超伝導人工原子を組み込んだ新量子光学デバイスを開発
-単光子増幅器、人工原子を並べた量子メタ材料、光スイッチなどへの応用も-
報道発表資料
金属、非金属問わず、すべての自然原子はそれぞれ特有の量子準位を持っており、さまざまな特徴を発揮します。例えば、量子準位間のエネルギーに相当する光を照射すると、物質は光を吸収し、共鳴散乱現象を引き起こします。この現象は量子光学の基本原理で、100年も前から原子や分子の種類を特定するために利用されてきました。ほかにも、「レーザー発振」や、物質が魔法のように瞬時で透明になる「電磁誘起透明化」などの現象の基本原理となっています。
1990年代になると、この自然原子と同じように量子準位を持つ個体電子素子が開発され、巨大な「人工原子」と呼ばれています。
基幹研究所巨視的量子コヒーレンス研究チームは、日本電気㈱と共同で、直径約1μmの超電導量子ビットを巨大な人工原子と見立て、マイクロ波が通る伝送線(導波路)と強く結合させた固体電子素子を作製、外部から電気的条件を制御して、自然原子と光子による相互作用と同様な量子光学現象を観察することに成功しました。具体的には、この人工原子を20ミリケルビンという極低温環境下に置いてマイクロ波を照射すると、照射エネルギーに依存して弾性散乱や非弾性散乱を起こす「巨視的量子散乱」、通常のレーザーと同様にマイクロ波光の誘導放出と増幅が起きる「メーザー」、そして、第1と第2のマイクロ波を使い分けて照射することで人工原子が光を通過(オン)/遮断(オフ)するという「光スイッチ」の現象の観測に初めて成功しました。
人工原子と導波路は、現在の微細加工技術によって強く接合できるため、外部からの制御性に優れた原子を実現できます。今後、光通信と無線通信の融合を目指す「マイクロ波フォトニクス」、人工原子を並べて凝縮した新物質「量子メタ材料」、光子を量子ビットに使った「量子計算機」などへの応用に威力を発揮すると期待されます。
独立行政法人理化学研究所
基幹研究所 物質機能創成研究領域 単量子操作研究グループ
巨視的量子コヒーレンス研究チーム
チームリーダー
日本電気株式会社グリーンイノベーション研究所
主席研究員
蔡 兆申(ツァイ・ヅァオシェン)
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