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No. 243 September 2001

研究最前線
脳の設計図を解き明かす
 ―ひとつひとつの遺伝子から「ニューロインフォマティクス」へ―
SPOT NEWS
孤発性アルツハイマー病の原因解明に大きく前進
 ―分解酵素の低下がアミロイド蓄積を促進することを実証―
パーキンソン病を引き起こすメカニズムを解明
 ―パーキンソン病克服に向けての新たな一歩―
環境に配慮した新しいタイプの殺ダニ剤を開発
特集
詳細な3次元地殻構造モデルを目指して
 ―CHIKAKUモデリングシステムの開発―
記念史料室から
物に親しむ 物がすべてを教えてくれる
 ―日本初の女性化学者 黒田チカ―
TOPICS
榊プロジェクトディレクターがHUGOの次期会長に就任
「第7回スピン化学国際会議」を開催
「産学連携フェア2001」に出展
理研で高校生が体験学習
名古屋市・理化学研究所ジョイント講演会開催のお知らせ
理化学研究所里庄セミナーを開催
原酒
名前、されど名前(その真相は!)
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研究最前線

脳の設計図を解き明かす
ひとつひとつの遺伝子から「ニューロインフォマティクス」へ
BSI 分子神経形成研究チーム チームリーダー 古市貞一

2001年2月、ヒューマンゲノムに関する国際的な共同プロジェクトと、アメリカのベンチャー企業が相次いで、ヒトゲノムの塩基配列の概要を報告した。ゲノムには遺伝子があり、そこに私たちの身体を作る遺伝的な設計図が隠されているのだ。しかし配列がわかっただけでは、まだまだ私たちの身体のことがすべて解明されたわけではなさそうだ。
なかでも、「最後に残された科学領域のひとつ」といわれる脳。古市貞一チームリーダーが率いる理研脳科学総合研究センター(BSI)発生・分化研究グループの分子神経形成研究チームでは、脳形成の遺伝的プログラムを解読するための研究が進められている。複雑で精巧な脳の組織作りには、遺伝子のもつ情報がどのように活かされているのだろうか。


マウスとヒトを分けるものは

古市チームリーダー「これが、これまでに調べられた生物の遺伝子の推定数です」
 古市チームリーダーが示す表(表1)には、線虫、ショウジョウバエ、ヒトの遺伝子の数が並んでいる。1ミリたらずの線虫を作るのにも2万ほどの遺伝子がはたらき、意外なことに、一見そうした生物よりずっと複雑そうなヒトでも、遺伝子の数はその1.5倍か2倍にしかならない。まだ正確にはカウントされていないが、マウスのもつ遺伝子の数も、ヒトとあまり変わらないといわれている。
 一方、ニューロンすなわち神経細胞の数の差は圧倒的である。ヒトのニューロンの数は、約1千億。これに対して線虫は、中枢神経がないにしても、302個しかニューロンをもっていない。この違いは、いったいどこから生じるのだろうか。
 例えば、ヒトとマウスは、1億年くらい前に共通の祖先をもっていたと考えられている。
表1:生物のもつ遺伝子の数とニューロンの数。「その一億年の間に、ヒトはヒトになり、マウスはマウスになった。遺伝子そのものはほとんど変わっていないのに、ヒトとマウスは明らかに違います。要は、遺伝子の数の変化だけではなく、発現する遺伝子の性能の違いだということです」
 では、脳を作るためにはどのような遺伝子がはたらいているのだろう。脳を作る遺伝的な設計図つまり「青写真」を解き明かすのが、古市チームリーダーたちの研究テーマである。
 ニューロンに話を戻そう。ヒトの神経系を構成する1000億のニューロンは、それぞれ1000から1万くらいのシナプスとよばれる細胞間の結合を作り、実に100兆というコンタクトをとるネットワークを作っている。これだけ複雑な組織でも、出発点はゲノム上に刻まれた遺伝情報なのである。
図1:脳形成におけるユニットのはたらき。 その過程はこうだ。遺伝子の情報は、mRNAにいったん変換され、それがタンパクの鋳型になる。mRNAが作られる際には、選択的スプライシングといって、部分的に情報が欠けたり、加えられたりする作用があり、結果的にひとつの遺伝子から複数種類のmRNAが作られる。ヒトの場合、これがより複雑に起こり、10万前後のタンパク質のバリエーションができると予想される。このタンパク質はさらに切断されたり、リン酸基や糖鎖がついたり、相互に会合したりすることで機能的な生体成分となって脳を作っていくのである。もちろん、こうしたプロセスには環境など外的な要因も大きくかかわってくる。遺伝子の配列だけがわかっても、それだけでは十分ではないという理由がここにある。
 「いままでのような遺伝子一個一個とか、mRNAの発現ひとつ、タンパク質ひとつずつの機能を解析するのではなく、それぞれがどういう相互関係をもってはたらき、ユニットとしてひとつの機能をどのようにして発揮しているのかを、解析する必要があるのです(図1)」


