お知らせ 独立行政法人 理化学研究所
米バテルの研究投資会社と包括協定を締結、研究成果の事業化を推進
- 研究投資会社との初の協定で、バトンゾーンが大幅拡大 -
平成20年10月30日
◇ポイント◇
  • 理研技術成熟化のため、10年間で約20億円の連携ファンドを受入
  • 成熟化のための研究計画は、個別に受託研究契約の締結で展開
  • 研究投資会社のリソース活用で知的財産の事業化、確実にイノベーションを創出
 独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)は、世界中に120以上の拠点を持つ米国バテル記念研究所が設立した研究投資会社360ip Pte.,Ltd(Glenn Klineグレン クライン社長:本社シンガポール)との間に「理研と360ipとの連携に関する包括協定書」を2008年10月30日、理研和光本所で締結しました。この協定は、理研が提案する「理研技術の成熟化計画(特許の創出・強化)」を相互の連携協力により実施し、技術移転による産業振興と社会貢献を目的としています。
 360ip社は2018年10月までの10年間で総額約20億円(2,000万ドル)の連携ファンドを成熟化計画に投資するとともに、市場への展開に必要な人材と情報を提供し、理研は成熟化計画の提案とその実施に必要な人材および施設・設備を提供します。両者の緊密な協力により、理研の研究成果によるイノベーションの創出を目指します。
 360ip社は、バテル記念研究所が、アジア圏における研究機関(大学も含む)を投資対象として設立したグローバル研究投資会社です。理研と360ip社双方の強みを合わせることで、画期的な技術の創出、新しい市場の構築、さらには科学技術による社会貢献を支える次世代の人材の育成が期待できます。


1. 経緯
 財団理研の大河内正敏第三代所長は、科学研究を産業の基礎と位置づけ、研究成果を産業に移転し、数多くのベンチャー企業を興しました。財団理研は、最盛期には63社、121工場の理研産業団を傘下におさめ、ここから得られる利益を科学研究に投じることで、科学研究の発展と産業の育成を同時に実践しました。また、それらの活動を通して数多くの有為な人材を育てました。
 現在の独立行政法人理化学研究所もこの「大河内精神」を受け継いでいます。例えば、産業界に移転する技術を陸上競技の「バトン」に例え、技術移転のためには理研と企業が一定期間、同じ方向に併走しながらバトンを渡す「バトンゾーン」構想を提唱し、イノベーションの仕組みづくりを行っています。
 科学技術の基礎研究が追求しているのは、科学的価値の極大化です。一方、研究成果をイノベーションに結びつけ、社会にインパクトある変化を起こすのは、産業応用を通じてであり、経済価値の極大化を指向しています。この2つの価値は別の軸を持っており、異なる才能と努力の投入が求められます。
 特許は、経済価値極大化の軸で創出し活用するもので、基礎研究の成果からだけでは、価値のある強い特許を生み出すことは困難です。革新的な製品に結びつきそうな基礎研究の成果が生まれた時に、それを強い特許にするためには、多くの場合、資金と人材、さらに蓄積された市場や知財などの情報が必要となります。
 アジア圏の研究機関、大学の知財(研究計画も含む)投資ビジネスモデルを持つ360ip社と、科学技術による社会貢献(イノベーション)を目指す理研の両者が検討を重ね、協力関係に関する基本的合意がなされた結果、包括的協定を締結することになりました。
 理研にとって360ip社は、経済価値極大化を使命とする良きパートナーとなり、理研技術に360ip社が提供するリソースが補完されることで理研発の画期的なイノベーションの実現が期待できます。また、360ip社にとって理研は、新しいシーズを発掘する良きパートナーであり、360ip社のネットワークとアジア圏にある優れた知的財産権(IP)を活用し、ベンチャー企業の創出やIPの商業化などを通じて、低迷した市場の活性化を果たすことを期待します。


2. 協定の概要
1) 期間
2008年10月30日から2018年10月29日まで(10年間)
2) 規模
2000万ドル(約20億円)
3) 内容(図参照)
1理研が産業化を目指す「理研技術の成熟化計画」を提案
2360ip社による評価・選定
3個別計画ごとの受託研究契約の締結、研究実施
4研究成果に係る特許などは理研に帰属
5360ip社が策定する戦略に基づき理研特許を事業化


