独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)は、米国ヘリコスバイオサイエンス社※1(スティーブ・ロンバルディ社
長)と2009年9月4日に、たった1つの分子から、DNAを解析することが可能なシーケンサー(高速塩基配列決定装置)
「HeliscopeTM」(ヘリスコープ)※2を、わが国で初めて導入しました。今後、RNA新大陸※3
の新たな探索や、RNAを含む生体分子の制御ネットワーク解析の加速など、RNA解析手法の高度化を目標とした共同研究を本格化します。
この共同研究は、理研オミックス基盤研究領域(OSC、林崎良英領域長)に、DNAシーケンサーの「HeliscopeTM」を導入し、OSCが独自に開発し
た、生体内で、いつ、どこで、どんなRNAが、どれだけ発現しているかをゲノムワイドに解析できるCAGE(Cap Analysis of Gene Expression
)法※4の高度化に取り組むものです。「HeliscopeTM」は、CAGE法に必要不可欠な極微量分析が可能という性能などを持っており
、両技術の相乗効果により、より少ないサンプルで、極めてまれなRNAを定量的に調べることが可能なため、RNAを含む生体分子の制御ネットワークの研究に弾
みがつくものと期待されます。
これまでもOSCは、ゲノムシーケンサー FLX(ロシュアプライドサイエンス社)、SOLiD(アプライドバイオシステムズ社)、ゲノムアナライザー(イルミナ
社)といった最新の次世代シーケンサー※5を合計5台導入して、CAGE法を含むさまざまな手法による研究に活用してきまし
た。今回、新たにHeliscopeTMを導入することは、文部科学省の「革新的タンパク質細胞解析研究イニシアティブ革新的細胞解析研究プログラム(
セルイノベーション)」における次世代シーケンス拠点※6として、より高度な技術を産学官の研究機関に提供するために欠
かせないものです。今後もHeliscopeTMに限らず、さまざまなシーケンサーの利用を展開し、得られる研究成果だけでなく、シーケンサーの性能評
価の視点も含めて、情報を広く公開していきます。本研究のうちHeliscopeTM導入に関しては、文部科学省「革新的タンパク質細胞解析研究イニシ
アティブ・革新的細胞解析研究プログラム(セルイノベーション)」シーケンス拠点整備の一環として行います。
背景
理研オミックス基盤研究領域(OSC)は、2003年にCAGE法という独自のRNA解析技術を開発し、2005年には、「RNA新大陸」の発見を報告しました。OSCは、こ
れらの研究を進めるため、2006年からいわゆる次世代シーケンサー(高速塩基配列決定装置)を導入してCAGE法に適用し、転写制御因子の制御ネットワークを
解明する方法を打ち立て、細胞を自在に変換する技術開発に挑戦しています(2009年4月20日プレス発表)。
一方、米国のヘリコスバイオサイエンス社は、わずか1分子のDNAでも、増幅することなく塩基配列の決定ができるという独自の新技術tSMSTM
(true Single Molecule Sequencing)を開発し、この技術を適用したDNAシーケンサー「HeliscopeTM」(図1)を、2007年末か
ら供給開始しました。このシーケンサーは、極めて高速にDNAの配列を解読できるだけでなく、測定するDNAの量がわずか1分子でも機能を発揮するため、これま
でのように、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を活用してDNAを増幅する必要がないという点に特徴があります。
研究内容
OSCは、これまで各種の次世代シーケンサーを導入して(図2)、CAGE解析を行う技術を確立してきました。しかし、これらの次世代シ
ーケンサーは、PCR法により鋳型となるDNAを増幅してから塩基配列を決定します。このため、CAGE法に適用した場合、DNA配列により増幅度合いが異なるため、
最終的な発現量の定量性に問題が残っていました。
一方HeliscopeTMは、1分子のDNAを増幅することなく、直接塩基配列を解読することができます。従って、CAGE法とHeliscopeTMの組
み合わせると、RNAの発現量をより正確な定量性で調べることが可能になります。HeliscopeTMのスループット(1回の解析で得られる塩基配列の数
)は、ほかのシーケンサーと比較して際立って大きく、一度に5億個から25億個 のCAGEタグの塩基配列を得ることが期待できます。これは、細胞500個の中から
、わずか1分子しか発現していないRNAのCAGEタグを捉えて観測するという、極めて微量な分析が可能であることを意味します。さらに、
HeliscopeTMは1分子検出であるため、解析に必要なサンプルの量を大幅に減らすことができ、神経細胞など希少な細胞についてRNA発現量の解析が
可能になることも大きな利点となります。
OSCとヘリコスバイオサイエンス社は、2008年から共同研究開発を開始し、CAGE法をHeliscopeTMに適用するための基本的な技術を確立し、これ
までより格段に正確な定量的発現解析が可能になるということを確認してきました(図3)。今回、本格的にHeliscopeTMを導
入することで、より多くのサンプルを一度に処理するための技術や、微量試料からのサンプル調製方法の開発、高収率な塩基配列出力を得るための改善を行う
ことで、RNA発現量をより定量的、高速かつ高感度で調べることが可能となります。その結果、RNAを含む転写制御因子の制御ネットワークの解明、細胞を自在
に変換する技術開発が加速されると期待できます。
また、OSCは、文部科学省の「革新的細胞解析研究プログラム(セルイノベーション)」における次世代シーケンス拠点として機能しており、今後、同プロ
グラムに参加している研究グループの求めに応じて、HeliscopeTMを用いた高度なCAGE解析データを提供します。さらに、産学官を問わず技術支援
も広く行っており、受益者負担の原則により、このデータを広く産学官の研究機関へ提供することが可能になります。
研究体制
- 研究拠点:
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- HeliscopeTMを活用したCAGE解析の担当
理研オミックス基盤研究領域
〒230-0045 神奈川県横浜市鶴見区末広町1-7-22
- CAGE法を適用するための試薬、機器などの調整を担当ヘリコスバイオサイエンス社(Helicos BioSciences Corporation)
One Kendall Square
Mail/Deliveries: Building 700
Reception Desk: Building 200
Cambridge, MA 02139
- 責任者:
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理研オミックス基盤研究領域 林崎良英領域長ヘリコスバイオサイエンス社 スティーブ・ロンバルディ社長兼CEO(Steve Lombardi, President and CEO)
お問い合わせ先
独立行政法人理化学研究所 オミックス基盤研究領域
領域長 林﨑 良英(はやしざき よしひで)
Tel: 045-503-9222 / Fax: 045-503-9216
横浜研究推進部 企画課
Tel: 045-503-9117 / Fax: 045-503-9113
報道担当
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