抗原提示細胞に効率的に抗原提示させる新規方法 (理研No: 22947)
発明者
鵜殿平一郎、水上修作 (免疫・アレルギー科学総合研究センター 免疫シャペロン研究チーム)
キーワード
ワクチン、抗原提示細胞、ドラッグデリバリー
本技術の特徴
抗原提示細胞は、細胞外から取り込んだ抗原をプロテアソームによって分解し、分解産物であるペプチドをMHCクラスⅠ分子と結合して細胞表面に提示するクロスプレゼンテーションを起こします。この提示されたペプチドによりCD8+T細胞を刺激する事で獲得免疫が引き起こされます。つまり、ある特定の抗原に対する獲得免疫を引き起こすには抗原提示細胞に効率的に抗原のクロスプレゼンテーションを起こさせる事が重要となります。
このクロスプレゼンテーションを促進させる方法としては従来、DEC205などの樹状細胞膜表面分子に対する抗体と抗原を結合させたものや、熱ショックタンパクに抗原ペプチドを結合させた複合分子等が知られています。しかし、抗DEC205抗体を用いた抗原デリバリーでは逆に抗原特異的免疫寛容が誘導されてしまう事が明らかにされています。また、熱ショックタンパクと抗原ペプチドの結合効率は抗原ペプチドのアミノ酸配列に左右されると言う問題点がありました。
この度弊所では、抗原提示細胞、多分化能間葉系前駆細胞等、特定の細胞の細胞膜においてのみ発現しているヒトHSP90に着目し、そのヒトのアミノ酸配列に対するモノクローナル抗体を作成いたしました。更に機能解析の結果、この抗体が抗原提示細胞表面のHSP90に結合すると速やかに細胞内へ移行する事を見出し、効率的に抗原提示細胞にクロスプレゼンテーションを引き起こさせ、獲得免疫を誘導する新規方法を開発する事に成功いたしました。
この抗体にクロスプレゼンテーションさせたい抗原タンパクをコンジュゲートしマウスに静脈注射したところ、効果的に抗原特異的な細胞障害性T細胞を生じさせる事が出来ました(図参照。抗体と抗原タンパクをコンジュゲートしたもの(Fr.15-19)としていないもの(Fr.33)とで比較。CD8四量体陽性細胞の増加(上図)およびエピトープに対する細胞障害性活性(下図)を示す。)。また、抗体と卵白アルブミンのコンジュゲートは卵白アルブミン発現悪性黒色腫の肺転移モデルにおいて著名な転移抑制効果を示しました(日本癌学会等で発表済み)。
この方法を用いれば、腫瘍抗原、病原抗原に対する獲得免疫を効率的に誘導する新規ワクチンの作製が可能となります。また、特定の細胞にのみ取り込まれるため高価なタンパク製剤を低用量で使用する事が可能であると考えられます。
(文献情報)
- PCT/JP2011/059213, US13/086064
(2011年7月掲載)