小脳の情報伝達経路

図2:小脳のニューロン構成と神経回路。古市チームリーダーたちは、マウスやヒトでともに発達している小脳にひとまず焦点を当てている。小脳には、姿勢の保持や協調的な運動学習に関係する機能があるほか、最近では、運動以外の部分にもはたらいていることがわかってきた。小脳のニューロン構成と回路についてはよく知られており、マウスとヒトであまり変わらない(図2)
 プルキンエ細胞、顆粒細胞など5種類の主要なニューロンで構成される小脳には、2つの入力ラインと、1つの出力ラインがある。入力経路のひとつ、苔状線維という神経線維は、まず顆粒細胞とシナプスという結合を作って情報を伝達し、さらに顆粒細胞がその軸索(平行線維)を伸ばして、その情報をプルキンエ細胞に伝える。もうひとつの入力経路である登上線維は、直接プルキンエ細胞にシナプスを作る。他の介在ニューロンはこれらの情報を調節するようにはたらく。最終的に小脳に入るすべての情報を受けるプルキンエ細胞が、情報処理後の指令を小脳皮質から出す唯一の出力経路になっている。
 「プルキンエ細胞は、樹状突起という枝のような突起を扇のように広げています。突起の上には、顆粒細胞がT字形の軸索を垂直に伸ばしてシナプスを作っています。このシナプスが、なんと一つのヒトの典型的なプルキンエ細胞あたり20万個にものぼります。膨大な情報量をここで処理するわけです(図2)」
 解析を進める中で、新しい発見もあった。
 「脳に関係する遺伝子の30%〜40%は生後、発達期に発現すると以前から指摘されていました。生後0日目から発現する遺伝子の数を調べていくと、たしかに生後、小脳を作るときにたくさんの遺伝子が発現することがわかってきたのです」


小脳が発達するタイムテーブル

図3:小脳の生後発達のタイムテーブル。 マウスの場合、生まれてから約3週間で小脳の構造がほぼ完成する(図3)。このころになるとマウスは母親から乳離れし、自分で走り回ってえさを食べるようになる。つまり、神経回路が発達することで、運動がよくできるようになるのである。
 発達の初期段階では、プルキンエ細胞にはまだ枝がなく、小さな芽のようなものがあるだけ。顆粒細胞は生後まもなくこのプルキンエ細胞の上に前駆細胞としてあり、そこで爆発的な増殖を始める。何と脳にあるニューロン総数の約半分を占めるまでになるのだ。増殖が終わった顆粒細胞から、両側に線維を伸ばしつつ、細胞自身は蜘が糸を伸ばして降りるように、プルキンエ細胞体の下に降りる。結果的にT字形になった線維は、複雑に分枝して発達してくるプルキンエ細胞の樹状突起と無数のシナプスを作る。
 「脳を家にたとえると、われわれは、最初から木材を加工した精巧な部品を必要な数だけ作り、寸分違わぬ家を建てる設計図をもっているわけではありません。脳の青写真には部品の仕様の他にあらかじめ材料を余分に作ることも描かれていて、柱も電気の配線もいったん余分に作ります。そして、ちょっと使ってみて、具合が悪いものや多過ぎるものを消し去るのです。これによって、各個人に心地よい住環境を築くのです。それには、細胞が自ら死ぬ、セルデスという細胞数の調節や、実際の神経活動に依存した必要なシナプスや線維の選別や洗練のメカニズムがはたらきます。これらは環境要因をも考慮した遺伝的プログラムといえます」
 このように、3週間に起こる何百億といった驚異的な数のニューロンの増殖・移動・セルデス・突起形成、そしてそれを3〜4桁は上回る無数のシナプスの結合といったダイナミックな造形の出来事については、きれいな時刻表が書けるのだという(図3)。そのプログラムを遂行する遺伝情報は何か、古市チームリーダーたちは探し求めているのである。


発現パターンの
データベースを構築


図4:マウス小脳の生後発達ステージに特異的な遺伝子発現プロファイルの解析方法。解析の方法はいろいろある(図4)。たとえば蛍光ディファレンシャルディスプレイ(FDD)という手法で、これは生後の0日目から3週間目までのそれぞれのmRNAをとってきて、いつ、どういったmRNAがどんなパターンで発現しているかを見る(時間的発現)。さらに、特殊な発色法を使ってmRNAの発現している細胞を検出すると、どの細胞でこの遺伝子がはたらいているか、ということがわかる(空間的発現)。
 マイクロアレイという最近の技術では、スライドグラスの上に1万個前後の遺伝子を高密度にスポットし、発現している遺伝子に色をつける。例えば7日目に発現しているRNAを緑色、56日目に発現しているものを赤色と染め分けたうえで、スライドグラスにスポットした遺伝子と反応させる。すると、緑色っぽくなった部分にスポットされている遺伝子は、生後7日目に特異的に発現、逆に赤色になれば生後56日目に特異的に発現、両者を重ね合わせて黄色になればいずれの日にも発現しているということがわかる。この技法を使えば、何万という遺伝子の発現状況を一度に把握できるのである。
図5:新しく見つけられた一過性発現遺伝子Cupidinは発達中の小脳ニューロンに発現する。 こうしたいくつもの技法を使って、脳における遺伝子の時間的、空間的な発現パターンを明らかにしていく。そして、新しい遺伝子についてはその機能も明らかにする。そのひとつは、キューピディン(Cupidin)と名付けた(図5)。Cupidinはシナプスの発達や機能に関係する可能性があり、現在、精力的に研究を進めている。
「これらの遺伝情報をさらに体系化し、小脳形成遺伝子のデータベースを開発してます。いずれはインターネットで一般にも公開できるようにしたいと考えています」と古市チームリーダーは夢を語る。
 もちろん、同じ哺乳類でも、マウスとヒトでは発達の時期が違う。マウスの時刻表は、ヒトにも応用できるのだろうか。
 「いつからいつまで……という時間的な違いは生じます。けれども、発達の順番はよく似ています。ヒトの子どもの場合は、生まれて非常に養育期間が長いですよね。それにはやはり意味があると考えられています。長い時間をかけて、洗練された回路を作っているわけです。最初からできあがっていたら、それ以上複雑なものにはもう発達できませんからね」
 ヒトの場合、シナプス結合を作るはたらきは乳児期をピークに、その後は10歳くらいまで下がっていくのだという。
 「この幼少期には特に脳を『育む』といった側面も重要になってきます。もっとも、我々の研究チームではそれ以前の段階の基本的なところがテーマです。つまり、脳はどういうパーツでできているか。パーツの組み合わせによって、回路がどうできてくるかということです」