3. 各社概要
○独立行政法人理化学研究所
独立行政法人理化学研究所は2003年設立(財団法人としては、1917年設立)。科学技術(人文科学のみに係るものを除く)に関する試験および研究などの業務を総合的に行うことにより、科学技術の水準の向上を図ることを目的とし、日本で唯一の自然科学の総合研究所として物理学、工学、化学、生物学、医科学などにおよぶ広い分野で研究を進めている。研究成果を社会に普及するため、大学や企業との連携による共同研究、受託研究などを実施しているほか、知的財産権の産業界への移転とそれに必要な産業界との連携を積極的に進めている。
360ip Pte.,Ltd
バテル記念研究所によって設立された研究投資会社で、アジア圏における研究機関(大学も含む)を中心とした投資全般(ライセンシング、コンサルティングなど含む)を事業とする。バテル記念研究所と独占的な協力関係を構築しているため、バテルグループの人的資源および情報、ネットワークを活用した事業展開が特徴となっている。本社はシンガポール。
バテル記念研究所
オハイオ州のコロンバスで、アメリカの鉄鋼産業早期のリーダーであったゴードン・バテル氏によって、1929年に創設された研究開発および研究所委託運営を行う非営利の研究所。研究系人材を含めた従業員数約2万名、年間予算40億ドル(約4千億円)。世界中に120以上の拠点をもち、本所は、米国オハイオ州コロンバス。


(問い合わせ先)

独立行政法人理化学研究所
知的財産戦略センター
生越 満(おごし みつる)
浦野 亜規(うらの あき)

Tel: 048-462-5475 / Fax: 048-467-4718

(報道担当)

独立行政法人理化学研究所 広報室

Tel: 048-467-9272 / Fax: 048-462-4715
Mail: koho@riken.jp


図 成熟化プロジェクト実施手順
図 成熟化プロジェクト実施手順
理研が提案する「理研技術の成熟化計画(特許の創出・強化)」に360ip社が投資して、研究を実施。得られる知的財産は360ip社が策定する戦略に基づき事業化する。


<参考>

360ip社がシンガポールで同時にプレスリリース予定の資料(仮訳)
※ 本資料に関するお問い合わせは直接360ip社にお願いします。


360ipと理研、知的財産の可能性が高い資産の事業化を目指し包括協定を締結

革新的技術と知的財産(IP)の事業化提携


2008年10月30日−シンガポール、和光市発:シンガポールに本社を持つ、知的財産(以下「IP」)投資・運営の世界的リーダーである360ip Pte Ltd(以下「360ip」あるいは「弊社」)は、埼玉県和光市を本拠地とする日本の代表的独立研究所のひとつである理化学研究所と共に、本日、理研の各研究所・研究室で開発される高い潜在能力を持った技術の事業化に向けての独占的包括協定の提携を発表しました。

360ipはバテル記念研究所によって創設されたバテル傘下の独立ベンチャーキャピタル会社です。バテル記念研究所は、世界最大の非営利独立研究開発機関であり、研究開発・研究所運営や技術事業化の各々の分野で専門的知識を有しています。360ipは、分析、成熟化、事業化の各種サービスをはじめ、海外パートナーのために同社が管理する知的財産について、バテル記念研究所との関係を最大限利用することが出来ます。更に、バテルと連携関係にある付加価値としては、360ipとバテルジャパンとの緊密な協力関係が挙げられます。バテルジャパンは理研との提携の円滑な推進役として本提携をサポートします。

360ipは世界中の一流グローバル研究所と協力して、貴重なリソースと専門知識を提供し、強力な市場ソリューションの推進とステークホルダーへ多大な利益還元を行います。弊社の投資・運営プログラムでは、パートナーのIPからの商業的成果を極大化するため、独自のシステムおよび専門知識を活用します。

拡大し続ける360ipの独占的提携のなかでも、理研との本契約は重要な提携となり、アジア圏における同社の強い存在感に基づいて形成されます。この協力関係の一環として、360ipは理研によるイノベーションの事業化のため、ライセンス関連サービス、事業化管理、そして直接投資を実施する予定です。一方、理研は先端技術、知的財産、専門的知識を提供して、強力な利益還元を実現する最高の機会の創出を促進します。

理研の研究者は日本全国をはじめ、世界各地の研究所を拠点とし、物理学、化学、生物学、医学、工学の各分野で最先端の研究を実施しています。現在、理研には約2500名の科学者がおり、ノーベル化学賞受賞者の野依良治博士が理事長を務めています。理研ではこれまでに多くの重要な発明が行われており、またイノベーションによって多様な分野におけるグローバルな商業的成功を収めてきました。理研の先駆的な研究成果には以下があります。

  • ビタミンB1の発見とビタミンAの製造方法の開発
  • VAAM(耐久性スポーツ飲料)などの消費者製品における画期的発展
  • 製造環境のインパクト低減や自動車の燃料効率の向上を実現する新しい自動車製造技術ELID
360ipのグレン・クライン社長兼CEOは、「理研は科学・技術分野における前進で世界的に有名です。弊社では、同所による最先端の研究や技術を活用して、IPの高価値のポートフォリオを創出し続け、全てのステークホルダーの皆様への利益還元を極大化するという目標を掲げて、パートナーのIP資産の成長を加速させていきます」と述べました。

