独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)の生命情報基盤研究部門(豊田哲郎部門長)は、「ゲノムの設計図を合理的にデザインする技能」をウェブ上で競いあう世界初の国際科学技術コンテストである「合理的ゲノム設計※1コンテスト(GenoCon)」を、2010年5月25日から9月30日まで理研サイネス※2の情報基盤上で開催します。
GenoConは、理研サイネスに統合されているゲノムデータやタンパク質データなどの公開データベース群を活用して、植物の生理機能を高めるためのDNA配列を参加者に合理的に設計してもらうコンテストです。第1回目は、『空気中からホルムアルデヒドを除去して効果的に無毒化する機能を植物(シロイヌナズナ)に付与する』という課題でゲノムデザインを募集します。参加者は理研サイネスが提供するバーチャルラボを使ってウェブブラウザ上でプログラミングを行うことで、DNA配列を合理的にデザインして提出します。参加者が設計したDNA配列は、理研などの専門の研究機関が法令などで定められた安全管理基準の下で、シロイヌナズナに導入してその機能を実験的に検証します。
GenoConは、オープン形式で共通の課題解決に取り組む「公開型最適化研究(オープン・オプティマイゼーション)※3」という連携研究の仕組みと情報基盤を新たに提供し、バイオマス工学やグリーンイノベーション分野の発展に貢献します。コンテスト形式を採用することで、世界中の研究者から合理的ゲノム設計の手法とプログラムを募集して蓄積し、クリエイティブコモンズ※4のライセンスの下で積極的に共有化していくことで、情報合成生物学※5を発展させるための集合知を形成していきます。
また、このコンテストでは、国内外の研究者や大学生に参加を呼びかける「研究部門(本選)」に加えて、高校生でも参加できる「高校生部門」も用意しました。GenoConは、ゲノム科学、環境科学、バイオインフォマティクスや情報科学など、幅広い分野の専門知識と安全管理に詳しい人材の育成を目指すとともに、ROBOCON※6のように科学技術や知識を競い合うことで若者に知的興奮と先端科学を楽しく学ぶ機会を提供し、次世代を担う科学技術人材の育成に貢献します。
GenoConは、2010年5月25日から、GenoCon公式ホームページ の利用規約に従いエントリーが可能になります。
概要
グリーンイノベーションでは、石油などの化石資源に依存した有用物質生産から、再生可能な資源であるバイオマス資源への転換が求められています。特に、化石資源の少ないわが国では、将来海外の資源に頼ることなく有用物質の生産を行っていくために、多様な生物種のゲノム情報を資源として活用し、資源増産につながる機能性植物を合理的ゲノム設計(Rational Genome Design)によって創出する技術の進展が期待されています。
このため、合理的ゲノム設計学についての科学知識、標準技術、安全管理基準などの幅広い知識を身に付けた人材を長期的な視野に立って育成していく必要があります。ゲノム設計(デザイン)は建築に例えると「建物の設計図を描く作業」に相当し、ゲノムの設計図を合理的にデザインすることができる次世代の科学技術人材は、いわば「ゲノム設計士(ゲノムデザイナー)」といえます。
理研生命情報基盤研究部門は、ゲノム設計士の育成効果を期待し、「ゲノムの設計図を合理的にデザインする技能」を競いあう国際科学技術コンテスト「合理的ゲノム設計コンテスト(GenoCon)」を企画しました。GenoConは、理研サイネスにセマンティックウェブ形式※7で収録されているゲノムデータやタンパク質データなどの公開データベース群を活用して合理的にデータ処理を行うプログラムを作成することにより、植物の生理機能を高めるための最適なDNA配列を参加者に設計してもらうコンテストです。第1回目は、『空気中からホルムアルデヒドを除去して効果的に無毒化する機能をシロイヌナズナに付与する』という課題で、DNA配列を設計してもらいます。参加者は理研サイネスが提供するバーチャルラボを使ってウェブブラウザ上でプログラミングを行うことでDNA配列を合理的に設計して提出します(図1)。参加者が設計したDNA配列は、理研などの専門の研究機関が法令などで定められた安全管理基準の下で、シロイヌナズナに導入してその機能を実験的に検証します。コンテストの結果は、設計手法の評価と実験的評価の両方を総合的に審査し、それに基づいて2011年6月頃に理研サイネス上で発表と表彰を行います。
GenoConは、オープン形式で共通の課題解決に取り組む「公開型最適化研究(図2)」という連携研究の仕組みと情報基盤を新たに提供し、バイオマス工学やグリーンイノベーション分野の発展に貢献します。コンテスト形式を採用することで、世界中の研究者から合理的ゲノム設計の手法とプログラムを募集して蓄積し、クリエイティブコモンズのライセンスの下で積極的に共有化していくことで、情報合成生物学を発展させるための集合知を形成していきます(図3)。
参加方法
GenoConでは、国内外の研究者や大学生に参加を呼びかける「研究部門(本選)」と、高校生でも参加できる「高校生部門」を用意しました。参加期間は2010年5月25日から9月30日までで、参加希望者は、合理的ゲノム設計コンテストの公式ホームページから理研サイネスのアカウントを取得の上、エントリーを行います。開催概要、募集要項、利用規約、コンテスト課題などの詳細は、公式ホームページに掲載しています。海外向けには英語版の公式ホームページを使って参加を呼び掛けます。
今後の期待
理研生命情報基盤研究部門では、ゲノム科学研究でこれまで蓄積されてきた膨大なデータの付加価値を高めることで「合理的ゲノム設計基盤システム」を構築しています。さらに、このシステムを有用生物資源の創造へとつなげることで、ゲノム科学研究の成果を社会に還元することが可能になります。この合理的ゲノム設計基盤システムは、理研サイネスと呼ばれる生命情報基盤をベースに構築されており、理研のバイオマス工学研究事業など実際の研究現場で活用されます。今回、この情報基盤システムの一部の機能を公開してGenoConを開催することで、世界中の研究者からゲノム設計の手法やプログラムなどを集合知として集め、実際の研究現場の活動をさらに加速させる相乗効果も期待できます。
GenoConは、科学雑誌などが公開している最新の知識情報を、合理的ゲノム設計という形で伝え合う新しいタイプの学術交流の場といえます。また、設計思想をプログラム(アルゴリズム)で合理的かつ客観的に表現させることで、「設計技法の検証と再利用」の循環を促します。さらに、設計用のプログラムを、オープンソースプログラムとして蓄積、発展させていくことで、知識の共有化が実現します。
GenoCon「研究部門(本選)」は、ゲノム科学、環境科学、バイオインフォマティクスや情報科学など、幅広い分野の専門知識と安全管理に詳しい人材の育成が期待できます。将来的には、「ゲノム設計士」という資格制度の創設を目指していきます。「高校生部門」は、ROBOCONのように、若者に知的興奮と先端科学を楽しく学ぶ機会を提供し、科学技術に対する興味と理解を深めるとともに、次世代を担う科学技術人材の育成に貢献します。GenoConの継続的な開催のために、企業スポンサーや個人からの寄付金を募集していくことも将来的に予定しています。