お知らせ 独立行政法人 理化学研究所
国家基幹技術「X線自由電子レーザー」試験加速器(プロトタイプ機)の利用課題を公募
- 真空紫外領域のレーザーが利用可能に -
平成20年1月30日
 独立行政法人理化学研究所 (野依良治理事長。以下「理研」)は、2008年2月1日から「X線自由電子レーザー(X- ray Free Electron Laser:XFEL)」の試験加速器(プロトタイプ機)を活用した利用研究課題の公募を開始します。
 現在、理研播磨研究所キャンパス内の大型放射光施設SPring-8※1に隣接して建設が進められているXFEL施設は、極めて高い空間・時間分解能の観察を可能にする人類未踏のX線領域のレーザーを生み出します。
 理研は、このXFEL実機の建設に先立ち、2005年に試験加速器を建設し、2006年6月、波長49ナノメートルという真空紫外領域※2の自由電子レーザー発振に国内で初めて成功しました。この真空紫外自由電子レーザーの利用運転を2008年5月から開始します。これにあたり、すでに進行している文部科学省による「X線自由電子レーザー利用推進研究課題」とともに、大学、法人、企業などの研究者からも広く利用課題を公募します。
 今後、試験加速器の利用が真空紫外領域の未知の光科学を発展させ、さらにXFEL実機における斬新な研究につながることが期待されます。


1. 背 景
 現在、光科学技術の分野では、DVDドライブに用いられる半導体レーザー、視力回復手術に利用されているエキシマレーザーに代表されるように、さまざまな種類のレーザー研究が盛んに行われています。XFELは、レーザーの波長がX線領域に到達する「夢の光」として注目され、ヨーロッパ・アメリカとともに熾烈な開発競争を展開しています。わが国でも、国家基幹技術に指定され、研究者が結集したプロジェクトとなっています。
 このXFEL実機の実現に先立ち、実機の要素技術の性能を実証するために、2005年に試験加速器を同キャンパス内に完成させました(図1、図2)。この試験加速器は、全長60メートル(XFEL実機は全長約700メートル)、加速エネルギーが実機の32分の1の2.5億電子ボルト※3で、2006年6月には、わが国で初めて波長49ナノメートルの真空紫外領域の自由電子レーザー発振に成功しました(2006年6月22日プレスリリース)。2007年4月には、このレーザー光を利用した実験を行うための実験棟(図3)が完成し、ビームラインの整備も進められています。


2. 募集のスケジュール
募集開始 2008年2月1日
募集締め切り 2008年2月29日(金)必着(郵送・電子メールとも)
利用課題の決定(予定) 2008年3月末を予定
応募課題は、SCSS試験加速器運転・利用委員会で審査します。
審査後、結果を通知します。
課題採択後は理研と共同研究契約を締結していただきます。
利用期間(予定) 2008年5月〜7月 (2008年度第I期)
2008年9月〜12月 (2008年度第II期)
2009年1月〜3月 (2008年度第III期)
第II期、第III期の募集は別途4月下旬と9月頃に予定しています。
当面の間、利用運転はビームラインや加速器の研究開発と並行して行われます。
募集に関する詳細については、「X線自由電子レーザー計画合同推進本部 利用グループ」のホームページに掲載しています。


3. 今後の期待
 国外では、ハンブルクにあるドイツ電子シンクロトロン研究所において、同じくXFEL実機の試験機である真空紫外領域のレーザー施設が2006年6月より稼動しています。これに続くわが国の試験機の発振成功は、世界的にも大きな注目を浴びています。
 試験加速器では、XFEL実現のための加速器の研究開発とともに、真空紫外レーザーの高い干渉性と強度を活かしたさまざまな利用研究が期待されています。例えば、特定の物質を選択的に励起することにより、光触媒材料の開発や感度の高い分析法の開発に貢献します。また、これまで実用化されていない波長域での光通信技術が開拓されます。今後、試験加速器の利用が真空紫外領域の未知の光科学を発展させ、さらにXFEL実機における斬新な研究につながることが期待されます。


(利用についての問い合わせ先)

X線自由電子レーザー計画合同推進本部 利用グループ

Mail: xfeluser@spring8.or.jp

(XFEL計画全般についての問い合わせ先)

X線自由電子レーザー計画合同推進本部 企画調整グループ

Tel: 0791-58-2849 / Fax: 0791-58-2862

(報道担当)

独立行政法人理化学研究所 広報室

Tel: 048-467-9272 / Fax: 048-462-4715
Mail: koho@riken.jp


<補足説明>
※1 大型放射光施設SPring-8
兵庫県の播磨科学公園都市にある大型共同利用施設。ほぼ光速で進む電子が、その進行方向を磁石などによって変えられると接線方向に電磁波が発生する。これが「放射光(シンクロトロン放射)」と呼ばれるものであり、電子のエネルギーが高く、進む方向の変化が大きいほど、X線などの短い波長の光を含むようになる。特に第3世代の大型放射光施設と呼ばれる施設は、SPring-8、APS(アメリカ)、ESRF(フランス)の3つである。SPring-8(電子エネルギー:80億電子ボルト)は、遠赤外から可視光線、真空紫外、軟X線を経て硬X線に至る幅広い波長域で放射光を得ることができ、国内外の研究者の共同利用施設として、物質科学・地球科学・生命科学・環境科学・産業利用などの分野で利用されている。
※2 真空紫外領域
紫外線よりも波長が短く、X線よりも波長が長い光の領域。
※3 電子ボルト
エネルギーの単位。電子1つを1ボルトで加速したときのエネルギーが1電子ボルト。


建設中のXFEL実機(完成イメージ)と試験加速器施設の航空写真
図1 SPring-8キャンパス内に建設中のXFEL実機(完成イメージ)と試験加速器施設


試験加速器の全景写真
図2 試験加速器の全景
電子銃側から電子ビームの進行方向に向かっての全景。


実験棟の内部の写真
図3 実験棟の内部

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