外部連携

生命科学・創薬研究に応用する 『生物機能分子探索テクノロジー』の新規開発 (理研No: 23515)

発明者

和田章, 長田 裕之(基幹研究所 ケミカルバイオロジー研究基盤施設 化合物ライブラリー評価研究チーム)

背景

近年、国民が期待する先進医療・個別化診断等による健康増進社会の実現には、革新的な生命科学・創薬研究の創出と進展が必要不可欠であり、それらライフ・イノベーションを推進する日本独自の科学技術の創出・活用・普及が喫緊の課題となっている。そこで本研究では、試験管内分子進化の原理を応用した「生物機能分子探索テクノロジー1)」を総合的に開発することで、「細胞機能を誘導/追跡するバイオプローブ」、「生体機能制御性バイオマテリアル」、「ペプチド診断薬・治療薬」、「標的分子を完全に決定した生物活性化合物・医薬品」などの創成を実現し、日本発の生命科学・創薬研究の発展による次世代バイオ産業の振興に貢献することを目指している。

技術の概要

「生物機能分子探索テクノロジー」のコア技術は、人工タンパク質合成システムで駆動させる「統合型リボソームディスプレイ法2),3)」である。本技術は、1011種類を超える膨大な数のペプチドライブラリーの中から、疾病関連タンパク質・金属材料・ポリマーなどの標的分子・材料に対して特異的に結合し、 特定の生物機能を制御/賦与する新規ペプチドを独自に創出することができる。さらに、生物種を超えて構築したタンパク質ライブラリーを利用す れば、細胞機能を調節する生理活性化合物の標的分子の迅速な同定も可能であり、薬理効果を向上させた改良薬・副作用の少ない医薬品開発の基盤技術としても応用できる。

本技術の利点

図1 本技術による「標的タンパク質結合性ペプチド」および「標的構造変化応答性ペプチド」の創成

今回開発した「統合型リボソームディスプレイ法」では、アミノ酸の種類、配列の長さ、立体構造を自由に設計できるペプチドライブラリー・タンパク質ライブラリーの構築と利用が可能である。また、それらライブラリーは、人工タンパク質合成システムにより、約15分で発現・調整が可能であることから、機能性ペプチドの創出や化合物の標的タンパク質の同定などを短時間・低コスト・省スペースで実行することができる。さらに、自在に改変が可能なプロトコルを独自に確立したことで、従来法に比べて極めて安定な操作性・簡便性・汎用性を賦与することに成功2),3),4)している。それゆえ、本技術のキット化による販売、ロボット化の導入によるハイスループットシステムの開発と受託業務への展開、先進医療機関・製薬企業などへの技術導出なども視野に入れている。

図2 本技術による「標的タンパク質結合性ペプチド」および「標的構造変化応答性ペプチド」の創成図3 本技術による「標的タンパク質結合性ペプチド」および「標的構造変化応答性ペプチド」の創成

本技術による「標的タンパク質結合性ペプチド」および「標的構造変化応答性ペプチド」の創成

応用が期待できる分野

  1. ポスト抗体としての標的分子結合性ペプチドの高速創成
  2. 生物活性化合物・創薬シーズ・既存薬の標的タンパク質の同定
  3. タンパク質及び細胞機能解析用ツール・疾病診断用バイオプローブなどの開発
  4. ペプチドと異種材料との融合による生体機能制御性バイオマテリアル・標的分子検出用デバイス・ナノバイオ構造基板
    などの作製

(文献情報)

  1. 理研ニュース2011 年2 月号「FACE」
  2. PCT/JP2011/055815
  3. Wada et al., Biotechnol. Bioeng., 2008, 101, 1102. など
  4. A. Wada et al., in preparation.

(2012年10月掲載)