外部連携

ヒストンアセチル化を検出するための蛍光プローブ  (理研No:21193)

発明者

吉田稔 (基幹研究所 吉田化学遺伝学研究室)、佐々木和樹(脳科学総合研究センター 細胞機能探索技術開発チーム)

背景

ヒストンのアセチル化やDNAのメチル化など、タンパク質やDNAの化学修飾は、遺伝子機能を変化・記憶し、その機能を子孫や娘細胞に伝える。この現象はエピジェネティクスと呼ばれ、生命科学研究の大きなターゲットとなっている。ヒストンアセチル化はエピジェネティクスの調節を担う中心的な化学修飾で、エピジェネティクスによる細胞機能の記憶は、環境ストレスや老化などによって変化すると考えられ、その異常が、がんを含むさまざまな疾患の発症とかかわることが明らかになりつつある。一般的に、ヒストンの高アセチル化領域は遺伝子の転写活性化、低アセチル化領域は転写不活性化と相関することが知られ、ヒストンアセチル化は、ヒストンアセチル化転移酵素(HAT)とヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)によってダイナミックに制御されている。しかし、これまでヒストンH4のアセチル化の様子を、生きた細胞内で検出することはできなかった。

技術の概要

弊所研究者らは、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を利用して、2種類の蛍光プローブ「Histac」および「Histac-K12」を作製し、Histacs遺伝子を導入した培養細胞を蛍光顕微鏡で観察して、生きた細胞内のヒストンH4K5/8およびH4K12のアセチル化の変化を観察することに成功した。2種類のHistacを用いて細胞分裂の過程を観察したところ、細胞分裂の際に、ヒストンH4のアセチル化は部位ごとに異なる制御を受けている様子を観察することができた。また、各種HDAC阻害剤を加えたところ、阻害剤ごとにアセチル化の反応速度に差があることが分かった。さらに計算科学的手法により得られたBRD2ブロモドメイン結合化合物が、実際に細胞内でブロモドメインとアセチル化ヒストンの結合を阻害していることを、Histac-K12を用いて明らかにすることが出来た。HDAC阻害剤はすでに抗がん剤として利用されており、ブロモドメイン阻害剤は強い抗がん活性を有している事が報告されている。Histacは今後、がん治療薬の評価、細胞の分化誘導やiPS細胞作製の際のアセチル化の動態の観察などに役立つと期待できる。

ヒストンアセチル化を検出するための蛍光プローブ

(文献情報)

  1. Sasaki K, et al. PNAS. 2009 Sep 22;106(38):16257-62.
  2. Ito T, et al. Chemistry & Biology. 2011 Apr 22;18(4):495-507.

利点

  • 部位特的なヒストンH4のアセチル化をリアルタイム観察できる。

応用

  • ヒストンアセチル化を指標とした医薬品のスクリーニング、評価。

(2012年1月掲載)