また理研の武田健二理事は、「理研のミッションは、科学・技術の境界線を拡大するような研究の実施であり、理研独自の多様な研究力を完全に資本化するような、国際認識される結果を生み出すことを目標としています。理研では新しい研究分野の開拓を誇りとしています。360ipのような戦略的に重要なパートナーと緊密な協力関係を築くというイニシアチブを取ることで、新しい領域への研究の事業化が実現できます」と付け加えました。

また武田理事は、「理研の技術資産のいっそうの極大化を図るために、360ipとのこのような互恵的な提携が構築されたことを非常に喜んでいます。国際的な専門家ネットワーク、主要インフラ、そしてIPと事業化に関する専門的知識が利用できることから、360ipとの協力関係を通じ、理研は新規事業や市場機会を創出していきます」と述べました。

理研の野依良治理事長は、「優れた科学研究は、人類未開の「知」の創造だけではなく、画期的な技術革新や新しい産業を生み出すことで達成されます。また、優秀な研究は私たちの日常生活に積極的に貢献することで、我々の生活の基本である社会を活性化する役割があります」と付け加えました。

「本日は理研にとって喜ばしい日です。歴史的にも有名なバテル記念研究所との強い協力関係を含めた360ipとの協定締結を機会に、理研はこれまで以上に産業界との結びつきを強化し、その発展に寄与したいと考えます。」

武田理事は以下のように述べています。「科学・技術の基礎研究で理研が追求しているのは、学術的価値の極大化です。一方、研究結果をイノベーションに結びつけ社会にインパクトある変化を起こすことで、経済価値が創出されます。この2つの価値は別の軸を持っており、異なる才能と努力の投入が求められます。」

「特許は経済価値の極大化の軸で創出し活用します。基礎研究の成果からだけでは価値のある特許を生み出すことは困難とされています。基礎研究から革新的な製品が生まれる場合がありますが、一般的には、真実の経済価値を実現するには、1.資金と人材、2.蓄積された市場、3.知的財産などの情報リソースといった3つの要素が必要となります。

最後に武田理事は、「理研にとって360ip社はIPの経済価値極大化を使命とする良きパートナーとなり、理研のIPに360ip社が提供するリソースが補完されることで理研発の画期的なイノベーションの実現が期待されます」と締めくくりました。

バテルのグローバル研究所運営部門のジェフリー・ウォッズワース部長は、「バテルは360ipの創設投資メンバーとして、技術革新を商業市場へ発展促進する分野において、360ipと理研がグローバルなリソースを活用できる機会が生まれたことに非常にうれしく思います。またアジア全体を通じて、バテルの研究開発と研究所運営事業を拡大できる機会を楽しみにしています。本所と360ipとの関係はバテルの世界的な発展と共に、新しいイノベーションを約束する商業的成果の促進における成功を支援するため、360ipと理研の技術チームによって開発可能な広範なリソースのネットワークを提供します」と述べました。


360ip
シンガポールに本社を持ち、アジアと米国各地を拠点とするグローバルな知的財産(IP)の投資運営会社。一流研究所の知的財産価値の極大化のため独占協力。事業の専門知識をはじめ、投資専用資本、リソース、立証済みプロセスを提供して、これらのIP資産の商業的成功の極大化と、ステークホルダーへの価値創出を図る。バテル記念研究所(www.battelle.org)によって創設された同社は、バテル系列の独立ベンチャーキャピタル会社。分析、成熟化、事業化の各種サービスをはじめ、研究パートナーのために同社が管理する知的財産について、バテル記念研究所との連携を利用。詳細はwww.360ip.com
理化学研究所
物理学、化学、医学、生物学、工学などの広範な科学・技術分野において、実験的な基礎・応用研究を実施する日本の代表的研究所。当初は民間研究財団として1917年に東京で設立されたが、2003年に独立行政法人となった。詳細はwww.riken.jp
バテル記念研究所
研究所運営、国家安全、エネルギー技術、保険・生命科学という4つのグローバル事業を介して、世界で最も緊急なニーズに対して革新的ソリューションを提供する、世界最大の非営利独立研究開発組織。委託研究、研究所運営、技術事業化を通じて、年間40億ドル以上のグローバルな研究開発を実施し、科学的な発見・応用を促進。米国オハイオ州コロンバスを本拠地とし、世界中の120以上の拠点で従業員数2万名以上を統轄する。詳細はwww.battelle.org
バテルジャパン
バテル記念研究所と三菱商事のジョイントベンチャーとして2006年3月に設立。日本の一流企業・組織団体であるお客様とパートナーに対して、高い評価を受けている研究開発の専門的知識、結果重視の研究所運営経験、革新的な商品の基になる高い価値のある知的財産ポートフォリオ、そして研究の自立性と客観性を提供する。
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