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膜(貫通型)タンパク質 |
| 細胞は、細胞膜とよばれる脂質によって外界と隔てられている。膜タンパク質は細胞膜上に存在し様々な機能を担っている。代表的な膜タンパク質の仲間に受容体タンパク質があり、物質の受容や伝達、変換などを担っている。受容体タンパク質の中でも細胞膜を貫通した膜貫通型タンパク質には特に重要なものが多く、ホルモンなどの生理活性物質を受容すると、細胞内へ情報を伝達し、細胞外から細胞内を調節する役割の一端を担っている。他にもゲートとしてイオンなどを通過させたり、細胞同士を接着させたりする仲間がある。膜タンパク質の研究が難しい理由として、発現量が少ないこと、精製法が充分確立していないことが挙げられる。発現量の少なさを解決するため、培養細胞に大量生産させる方法が確立された。精製法に関しては現在も発展途上にある。膜タンパク質の精製は、界面活性剤(洗剤)を使って脂質である細胞膜を壊しつつ、目的の膜タンパク質は壊さずに抽出しなければならない。とりわけGPCRなどの膜貫通型タンパク質は、通常の膜タンパク質以上に非常に不安定な構造をしており、結合する特異的化合物と複合体を作らせたり、タンパク質そのものをタンパク質工学的に安定化させるなど、不安定な動きやすい構造を固定するための工夫が多数必要となる。さらにX線で立体構造を決定するためには結晶化が必要となるが、温度やpHの条件設定に加え、扱いが大変難しい界面活性剤が存在する中で結晶化する必要があり、ほぼ無限に存在する条件の組み合わせの中から最適なものを見つけ出さなければならない。 |
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| ※2 |
大型放射光施設SPring-8(スプリングエイト) |
| 理研が所有する、兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高の大型放射光施設。SPring-8の名前はSuper Photon ring-8GeVに由来する。放射光(シンクロトロン放射)とは、電子を光とほぼ等しい速度まで加速し、電磁石によって進行方向を曲げたときに発生する、細く強力な電磁波のことである。SPring-8では、遠赤外から可視光線、軟X線を経て硬X線に至る幅広い波長域で放射光を得ることができるため、原子核の研究からナノテクノロジー、バイオテクノロジー、産業利用や科学捜査まで幅広い研究が行われている。SPring-8は日本の先端科学・技術を支える基盤研究施設として、日本国内外の大学・研究所・企業から年間1万4,000人以上が利用している。SPring-8が作り出す放射光は、蓄積リングのエネルギーが世界一高く強力であるばかりでなく、構造解析の困難なタンパク質結晶回折データ採集のために特に重要であるX線安定性を達成したトップアップ運転を2004年以来続けており、世界一安定な放射光を供給し続けている。 |
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| ※3 |
GPCR(Gタンパク質共役型受容体) |
| Gタンパク質はグアニンヌクレオチド結合タンパク質の略称で、セカンドメッセンジャー・カスケードに関連するタンパク質のファミリーである。細胞内の生化学的反応を切り替える「スイッチ」としてグアノシン二リン酸(GDP)をグアノシン三リン酸(GTP)へ替えるためこの名がついている。Gタンパク質を発見・研究したマーティン・ロッドベル(Martin Rodbell)とアルフレッド・ギルマン(Alfred Gilman)は、1994年にノーベル生理学・医学賞を受賞している。GPCRは、細胞膜を7回貫通する特徴的な構造から7回膜貫通型受容体と呼ばれることもある。細胞外の神経伝達物質やホルモンを受容してそのシグナルを細胞内に伝える際にGタンパク質を介してシグナル伝達が行われる。全タンパク質の中で最大のスーパーファミリーを形成しているも関わらず、そのほとんどの構造はいまだ解明されていない。ただし、構造の決まっているウシロドプシンや、β2アドレナリン受容体、スルメイカロドプシンの構造を見ると基本的な構造は非常に似ている。 |
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| ※4 |
7回膜貫通型 |
ドメインとよばれるポリペプチド鎖が細胞膜を7回貫通する構造をしているため、このようによばれる。代表的なものとして、GPCRがある。
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2007年に報告されたヒト由来膜貫通型タンパク質の構造 |
| 大手製薬メーカーであるメルクが5-リポキシゲナーゼ活性化タンパク質(FLAP)、スタンフォード大学がヒト由来β2アドレナリン受容体(hβ2AR)、ハーバード大学と理研宮野構造生物物理研究室の共同研究グループ、スウェーデンのカロリンスカ大学がそれぞれ独立に同一科学雑誌上へ発表し、2007年は相次いで創薬標的となりうるヒト膜貫通型タンパク質の構造が発表された年になった。 |
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| ※6 |
ウシロドプシン |
| ロドプシンは視覚組織である目の網膜にある視物質で、ウシロドプシンは牛の網膜にある。GPCRという非常に大切なタンパク質の構造であることに加え、生物が光を感知し、電気信号に変わる瞬間の鍵となる物質という点においても非常に意義深い。宮野構造生物物理研究室はサントリー生物有機研究所と共同で、進化的にも興味深いイカロドプシンの結晶構造解析にも最近成功し、発表している(J. Biol. Chem. 2008年6月27日号: Shimamura, et al. 283巻, 17753-17756.)。 |
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| ※7 |
タンパク3000プロジェクト |
| 文部科学省が、2002年度からわが国発のゲノム創薬の実現等を目指し、国内の研究機関の能力を結集して、5年間で全基本構造の1/3(約3,000種)以上のタンパク質の構造及びその機能を解析し、特許化まで視野に入れた研究開発を推進することを目的としたプロジェクト。このプロジェクトで理研は、タンパク質の基本構造の網羅的解析プログラムを担当した。 |