広報活動

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2010年8月18日

独立行政法人 理化学研究所

メタボローム解析を用いて生命維持機能(頑健性)の仕組みを解明

―生命維持機能は、重複遺伝子と複雑なネットワーク構造による相補が必須―

1つの遺伝子を欠損した場合の生命維持機能

ゲノム上には、多数の遺伝子があり、その情報に基づいて生物のさまざまな生命現象が営まれています。しかし、1つ1つの遺伝子を欠損させた変異体を作っても、その影響で表現型が変化しないことがあることが知られています。この現象から、生物には生命維持機能(頑健性)が存在することが明らかとなってきました。その生命維持機能のメカニズムとして、「コピー遺伝子(重複遺伝子)による機能の相補」と「ネットワーク構造に存在する代替経路による相補」が挙げられていますが、この2つの相補メカニズムが実際にどの程度、生命維持機能に関係しているかは不明なままでした。

植物科学研究センターの機能開発研究グループらは、モデル植物であるシロイヌナズナの遺伝子を欠損させた1,976個の変異体で、35種類の代謝産物の蓄積量をハイスループット(短時間に大量処理)な液体クロマトグラフィー質量分析計(LC-MS)解析を用いて定量的に解析しました。その結果、複数の代替経路を持つ代謝産物の生合成に関与する遺伝子には、同じ機能を示す重複遺伝子がほとんど存在しませんでしたが、代替経路が少ない代謝産物の生合成に関与する遺伝子には、同じ機能を示す重複遺伝子が存在する傾向の高いことが分かりました。これは、「重複遺伝子による機能の相補」と「ネットワーク構造に存在する代替経路による相補」の両方が、生体維持機能として重要な役割を持ち、トレードオフの関係にあることを示しています。

今回初めて行った2つの相補メカニズムの検証は、生物をシステムとして理解しようとするシステムバイオロジー分野の推進に貢献すると期待されます。

独立行政法人理化学研究所
植物科学研究センター 機能開発研究グループ
研究員 花田 耕介(はなだ こうすけ)
Tel: 045-503-9570 / Fax: 045-503-9580