脳科学の情報処理──
ニューロインフォマティクス


 21世紀は、基本的な知識が集積されるとともに、革新的な技術が発展して、脳の機能が解明されるだろうといわれている。そうして得られた知見を、どうやって活かしていくか。それがニューロインフォマティクスという新しい考え方だ。 「われわれ脳科学の分野は、網羅的なデータの中から、いかに意味のあるものを抽出するかという、統計学的な処理も非常に大切です。コンピュータによる情報処理が不可欠なんです」  今後、集められる膨大な量のデータから脳の青写真の解読に迫るためには、こうした新しい情報科学の力が必要だ。  脳の発生分化を調べるということは、「脳ができる」ということ。そして「脳ができる」ということは「脳が壊れる」ということの裏返しでもある。  「われわれのような研究が進むことによって、脳の疾患や臨床的な応用にも何らかの貢献ができるのではないでしょうか。まだまだ緒についたばかりの分野ですが、いずれは、医学などの他分野にも貢献できるようにしたいと思っています」



文責:広報室
監修:脳科学総合研究センター(BSI)
発生・分化研究グループ 分子神経形成研究チーム
チームリーダー 古市貞一
取材・構成:小野蓉子

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SPOT NEWS

孤発性アルツハイマー病原因解明
きく前進

分解酵素の低下がアミロイド蓄積を促進することを実証
(2001年5月25日、文部科学省においてプレスリリース)

当研究所は、ハーバード大学と共同で、全アルツハイマー病の9割以上を占める"孤発性(非遺伝性)アルツハイマー病"の原因解明に大きく貢献する成果を挙げた。理研脳科学総合研究センター神経蛋白制御研究チームの西道隆臣チームリーダーらの研究グループによる研究成果。本研究では、アルツハイマー病の原因物質であるβアミロイドを分解する酵素としてネプリライシンを同定し、遺伝子改変動物(ネプリライシンノックアウトマウス)を用いて、分解酵素の活性低下が脳内のβアミロイドレベルを上昇させることを実証した。これは、老化にともなって脳内の分解酵素活性が低下することによってβアミロイドが蓄積し、アルツハイマー病を引き起こす可能性があることを強く示唆するものである。


赤く光っている部分が分解酵素「ネプリライシン」が多く存在するところ。ノックアウトマウスのβアミロイドの含有量は記憶の中枢である海馬部分で最も多い。脳内におけるβアミロイドの蓄積は、アルツハイマー病にいたる病理学的なカスケードの引き金を引くと考えられている。この蓄積は、加齢にともなって加速することが知られているが、その機構はわかっていない。このβアミロイドは、病気の原因である一方で生理的存在でもある。すなわち、定常的に体内で合成・分泌されており、正常状態では速やかに分解されて蓄積されないと考えられる。この分解能力が老化にともない低下すれば、蓄積の原因となり、逆に分解能力を増強すれば、蓄積を抑制し、老化の速度を減速することができる。しかしながら、分解のメカニズムについては未知の点が多く、病気との関連もわかっていない。


研究チームでは、特定のβアミロイド分解酵素の存在を予測し、その遺伝子を改変した動物を用いて実験を行った。脳内のβアミロイド分解については、二つの方法で調べた。一つは、放射性標識したβアミロイドペプチド(Aβ)を脳内に投与し、その分解過程を高速液体クロマトグラフィーで調べる方法。もう一つは、非常に感度の高い酵素抗体法(武田薬品工業より供与)を用いて、内在性のAβ存在量を測定する方法である。ネプリライシンがAβの分解を担っているならば、遺伝子ノックアウト動物では、この二つの方法において分解の抑制が観測されると考えられる。


以下のような実験の結果から、分解酵素の低下がアミロイド蓄積の原因となり、分解活性を上昇させることで蓄積を抑制できることを始めて実験的に実証した。

1.標識Aβの分解が、ネプリライシンノックアウトで顕著に減速していた。ネプリライシンが主要なAβ分解酵素であることを示している。
2.ネプリライシンノックアウトマウスにおいて、内在性Aβの量が約2倍に上昇していた。ネプリライシンが内在性Aβの分解を担うことを示している。
3.リライシン遺伝子が半分だけ欠損しているヘテロのノックアウトマウスにおいても分解の抑制が見られた。分解の抑制は、ネプリライシンの遺伝子量に逆相関している。
4.ネプリライシンノックアウトマウスの脳内におけるAβ含量は、海馬でもっとも高く、小脳でもっとも低いという結果が得られた。これは、アルツハイマー病の病理像とよく相関している。


本研究により老化にともなう脳内のネプリライシンの活性あるいは発現の低下がβアミロイドの量を上昇させ、アルツハイマー病を引き起こす可能性があることが強く示唆された。ネプリライシンの発現や活性を低下させるものは危険因子となりえることから、これらを同定し、除去することによってアルツハイマー病の発症のリスクを抑えることができる。さらに、遺伝子治療あるいは遺伝子転写制御によって、脳内のネプリライシンの発現を選択的に上昇させることができれば、孤発性アルツハイマー病だけでなく、家族性アルツハイマー病の発症を抑制することができると期待される。本研究成果は米国の科学雑誌『Science』5月25日号で発表された。

カスケード:アルツハイマー病は、アミロイド蓄積から始まり、 細胞内タンパクの蓄積や炎症反応、そして、神経細胞の 機能不全や変性といった複雑な経路を経て、 痴呆発症へいたると考えられる。 この経路全体をアルツハイマー病のカスケードと称す。



