お知らせ 独立行政法人 理化学研究所
シロイヌナズナhmg1変異体宇宙を飛ぶ!
- 宇宙の作物工場の可能性を探る -
平成20年3月7日
 独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)は、2004年に単離に成功した植物のステロール※1生合成関連遺伝子「HMG1」を欠損したシロイヌナズナのhmg1変異体(図1)を、米国東部時間3月11日午前2時28分(日本時間:同日午後3時28分)に打ち上げ予定のスペースシャトル「エンデバー号」(STS-123)に搭載します。これは、理研植物科学研究センター(篠崎一雄センター長)多様性代謝研究チームの村中俊哉チームリーダー、鈴木優志研究員と、大阪市立大学(金児曉嗣学長)保尊隆享教授らとの共同研究です。

   理研の研究チームは、ステロール生合成に重要に関わるHMG1遺伝子の欠損変異体hmg1が、矮性、早期老化、雄性不稔※2といった、多様な形質を示すことを見出し、2004年に報告していました。一方、保尊隆享教授らは、重力が植物の成長に及ぼす影響について研究していました。保尊教授らは、地上より大きな重力(過重力)下でHMG1遺伝子の発現が誘導されることを見出し、今回の共同研究がスタートしました。
 ヒトを含む動物は、重力に対して、骨格で体を支えています。そのため、宇宙の無重力環境下で長時間を過ごすと、骨がもろくなるなど、成長に負の影響が出ることが知られています。一方、植物は骨を持たないため、細胞の周囲を糖質でできた細胞壁と呼ばれる固い壁で覆うことで、重力に抗って成長していきます(抗重力反応といいます)。細胞壁は、過重力環境下では固くなることが知られていますが、hmg1変異体の細胞壁は、1Gの重力下でも野生型に比べ固く、過重力処理をしてもそれ以上固くならないことが地上実験ですでに明らかになっています。
 今回の実験では、宇宙の微小重力(無重力)環境下で、細胞壁にどのような影響が出るのかを調べることを目的としています。

 スペースシャトル「エンデバー号」で打ち上げられるシロイヌナズナ(野生型とhmg1変異体)は、国際宇宙ステーション(ISS:International Space Station)に移送され、1Gの人工重力を与えられた環境と、微小重力環境の2種類の重力環境下で育てられます。生育の様子をビデオモニターし、10cmほどの大きさになったら収穫して、試料を地上に持ち帰ります。地上では、細胞壁生合成遺伝子や、ステロール生合成遺伝子などの遺伝子発現解析や細胞壁の固さや弾性などの物性および構成成分の化学構造が調べられる予定です。

 近い将来に実現するとされている宇宙進出時代において、宇宙で植物を育成する技術は必須となります。細胞壁の固さは、葉の形成や茎の伸長など、植物の形を維持するために必須の要素です。今回の実験で、たとえば、hmg1変異体の細胞壁が、重力に影響されずに固さを保てば、宇宙の微小重力下において、植物の形を維持する手掛かりが得られるかもしれません。今回の実験が、宇宙で植物を育成する“宇宙農業”の第一歩となることが期待できます。


(問い合わせ先)

独立行政法人理化学研究所
 植物科学研究センター 多様性代謝研究チーム
  チームリーダー  村中 俊哉 (むらなか としや)

Tel: 045-503-9651 / Fax: 045-503-9492
  研究員  鈴木 優志 (すずき まさし)

Tel: 045-503-9652 / Fax: 045-503-9492
 横浜研究推進部 企画課

Tel: 045-503-9117 / Fax: 045-503-9113

(報道担当)

独立行政法人理化学研究所 広報室

Tel: 048-467-9272 / Fax: 048-462-4715
Mail: koho@riken.jp


<補足説明>
※1 ステロール
動植物に含まれるイソプレノイドと呼ばれる脂質の一種。真核生物の細胞膜の一部を形成したり、その機能を調節したりする。動物由来のものではコレステロールが有名。植物特有のもので、シトステロール、スチグマステロールなどがある。x
※2 雄性不稔
花粉を作ることのできない形質のうち、親個体にその原因があるものを指す。


シロイヌナズナ野生型(左)とhmg1変異体(右)の写真
図1 シロイヌナズナ野生型(左)とhmg1変異体(右)
野生型に比べhmg1変異体は背丈が小さく、枯れ始めが早く、種を付けない(雄性不稔)。

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