外部連携

慢性疲労症候群の血液バイオマーカーの発見 (理研No: 23101)

発明者

片岡洋祐1,2、金光華1、渡辺恭良1,2、田島世貴1、曽我朋義3、倉恒弘彦2、山野恵美2

  1. 理化学研究所分子イメージング科学研究センター,
  2. 大阪市立大学大学院医学研究科, 3:慶應義塾大学先端生命科学研究科

背景

わが国における疫学調査によると、一般市民の約60%が疲労感を自覚しており、そのうち、半分以上の人が 6ヶ月以上続く慢性疲労に悩まされていると報告されている。また、慢性疲労を感じている人の半数が仕事や学業の能率低下を訴えており、その経済的損失は1兆2千億円にも上るとされる。

その中には強い疲労感を主訴とするものの、未だ原因が十分解明できていない慢性疲労症候群(Chronic fatigue syndrome)の患者も全人口の0.2-0.3%含まれている。慢性疲労症候群の発症メカニズムは不明であり、現在でも患者の自覚的症状および医師による身体所見を基準に診断されているのが実状である。そのため、患者の経済的な負担に加え、医者による長期間にわたる観察の必要性や判断基準の個人差などが問題となっている。

技術の概要

慢性疲労症候群患者(20名)と健常人(20名)の血漿を対象に代謝物質の変動を網羅的に解析することにより、慢性疲労のメカニズムに基づいた客観的な疲労バイオマーカーを探索した。両群で血糖値(Glucose濃度)に差はなかったが、慢性疲労症候群患者では、エネルギー(ATP)産生に与る解糖系およびTCA回路中の代謝物が減少していること、さらに、その低下は自覚的疲労度(PS)に相関することが見出された。解糖系機能を表すCitrate/Glucose比、TCA回路上流のAconitase活性を表すIsocitrate/Citrate比、TCA回路下流での代謝機能の回復を表すIsocitrate/Malate比の三つの値から95%の正確さで慢性疲労症候群を客観的に診断できる可能性がある。

図 慢性疲労症候群の血液バイオマーカーの発見

利点

  • 数種類の代謝物を測定するだけで、慢性疲労症候群を診断可能
  • 患者の治療効果判定や回復過程でのフォローアップが可能
  • 疲労原因に即したバイオマーカーであるため、治療や予防法の開発が可能

応用

  • 慢性疲労症候群を客観的かつ迅速に診断するキットの開発
  • 個々人の慢性疲労の治療方針を数理計算により立案し、効果を予測する方法を開発
  • 疲労を予防・軽減する食薬開発

(2012年11月掲載)