お知らせ 独立行政法人 理化学研究所
「マウスミュータジェネシス」の動向に焦点をあて世界のトップが会合
- 10月28日から京都で国際哺乳類ゲノム会議を開催 -
平成19年10月24日
ポイント
  • ノーベル医学生理学賞関連「ミュータジェネシス」を特別セッション
  • 注目の研究分野「トランスクリプトーム・ワールド」のシンポジウム
  • Nature』、『Science』など学術専門誌編集者によるパネルディスカッション
 独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)は、国際哺乳類ゲノム学会(International Mammalian Genome Society; IMGS)と共同で、2007年10月28日から11月1日の5日間にわたって、京都府民総合交流プラザ内(京都府京都市南区)で、第21回国際哺乳類ゲノム会議(21st International Mammalian Genome Conference; IMGC)を開催します。同会議は、理研ゲノム科学総合研究センター(榊佳之センター長)遺伝子構造・機能研究グループの林ア良英プロジェクトディレクターが組織委員長を務め、バイオインフォマティクスの権威である米国のハーバード大学ダナファーバーがん研究所のジョン・カッケンブッシュ(John Quackenbush)教授ら世界の一流研究者による基調講演や、会員による講演、ポスター発表などに加えて、「ミュータジェネシス」、「トランスクリプトームワールド」、「ジャーナルセッション」の3つのユニークでタイムリーなセッションを実施します。
 ノックアウトマウスが、開発されてからほぼ20年が経ったことと、ゲノム機能解明を目指した大規模な国際ノックアウトマウスコンソーシアム(International Knockout Mouse Consortium; IKMC)が本格的に稼働したことを踏まえ、組織委員会では、世界中のマウスミュータジェネシスの動向に焦点を当てたセッションを企画しました。具体的には、国立遺伝学研究所 系統生物研究センターの城石俊彦教授(理研ゲノム科学総合研究センター ゲノム機能情報研究グループ プロジェクトディレクター兼務)、同グループの権藤洋一プロジェクト副ディレクターがオーガナイザーを務め、米国KOMP※1、欧州EuCOMM※2、日米欧にまたがるENUマウスミュータジェネシス※3など、大型プロジェクトの代表者で米国のベイラー医科大学のモニカ・ジャスティス(Monica Justice)准教授らが講演し、最先端の情報交換を行います。ミュータジェネシスのセッションは同時通訳がつきます。
 また、10月31日のシンポジウム「トランスクリプトーム※4・ワールド」では、米国アフィメトリックス社バイオ部門統括責任者のトーマス・ジンジェラス(Thomas Gingeras)博士と林アプロジェクトディレクターが講演をします。このトランスクリプトーム研究をリードする2人の研究者の講演では、近年創薬研究のキーワードとなりつつあるncRNA (non-coding RNA;非タンパクコードRNA)などRNAワールドについて最新の解析結果が紹介されます。
 このほかに、最終日を飾るイベントとして、『Nature』、『Science』をはじめとする国際的な主要学術誌の編集者によるパネルディスカッションも開催します。約10誌の編集者が参加し、学術的な著作に関する現状と将来の展望について意見交換を行います。このようなセッションは、世界的にも初めての試みで、本学会にとどまらず、科学のコミュニティーにおける貴重な討論の機会を提供するものになると期待できます。


1. 経緯
 国際哺乳類ゲノム学会(IMGS)は、マウスゲノムを研究する科学者の自主的な勉強会に端を発した国際学会です。1987年に第1回国際哺乳類会議(IMGC)をパリで開催し、国際的な広がりを見せました。以来、欧米において1年ごとに、そして、7年に1度日本で開催しています。この間のゲノム科学の発展や解析技術の進歩は目覚しく、研究対象もヒトのモデル動物としてのマウスから、現在では特にヒトを中心とする様々な生物のゲノムの高次機能解析へと展開するとともに、膨大で複雑な情報を高速で処理する必要があることから、情報科学などとも融合しながら発展してきました。
 今年は21年目にあたり、日本で開催します。林ア良英プロジェクトディレクターが組織委員長を務め、京都テルサ(京都府京都市南区新町通九条下ル 京都府民総合交流プラザ内)で、2007年10月28日〜11月1日の5日間(主なプログラムは10月31日までの4日間で終了)にわたって開催します。世界のトップレベルの研究者による基調講演や会員による講演、ポスター発表などに加えて、注目の「ミュータジェネシス」、「トランスクリプトーム・ワールド」、「ジャーナルセッション」の3つのセッションを予定しています。


