創薬・医療技術基盤プログラム

創薬タンパク質解析基盤ユニット

先端計算科学基盤
薬剤候補化合物探索・設計に用いるための原子レベルの立体構造の決定

タンパク質は我々の生命活動を担う重要な分子であることから、創薬研究においては標的タンパク質と結合してその機能を制御する化合物(=薬剤候補化合物)の探索が盛んに行われています。この研究では、いかに効率的に標的とするタンパク質の機能を促進または阻害するか(=効き目の高さ)、そしていかに標的以外のタンパク質の機能に影響を与えないか(=副作用の少なさ)、という点を重視した薬剤候補化合物の探索・設計が必要なため、標的タンパク質の詳細なかたち(=立体構造)と、標的タンパク質と薬剤候補化合物との結合の仕方(=相互作用)を知ることが重要となってきます。

 創薬タンパク質解析基盤では、薬剤候補化合物の最適化に必須となる多数の標的タンパク質の試料調製、結晶化、X線回折データの取得、立体構造解析をハイスループットに行い、標的タンパク質の立体構造と薬剤候補化合物との結合状態の情報を、迅速かつ的確に獲得し、タンパク質の立体構造に基づく創薬研究の中核基盤としての役割を果たします。

 

タンパク質X線結晶構造解析を用いた薬剤候補化合物の最適化

 タンパク質X線結晶構造解析は、タンパク質の結晶にX線を照射してその回折像を利用することにより、タンパク質の立体構造を解析する方法です。特にSPring-8やフォトンファクトリー(PF)のような高輝度の放射光ビームラインを用いることにより、高精度データの大量かつ迅速な収集による効率の良い立体構造解析が可能です。
 標的タンパク質の立体構造にもとづいて薬剤候補化合物を探索・設計するインシリコスクリーニングの成否においては、精度の高い立体構造情報を利用できることが非常に重要です。創薬研究に必要な標的タンパク質と多種多様の薬剤候補化合物との複合体の立体構造解析は、膨大な数にのぼります。創薬タンパク質解析基盤では、タンパク質の試料調製、結晶化、実験室系のX線を用いた結晶評価から、SPring-8やPFと連携した立体構造解析まで迅速に精度良く実行し、①標的タンパク質の立体構造の決定、②インシリコスクリーニングによって得られた薬剤候補化合物との複合体の立体構造の決定、③立体構造に基づく薬剤候補化合物と標的タンパク質の詳細な相互作用情報の取得を行います。さらに、その情報を活用して他の基盤との連携により、④インシリコスクリーニングによって探索され、メディシナルケミストリーにより合成されたリード化合物の薬理・代謝・動態に関する生物学的アッセイデータに基づいた構造活性相関の研究成果をフィードバックし、②から④のサイクルを循環させることで、薬剤候補化合物(リード化合物)の効率的な最適化を可能にします。以上を通じ、より活性の高くより特異的な薬剤を見つけることが可能となります。

先端科学計算科学におけるインシリコ創薬の流れ

標的タンパク質と薬剤候補化合物との複合体の立体構造と電子密度図(左)と、
その情報に基づく化合物の最適化のようす(右)

X線結晶構造解析のためのタンパク質試料調製と結晶化技術

 タンパク質の立体構造を解析するためには、高品質で大量のタンパク質の試料が必要です。そのため、タンパク質ごとに異なったさまざまな条件を検討しながら試料を調製します。創薬タンパク質解析基盤では、最新の試料調製技術に多数の条件検討を速やかに実行できるシステムを組み合わせ、多様な標的タンパク質の高品質試料を大量かつ迅速に調製することが可能となっています。
  さまざまな標的タンパク質のなかには、その試料調製が困難となる場合もあります。中でも膜タンパク質は疎水表面を持つことから試料調製は非常に困難とされています。膜タンパク質は生物にとって大切な多くの細胞機能に関与しており、臨床的にもその重要性が指摘されていますが、試料調製の困難さから、立体構造解析の成功例も限られています。創薬タンパク質解析基盤では界面活性剤と脂質分子を含む特別な無細胞タンパク質合成系により、正しい形と機能を保持した活性体としての膜タンパク質を大量に調製する技術を有しています。

MD計算を使用したスクリーニングによる活性化合物の検出能の向上

無細胞タンパク質合成系を活用した膜タンパク質の大量調製
*リポソーム = 細胞膜に似た脂質二重膜からなるカプセル

 さらに、タンパク質X線結晶構造解析はタンパク質の結晶化の過程が必須となります。タンパク質はそれぞれに異なる個性を持っており、結晶化のための画一的な条件が存在せず、それぞれのタンパク質毎に膨大な数の条件を探索する必要があるという問題があります。創薬タンパク質解析基盤は、これまで蓄積されたノウハウによるタンパク質ごとの最適な条件選択と、ロボット化された結晶化過程により、結晶の速やかな作成を可能にしています。膜タンパク質などの疎水性の高いタンパク質は結晶化が困難であることが多く、立体構造に耐えうる高品質な結晶を迅速に作成することは容易ではないとされていますが、脂質メソフェイズ法をはじめとする多様な技術を適用することによって結晶化の困難なタンパク質にも対応可能となっています。

FKBPと10種の阻害剤

タンパク質の個性に合わせた結晶化(膜タンパク質の例)

 

 

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