創薬・医療技術基盤プログラム

次世代シークエンス基盤

次世代シークエンス基盤

 オミックス基盤研究領域が運営する次世代シークエンス基盤は、次世代シークエンサーの利用技術や、大量データのインフォマティクス解析技術の開発と、それらを用いた技術支援(受託解析サービス)を行っています。
 次世代シークエンサーによる解析は、単なる塩基配列決定装置ではなく、RNA発現解析、エピゲノム解析等の遺伝子に関わるすべての解析ができるように進化しております。ターゲットの探索、シグナル応答性による安全確認等幅広いアプリケーションに対応できます。
 これ以外にも次世代シークエンス基盤では、cDNAライブラリー作成技術や遺伝子ネットワーク解析に関する研究を行っており、受託解析サービスでとともに、共同研究についてもご相談させていただきます。

豊富なシーケンス解析支援メニュー
技術支援部門GeNAS(Genome Network Analysis Service)のメニュー一覧

図1 技術支援部門GeNAS(Genome Network Analysis Service)のメニュー一覧

 上図に示したように、次世代シークエンス基盤では、様々な機種のシークエンサーを用いることができます。受託解析では、利用者の求める最適なアプリケーションをご提案いたします。上図は、メニューとして確立している技術の一覧です。そのほか現在開発中の解析を受託解析項目に加えて行く予定です。
 また独自のシークエンス情報可視化ツール「NGSView (Next Generation Sequence View)」を開発しており、ハイスループットのシークエンス解析の律速段階となってしまっているバイオインフォマティクスによる情報解析を簡易に表示し、高速にアライメントを扱うことができます(図2)。このことにより、デスクトップコンピュータにおいても、何百万ものシークエンス配列をGUIを通して、同時に扱うことができます(米国科学雑誌「Bioinformatics」2009年10月)。

NGSViewによる解析結果の一例

図2 NGSViewによる解析結果の一例(FANTOM4によるCAGE解析)
※このソフトウェアはオープンソースとして公開/配布中
URL: http://ngsview.sourceforge.net

 現在の開発中の技術として、バイオインフォマティクス解析、細胞内ネットワーク解析(RNA,転写因子等)や少数サンプルでの解析などを行っています。

マイクロRNA解析技術の開発最前線

 バイオインフォマティクス技術の発現解析の精度を高める技術開発も行っています。ノンコーディングRNAのマッピングは、短いリードであるほどその精度が低下し、発現量解析等においては致命的な誤差となる場合がありました。そこで高精度でシークエンスデータを解析する新たなバイオインフォマティクス技術「Cross-mapping correction」を開発しました。
 マイクロRNAは、発現後のタンパク質翻訳量の調節といった生命現象に重要な役割を担っていることが知られていますが、その中で、哺乳類において、マイクロRNAのクロスマッピング(似ているゲノム配列にマイクロRNAが対応する現象)が起こっていることが報告されていました(図3)。この原因としてマイクロRNA形成後の塩基変換やリピート配列が多くあると示唆されていたのですが、「Cross-mapping correction」により、マイクロRNA形成後の塩基変換が動物ではあまり見られないことを明らかにし、従来の見解が誤りであったことを突き止めることができました(「Genome Research」2010年2月掲載)。
 このように、RNA解析に対するインフォマティクス技術は発展途上であり、生物学的知識もすべてを補完できていません。次世代シークエンス基盤では、より高い精度でのバイオインフォマティクス解析にて技術支援することを目指しています。

let-7bから発現したマイクロRNAがlet-7cにクロスマッピングされる例

図3 let-7bから発現したマイクロRNAがlet-7cにクロスマッピングされる例
転写後の変換(または解読の間違い)の位置により、全く違う配列にマッピングされてしまう。
これらの「ミス」が起こらないように配列解析後の情報処理技術を開発した。

 また同じくマイクロRNAの解析により、世界初のマイクロRNA同士の発現制御ネットワークを描くことにも成功しています。これは白血病由来細胞株であるTHP-1を単球系に分化させるPMAを投与した際に誘導されるマイクロRNAを23種同定し、そのうち過剰発現させることで、細胞周期が停止し分化するマイクロRNAを4種に絞り込みました。しかし、4つのうち複数個を同時に過剰発現させると、増殖停止、細胞分化のいずれも起こらなくなることから、なんらかの相互作用が起こっていると考えられ、停止する細胞周期の違いやPMAシグナルからのカスケードの違いなどを詳細に解析して、マイクロRNA同士のネットワークを描くことに成功しました(図4)。これは細胞内システムとしてのマイクロRNAがコンビネーションによって違う機能を果たすことの例証となり、マイクロRNA研究における大きな道筋を開いたと言え、新しい創薬ターゲットとして今後数多くのマイクロRNAネットワークを発見することが期待できます(「lukemia」2009年12月掲載)。

4種のマイクロRNA(mir-155,mir-222,mir-424,mir-503)とその上下流のカスケード

図4 4種のマイクロRNA(mir-155,mir-222,mir-424,mir-503)とその上下流のカスケード

ゲノムネットワーク研究のトップランナー

 ネットワーク解析に関しては、マイクロRNAなどの遺伝子発現だけでなく、転写因子の相互作用解析も行っています。ヒトとマウスそれぞれの系統について、遺伝子の発現制御に重要な役割を果たす転写因子間の相互作用の有無をすべての組み合わせで調べ、転写因子間相互作用マップを作成しました。獲得したデータは、2010年3月5日からゲノムネットワークプラットフォームで一般に公開しています。これはヒトとマウスの転写因子の完全長cDNAに、哺乳動物ツーハイブリッド法を適用して、転写因子間の相互作用の有無を調べたもので、ヒト1,222種類とマウス1,112種類の転写因子それぞれについて、2つの転写因子間の相互作用の強さを、すべての組み合わせについて網羅的に解析を行ったデータです。高等生物種における転写因子間の相互作用を網羅的に解明した成果は、世界で初めてです。この手法と遺伝子発現データを組合せることで、発生段階において細胞の性質を決める重要な相互作用を行う15個の転写因子の絞り込みに成功しました(図5)。このサブネットワークを解析することで、細胞の特徴をつかむことができ、さらにこの転写因子群の発現を増減させることにより、細胞の形質を変換させることができる可能性が示唆されました。(「Cell」に掲載)

細胞や組織が発生過程に依存してグループ化している様子

図5 細胞のタイプを決める15個の転写因子からなる相互作用サブネットワーク

 より少数の細胞から解析を行えるよう、独自技術であるnanoCAGE法を開発しており、ナノレベルのサンプルからもネットワーク解析が行えるようになってきています(「Nature Method」2010年6月に掲載)。例えば、ヒトのテロメアを合成する酵素として知られていたテロメレース逆転写酵素(TERT)が、RNA依存性RNAポリメラーゼとしての機能も持ち、実際に細胞内で機能していることを哺乳動物として初めての発見できた事例(図6、「Nature」に掲載)や、αおよびβグロビンが、ドーパミンを分泌するA9という神経細胞でも発現していることを明らかにした事例(図7、「PNAS」に掲載)があります。今後もより少数の細胞からの解析を行うことで、がん細胞などの純化が難しいターゲットにおける解析が可能になると思われます。

TERTにRdRPとしての機能があった

図6 TERTにRdRPとしての機能があった

神経細胞でのヘモグロビン発現を確認

図7 神経細胞でのヘモグロビン発現を確認

 

 

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