お知らせ 独立行政法人 理化学研究所
インテル株式会社
日本SGI株式会社
理化学研究所とインテル
高速にペプチドの凝集シミュレーションに成功
- 2006年度ゴードンベル賞を受賞 -
平成18年11月17日
 独立行政法人理化学研究所(略称:理研、理事長:野依 良治、本所:埼玉県和光市広沢)およびインテル株式会社(代表取締役共同社長:吉田 和正/ロビー・スウィヌン、本社:東京都千代田区)は、理論ピーク性能 1ペタフロップス(PFLOPS)注1(1秒間に1,000兆回の演算を行う能力)を実現する分子動力学シミュレーション専用コンピュータ・システム「MDGRAPE注2-3(エムディーグレープ・スリー)」の一部を使ったシミュレーションで、汎用計算機に換算したときの実効計算性能185テラフロップスを達成し、この成果により2006年のゴードンベル賞注3(ピーク性能部門 Honorable Mention)を受賞しました。今回、日本のグループで受賞したのは本グループだけです。この受賞成果を得た分子動力学シミュレーション専用コンピュータ・システムの構築にあたっては、日本SGI株式会社(社長:和泉 法夫、本社:東京都渋谷区)が技術協力をしています。

 ゴードンベル賞は、その年に行われた最高の高性能実用計算、最高の価格あたりの実用計算に与えられる賞で、毎年コンペティション形式で争われます。著名な計算機設計者であるゴードンベル博士(現マイクロソフト社)とヒリス博士(現アプライドマインズ社)の有名な賭けに起源をもち、1987年に始まった権威ある賞であり、今年度からは米国計算機学会(Association for Computing Machinery)が主催しています。受賞者は、毎年米国で行われるスーパーコンピューティング国際会議の席で発表されます。日本からは様々なカテゴリーで今年度を除き過去合計14件の受賞があり、そのうち6件が専用計算機GRAPEファミリによる計算です。

 今回実行したシミュレーションは、酵母菌のプリオンタンパク質と呼ばれている「Sup35」に由来するペプチド(アミノ酸が少数つながったもの)の凝集過程をシミュレーションしたものです。タンパク質・ペプチドの凝集過程は、アルツハイマー病、パーキンソン病、プリオン病などの重要な疾患の発症と関係があると考えられており、注目されています。今回シミュレーションを行ったペプチドは、凝集して針状結晶になることが知られており、タンパク質の凝集過程研究の重要なターゲットとして近年さかんに研究されているものです。

 このペプチドを462個水中に浮かべ、水を含めて1千7百万原子におよぶ大規模な系のシミュレーションを、860テラフロップスのMDGRAPE-3システムで行い、実効性能として370テラフロップスを達成しました。この性能を汎用計算機に換算すると、その半分の185テラフロップスに相当します。今回使ったシステムは、理研の開発した分子動力学シミュレーション専用計算ボード「MDGRAPE-3」を400枚(計4778チップ注4)に、インテル社製の最新のデュアルコア インテル® Xeon®プロセッサー 5150番台(開発コード名: Woodcrest)コアを320個搭載した並列クラスタ(サーバー80台構成、うち16台はSGI Altix XE)と、インテル® Xeon®プロセッサー 3.2GHz(2次キャッシュ1メガバイト)コアを40個搭載した並列クラスタ(サーバー20台構成)を接続した構成です。最新鋭のデュアルコア・プロセッサーを用いることで、専用計算機の利用効率を著しく高めることができました。

 本受賞は、横浜研究所(小川智也所長)ゲノム科学総合研究センター(榊佳之センター長)システム情報生物学研究グループ高速分子シミュレーション研究チームの泰地真弘人チームリーダー、成見哲研究員、大野洋介研究員ら注5の成果です。ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)分野で大規模並列システムの開発・構築で実績豊富な日本SGIが共同研究に基づくシステム構築・運用支援を行い、インテルが最新プロセッサー、対応ソフトウェアの提供、および計算用ソフトウェアの最適化などへの技術支援をしたものです。

<参考>2006/6/19プレスリリース;
http://www.riken.jp/r-world/info/release/press/2006/060619/index.html

 理研では、タンパク3000プロジェクト注6などの支援を一部受けて、本システムを2006年6月に完成させ、本格稼動を開始したところです。今後も本システムを用いた大規模分子シミュレーションを活用し、国内外の諸機関・企業と協力しながら生命科学・工学の進歩に努める所存です。


(本受賞に関する科学的成果について)

独立行政法人理化学研究所
 ゲノム科学総合研究センター
  高速分子シミュレーション研究チーム
   チームリーダー 泰地 真弘人(たいじ まこと)

