独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)は、明治大学の「低分子量化硫酸化多糖の機能性食品への応用」、仙味エキス株式会社の「イワシ由来ペプチド製造過程における析出成分の構造解析及び成分安定化方法の開発」など先端研究5課題を採択し、試料の調製からタンパク質の立体構造の決定までを一貫して行う「NMR立体構造解析パイプライン ※1」などを活用して、順次、研究を開始していきます。
同先端研究は、生命分子システム基盤研究領域(横山茂之領域長)が所有する世界最大規模の「NMR(核磁気共鳴)※2施設」と「NMR立体構造解析パイプライン」の外部活用を促進する文部科学省の「先端研究施設共用促進事業※3」の対象になる研究で、2009年度第1次外部利用者に該当します。
文部科学省は、2007年にイノベーションの創出を目指して開始した「先端研究施設共用イノベーション創出事業」の対象範囲を拡大し、2009年から学術的な研究分野も対象として「先端研究施設共用促進事業」を開始しました。今回の5課題は、「先端研究施設共用促進事業」で初めて実施するものです。
理研は2009年5月7日(木)から2009年6月5日(金)まで利用課題を公募し、応募のあったトライアルユース※4の4件を含めた5件をNMR課題選定委員会※5で審査し採択しました。
経緯
理研生命分子システム基盤研究領域が所有するNMR(核磁気共鳴)施設(図1)は、タンパク質の立体構造と機能の解析を行う高性能NMR装置40台を備えた、世界最大の集積台数を誇る施設です。
NMRは、有機化合物や生体高分子などの構造や性質を調べる分析装置の1つです。特にNMRを使った分析は、溶液という生体と同じ生理的な条件で、タンパク質の動的な高次構造や分子間相互作用の解析を行うことができるという特徴があります。このため、ポストゲノム研究として注目されるタンパク質の立体構造解析の分野では、X線結晶構造解析と並ぶ有効な方法となっています。
理研はこの施設を用いて、文部科学省の委託事業「タンパク3000プロジェクト」の「網羅的解析プログラム」で、年間約300のタンパク質構造のNMR解析を行ってきた実績を誇っており、この解析能力や効率が国際的に高い評価を得てきました。
2007年度以降は、本プロジェクトでの技術開発、施設整備、人材育成、解析体制の構築などを利用した成果を挙げています。その中でも、特にNMR立体構造解析パイプライン(図2)を活かすことは、今後のわが国のライフサイエンス研究のステップアップに貢献することになると評価されてきました。このため、新たなNMR施設の活用推進を理研外部へ展開するため、内外の有識者による「NMR施設検討会」でその活用方法を議論するとともに、2006年10月に募集したモニターの利用結果と意見を検討し、外部開放に関する詳細な制度設計を行いました。
さらに文部科学省は、2007年度から開始した新規事業の「先端研究施設共用イノベーション創出事業」の参画機関に理研の同施設を採択し、国の支援のもと、産業界によるイノベーションの創出に向け広く活用していくこととしました。そして、2007年8月24日(金)から、「先端研究施設共用イノベーション創出事業」、「成果占有利用」、「成果非占有利用」の3形態による外部利用の受付を開始し、2007年度には、それぞれ15件、4件、8件の利用課題が、2008年度には、それぞれ11件、4件、10件の利用課題を実施しています。
2009年度からは、産業界の利用も促進しつつ、学術的な研究分野も対象として「先端研究施設共用イノベーション創出事業」を「先端研究施設共用促進事業」に移行しました。
研究をスタートさせる5つの実施機関と課題
明治大学の「低分子量化硫酸化多糖の機能性食品への応用」(代表者 室田明彦氏)、仙味エキス株式会社の「イワシ由来ペプチド製造過程における析出成分の構造解析及び成分安定化方法の開発」(代表者 二宮聖生氏)、室町ケミカル株式会社の「毒素タンパク質・抗毒素タンパク質複合体の立体構造解析よりその特異的認識機構の解明」(代表者 河原政人氏)、住友化学株式会社の「高分子へのH-C TROSYの応用」(代表者 岡田 明彦氏)、財団法人野口研究所の「NMRスペクトルを用いた糖結合型シクロデキストリン分子のドラッグキャリアとしての機能評価および解析」(代表者 山ノ井 孝氏)。