中温型燃料電池を可能にする固体酸タイプのナノ電解質膜 (理研No:11209)
発明者
国武 豊喜(理研ベンチャー 株式会社ナノメンブレン)、李 海濱、青木 芳尚
キーワード
バルク厚膜、ナノ膜化、高プロトン伝導性
技術の概要
燃料電池は、低炭素社会構築のための新エネルギー産業分野の柱となる技術ですが、コストの大幅な低減や耐久性の向上など解決すべき課題が残されています。 この様な状況で、全固体形かつ中温作動(200~400℃)という二つの基本的な特徴を併せ持つ燃料電池は、現在の低温型(PEFC)や高温型(SOFC)の燃料電池に比べ、燃料の多様性、システムの簡素化、コスト削減などの優位性を持つと知られております。
我々は、独自に開発したナノ膜作製技術を使い、固体酸の超薄膜化によってナノ電解質膜の作製を実現し、これを使った全固体型中温作動燃料電池SAFC(Solid Acid Fuel Cell)を開発しております。特に我々は固体酸として広く知られているアルミシリケートなどの複合酸化物やリン酸・ジルコニウムなどのナノ膜化に成功しております。これらバルク厚膜は、中温領域ではほとんど有効なプロトン伝導性を示しませんが、ナノ膜化することで、急激に高いプロトン伝導を示すことを実証しております(図1)。図2は、電極でサンドイッチされたアルミのシリケート電解質膜の透過型電子顕微鏡写真を示しております。膜厚が100nm以下でも、均一かつ欠陥のない薄膜であることがわかります。特にこの膜は、400℃で面積比抵抗が0.24 Ωcm2と、現在実用化されているポリマー型燃料電池に匹敵する高いプロトン伝導性を示すことがわかっております。すでに改良が進められ、現時点で実用性能である、0.1Ωcm2以下を達成しております。
今後我々は、この独自ナノ膜作製技術を使い、全く新しい燃料電池システムである中温作動固体酸形燃料電池(SAFC)を社会に送り出し、それを普及させることが最終目標です。
(文献情報)
- 特開2006-310253 「プロトン伝導膜およびその製造方法」
- Y. Aoki, E. Muto, A. Nakao, T. Kunitake, Adv. Mater., 4387, 23, 4387 (2008)
- Y. Li, T. Kunitake, Y. Aoki, E. Muto, Adv. Mater. 20, 2398 (2008)
- 藤川茂紀, 国武豊喜, 季刊燃料電池, 9, 4, 73, 2010
(2012年10月掲載)