慢性閉塞性肺疾患憎悪感受性の検査法 (理研No:23578)
発明者
安形高志 (基幹研究所 糖鎖認識研究チーム)岡律子、北爪しのぶ、谷口直之 (基幹研究所 疾患糖鎖研究チーム)
石井健男、茂木孝、木田厚瑞(日本医科大学呼吸ケアクリニック)
背景
慢性閉塞性肺疾患(COPD)とは、タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することで生じる肺の炎症性疾患である。この疾患の患者は、呼吸機能検査で正常に復すことのない気流閉塞を示す。気流閉塞は末梢気道病変と気腫性病変が様々な割合で複合的に作用することにより起こり進行性である。COPDは2020年には全世界の死亡原因の第三位を占めると予測されている。COPDの増悪とは、COPDを発症した患者において、呼吸困難、咳、喀痰などの症状が日常の生理的変動を超えて急激に悪化し、安定期の治療内容の変更を要する状態をいう。COPD患者が入院治療を必要とする場合、そのほとんどは急性増悪が原因であると考えられている。
COPDの増悪感受性と関連する遺伝的多型はいくつか報告されているが、その遺伝的多型のCOPDの増悪の予防と治療における診断的価値は確立されていない。これらの遺伝的多型は当該遺伝子がコードするタンパク質の質的又は量的な変動をもたらすが、欠損を来すものではないため増悪の指標としては利用しづらく、これらの遺伝的多型と増悪との相関をもとに臨床的に有用な検査法を生み出すには至っていない。
技術の概要
弊所研究者らは、COPDの憎悪感受性の指標となるマーカーを同定するべくCOPD患者の末梢血を用いて鋭意検討した結果、COPDの憎悪に関する定義として臨床で用いられているAnthonisenらの定義によるCOPDの細菌性憎悪、およびRodriguez-Roisinの定義によるCOPD憎悪の両方に強い相関性を示す遺伝的マーカー及び血清マーカーの同定に成功した。
これらのマーカーを指標とすれば、これまで困難であったCOPD患者の層別化と個別化治療を可能とする事ができる。また、増悪感受性の検査・判定結果に基づいてCOPD患者の適切な層別化やモニタリングを行うことにより、患者のQOL及び予後の改善、並びに医療資源の有効利用につなげることが期待される。
Anthonisenらの定義によるCOPD細菌性憎悪の有無との関係を示す図
Rodriguez-Roisinの定義によるCOPD憎悪の頻度との関係を示す図
利点
- 慢性閉塞性肺疾患の憎悪感受性を遺伝的多型に基づいて判定することができる。
応用
(2012年2月掲載)