多方向かつ段階的に進行する細胞分化における運命決定メカニズムの解明究領域略称:細胞運命制御

組織・研究内容

研究課題名
B細胞系列への運命決定を制御する転写ネットワークの解明

伊川 友活
研究代表者
伊川 友活
理研 統合生命医科学研究センター・
上級研究員(Young Chief Investigator)
研究室HPE-mail

研究内容

 B細胞を含むすべての血液・免疫細胞は造血幹細胞から作られる。その過程で多能性の造血幹細胞は徐々に分化能が限定されていき、最終的にB細胞にしかなれない前駆細胞に運命決定される。E2A、EBF1、PAX5など様々な転写因子がB細胞への運命決定に関わっているが、詳細は明らかでない。特にこれらの転写因子同士がどのようなネットワークを形成し、B細胞への運命決定を制御しているのか不明である。
 我々は最近このB細胞への運命決定に必要な転写ネットワークを調べる新しい分化誘導系を開発した(未発表)。この培養系を用いると、7日間で多能前駆細胞からB細胞系列への運命決定を誘導することが出来る。そこで培養細胞のRNAサンプルを経時的に採取し、当研究所オミックス基盤研究領域によって開発されたCAGE(Cap Analysis of Gene Expression)法を用い、遺伝子発現を網羅的に解析し転写因子間ネットワークのモデルを構築する。次に当研究所生命分子システム基盤研究領域の平尾一郎博士と共同で各転写因子の機能を特異的に阻害するDNAアプタマーを作成し、これを培養系に加えることによって、各転写因子間のネットワークを検証する。
 本研究により分化過程にある細胞の運命制御に転写因子を含めたエピジェネティック制御機構がどのように関与しているのかが明らかになる。またこうしたメカニズムが解明されれば、正常な分化過程から逸脱することによって起こるがんや白血病の新しい治療法の開発につながることが期待できる。

主な論文

* correspondence
研究代表者
伊川 友活

Ikawa T, Hirose S, Masuda K, Kakugawa K, Satoh R, Shibano-Satoh A, Kominami R, Katsura Y, and *Kawamoto H.
An essential developmental checkpoint for production of the T cell lineage.
Science. 329: 93-96, 2010.

Wada H, Masuda K, Satoh R, Kakugawa K, Ikawa T, Katsura Y, and *Kawamoto H.
Adult T cell progenitors retain myeloid potential.
Nature. 452: 768-772, 2008

Ikawa T, Kawamoto H, Goldrath AW, and *Murre C.
E proteins and Notch signaling cooperate to promote T cell lineage specification and commitment.
J. Exp. Med. 203: 1329-1342, 2006

このページのTOPへ
MENU
公募研究一覧
←組織・研究内容TOPへ戻る