SINEUPs:タンパク質合成を促進するアンチセンスRNA ツール(理研No: 23223)
発明者
Piero Carninci, Alistair Forrest (RIKEN Omics Science Center)
Claudia Carrieri, Silvia Zucchelli, Stefano Gustincich (SISSA (International School for Advanced Studies))
キーワード
アンチセンスRNA、タンパク質の合成促進
背景
アンチセンスRNA は哺乳類の細胞において、センス鎖遺伝子の発現を抑制するレギュレーターとしてよく知られています。 一方、遺伝子発現を亢進させる方法としては、基本的に発現ベクターを対象細胞に導入する手法しかありませんでした。一般的に発現ベクターは作製に時間を要するという短所があります。加えて、発現ベクターによる転写量の増加の上限がタンパク質合成量の増加の上限となり、タンパク質合成量の律速段階が問題になり得えます。
技術の概要
本発明者らは、細胞内に含まれるRNA 量を変化させずにセンス鎖の転写物からのタンパク質合成量を増加させるアンチセンスRNA が存在することを突き止めました。このアンチセンスRNA の機能の鍵となる要素は、標的となるセンス鎖に対してオーバーラップする配列部位と、レトロトランスポゾン由来のSINE 配列(short interspersed repetitive element)を含むオーバーラップしない部位で、この構造は新規機能を有する一連のアンチセンスRNA において共通しています。
そこで、人工的に新規機能のアンチセンスRNA を設計したところ、蛍光タンパク質などの合成促進が可能であることを明らかにし、 本技術をSINEUPs と名付けました。
図:SINEUPs の概要図と、EGFP の合成量増加のデータ
(文献情報)
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Carrieri C, Cimatti L, Biagioli M, Beugnet A, Zucchelli S, Fedele S, Pesce E, Ferrer I, Collavin L, Santoro C, Forrest AR, Carninci P, Biffo S, Stupka E, Gustincich S. Long non-coding antisense RNA controls Uchl1 translation through an embedded SINEB2 repeat. Nature. 2012 Oct 14. doi: 10.1038/nature11508. PMID: 23064229
利点
- a) バイオプロダクション
SINEUPs は蛍光タンパク質や抗体などの標的のタンパク質の合成量の増加に使用できる。
- b) 治療薬
siRNA 等の核酸医薬の可能性と同様のポテンシャルが期待される。
また、p53 を含むアポトーシス促進剤(抗がん剤として)の可能性もある。
- c) 研究ツール
哺乳類の転写産物中の任意のmRNA をターゲットとしてタンパク質の合成促進が期待される。
(2012年10月掲載)