お知らせ 独立行政法人 理化学研究所
理研・漢陽大学が融合ポストナノテク分野で協定締結へ
- 理研が韓国に研究拠点を開設、アジア諸国との研究ネットワーク構築を目指す -
平成20年4月9日
 独立行政法人理化学研究所(以下理研、野依良治理事長)の基幹研究所(玉尾皓平所長)と韓国・漢陽(ハンヤン)大学(金鍾亮(キム・ジョンリャン)総長)は、「アジアリサーチネットワーク」の構築を目指し、2008年4月10日、研究協力を推進するための協力協定を締結します。
 理研基幹研究所では、これまでに、国際連携研究グループの原正彦グループディレクターらが、漢陽大学の李海元(イ・ヘウォン)教授らと協力して、エレクトロニクスデバイス開発の障害となっていた分子の「ゆらぎ」や「不安定性」を抑圧するのではなく、逆に、積極的に活用した機能材料の開発や新規情報処理方法などの「ポストナノテクノロジー」を目指した共同研究を行ってきました。
 一方、韓国では、ナノテクノロジー、ナノバイオテクノロジー分野の融合研究拠点として、漢陽大学にFusion Tech Center(FTC)※1を建設し(2008年5月末竣工予定)、国内外の研究機関との連携を強力に推進しようとしています。具体的には、その施設の半分を国内外の研究機関とのジョイントプログラムに開放する計画で、今回の研究協力も、FTC(ソウル)が主な研究実施場所となります。理研が韓国に研究拠点を置くのは、これが初めてとなります。
 協定には、研究協力に加え、人材交流や情報交換を行うことが盛り込まれており、この連携によって、世界で活躍するアジア出身の次世代研究者を育成するとともに、欧米が先導してきた国際スタンダードとは異なる新しい研究体制スキームをアジアから発信することを目指します。


1. 経緯
 理研基幹研究所の国際連携研究グループの原正彦グループディレクターらは、漢陽大学の李教授らとナノテクノロジーと有機材料研究の分野の研究で古くから交流があり、共同研究を行ってきました。
 韓国では、ナノテクノロジー、ナノバイオテクノロジー分野の融合研究拠点として、漢陽大学にFTCを建設し、その半分を国内外の研究機関とのジョイントプログラムに開放する計画が進んでいました。理研は、日本で初めて、本格的な多国籍メンバーから成る研究体制を確立し、柔軟に運用してきた実績を持ちます。韓国側は、この理研のノウハウをFTCの運営に活かしたいと考え、理研と漢陽大学の共同研究の拠点をFTCに置いて研究を進展させ、連携を深めることを提案しました。
 これを受け、2005年4月から、原グループディレクターと李教授を中心として、シンポジウムや人材交流などを活発に実施し、共通の課題を検討するといったフィジビリティ・スタディを行ってきました。その結果、日本では少子化や理科離れが、また韓国をはじめとするアジア諸国では優秀な人材の欧米流出が問題になっており、協力して問題を打開する必要性を強く認識しました。特に、人材を確保するためには、アジアの文化に基づく新しい国際化のスタンダードと次世代研究者の育成、ひいては欧米先導と異なる科学技術創成に対して、新しい研究体制のスキームを構築することで意見が一致、協力を進めることとなりました。


2. 連携・協力の内容
 アジア諸国共通の課題を解決するため、共同研究や人材交流を活性化するアジアリサーチネットワーク(図)の構築を目指し、協力して次の活動を行います。

1共同研究プロジェクト
2教授と研究者の交換
3大学院生と適切な職員の交換
4大学教育プログラムへの参加
5講演、共同セミナーやシンポジウムの開催を含めた科学技術情報の交換
6科学技術研究試料の交換
7相互の合意によってなされる他の形式の協力

 また、理研は、漢陽大学から、FTCの5階の研究スペースと技術サポートの提供を受け、FTC完成後の2008年7月に研究室を設置する予定です。

 協定の期間は、署名日から5年間です(ただし、当事者が合意すれば、さらに5年間延長可)。なお、調印式は、2008年4月10日午後1時30分より、理研和光キャンパス事務棟2階役員大会議室で行ないました。


3. 今後の期待
 理研基幹研究所は、漢陽大学を始めとするアジアリサーチネットワーク参加予定の研究機関(ソウル大学、浦項(ポハン)工科大学、韓国化学研究院(KRICT)、韓国電子通信研究院(ETRI)、韓国パスツール研究所)と連携し、21世紀の革新的科学技術の創製を目指します。
 特に、ナノテクノロジーの限界を見極め、次に来るべき「ポスト」ナノテクノロジーの提案と確立を目指した研究開発を展開する計画です。その1つとして、今まで、エレクトロニクスデバイス開発に対してネガティブな要素であった分子や原子の「ゆらぎ」や「不安定性」を積極的に活用した機能材料の開発や新規情報処理方法などを議論する「揺※2による創発」に関する研究協力を2008年7月から開始します。
 また今後、日本と韓国の連携を核に、中国、インド、シンガポールなどのアジア諸国へ連携の和を広げてゆく予定です。


4. 各機関概要
(1) 基幹研究所
 定年制の研究者を母体として、幅広い分野の独創的基礎研究から新しい研究の芽を生み出す役割を担ってきた「中央研究所」と、理研で初めての任期制研究者主体のプロジェクト研究を推進し、新たな研究の芽を育てる役割を担ってきた「フロンティア研究システム」を統合して、2008年4月に発足した組織。
 物理学、化学、工学、生物学、医科学等の広範な分野でハイリスクな研究課題に挑み、科学に飛躍的進歩をもたらす発見と革新の創出を目指すとともに、それらの発見と革新を競争性と戦略性をもって育み、次代の研究分野創出を目指します。
 基幹研究所では、「連携研究部門」を置き、産業界との連携、国内外の大学・研究機関等との連携強化にも積極的に取り組んでいます。本協定の中心人物である原グループディレクター率いる「国際連携研究グループ」も連携研究部門に属します。
(2) 漢陽大学
 大韓民国初の私立工科大学として1939年に発足。ソウル市と京畿道安山市にキャンパスを構え、理工系を始め、人文、社会、芸術、体育など幅広い分野の国際的人材教育を行っています。教授数1,057人、学生数35,111人(2005年4月現在)。24カ国、140余りの大学と姉妹校となり、毎年約900人の学生を派遣しています。


(問い合わせ先)

独立行政法人理化学研究所
 基礎基盤研究推進部 企画課

Tel: 048-467-9258 / Fax: 048-462-4608

(報道担当)

独立行政法人理化学研究所 広報室

Tel: 048-467-9272 / Fax: 048-462-4715
Mail: koho@riken.jp


<補足説明>
※1 Fusion Tech Center(FTC)
漢陽大学が、国内外の研究機関との連携を推進することを目的に、建設中の施設。2006年10月に着工、2008年5月竣工予定。12階建ての建物のうち5階の1フロア(約2,314m2)を理研に提供する。建設費の一部をソウル市が援助している。
※2 揺律
揺動から自律した機能、揺動から生まれる律動


アジア連携研究ネットワーク構想の図
図 アジアリサーチネットワークの構想


調印式の様子の写真
調印式の様子
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