植物ホルモン「サイトカイニン」に新たな機能を発見
―乾燥・塩ストレス応答を制御する植物ホルモンの相互メカニズムが存在―
報道発表資料
作物をはじめとする植物は、乾燥や高塩濃度などの環境ストレスにさらされると、これらストレスに応答したホルモン「アブシジン酸」(ABA)を合成し、防御反応を起こします。逆に、細胞分裂の促進や老化の抑制など、植物の成長を制御するホルモン「サイトカイニン」(CK)は減少します。このため、 CKはストレスに関しても 重要な役割を担うと考えられていましたが、その詳細な機能は不明でした。
植物科学研究センター発現調節研究ユニットの研究グループらは、相反する応答を引き起こすこれら2つの植物ホルモンの相互作用が、植物の乾燥・塩ストレス応答を制御するというメカニズムを解明しました。多種あるCKのタイプを別々に測定することができる質量分析装置を使ったホルモン分析により、乾燥・塩ストレスにさらされたシロイヌナズナ(モデル植物)では、ある種のCKが減少することが分かりました。さらに、CK量を減少させた遺伝子変異体(低CK植物)はストレス耐性を示すだけでなく、ABAに対する感受性が高まり、この低CK植物に過剰なABAを与えると、野生型よりも生育や発芽率が悪くなることが分かりました。これらの結果から、植物はストレスを受けると、ストレス応答遺伝子の発現を阻害するCKを減少させて、ストレス耐性を高めると考えられます。
単純にABAの合成量を増加させると、生育の悪化などの副作用を引き起こします。今回の結果から、ABAの合成量は一定に保ち、2つの植物ホルモンのバランスを変化させることで、生育阻害を引き起こさないストレス耐性植物を生みだすことができると期待されます。
独立行政法人理化学研究所
植物科学研究センター 発現調節研究ユニット
ユニットリーダー Lam-Son Phan Tran(チャン・ファン・ラム-ソン)
Tel: 045-503-9593 / Fax: 045-503-9591
研究員 西山 りゑ(にしやま りえ)
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