新規な11C標識化合物、その製造方法及びこれらの利用方法(理研No: 23457)
発明者
八塩桂司、片山由美子、髙島忠之、土居久志、尾上浩隆、鈴木正昭、渡辺恭良(分子イメージング科学研究センター)
背景
尿酸は、体内で不要になった核酸(プリン体)や食物に含まれるプリン体が生体内で分解してできたものです。主に腎臓で尿中に排泄されますが、一部は血中にも存在します。血中の尿酸濃度が高くなる高尿酸血症になると、痛風や高血圧、腎臓病、心臓病、脳卒中などの生活習慣病のリスクが高くなることが知られています。特に痛風は、足やひざの関節で高濃度の尿酸が結晶化して発症します。しかし、尿酸の局所的な濃度を視認できるように画像化した例はこれまでありませんでした。
本技術の目的
11Cを導入した、新規な尿酸及び尿酸誘導体を提供します。
技術の概要
1: 11C-尿酸の合成
尿酸はその構造上11C-ヨウ化メチルで標識することが困難なため、尿酸の構造の中でカルボニル部位に着目し、そこを標識化するために11C-ホスゲンを用いることを計画しました。 条件検討の結果、N,N'- ジメチルプロピレン尿素を溶媒として、 N,N- ジイソプロピルエチルアミン存在下で11C-ホスゲンと反応させることで11C-尿酸を合成することができました。
図1:11C-ホスゲンを用いた11C-尿酸の合成
図2:合成した11C-尿酸の分析結果
放射能量: 2~3 GBq
比放射能: 平均100 GBq/mmol
放射化学純度 > 98%
化学純度 > 98%
ヒト臨床試験への使用が十分可能
2: 11C-尿酸を用いたPET試験
図3:11C-尿酸を投与後、65-70分後のラットのPET画像
PETプローブ11C-尿酸を正常ラットと高尿酸血症誘発モデルラットそれぞれに投与し、尿酸の集積を比較した。PET画像の色の濃淡は物質の濃度を示し、赤いほど濃度が高い。正常ラットと比べ、高尿酸血症モデルラットでは四肢関節部に尿酸の集積が多くなることが分かった。(高尿酸血症ラット : Oxonateを事前に投与し、尿酸代謝酵素の働きを阻害)
合成した11C-尿酸を正常ラットに静脈注射し、PET解析を行った結果、生体内での尿酸の分布に従って腎臓から尿中に排泄される経過を可視化することに成功しました。
また、高尿酸血症誘発モデルラットにも11C-尿酸を静脈注射しPET解析を行った結果、11C-尿酸の関節部分への集積は、正常ラットに比べて2.6倍多いことが分かりました(右図)。
これらの結果から、11C-尿酸は生体内の尿酸の分布状況を画像化するPETプローブとして有用であり、尿酸が蓄積して発症する痛風などのイメージング診断薬として活用する可能性を見いだしました。
(文献情報)
- K. Yashio. et al., Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 2012, 22, 115-119
- PCT/JP2012/061578
利点
- 11Cは半減期が20 分と極めて短いため、臨床応用での被曝量を最低限に抑えることが可能です。
(2012年11月掲載)