Tel: 045-507-2508/2510 / Fax: 045-507-2524

(報道担当)

独立行政法人理化学研究所 広報室

Tel: 048-467-9272 / Fax: 048-462-4715
Mail: koho@riken.jp

インテル株式会社
 広報室 青木

Tel: 03-5223-9100(代表)

日本SGI株式会社
 広報 菊池、中西

Tel: 03-5488-1834(広報直通) / Fax: 03-5420-7201


<補足説明>
注1) フロップス(FLOPS)=1秒間に何回浮動小数点演算ができるかを表す単位。
注2) MDGRAPE:東京大学が1989年から天文シミュレーション計算機GRAPEを開発。その後、理研は同システムをベースに分子動力学専用システムとしてMDM(MDGRAPE-2)を開発、2006年6月にはペタフロップスの専用計算機MDGRAPE-3を完成させている。
注3) ゴードンベル賞には、4つの部門があるが、毎年全ての部門で表彰が行われるわけではなく、表彰するに値する論文がある時に、表彰が行われる。4つの部門は、次のとおり。
  • Peak performance based on sustained floating point operations per second
  • Price per performance ratio measured in sustained flop/s per dollar of acquisition cost
  • Special accomplishment for innovation in scalable implementation
  • Scalability achieved through language construct
注4) 全部でMDGRAPE-3チップ4,800個であるが、内22個不良があり、現在4,778個となっている。なお、不良チップがあってもそれを使わずに正しく計算できるようになっている。
注5) 本成果は、以下の研究者の共同研究によるもの。
理化学研究所ゲノム科学総合研究センターシステム情報生物学研究グループ
高速分子シミュレーション研究チーム

泰地真弘人チームリーダー成見哲研究員大野洋介研究員沖本憲明研究員末永敦研究員二木紀行研究員野内涼子テクニカルスタッフ
理化学研究所フロンティア研究システム時空間機能材料研究グループ
次世代ナノパターニング研究チーム 藤川茂紀副チームリーダー、古石貴裕研究員
理化学研究所情報基盤センター 姫野龍太郎センター長
インテル株式会社 ソフトウェア & ソリューション統括部 統括部長 池井満
注6) タンパク3000プロジェクト:文部科学省が2002年4月から開始した国家プロジェクト
「新世紀重点研究創生プラン(RR2002)」のひとつとして推進しているもので、タンパク質のメカニズムも含めて、そのタンパク質の構造・機能を解明するポスト・ゲノムの中核的取り組み。


<商標登録>
インテル、Intel、Core, Xeonは、米国およびその他の国におけるインテル コーポレーションまたはその子会社の商標または登録商標です。
SGI およびSGI のロゴは日本SGI 株式会社の登録商標です。
その他の商標については商標の所有者に所有権が属しています。


<各社紹介>
● 独立行政法人理化学研究所

独立行政法人理化学研究所は、科学技術(人文科学のみに係るものを除く)に関する試験及び研究等の業務を総合的に行うことにより、科学技術の水準の向上を図ることを目的とし、日本で唯一の自然科学の総合研究所として、物理学、工学、化学、生物学、医科学などにおよぶ広い分野で研究を進めています。研究成果を社会に普及させるため、大学や企業との連携による共同研究、受託研究等を実施しているほか、知的財産権等の産業界への技術移転を積極的に進めています。
http://www.riken.jp/index_j.html
● インテル株式会社

シリコンの技術革新で世界をリードするインテルは、人々の仕事と生活をさらに豊かにする先進的な技術と製品を開発、イニシアティブを推進していきます。インテルに関する情報は、http://www.intel.co.jpで入手できます。
● 日本SGI株式会社

日本SGIは、最先端科学の研究機関をはじめHPC市場の大規模並列システムの構築で、豊富な経験と技術を持ちます。そしてリサーチ&サイエンス分野のソリューション・ビジネスにおいて、2005年7月に分子動力学シミュレーション分野に進出し、理研と共同で分子動力学シミュレーション専用機を販売しています。
(日本SGIのリサーチ&サイエンスの情報は、http://www.sgi.co.jp/solutions/science/


今回のシミュレーションのスナップショット
図1 今回のシミュレーションのスナップショット
実際の系はこれより大きく、またすきまに見えるところには水分子がぎっしり詰まっている。(背景の雲はイメージ)


MDGRAPE-3システム全景写真
図2 今回の計算に用いたMDGRAPE-3システム全景


今回の賞状
図3 今回の賞状


泰地チームリーダー写真
図4 賞状を手にする泰地チームリーダー

[Go top]
copyright