広報活動

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2010年4月1日

独立行政法人 理化学研究所

自由空間の電子に新しい性質「軌道角運動量」を発見

―新しい性質が、量子力学研究の発展や革新的電子顕微鏡の開発に貢献―

電子線干渉法によって得た位相分布像と干渉縞と電子線干渉法を用いた実験の概略図

1897年に陰極線粒子として発見された電子は、その後、物質を構成する最小単位である素粒子の一種であることが分かり、波や粒子のように振る舞い、スピンという角運動量を持つことが知られています。エネルギーや情報処理を担う粒子として、電子顕微鏡などの分析機器や半導体などにも活用され、先端技術や情報化社会を支える存在となっています。

基幹研究所単量子操作研究グループの量子現象観測技術研究チームは、真空中(自由空間)を移動する電子が、 「軌道角運動量」を持つことを世界で初めて発見しました。原子や結晶中の束縛された電子が軌道角運動量を持つことはよく知られていましたが、真空中を移動する電子に存在するとは考えられていませんでした。

研究チームは、光の波面をらせん状にすると軌道角運動量を持つようになることをヒントに、電子の場合も波面をらせん状にすることで軌道角運動量を持つものと考えました。まず、らせん状の波面をつくるために、層状になりやすい鉛筆の芯(黒鉛)を細かく砕き、透過型電子顕微鏡を用いて、黒鉛の層がうまく重なってらせん階段状になっている領域を見つけ出しました。このらせん階段状の領域を通過した電子の波面がらせん状になっていることを確認するために、通過した電子を平面状の波面を持つ電子と干渉させ(電子線干渉)、干渉縞を観測しました。すると、らせん階段状の領域を通過した電子の波面がらせん状になっていることを示す干渉パターンとなっており、軌道角運動量を持っていることを確認できました。電子の発見から100年余りたって、電子の新しい性質がまた一つ見いだされたのです。

独立行政法人理化学研究所
独立行政法人理化学研究所基幹研究所
単量子操作研究グループ
量子現象観測技術研究チーム 研究員
(現)国立大学法人名古屋工業大学 研究員
内田 正哉(うちだ まさや)
Tel: 052-735-7117