腸管バリア機能改善剤およびそれに用いる微生物の選別方法(理研No: 22726)
発明者
福田真嗣、大野博司 (免疫・アレルギー科学総合研究センター 免疫系構築研究チーム)他
キーワード
プロバイオティクス、腸管バリア機能改善剤、O157
本技術の特徴
近年、ヨーグルトなどの乳製品を摂取することで腸内フローラの改善による疾患の改善・予防効果が明らかになると共に、乳酸菌を直接利用するプロバイオティクスの有用性が、健康維持・予防医学の面から認識されています。プロバイオティクスを用いることによって劇症化が緩和される対象疾患として、例えば世界規模の公衆衛生問題である腸管出血性大腸菌(EHEC)O157:H7 により引き起こされる出血性大腸炎や溶血性尿毒症症候群が挙げられます。
これまでプロバイオティクス機能を有する乳酸菌は、食経験や胃酸、胆汁酸への耐性を指標として、あるいは各種疾患のモデルマウスを用いてスクリーニングされてきました。しかし、プロバイオティクス機能を有するこれら細菌のスクリーニングを、疾患モデル動物を用いて評価するためには、長時間と煩雑な手間が必要であり、多数の乳酸菌株を同時にスクリーニングすることは出来ませんでした。
この度弊所ではEHEC O157:H7感染症のマウスモデルと統合オミクス解析技術とを組み合わせてO157感染死のメカニズムを鋭意検討した結果、特定の遺伝子座を持つ乳酸菌のみがO157感染死を予防することを見出しました。また、この方法で選択された乳酸菌の代謝物は結腸上皮細胞の抗炎症反応、抗アポトーシス作用を誘導し、結腸上皮のバリア機能を増強し、O157から産生される毒素の血液中への移行を予防することを確認しました。これらの結果より、プロバイオティクス機能を有する乳酸菌を特定の遺伝子座の有無を指標とした簡便な方法でスクリーニングする事が可能となりました。
この方法を用いればO157に対する腸管バリア機能を有する乳酸菌のみならず、腸管バリア機能を改善させたい腸管部位に適した乳酸菌を簡便に単離する事が出来、腸管バリア機能改善剤の開発速度を格段に向上させるものと考えます。
また、免疫系構築研究チームでは、他にも微生物の代謝動態をモニタリングする技術およびノウハウも有しており(PLoS ONE, March 2009, Vol 4, Issue 3, e4893)、この技術を併せて用いれば最適な乳酸菌のスクリーニングが短期間で出来るものと考えられます。
(文献情報)
- PCT/JP2010/065180
(2011年7月掲載)