社会知創事業

NMR基盤ユニット

標的タンパク質と化合物の相互作用を体系的に解析する
世界最大規模のNMR設備を用いた構造解析
およびNMRスクリーニング

医薬品開発プロセスにおける構造情報の活用は、開発期間の短縮、開発費用の削減、副作用の軽減、などの効果が期待されます。特にNMR法を用いた標的タンパク質と化合物の相互作用解析は、創薬研究における強力な解析ツールとなります。

NMR基盤ユニットでは、タンパク質の立体構造と機能の解析を行う高性能NMR装置約40台(900MHz:3台、800MHz:14台、700MHz:6台、600MHz:17台)を備え、年間300以上のタンパク質立体構造を決定できる技術を有しています。分子量4~5万程度のタンパク質側の信号と、分子量10万程度の化合物側の信号までを観測する基盤技術を元に、標的タンパク質と化合物の相互作用解析の体系化を行います。相互作用解析のプロセスを体系的に進めるために、NMR相互作用測定技術ならびに試料調製技術の開発を行います。また、NMR立体構造解析パイプラインと組み合わせ、標的タンパク質試料作製・調製から、タンパク質構造解析、化合物等の相互作用解析までのNMRによる一連のスクリーニングを支援する体制を構築し、理研内・外の創薬関係者の支援を行います。

創薬研究の推進のために、構造解析ならびにNMRスクリーニングという2つの技術基盤を整備し、標的分子探索とスクリーニング支援を通じて様々な創薬研究を支援します。

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NMRによる相互作用解析を利用した
リード化合物スクリーニング基盤

構造情報を活用した医薬品開発プロセスでは、医薬品開発標的タンパク質の立体構造に基づいて薬剤設計・最適化を行うStructure-Based Drug Discovery (SBDD)が代表的手法の一つとなっています。特に最近では、小分子ビルディングプロックから分子構築を進める手法が注目を集めています。この手法により見いだされる化合物は、特に初期段階において、医薬品開発の標的タンパク質との相互作用の解離定数がmM~μMと弱いことが想定されます。その範囲の相互作用解析に強みを発揮するNMR法との組み合わせが特に有効であると考えられています。NMR基盤では、標的タンパク質と化合物の相互作用を体系的に解析するために必要な技術開発として、「NMR相互作用測定技術」、「試料調製技術」の2つの技術開発と、「作業プロセスを規格化・自動化」の2つのシステム開発を実施することでNMRによる相互作用解析の要素技術を確立します。要素技術を組み合わせることで、相互作用解析を活用したリード化合物のスクリーニング基盤を構築します。

NMR相互作用測定技術開発においては、mM~μM程度の弱い相互作用の解析に強みを持つNMR法の特徴を生かすことが重要です。そのため、化学シフトパータベーション法・交差緩和法をベースに結合部位の同定・構造最適化を行う、高感度なNMR相互作用解析技術の開発と高度化を進めます(図1)。試料調製の技術開発においては、・溶解性の低い候補化合物の高濃度化、・高度な標識技術としての、複雑で選択的なパターンを持つ安定同位体標識の標的タンパク質への導入技術、・遠位距離情報の活用に向けた、残余双極子相互作用(RDC)や常磁性緩和(PRE)を活用した解析のための試料調製技術の3つの解析試料の調製技術を開発することで、様々な試料条件下で相互作用解析を行う技術を生み出します。さらに、研究プロセスを記述するために最適なデータ形式について検討を行い、試料・データの履歴情報の管理、試料のトラッキングやデータマイニングを実現するデータ管理システムを開発します。そして、作業プロセスの規格化・自動化をおこない、再現性の向上と多検体同時処理を自動化装置として構築していくことで、要素技術の確立を行います。

さらに各要素技術を組み合わせたNMRによる相互作用解析のパイプラインを用いて、タンパク質と低分子化合物の弱い相互作用を探索します。弱い相互作用を有する分子を複数結合させていくことでより強い相互作用を持つ化合物をスクリーニングする、NMRによるリード化合物スクリーニング基盤(図2)を構築します。

NMRによる相互作用解析

図1 NMRによる相互作用解析

NMRによるリード化合物スクリーニング基盤

図2 NMRによるリード化合物スクリーニング基盤

世界に類を見ないNMR基盤ユニットの構築と外部利用の推進

NMR基盤ユニットでは、これまでの研究の成果を活用し、タンパク質試料のNMR解析適合性の判定、安定同位体標識タンパク質試料の調製、多次元NMRデータの測定、測定データに基づくタンパク質の立体構造の決定などを一貫して行う解析ラインの「NMR立体構造解析パイプライン」(図3)を構築しました。すでに外部利用を開始しています。本パイプラインにNMRスクリーニング基盤を組み合わせることで、世界に類を見ない強力なNMR基盤ユニットを構築します。NMR立体構造解析パイプラインの外部利用は理化学研究所 横浜研究所にて実施されており、「先端研究施設共用イノベーション創出事業」対象利用課題としての利用(成果非占有、経費国支援)、成果占有利用(有償)、成果非占有利用(有償(割引料金適用))という3つの形式による利用が可能となっています。

>>理化学研究所 横浜研究所 NMR施設の紹介及び利用方法についてはこちら

NMRスクリーニング基盤を組み合わせたNMR立体構造解析パイプライン

図3 NMRスクリーニング基盤を組み合わせたNMR立体構造解析パイプライン

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