外部連携

複数の非天然タンパク質の導入を可能にする細菌の作製方法

発明者

坂本健作、向井崇人 (生命分子システム基盤研究領域 拡張遺伝暗号システム研究チーム) 他

背景

タンパク質中の所望の位置のアミノ酸残基を、通常のタンパク質合成に関わる20種類以外のアミノ酸(非天然型アミノ酸)やα-ヒドロキシ酸で置換したタンパク質を非天然タンパク質と言う。この非天然タンパク質の合成は、従来の天然型アミノ酸のみのタンパク質工学における制約を乗り越え、新しい生理活性、触媒活性、構造機能を有するタンパク質を生産する上で必要不可欠な基盤技術となると考えられる。しかし、現在は1つのタンパク質へ効率よく導入できる非天然型アミノ酸は1か所のみで、この事が非天然タンパク質の設計や生産において制約となっている。

非天然タンパク質生産時の非天然型アミノ酸導入においては、多くの場合ストップコドンの一つであるアンバーコドン(UAGコドン)が使用されており、非天然型アミノ酸の導入効率を上げる手段として、例えば大腸菌においては①翻訳終結因子の活性を弱める、②大腸菌ゲノム上の全てのアンバーコドンを他のストップコドンに置換した上で、翻訳終結因子をコードする遺伝子を欠損させる等の方法が報告されている。しかし、前者では複数の非天然アミノ酸の導入効率は極めて低く、後者は大腸菌においてでさえ314個のアンバーコドンをストップコドンに持つ遺伝子の改変が必要であるため、汎用性に問題がある。

技術の概要

弊所研究者等は、大腸菌の翻訳終結因子をコードする遺伝子を欠損させ、アンバーコドンを翻訳するtRNAといくつかの遺伝子を安定的に導入する事により、通常の生育速度を保ったまま複数の非天然アミノ酸を高効率でタンパク質へ導入するための大腸菌を作製する方法を開発した。

本方法は大腸菌に限らず如何なる細菌にも適用できるため、自由に非天然タンパク質の生産系を構築する事が可能となる。また、本方法を採用し複数の非天然アミノ酸を持つ非天然タンパク質を作製する事により、今まで得られなかった新たな機能を有する新規タンパク質の生産が可能となる。

グルタチオン-S-トランスフェラーゼのN末端近傍に6つのアンバーコドンを導入したタンパク質を生産(導入部位は*で示す)。全ての部位に非天然型アミノ酸であるヨードチロシンを導入できた。
グルタチオン-S-トランスフェラーゼのN末端近傍に6つのアンバーコドンを導入したタンパク質を生産(導入部位は*で示す)。全ての部位に非天然型アミノ酸であるヨードチロシンを導入できた。

グルタチオン-S-トランスフェラーゼのN末端近傍に6つのアンバーコドンを導入したタンパク質を生産(導入部位は*で示す)。全ての部位に非天然型アミノ酸であるヨードチロシンを導入できた。

(文献情報)

  1. Mukai T, et al. BBRC. 2011 Aug 12;411(4):757-61.
  2. Mukai T, et al. Nucleic Acids Res. 2010 Dec;38(22):8188-95.

利点

  • 非天然タンパクに複数の非天然型アミノ酸を導入することができる。

応用

  • 非天然型アミノ酸を有する新規機能性タンパク質の製造

(2012年1月掲載)