文責:広報室
監修:脳科学総合研究センター
神経蛋白制御研究チーム
チームリーダー 西道隆臣

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SPOT NEWS

パーキンソン病こすメカニズム解明
パーキンソン病克服に向けての新たな一歩
(2001年6月29日、文部科学省においてプレスリリース)

当研究所は、順天堂大学医学部と共同でパーキンソン病の病因解明に大きく貢献する成果をあげた。理研脳科学総合研究センター運動系神経変性研究チームの高橋良輔チームリーダー、今居 譲研究員、順天堂大学医学部脳神経内科の服部信孝講師、水野美邦教授らのグループによる成果。遺伝性パーキンソン病の多くは、「パーキン」と呼ばれるタンパク質を分解する酵素の欠損によって起こる。本研究では、パーキンによって分解が促進される細胞膜のタンパク質、パエル受容体を同定し、患者脳でパエル受容体が分解されずに蓄積していることを発見した。さらに、パエル受容体が過剰に蓄積すると神経細胞死を引き起こすことが判明した。これらの研究成果は同じドーパミン神経の変性を特徴とし、パーキンソン病の9割以上を占める"孤発性パーキンソン病"の病因解明・治療法開発にも寄与するものである。


パエル受容体が細胞内にたまると細胞は丸くなって死ぬ。パエル受容体(緑色)の分解が起こらないような薬剤処理をして、時間を追って細胞を観察したときの写真。矢印の先は、パエル受容体が細胞内に蓄積している様子を示す。パーキンソン病は、アルツハイマー病についで罹患人口(約1000人に1人)が多い神経変性疾患。脳の中に無数にある神経細胞は、「神経伝達物質」というお互いの連絡を行うための因子を出したり、受け取ったりして協力しあうことにより、運動・知覚などの高度の神経機能を実現している。パーキンソン病は、ドーパミンという運動機能の実現に大変重要な神経伝達物質を作る、中脳の黒質(こくしつ)という場所の神経細胞が変性脱落するのが特徴。その結果、運動のスムーズな遂行が障害され、数年後には寝たきりになる難病である。


遺伝性のパーキンソン病の一つで、常染色体優性遺伝によるものは1997年、シナプス前部にある機能不明のタンパク質、α−シヌクレインの遺伝子変異によって引き起こされることがわかった。さらに、翌年、慶応大学と順天堂大学の共同研究グループは、常染色体劣性遺伝性のパーキンソン病の原因遺伝子が、パーキンであることを同定した。さらに、理研・運動系神経変性研究チームなど3研究グループは2000年、それぞれ独立に遺伝性パーキンソン病の原因遺伝子パーキンの持つ特徴を明らかにしている。


今回、理研の研究グループでは順天堂大学と共同で、パーキンが関与し分解されるタンパク質を探すことを目標に研究を進めた。実験の結果、得られた研究成果は以下の通り。

1.パーキンが関わることにより分解される細胞膜タンパク質、パエル受容体を見つけた。
2.パエル受容体は正常な形に作られることが難しいタンパク質であり、正しく作ることに失敗したパエル受容体は、パーキンの作用ですみやかに分解されることがわかった。
3.パーキンが働かず、正常に作られなかったパエル受容体が分解されずに細胞内にたまると細胞はストレスを感じて死ぬことがわかった。
4.パエル受容体は、パーキン遺伝子に変異があることによりパーキンソン病になる人の脳でも分解されずにたまっていることを見つけた。
5.パエル受容体は、パーキンソン病で神経変性がおこる中脳黒質のドーパミン神経で特に多く発現していることを見つけた。この発見から、パーキンが働かなくなるとドーパミン神経がとくに障害を受ける理由が明らかとなった。


本研究成果から、遺伝性パーキンソン病だけでなく、パーキンソン病の大部分をしめる孤発性(非遺伝性)パーキンソン病においても、パエル受容体そのものか、もしくはパエル受容体に似た正常に作られることが難しい別のタンパク質が神経細胞に蓄積され、ドーパミン神経の変性を引き起こしていることが予想される。そのようなパーキンソン病の病因タンパク質を同定し、病因タンパク質の分解を促進する薬を開発できれば、パーキンソン病の根治も夢ではない。本研究成果は、米国の科学雑誌『Cell』の6月29日号で発表された。



文責:広報室
監修:脳科学総合研究センター
運動系神経変性研究チーム
チームリーダー 高橋良輔

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SPOT NEWS

環境に配慮した新しいタイプ
殺ダニ剤開発

(2001年7月18日、文部科学省においてプレスリリース)

当研究所は、環境に配慮した新しいタイプの殺ダニ剤を開発した。微生物制御研究室の有本 裕先任研究員らによる研究成果。本研究で開発した殺ダニ剤は、食品添加物である「プロピレングリコール脂肪酸エステル」を高濃度で油滴化することでダニの気門をふさぎ、効果的に駆除できることが大きな特徴となっている。また、このような物理的メカニズムに基づく薬剤は、ダニに対する薬剤抵抗性が起こりにくく、持続して殺ダニ効果を得ることができる。本殺ダニ剤は、当研究所がライセンス許諾を行った東亞合成株式会社により製品化された。


ハダニ類の気門に「プロピレングリコール脂肪酸エステル」の油滴(右)が作用するわが国における農作物への病害虫被害は、高温多湿となる夏季に集中しており、特にカンキツ類、ナスにおいては、ハダニ類の発生による被害が顕著である。これらは、夏から冬にいたるまで収穫期が長期間におよぶため、迅速かつ効率的な駆除の必要があり、農薬の使用が不可避となっている。一方、ハダニ類は容易に農薬への抵抗を獲得してしまう。従って、結果的に農薬の使用回数の増加及び高濃度散布をもたらすこととなり、短期、長期的に生態系や環境に対する影響が心配されている。


