広報活動

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2011年10月25日

独立行政法人 理化学研究所

ついに植物ホルモン「オーキシン」生合成の主経路を解明

-農作物やバイオマスなどの増収研究に向けて大きな一歩-

同じ経路に存在する2種類のIAA生合成酵素(TAA1とYUCCA)の遺伝子を同時に発現させることにより、IAA合成量が著しく増加して側根が顕著に成長したシロイヌナズナ(右端)

植物の成長や形態形成に中心的な役割を果たす植物ホルモンに「オーキシン」があります。植物の成長を制御する仕組みを理解するうえでオーキシンの生合成経路の解明は重要であり、長年にわたる生物学の中心的課題でした。「インドール-3-酢酸(IAA)」がオーキシンとして1930年代に最初に同定されて以来、これまでIAAを中心にオーキシンの研究が進められてきましたが、IAAの作用機構において植物がどのような経路でIAAを合成しているかという根本的な課題は解明されていませんでした。

植物科学研究センター生長制御研究グループを中心とする国際共同研究グループは、シロイヌナズナを実験材料にして、オーキシン生合成経路を解明するカギとなる「IAA生合成中間物質」を高精度な質量分析計を用いて分析しました。この結果、これまで異なるIAA 生合成経路に存在すると考えられていた「TAA1」および「YUCCA」の2つのIAA生合成酵素が、同じ経路に存在することを突き止めました。このことから、植物はアミノ酸のトリプトファンから主にTAA1 とYUCCAの働きでIAAを合成することが明らかになりました。

この成果により、 IAA による植物の形態形成、環境応答機構の解明が進むと考えられます。また、人工的に合成されたオーキシンは除草剤や成長・発根促進剤などとして農業分野で非常に重要なことから、今回、解明した経路が主要な農薬開発のターゲットになると想定されます。さらにTAA1遺伝子やYUCCA遺伝子を制御して IAA内生量をコントロールし、農作物や樹木バイオマスの増産する研究が始まると期待できます。

独立行政法人理化学研究所
植物科学研究センター 生長制御研究グループ
グループディレクター 神谷 勇治(かみや ゆうじ)
上級研究員 笠原 博幸(かさはら ひろゆき)
Tel: 045-503-9660 / Fax: 045-503-9662