加者一同、会議中にネクタイを付けるどころか会の終わりには記念のネクタイをくれる。朝にはベッドに入っているのに構わず扉を勝手に開けて、かわいいメイドがモーニングティーを運んでくる。素っ裸でひげをそっているところであっても、平気でティーを運んでくる。これはアメリカからの参加者には信じられないことのようであった。同じアングロサクソンが同じ趣旨の研究集会を開いても、そのパターンがかくも違うのは印象的であった。ただし、イブニングセッションが終わってから深夜まで続いた近所のバーでのノリは、こちらが上であった。 ところで、集会のテーマはポリマーの有機化学であり、ポリマー分子の合成や新しい機能を持つポリマーに関心を持つ研究者が各国から集まっていた。主宰者であった教授から、日本の化学者で「クニタケ」という名前をもう一人知っているが、と話しかけられた。よくよく聞いてみると自分のことである。研究テーマが違っていたので別の人間と思っていたらしい。テーマを変える楽しみのひとつはここにある。いろんな違った顔で、外国の学会を渡り歩くことができるのである。 フロンティア研究システム 時空間機能材料研究グループ |
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