広報活動

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2010年4月23日

独立行政法人 理化学研究所

鉄系高温超伝導体の超伝導機構解明に決定的な手がかり

-電子のさざなみを観測する新開発の手法で、超伝導を担うクーパー対の構造を決定-

電子対の構造の模式図

電気抵抗が完全に消失する超伝導現象を活用して、エネルギー損失が無い送電システムや、高速走行を可能にする磁気浮上列車など、夢のような技術の実現が期待されています。ある種の金属を、絶対温度が0K(摂氏-273.15℃)近くまで冷却すると、この超伝導現象が表れますが、その発現には、電子がペアを成すクーパー対の形成が必要です。

1986年にスイスのJ. G. ベドノルツとK. A. ミューラーが発見した銅酸化物高温超伝導体は、液体窒素の温度(77K)をしのぐ最高135Kという高温で超伝導を発現し、世界に衝撃を与えました。さらに、2008年には、東京工業大学細野秀雄教授の研究グループが、鉄系超伝導体と呼ばれる画期的な物質群を発見しました。これまで、最高55Kでの超伝導発現が確認されており、銅酸化物以外では唯一の高温超伝導物質群となっています。この鉄系超伝導体は、現在、基礎と応用から世界中で研究されていますが、クーパー対の形成機構については、いまだに解明されていませんでした。

電子のさざなみのフーリエ変換の磁場依存

基幹研究所高木磁性研究室の花栗哲郎専任研究員らの研究グループは、この鉄系超伝導体のクーパー対の構造が、従来のニオブ系や銅酸化物超高温伝導体などとはまったく異なり、s±波と呼ばれる構造であることを初めて解明しました。この結果は、鉄系超伝導体の発現には磁性が関与している可能性が極めて高いことを意味します。この研究では、鉄セレンテルル(FeSe0.4Te0.6)という鉄系超伝導体を、10T(テスラ)という強力な磁場の下、走査型トンネル電子顕微鏡/分光を用いて観察しました。電子が持つ波の性質を利用して、「電子のさざなみ」を観測し、鉄系超伝導体に存在する2種類の電子集団を区別することで、s±波を見いだしました。今後、新しい超伝導体の設計につながると期待されます。

独立行政法人理化学研究所
基幹研究所 高木磁性研究室
専任研究員 花栗 哲郎(はなぐり てつお)
Tel: 048-467-5428 / Fax: 048-462-4649