当研究所では、農薬開発のコンセプトを"自然環境への配慮(SaFE:Safe and Friendly to Environment)"として研究を進めてきた。農薬として登録するには厳しい安全性評価を受けなければならない。それでも長期間使用すると、時としてこれまで経験のない影響が現れることがある。微生物制御研究室ではこの点を考慮し、これまで長期間使用し続けても強い影響の報告されていない化合物は比較的安全ではないかと考え、農薬の有効成分として食品や食品添加物に注目して研究を進めている。


今回、有本先任研究員らが開発した殺ダニ剤は、ケーキの起泡剤(日本での使用量は1000トン/年)などに用いられている食品添加物「プロピレングリコール脂肪酸エステル」が有効成分。「プロピレングリコール脂肪酸エステル」は、体内に摂取しても、容易にプロピレングリコールと脂肪酸に分解され、最終的には炭酸ガスと水に変換されることが知られている。食品や食品添加物の植物病害虫に対する効果は高いものではないため、特殊な製剤方法を用いた。この方法では、有効成分をグリセン脂肪酸エステルの膜に包まれた高濃度な油滴として散布溶液中に存在させられる。その結果、高濃度の有効成分を直接病原菌や虫体に付着させることができ、有効成分を均一に溶解している溶液を用いるよりも高い防除効果が得られる。


本殺ダニ剤を散布すると、高濃度の有効成分がダニの体に効率よく付着、気門を封鎖してダニを窒息させることによって駆除すると考えられる。従来の気門封鎖型薬剤は、高濃度(40倍〜100倍の希釈濃度)で使用することが求められるが、本剤は高濃度のまま油滴化する製剤技術により1000倍に希釈しても高い防除効果が得られることが確認された。化学合成によって作られた農薬は、頻繁に使用することで薬剤に対する抵抗性が強まり、効果が低下することから散布回数に制限がある。本剤は、気門封鎖という物理的作用から、ダニに対して抵抗性がつきにくいことも実証されている。


環境問題が大きくクローズアップされるなか、農薬の使用を制限した有機栽培が注目されている。今回開発した殺ダニ剤は、ミツバチやチリカブリダニなどの有益な昆虫等にはほとんど影響はない。さらに、ライセンス許諾を受けた会社では、米国において有機栽培に使用できる農薬として申請することも検討しており、環境に配慮した農薬として注目されている。研究室では今後もSaFEの考え方を進め、さらに食品や食品添加物などから病虫害の防除に有効な成分を見つけ出し、効果的でなおかつ環境に配慮した農薬開発を進めていく。



文責:広報室
監修:微生物制御研究室
先任研究員 有本 裕

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特集

詳細3次元地殻構造モデル目指して
CHIKAKUモデリングシステムの開発

1:地殻データベース 太平洋プレート(東京大学・青地秀雄氏作成)大気、海洋および固体地球分野における複雑な諸現象の解明を目指して、文部科学省では地球シミュレータと呼ばれるプロジェクト研究が進められています。「地球シミュレータ」は、大規模超高速シミュレーションのための超並列計算機と、さまざまな並列計算用ソフトウェアにより構成されます。当研究所では、この中でも断層における地震発生シミュレーションのためのソフトウェアを開発しました。本ソフトウェアは、無償(研究・教育目的に限る)で配布しています。


近年、地球科学の進歩は目覚ましいものがあります。地震の多発地帯に存在する日本では、地震に関する研究が活発に行われ、多くの成果をあげています。地震防災および国際的な災害軽減に貢献するためには、地球全体をグローバルに捉えて研究を進めることが重要であり、そのためにも「地球シミュレータ」計画の果たす役割は大きいのです。

2:地殻データベース スムージング
当研究所では、「地球シミュレータ」計画の中の"地球シミュレータ関連ソフトウェアの開発"を担っています。その関連ソフトウェアの一つとして、"CHIKAKUモデリングシステム"を開発しました。"CHIKAKUモデリングシステム"は、日本列島の詳細な3次元地殻構造モデルを構築するための専用ソフトウェアです。本システムは、地殻形状のデータベースシステム"CHIKAKU DB"と、地殻ソリッドモデルを作成するための"CHIKAKU CAD"の二つのシステムから構成されています。



両システムの概要および推奨稼働環境は以下の通りです。

1.「CHIKAKU DB」
震源データなどの観測データの管理や表示、各プレートの上面形状をグリッドとして作成します。
2.「CHIKAKU CAD」
「CHIKAKU DB」で作成したグリッドデータをパラメトリック曲面に変換し、集合演算を行った後、3次元ソリッドデータとしての地殻構造データを作成します。
3.推奨稼働環境
PentiumIII 450MHz以上、Windows98/NT4.0(Service Pack3以上)/2000、256MB以上のRAM、HDDの空き容量100MB以上、24ビットカラーディスプレイ、CD-ROMドライブ、MATLABバージョン6以上


3:地殻CAD 太平洋プレート上面CHIKAKUシステムは、日本原子力研究所が開発している「CHIKAKU MESH」「PATRAS」、高度情報科学技術研究機構が開発している「GeoFEM」、当研究所が開発している「CHIKAKU STATIC」「CHIKAKU DYNAMIC」を関連づけて使用することによって、地殻を静的および動的に解析できるほか、実時間による可視化も可能です。「CHIKAKUモデリングシステム」は、研究・教育目的に限って無償で配布されます。本ソフトウェアは、文部科学省による地球シミュレータ用応用ソフトウェア開発プロジェクトの成果の一部です。