2. 会議の見どころ
(1) ミュータジェネシスに関するセッション
 ミュータジェネシス(Mutagenesis)は、遺伝子やゲノムDNAに突然変異が生じることをいいます。これは、人為的に突然変異を起こすことや、環境変異原による突然変異誘発なども含みます。マウス遺伝子に人為的に突然変異を起こすノックアウトマウス法は、その代表例で、特定の遺伝子を標的として破壊することからジーンターゲッティング法(標的遺伝子破壊法)と呼ばれています。今年、ノーベル医学生理学賞がノックアウトマウスの作成法に関して授与され、一躍有名となりました。国際的なプロジェクト研究としては、米国KOMP、欧州連合EuCOMMなどの他、日米欧にまたがるENUマウスミュータジェネシスなどが代表的ですが、今回のセッションではこれらの代表者による最新の動向の紹介のほか、バイオリソースとしての実験用マウスの入手先情報や、関連する国際標準となるべきデータベースの紹介なども合わせて行い、医薬業界における実務においても有用な情報をタイムリーに提供します。なお、このセッションは日英同時通訳がつきます。
(2) 理研シンポジウム「トランスクリプトーム・ワールド」
 近年の、理研を中心とする国際FANTOM(Functional Annotation Of Mammalian cDNA)コンソーシアムによる網羅的cDNA解析や、米国を中心とするENCODEプロジェクトによる集中的なトランスクリプトーム解析を行った成果として、ゲノムは極めて複雑であることが明らかになりました。また、一連の解析で多数のncRNAの存在が発見されたことを契機に、機能分子としてのRNA(機能性RNA)の研究が、巨大な新規研究領域として国際的に認識されるようになりました(=RNA大陸)。さらに、米国のトーマス・ジンジェラス(Thomas Gingeras)博士らは、タイリングアレイ※5を用いたゲノムワイドな解析を行い、ポリA末端※6をもたないRNAなど、クローニングされていないRNAが多量に存在することを明らかにしました。これらの研究をリードし、トランスクリプトーム研究の両雄ともいえる2人の研究者の林崎、ジンジェラス両氏の講演が注目されます。
(3) 国際的な主要学術誌の編集者によるパネルディスカッション
 最近では、学術誌の編集・出版にかかわる環境が激変しています。最終日には、『Nature』グループや『Science』誌の他、国際的に有力な専門誌約10誌が集結し、学術的な著作に関する現状と将来の展望について意見交換するパネルディスカッションを行います。テーマは「オープンアクセスジャーナルのゆくえ」などで、従来の印刷刊行物にとって代わるインターネットや電子情報の普及に伴い、今後の出版や購読、学術誌の将来像はどのようになるかなど、興味深いトピックスについての活発な討論が期待されます。このようなセッションは、世界的にもはじめての試みです。


3. 本学会について
 詳細な情報につきましては、学会ウェブサイトをご参照ください。
(1) 日 時 2007年10月28日(日)〜11月1日(木) (8:00開場)
(主なプログラムは10月31日(水)までの4日間で終了)
(2) 場 所 京都テルサ(京都勤労者総合福祉センター)
京都府京都市南区新町通九条下ル 京都府民総合交流プラザ内
(3) 主 催 独立行政法人理化学研究所、国際哺乳類ゲノム学会(IMGS)
(4) プログラム 本学会ウェブサイトをご参照ください。
(使用言語は英語。一部、日本語同時通訳あり)
(5) 参加費 28,000円(IMGS会員外)
(6) 参加申し込み方法 本学会Webサイトよりお申し込みください。


(問い合わせ先)

独立行政法人理化学研究所
 ゲノム科学総合研究センター 遺伝子構造・機能研究グループ
  プロジェクトディレクター 林ア 良英(はやしざき よしひで)
  IMGC事務局担当  厚井 弘人(あつい ひろと)

Tel: 045-503-9246 / Fax: 045-503-9216
 横浜研究推進部 企画課

Tel: 045-503-9117 / Fax: 045-503-9113

(報道担当)

独立行政法人理化学研究所 広報室

Tel: 048-467-9272 / Fax: 048-462-4715
Mail: koho@riken.jp


<補足説明>
※1 米国KOMP(Knockout Mouse Project)
ヒトゲノム計画やENCODE計画などにつづく、米国国立衛生研究所(NIH)の大型ライフサイエンスプロジェクトとして2006年9月から5ヵ年計画ではじまった。ノックアウトマウス法を用いて遺伝子を個別に破壊したES(胚幹)細胞株をマウス全遺伝子に整備する計画。
※2 欧州EuCOMM(European Conditional Mouse Mutagenesis)
これも、ノックアウト法を基本的に用いたマウスES細胞の大規模ミュータジェネシスプロジェクト。欧州連合(European Commission)の企画として2006年9月から5ヵ年計画ではじまり、米国KOMPなどと強調して重複など避けつつマウス全遺伝子を標的とする。単に破壊するだけでなく、条件付き(conditional)で遺伝子の発現をオン/オフできるように工夫しているところが特徴となっている。
※3 ENUマウスミュータジェネシス
高頻度に点突然変異を誘発する化学物質エチルニトロソウレア(ENU)を用いてマウス個体そのものに直接ミュータジェネシスを施す方法。完全に遺伝子を破壊するのではなく、アミノ酸置換など、ヒト遺伝子疾患により近いタイプの突然変異をもつモデルマウスを開発するために1990年代後半から大規模プロジェクトが日米欧ではじまった。ENUはランダムに変異を誘発し特定の遺伝子のみをターゲットとできないため、当初はヒト疾患と同じような形質を表現型解析から発見していく方法としてはじまった。現在では標的遺伝子にENU誘発変異をもつマウスを確立するシステムも開発されている。
※4 トランスクリプトーム
生物の細胞中に存在する全ての転写産物(RNA)の総体を指す用語。近年、FANTOMやENCODEなどの大規模プロジェクトの活動により、未知のRNAが大量に存在することが示されたことから、特に注目されている研究分野。
※5 タイリングアレイ
タイリングアレイとは、遺伝子の発現情報で、解読済みのゲノムデータから等間隔に(タイル状に)抜き出した塩基配列を検出用プローブとして搭載したDNAチップ。
※6 ポリA末端
RNAポリメラーゼIIによって転写されたRNAには、3'末端に約200塩基のアデニル酸が次々に付加される。この部分をポリA末端と呼ぶ。これまで、ポリA末端が付加されていないRNAはほとんど解析の対象となっていなかった。

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