脳の発達「臨界期」
脳科学総合研究センター 神経回路発達研究チーム
チームリーダー
ヘンシュ 貴雄
一般的に大人が外国語を習得するのは難しいのですが、小さな子供たちはそれほど苦もなく習得することができます。このように、若い脳では経験に応じて神経回路の組み換えや再構成を行う能力(可塑性)が高いのですが、この能力は大人になるにつれて衰えていきます。ヒトをはじめとする哺乳類の中枢神経系は、出生時には形態的にも機能的にも未熟です。特に生後初期の大脳皮質は、自己の経験や環境に応じて精緻化し、「臨界期」と呼ばれる限られた時期を過ぎると神経回路網の柔軟性は急速に失われます。これらの現象について、詳細なメカニズムはほとんど分かっていませんでした。
近年、大脳皮質内の特有な抑制系を操作することにより、臨界期を本来より早めたり、可塑性の失われた動物に臨界期を誘導したりと、自由に操作できるようになりました。従って、臨床や教育への応用が期待される一方、それに対する注意も必要です。臨界期の仕組みが明確になると、大人の脳に可塑性を戻すことも可能になりますが、臨界期の再開に伴う生物学的、臨床的、倫理的危険性について十分考慮しながら研究活動を展開しなければなりません。本研究の成果は、脳の正常な発達手法や、生涯全体にわたるリハビリテーション、再生・移植した脳組織の損傷回復、学習の向上に役立つものと期待されます。
新元素(113番元素)の合成
フロンティア研究システム 重イオン加速器科学研究プログラム
先任研究員
森田 浩介
物質の構成要素である原子は、原子核を中心に電子が飛び回っている構造をしており、原子核は正電荷を持つ陽子と電気的に中性な中性子からなります。原子核に含まれる陽子の数は原子番号と呼ばれ、元素の周期表は原子番号の変化による元素の性質の変化に周期性があることを教えており、全ての元素は周期表の1席を占めます。
現在、自然界では94番元素(プルトニウム)まで確認されています。それ以上の原子番号の元素は、原子核反応によって人工的に合成が行われ、それを確認することによって発見がなされてきました。私たちは、これまで確認されている元素よりさらに大きな原子番号の113番元素の発見に成功しました。
今回発見したのはわずか1原子でしたが、今後データを補強すれば、113番元素の命名権が得られる可能性があります。また、今回の発見は原子番号114の発見にも見通しを与えるものです。生成確率予測では、113番元素の原子核が生成される確率よりも、114番元素の原子核が生成される確率の方が高いというものもあります。これは、元素の合成にさらなる一歩を期待させるものです。