4:地殻CAD 中間ソリッドと下部ソリッド問い合わせ先:chikaku@postman.riken.go.jp
ホームページ:http://www.riken.go.jp/lab-www/CHIKAKU/

「地球シミュレータ」計画:地球環境問題の解決、自然災害に対する対策などへの貢献を 図るため、地球変動予測の実現を目指し、地球観測、地球変動 プロセス研究およびシミュレーションを三位一体として、 総合的、計画的に推進することを目的としています。

※Pentium IIIはIntel Corporationの、Windows98/NT4.0/2000は米国Microsoft Corporation の、MATLABはThe Mathworks Inc.の 商標または登録商標です。



文責:広報室
監修:ものつくりVCADプログラム
プログラムディレクター 牧野内昭武

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記念史料室から

しむ がすべてをえてくれる
日本初の女性化学者 黒田チカ

自然現象への探求心に性差はなく、現在、多くの女性研究者が理化学研究所で活躍している。しかし、戦前のわが国では、「女性は科学をする能力がない」と揶揄(やゆ)され、大学への進学もままならない時代があった。そのような厳しい環境の中、ひとりの女性科学者が花開いた。黒田チカ、天然色素の構造研究で女性として二人目の理学博士を取得、理研を拠点に研究を続けた日本初の女性化学者である。記念史料室に残されている史料などをもとに、チカの生い立ちをたどりながら、当時の女性科学者がおかれていた社会背景を振り返りたい(敬称略)。


写真:「第1回 国際婦人技術者・科学者会議」(1964年7月、ニューヨーク)に宛てた直筆の祝辞1913年(大正2年)9月、当時、「女人禁制」だった帝国大学のひとつ、東北帝国大学理科大学(現・東北大学理学部)が3人の女性に対して門戸を開いた。その中の一人、黒田チカは化学科に入学する。日本初の"女子帝大生"の誕生は、当時の新聞が一大事件として取り上げるほどセンセーショナルな出来事だった。東北帝大が女子学生の受け入れを決めた背景には、同帝大設立に関わった柳澤政太郎(東北帝大初代学長)らの意識の中に、「西欧では優秀な女子の大学への入学は広く認められており、実績をあげている」との考えがあったからだ。


チカは1884年(明治17年)3月、旧佐賀藩の士族の家に、7人兄弟の5番目として生まれた。チカの父である黒田平八は、学問に対して深い造詣(ぞうけい)を持っており、7人の子どもほとんどに大学教育を受けさせている。チカは通常よりも1年早く14歳で佐賀師範学校女子部に入学。チカは自伝の中で、「勉強は溌剌(はつらつ)としており、すべての学科が興味深く、また師範学校の使命の貴さに感激し、この道に進んだのを心から喜ぶようになり、結局これが進学の階梯(かいてい)となったのでした」とし、向学心が旺盛(おうせい)だったことをうかがわせる。


佐賀師範を卒業したチカは1年間の小学校教員生活ののち、1902年(明治35年)、女子の最高教育機関として東京に設立された女子高等師範学校理科(現・お茶の水女子大学理学部)に入学する。化学に対する興味は、女高師の研究科在籍時代に加速。さらに、女高師に講師として招聘(しょうへい)された有機化学の大家、長井長義に師事したことにより確固たるものになる。チカが座右の銘として生涯、語り継ぐ「物に親しむ、物がすべてを教えてくれる」は長井の言葉である。そして長井こそが、チカに東北帝大への受験を強く勧めたのだ。


写真:理研の研究室で実験を行う黒田チカ[1884-1968]東北帝大に学ぶチカを支え、研究者として独り立ちさせたのは同帝大教授の真島利行(後に理研・主任研究員)だった。真島の指導のもと、古くから紫色の染料として使われてきた"ムラサキ"と呼ばれる草の色素成分の分析を行った。1916年(大正5年)に東北帝大を卒業。その後2年間、真島のもとで研究生活を行い、1918年(大正7年)には東京女高師の教授に就く。そのチカのもとに吉報が届く。長らく途絶えていた女子の官費留学が認められ、英国・オックスフォード大学で学ぶことになった。


1921年(大正10年)から2年間、英国で学んだチカは帰国後、女高師に復職。翌年には理研・真島研究室の嘱託となり、女高師で教える傍ら、研究者としても歩み始めた。チカは、紅花の色素成分 "カーサミン"の研究を行い、1929年(昭和4年)、研究成果を論文にまとめ、東北帝大から理学博士の学位が授与された。1939年(昭和14年)には理研の研究員となり、ウニの棘(とげ)に含まれる色素の研究を行う。


戦後もチカの研究に対する意欲は衰えず、理研(当時は科研)を拠点に活躍を続ける。チカが取り組んだ最後の研究テーマは、タマネギの皮に含まれる色素の研究である。チカは、タマネギの皮に高血圧に効く"クェルセチン"が含まれていることを確かめ、クェルセチンの工業化に取り組んだ。苦労の末、高血圧の薬「ケルチンC」が世に出されたのは、1955年(昭和30年)のことだった。1960年(昭和35年)には、「日本婦人科学者の会」の名誉会長に、翌年には特殊法人として新発足した理研の客員となった。


1968年(昭和43年)11月8日、わが国の女性科学者の先駆けとして活躍し続けたチカは、84歳の生涯を閉じた。チカが育てた多くの女性研究者たちが、さらに大輪の花を咲かせたことはチカにとって存外の喜びだったに違いない。



執筆・文責:嶋田庸嗣(広報室)

