広報活動

Print

2013年4月2日

独立行政法人理化学研究所
公益財団法人高輝度光科学研究センター

SPring-8の明るさ3倍に

-超高輝度な次世代リング型放射光光源の実現へ重要な成果-

今回提案した方式による水平エミッタンスの低減効果の図

今回提案した方式による水平エミッタンスの低減効果

理研は兵庫県の播磨科学公園都市に、X線自由電子レーザー(XFEL)施設「SACLA」を所有しています。1000兆分の1秒という短時間に明るく輝き、物質の原子レベルの動きも捉えることができます。ただし、エネルギーが大きいため試料が破壊されてしまい、長時間じっくりと観察するわけにはいきません。じっくり観察するにはSACLAの隣にある「SPring-8」などのリング型放射光施設が向いているのですが(といってもSACLAの1000倍、1兆分の1秒程度ですが…) 、現状は輝度(明るさ)が十分ではありません。生物試料などを破壊せず、またXFELと同様に結晶化せずにそのまま観察できる明るい放射光光源が求められています。

高輝度のリング型放射光光源を実現するには、輝度を制限する水平エミッタンスを現状から大幅に低減する必要があります。その1つの可能性として、水平エミッタンスを輝度への影響が小さい電子ビーム進行方向のエミッタンスに交換することで低減する方法が知られていましたが、従来の磁場を用いる方式ではさまざまな問題があり、SPring-8などの既設の放射光光源への導入は困難でした。

そこで研究チームは、これらの問題を克服するため、従来の方式とは全く異なる、高周波電場を用いる方式を考案しました。高周波電場を発生する空洞(カップリング空洞)を1対置き、その間の水平振動の位相を半周期になるように調整して、磁場の効果を2つの空洞の間に閉じ込めました。これにより電場の効果だけを足し合わせることに成功し、この手法をSPring-8に導入したときのシミュレーションでは、現状の3倍の輝度が得られることを確認しました。これは電場を使ったエミッタンス交換はできないという長年の定説を55年ぶりに覆すもので、学術的にも大きな発見です。

今回考案した手法は、既設の放射光光源の性能向上だけでなく、XFELとの協調利用により、ものづくりに必要となる多くの情報が得られると期待される次世代リング型放射光光源の実現にも大いに貢献します。

独立行政法人理化学研究所
放射光科学総合研究センター XFEL研究開発部門
部門長 田中 均