細胞周期エンジンの司令で核膜孔複合体の形成が開始
-細胞内で最も精緻な構造体「核膜孔複合体」の形成機構解明への一歩-
報道発表資料
細胞の機能を生み出す細胞核は、2層の脂質膜からできている核膜によって細胞質から隔てられています。この核膜に埋め込まれた核膜孔複合体は、タンパク質やRNAのほか、イオンなどの低分子からウイルスなどの大きな粒子まで、細胞核と細胞質を往来するすべての物質の唯一の通り道となっています。核膜孔複合体は、総分子量125MDaの巨大なタンパク質複合体で、その構成因子はこれまでにほぼ明らかになっています。進化的にも保存された8方対称の美しい幾何学的な構造をとり、1分間に数百万個もの膨大な数のタンパク質を正確に選択して通過させる機能を持つことが知られています。
しかし、この精緻な超分子構造体が、「いつ」、「どこで」形成されているのか、どのような制御を受けているのかは謎のままでした。
基幹研究所今本細胞核機能研究室を中心とする研究グループは、この細胞内最大の超分子構造体「核膜孔複合体」形成の可視化に成功するとともに、この形成が細胞周期エンジンとして知られるサイクリン依存性キナーゼ(CDK)の司令で開始することを発見しました。
研究グループは、核内でDNAに結合しているヒストンと核膜孔複合体構成因子のそれぞれに、CFPとYFPの2種類の蛍光タンパク質を結合させ、各標識細胞を細胞融合させて、核膜孔複合体の形成を観察しました。その結果、核膜孔複合体の新生にはCDKの活性が欠かせないこと、CDKを阻害すると形成中間体構造さえも見られないことを突き止めました。
樹立した解析系を利用することで、生きた細胞内で核膜孔複合体が形成する過程を詳細に解析することが可能になりました。また、CDKの活性を制御したり基質を同定することで、核膜孔複合体形成開始の分子機構も明らかになると期待できます。
独立行政法人理化学研究所
基幹研究所 今本細胞核機能研究室
主任研究員 今本 尚子(いまもと なおこ)
Tel: 048-467-9749 / Fax: 048-462-4716
客員研究員 前島 一博(まえしま かずひろ)
Tel: 055-981-6864 / Fax: 055-981-6865