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榊プロジェクトディレクターがHUGOの
次期会長に就任



ゲノム科学総合研究センターの榊 佳之プロジェクトディレクター(ゲノム構造情報研究グループ、東京大学教授)は、2002年4月からHUGOの次期会長に就任します。榊プロジェクトディレクターは、2001年4月19日に英国・エジンバラにて開催されたHUGO(ヒトゲノム国際機構)の定例会議「HGM(国際ヒトゲノム会議)2001」に際して行われた定例評議委員会において、次期会長(第7代会長)として指名され、内定していました。アジアからの指名は榊プロジェクトディレクターが初めてのことです。
 今後、ポストシーケンス時代に入り、ヒトゲノム研究には、世界各国・各地域の研究者の協力が不可欠になってきました。これにより、ヒトゲノム研究者の唯一の国際組織であるHUGOの役割は一段と重みを増しつつあります。榊プロジェクトディレクターは、今回、HUGOの会長に指名されたことを受け、「ヒトゲノム多様性研究の国際協力の推進や、ヒトを理解するための比較ゲノム研究の推進に力を注ぎたい」と抱負を述べています。
 HUGO(Human Genome Organization)とは、ヒトゲノムの全解読を目指す国際ヒトゲノム計画に携わっている研究者の国際組織です。HUGOは1989年、ヒトゲノム計画の国際協力を推進するために設立したもので、現在50カ国以上、1000人以上の会員で構成されています。HUGOは、ヒトゲノム研究者の世界で唯一の組織であり、ヒトゲノム計画を推進する各国、各機関、各研究者の連携を図る役割を果たしており、ヒトゲノムの地図作成のための各種の調査からヒトゲノム解析のかかえる倫理的社会的問題(ELSI)まで幅広い活動をしています。

Photo榊 佳之(さかき よしゆき)
略歴:1942年、名古屋市生まれ。東京大学理学部生物化学科卒。同大学大学院博士課程修了、理学博士。九州大学医学部教授を経て、1993年から東京大学医科学研究所教授。国際ヒトゲノム計画に日本を代表して参画し、特にヒト21番染色体解読の国際コンソーシアムを組織し、その全解読に成功。また最近のドラフト配列決定に大きな貢献を果たした。1998年から理化学研究所ゲノム科学総合研究センタープロジェクトディレクター(ゲノム構造情報研究グループ)を兼務。





「第7回スピン化学国際会議」を開催



Photo分子光化学研究室は、7月15日から5日間、こまばエミナース(東京・目黒)で理研シンポジウム「第7回・化学における磁場とスピン効果および関連現象に関する国際会議」を開催しました。
 本国際会議には、林 久治主任研究員(同会議組織委員長)、長倉三郎・同会議国内顧問委員長をはじめ国内外から149名(ロシアをはじめ海外から15ヶ国52名)が参加しました。
 スピン化学とは量子力学的な効果により電子スピンや核スピンが関連するさまざまな現象に対する磁場の影響を実験と理論の両面から研究する分野で、本会議では最新の研究成果が多数発表されました。
 21世紀のスピン化学においては、超強磁場領域や微弱磁場領域の研究、高スピン化合物や反磁性物質の磁場制御、生体現象への適用等に研究を展開することが大いに有望であり、新原理による材料開発や医療への応用が大いに期待できます。





「産学連携フェア2001」に出展



Photo7月23日から26日まで北九州学術研究都市体育館(北九州市若松区ひびきの)で開かれた「産学連携フェア2001」(主催:北九州学術研究都市オープン記念事業実行委員会)に出展し、理化学研究所の概要紹介を行うとともに、研究成果の紹介を行いました。関心を持つ来場者が多く、熱心に質問する姿が見られました。
 このイベントには、国内外の大学・企業・研究機関相互の技術交流、研究者間の連携の強化を目指し、国内外の民間企業・大学等20社46団体が参加、4日間で約3,800人(主催者発表)の来場者がありました。





理研で高校生が体験学習



青少年の科学技術への関心を高めるため、文部科学省(日本科学技術振興財団)主催の「サイエンスキャンプ2001」と、埼玉県が主催する「彩の国サイエンスアドベンチャー」が理研で開催されました。実習後の体験発表会では、参加者から「学校で特別授業があったが、ここに来てよかった」、「身近なオーディオ部品がどのようにできるか体験できて感動した」、「将来進むべき道の参考になった」などの感想が聞かれ、実体験の感動が伝わってきました。

Photoサイエンスキャンプ2001
理研など25研究機関が参加し、全国から約300名の高校生が参加する体験学習です。理研では、8名の高校生が7月30日〜8月1日の日程で、生物基盤研究部、素形材工学研究室、脳科学総合研究センター細胞修復機構研究チームに分かれ、研究者の指導のもと、先端の科学技術を体験しました。


Photo彩の国サイエンスアドベンチャー
埼玉県下の大学、研究施設などで、県立高校生約100名が参加する体験学習です。理研では、10名の生徒が7月30日〜8月2日の日程で、基礎科学や生物学、脳科学などの講義と施設を見学。また、表面解析室、基盤技術開発室、植物科学研究センターバイオケミカルリソース研究チームに分かれ、先端の科学技術を体験しました。





名古屋市・理化学研究所ジョイント講演会開催のお知らせ



下記により第9回名古屋市・理化学研究所ジョイント講演会を開催します。
 バイオ・ミメティックコントロール研究センター(名古屋市守山区)では、生体が長い期間を通して獲得した精緻な運動機能を人工的に実現する基盤形成のための研究を実施しています。本年9月末をもって第I期を終了し10月から第II期を開始する節目に当たり、これまでの研究の成果と第II期の研究概要を紹介します。

