独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)は、理研生命分子システム基盤研究領域(横山茂之領域長)が保有する世界最大規模の「NMR(核磁気共鳴)※1施設」と、試料の調製からタンパク質の立体構造の決定までを一貫して行う「NMR立体構造解析パイプライン※2」を活用する2009年度第2次外部利用課題を決定しました。
採択した課題は、文部科学省「先端研究施設共用促進事業※3」を対象とした利用課題で、大陽日酸株式会社の「ウイルス天然変性蛋白質の安定同位体標識NMR解析」など8課題です。
利用課題の公募は、2009年9月14日(月)から2009年10月30日(金)まで行い、「先端研究施設共用促進事業」を対象とした利用課題にトライアルユース3課題を含め8課題の応募がありました。2009年11月30日(月)に開いたNMR課題選定委員会※4による審査の結果、応募のあった8課題すべてを採択しました。
今後、採択者と個別に打合せを行い、準備の整った利用課題から順次実施していきます。
なお、2009年度第1次外部利用課題5課題と合わせ、本年度採択課題は13課題(トライアルユース7課題、成果非占有利用6課題)となります。
経緯
理研生命分子システム基盤研究領域のNMR(核磁気共鳴)施設(図1)は、タンパク質の立体構造と機能の解析を行う高性能NMR装置40台を備えた、世界最大の集積台数を誇る施設です。
NMRは、有機化合物や生体高分子などの構造や性質を調べる分析装置の1つです。特にNMRを使った分析は、溶液という生体と同じ生理的な条件で、タンパク質の動的な高次構造や分子間相互作用の解析を行うことができるという特徴があります。このため、ポストゲノム研究として注目されるタンパク質の立体構造解析では、X線結晶構造解析と並ぶ有効な方法となっています。
理研では、この施設を用いて、平成14年度~18年度に行われた文部科学省の委託事業「タンパク3000プロジェクト」の「網羅的解析プログラム」で、年間約300のタンパク質構造のNMR解析を行ってきた実績を誇っており、この解析能力や効率が国際的に高い評価を得てきました。
2007年度以降は、本プロジェクトでの技術開発、施設整備、人材育成、解析体制の構築などの成果を発揮しています。その中でも、特にNMR立体構造解析パイプライン(図2)を活かすことは、今後のわが国のライフサイエンス研究のステップアップに貢献することになると評価されてきました。このため、新たなNMR施設の活用推進を展開するため、内外の有識者による「NMR施設検討会」で議論するとともに、2006年10月に募集したモニターの利用結果を検討し、外部開放に関する詳細な制度設計を行いました。
さらに、文部科学省が2007年度から開始した新規事業の「先端研究施設共用イノベーション創出事業【産業戦略利用】」の参画機関に理研の同施設を採択し、国の支援のもと、産業界によるイノベーションの創出に向け、NMR立体構造解析パイプラインの活用を実施していくこととなりました。具体的には、2007年8月24日(金)から、「先端研究施設共用イノベーション創出事業」、「成果占有利用」、「成果非占有利用」の3形態による外部利用の受付を開始し、2007年度には、それぞれ15件、4件、8件の利用課題が実施され、2008年度には、それぞれ11件、4件、10件の利用課題が新たに実施されています。
また、今回の利用課題公募、選定は、「先端研究施設共用イノベーション創出事業【産業戦略利用】」の採択を同時に受けた公立大学法人横浜市立大学の「超高磁場超高感度NMR装置利用による化合物のスクリーニング」と連携して実施しています。
なお、「先端研究施設共用イノベーション創出事業【産業戦略利用】」は、一部制度を見直しを行い、2009年度から「先端研究施設共用促進事業」になりました。
決定した採択課題と実施機関
文部科学省「先端研究施設共用促進事業」対象利用課題
| 課題名 |
利用機関名 |
代表者職氏名 |
| ウイルス天然変性蛋白質の安定同位体標識NMR解析 |
大陽日酸株式会社 |
折笠 敬 |
| 安定同位体標識NMR校正用標準蛋白質開発の為の、高感度高分解能NMRによる測定・評価 |
RECマテリアルズ(株) |
丸山 渉 |
| 受託合成核酸オリゴマーの立体構造を含めた品質管理へのNMRの応用の検討 |
北海道システム・サイエンス(株) |
北村 智 |
| LINE由来逆転写酵素の発現とそのターゲットRNAとの相互作用解析 |
千葉工業大学 |
河合剛太 |
| RNAの構造スクリーニングおよび構造クラスタリング手法の開発 |
千葉工業大学 |
河合剛太 |
| 位置選択的に安定同位体標識された長鎖RNAのNMRシグナル解析手法の開発 |
大陽日酸株式会社 |
折笠 敬 |
| 巨大炭素鎖を持つ特異な天然有機分子の構造研究 |
慶應義塾大学 |
上村大輔 |
| Mucor hiemalis由来エンドβ-N-アセチルグルコサミニダーゼが形成する糖鎖の構造解析 |
財団法人野口研究所 |
山ノ井孝 |
採択の経過と利用開始の日程
- 第2回募集開始
- 2009年9月14日(月)
- 第2回募集締切
- 2009年10月30日(金)
- 利用者受入開始
- 2009年12月~