広報活動

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2010年12月9日

独立行政法人 理化学研究所
独立行政法人 科学技術振興機構

細胞のストレス応答機構の分子メカニズムが明らかに

-ストレスによるIP3受容体の機能破壊が、神経細胞死による脳障害を引き起こす-

小胞体ストレスによるIP3R1の機能低下の分子メカニズム

体調不良、心の病、自殺など、過度のストレスが引き起こす現代の疾患は増加傾向にあり、社会問題となっています。私たちが健康的な生活を過ごすためには、ストレスを軽減して、ストレスと上手に付き合っていく必要があります。私たちの体を構成している細胞もまた、常にストレスにさらされており、過剰なストレスは、細胞が備えているストレス応答機能を破壊し、自らが死を選択する細胞死(アポトーシス)を引き起こします。神経細胞がストレスにさらされると、細胞死によって脳機能が低下し、さまざまな神経疾患を引き起こすと考えられています。

脳科学総合研究センターの発生神経生物研究チームらは、細胞内のカルシウム濃度を調節するIP3受容体(IP3R)が小胞体ストレスによって破壊され、神経細胞死を誘導することを世界で初めて発見しました。IP3Rは4量体を形成することでカルシウム放出チャネルとして機能するタンパク質で、 3種類のサブタイプが存在します。中でも、1型IP3受容体(IP3R1)は脳で高い発現を示し、その機能を遺伝的に喪失したマウスが運動機能障害を引き起こすことが知られています。研究チームは、分子シャペロンとして知られるタンパク質GRP78が、IP3R1の4量体形成を制御していることを突き止め、小胞体ストレスでGRP78 とIP3R1の結合が弱まると、IP3R1の4量体形成が阻害され、カルシウム放出活性が顕著に低下することを明らかにしました。このIP3R1の機能破壊が神経細胞死を誘導し、脳障害を引き起こすことから、IP3R1がストレスから脳を守る働きを担うことが分かりました。この発見は、IP3Rが細胞死を誘導するという従来の定説を覆し、ストレスによる神経変性疾患の発症メカニズムの解明や、神経変性疾患の発症予防などの治療に貢献すると期待できます。

独立行政法人理化学研究所
脳科学総合研究センター 疾患メカニズムコア 発生神経生物研究チーム
チームリーダー 御子柴 克彦(みこしば かつひこ)
Tel: 048-467-9745 / Fax: 048-467-9744