独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)は、理研生命分子システム基盤研究領域(横山茂之領域長)が所有する世界最大規模の「NMR(核磁気共鳴)※1施設」と、試料の調製からタンパク質の立体構造の決定までを一貫して行う「NMR立体構造解析パイプライン※2」を活用する2010年度第1次外部利用課題を決定しました。
決定した利用課題は、文部科学省「先端研究施設共用促進事業※3」を対象としたもので、日本ハム株式会
社の「低温活性酵素を利用した低温増殖食品微生物の制御」など8件です。
利用課題の公募は、2010年5月21日(金)から2010年6月18日(金)までの期間で実施し、「先端研究施設共用促進事業」を対象とした利用課題
にトライアルユース3件を含め8件の応募がありました。2010年7月12日(月)に開いたNMR課題選定委員会※4の
審査で、応募のあった8件すべてを採択しました。
今後、採択者と個別に打合せを行い、準備の整った利用課題から順次実施していきます。
経緯
理研生命分子システム基盤研究領域のNMR(核磁気共鳴)施設(図1)は、タンパク質の立体構造と機能の解析を行う高性
能NMR装置40台を備えた、世界最大の集積台数を誇る施設です。
NMRは、有機化合物や生体高分子などの構造や性質を調べる分析装置の1つです。特にNMRを使った分析は、溶液という生体と同じ生理的な条件
で、タンパク質の動的な高次構造や分子間相互作用の解析を行うことができるという特徴があります。このため、ポストゲノム研究として注目さ
れるタンパク質の立体構造解析では、X線結晶構造解析と並ぶ有効な方法となっています。
理研では、この施設を用いて、文部科学省の委託事業「タンパク3000プロジェクト」の「網羅的解析プログラム」で、年間約300個のタンパク
質構造のNMR解析を行ってきた実績を誇っており、この解析能力や効率が国際的に高い評価を得てきました。
2007年度以降は、本プロジェクトでの技術開発、施設整備、人材育成、解析体制の構築などの成果を発揮しています。その中でも、特にNMR立
体構造解析パイプライン(図2)を活かすことは、今後のわが国のライフサイエンス研究のステップアップに貢献することに
なると評価されてきました。このため、新たなNMR施設の活用推進を展開するため、内外の有識者による「NMR施設検討会」で議論するとともに、
2006年10月に募集したモニターの利用結果を検討し、外部開放に関する詳細な制度設計を行いました。
さらに文部科学省は、2007年度から開始した新規事業の「先端研究施設共用イノベーション創出事業」の参画機関に理研の同施設を採択し、国
の支援のもと、産業界によるイノベーションの創出に向け広く活用していくこととなりました。そして、2007年8月24日(金)から、「先端研究施
設共用イノベーション創出事業」、「成果占有利用」、「成果非占有利用」の3形態による外部利用の受付を開始し、2007年度には、それぞれ15件
、4件、8件の利用課題が実施され、2008年度には、それぞれ11件、4件、10件の利用課題が新たに実施されています。2009年度からは「先端研究施
設共用促進事業」に移行し、「成果占有利用」、「成果非占有利用」それぞれ6件、5件、9件の利用課題が新たに実施されています。
また、今回の利用課題公募、選定は、公立大学法人横浜市立大学の「超高磁場超高感度NMR装置利用による化合物のスクリーニング」と連携し
て実施しています。
決定した採択課題と実施機関
文部科学省「先端研究施設共用促進事業」対象利用課題
| 課題名 |
利用機関名 |
代表者職氏名 |
| 低温活性酵素を利用した低温増殖食品微生物の制御 |
日本ハム株式会社 |
藤村達也 |
| 毒素蛋白質・抗毒素蛋白質複合体の立体構造解析よりその特異的認識機構の解明 |
室町ケミカル株式会社 |
河原政人 |
| 微量標準試料作成への適用性確認 |
沖縄科学技術振興センター |
小野寺 健一 |
| ポリセオナミド模倣ペプチドの合成研究 |
東京大学 |
松岡 茂 |
| 巨大ポリ環状エーテル化合物の構造決定 |
東京大学 |
佐竹真幸 |
| 生体反応を模倣した合成系と機能未知テルペノイド合成酵素 遺伝子から得られる新奇化合物の同定 |
東京農工大学 |
川出 洋 |
| 高磁場NMR利用による高分子量タンパク質分子形態変化解析技術の高精度化 |
広島大学 |
楯 真一 |
| 枯草菌細胞壁溶解酵素阻害タンパク質の立体構造解析及び相互作用解析 |
信州大学 |
新井 亮一 |
採択の経過と利用開始の日程
第1回募集開始 2010年5月21日(金)
第1回募集締切 2010年6月18日(金)
利用者受入開始 2010年8月~