日  時平成13年10月24日(水)11:00〜17:00
場  所名古屋市工業研究所(名古屋市熱田区)
参加費等無料、要申込み
問 合 せバイオ・ミメティックコントロール研究推進室(052-736-5850)






理化学研究所里庄セミナーを開催



Photo第10回理化学研究所里庄セミナー(主催:理化学研究所、里庄町、科学振興仁科財団)が8月17日、仁科芳雄博士の生誕地である岡山県里庄町で開かれました。今年は、青野正和主任研究員(表面界面工学研究室)、原 正彦チームリーダー(フロンティア研究システム局所時空間機能研究チーム)が講演。青野主任研究員は「ナノテクノロジーとは何だろうか―21世紀拓くナノテクノロジー―」、原チームリーダーは「ナノテクノロジーから時空間機能へ―ナノテクの将来へ、発展の一つの可能性―」というテーマで、注目されているナノテクノロジーについてわかりやすく解説しました。講演後の質疑応答では熱心に質問する来場者の姿もあり、盛況のうちに幕を閉じました。
 里庄セミナーは、青少年への科学に対する関心を高めるとともに、仁科博士の故郷である岡山県内の企業や研究機関との交流を図ることを目的に、1992年から毎年行われています。



原酒
名前、されど名前(その真相は!)

筆者近影理研では、国際結婚が普通に行われています。異なった文化を持つ両親が子供にどのような名前を付けるのか私にとって大変興味深いことです。子供は両親のそれぞれの国の名前を付けてもらうことになるでしょう。アンナ、ニーナ、ハンナ、アラン、ダンおよびレイのような名前は世界中どこにでもあり、人気があるように思います。そこで、私の知っている各国の命名の状況について考えてみました。
 日本では子供は、主に漢字で名づけられます。最近でも、"姓名判断"に従う人が多いと聞きました。音の響き、字形、字画数、意味、夢を託す願いや姓の漢字とのバランスを考えて、子供に幸せを呼ぶ名前をつけるためです。中国人の名前はほとんど二文字漢字からなっていて、兄弟の場合は普通、最初の一文字が同じです。文化大革命の時代、愛国心を示し、政治的過激派から家族を守るために、国歌からとったドン(Dong:東)あるいはホン(Hong:紅)のような名が付けられました。ベトナム人の姓名は父親の姓で始まり、次に"意味のある"ミドルネーム、そして名前が続くのが一般的です。たくさんあるチャウ(Chau)とかハ(Ha)の名前は一般的な名前なので、性別を表すには、ミドルネームのディン(Dinh)を男性に、ティ(Thi)を女性に使います。女性は結婚後も姓名を変えません。
中国人とフランス人の研究者、キン(左)とベルナール(右)は息子(中央)にケビン・リオンという ロシアでは大人はミドルネームと名前を一緒につけて呼び合います。たとえばガリーナ・イワーノフナ(ポポバ)(Galina Ivanovna (Popova))。親しくなるにつれて、まずはガリーナに、それからガーリャに変わり、とても親しくなるとガーロチカ(Galochka)と呼ばれるようになります。またロシア人の父親の名前は子供に受け継がれます。男の子ならオービッチあるいはイエビッチ(-ovich、ievich)、女の子だったらオーブナあるいはイエブナ(-ovna, -ievna)(名前の最後の文字が母音か子音によって変わる)という字を後につけます。女性の場合は姓の後ろにア("a")を付け、結婚している場合は夫の名前を付けます。
 ブルガリア人は伝統的に、男子の場合オブ(-ov)あるいはエブ(-ev)、女子の場合オバ(-ova)あるいはエバ(-eva)という文字を父親の名前の後につけて受け継ぎます。同じ名前が一家のなかに存在し、父、息子、孫が皆同じ名前のこともあります。かつてブルガリアの共産主義政府は"望ましい"名前のリストを挙げて、強制的に命名させましたが、今日ではそうした制限はありません。両親は重要なあるいはいくつもの象徴として使われる名前、たとえば(聖ピーターや人気のあるブルガリア王にちなむ)シメオン(Simeon)、イエス・キリストにちなむクリスト(Christo)、あるいはギリシア神話に由来するアヤックス(Ayax)やオルフュウス(Orpheus)のような名前を選びます。暦には日々特別な名前がついているので、誕生日の日の名前をとって名づけられることも一般的です。
 この命名法はフランスでも人気があります――特に聖人名を選びます。しかしヨーロッパの最近の傾向はありふれていない珍しい名前をつけようとしています。ドイツのカトリック教徒は名親(Godparents)の名前をもらいます。旧東ドイツ地域では、ケビン(Kevin)あるいはマービン(Mervyn)のようなドイツ的でない名前が現在流行しています。ヨーロッパの女性は、かつて結婚すると夫の姓を名乗るよう法律で決められていましたが、最近この法律は撤回され、夫婦は自由に姓を選べるようになりました。
 英国および米国では、名前の意味というより、むしろ友達あるいは家族のだれに敬意を払うかに重点をおいています。米国の特徴としては、ミドルネームの頭文字を必ず入れたり、時には父親の姓名に序数をつけてたりしています。たとえば、ジェームス・T・カ−ク・4世(James T. Kirk IV)は、4世代が同じ姓名をもっていることを示しています。序数はヨーロッパの貴族の間でも使われています。女王エリザベス2世など。
 私の名前はどうしてついたかって? キャサリンは母親の、フランシスは父親の名前(Frances:eは女性型)からもらったものです。西洋の言語のどれをとっても、この名前は純粋("pure")で自由("free")という意味をもっています。ただし、皆は私のことをただキャシーと呼んでいます。

国際協力室●キャサリン・フランセス


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