免疫応答開始に必要な免疫シナプスを形成するメカニズムを発見
-微小管を伝う分子モーターのダイニンが免疫センサーを運び、細胞活性化を調節-
報道発表資料
私たちの身体は、外部から侵入したウイルスなどの抗原を除去したり、生体内で発生したがんなどの異物を見つけ出して排除したりする免疫システムを備えています。このシステムに重要な細胞の1種がT細胞で、抗原の細かな違いを認識して特異的に反応する「獲得免疫」を開始させます。この獲得免疫により、再び同じ抗原と出会った際には速やかに免疫応答を開始することができるため、ワクチンの原理にも利用されています。
T細胞は、抗原の情報を受け取る際に、抗原提示細胞と強固に接着して免疫シナプスを形成します。これまでの研究から、免疫シナプス形成の前には、T細胞受容体などからなる小さな集合体「ミクロクラスター」が形成され、それらが接着面の中心へ移動することが分かっていました。しかし、この移動のメカニズムは不明なままでした。
免疫・アレルギー科学総合研究センターの免疫シグナル研究グループらは、細胞内の管状構造物「微小管」を足場にして駆動するモータータンパク質「ダイニン」が、このT細胞受容体のミクロクラスターを運搬することを見いだしました。この発見は、人工の細胞膜を作製して免疫シナプスを再現し、蛍光タンパク質を融合した生細胞内分子イメージングで詳細に観察した結果によるものです。
さらに、この移動で免疫シナプスの中心に集まったT細胞受容体が分解されると、T細胞の活性化が収束することも突き止めました。これまでダイニンは、細胞分裂や菌の鞭(べん)毛運動に必要な動力を生み出す分子モーターとして知られていましたが、それ以外にも、免疫応答の基本的なメカニズムである抗原認識と活性に関わっているという新たな知見は、これまでの概念を変えた免疫調整薬開発につながると期待できます。
独立行政法人理化学研究所
免疫・アレルギー科学総合研究センター
免疫シグナル研究グループ
グループディレクター 斉藤 隆(さいとうたかし)
研究員 多根 彰子(たね あきこ)
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